影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
………調子に乗りました。すみません。
それでは張り切ってどうぞ。
「な、に、を、やってるのよ貴方達はアァァァァァァァァ!!!!」
ダンジョンを運営管理する『ギルド』の窓口受付嬢、エイナ・チュールは、名物になっているだろうこの大声を出した後に頭を抱えていた。
目の前にいる白髪の少年は碌な装備もなくダンジョンに向かいボロボロになって帰ってきた。
そして黒髪の無表情な少年はバイト先でロキ・ファミリアの第一級冒険者にケンカを売りオラリオ中の話題になった
そして今ダンジョンから帰ったきたベルとその付き添いのハジメを叱っているエイナである。
「ベル君あれほど
「僕もいますよ」
「ハジメ君も勝手にダンジョンに行っているでしょう!!
それもベル君よりも酷くて……もう~二人とも私をそんなに困らせたいの!!!!」
「そんなつもりはないですよエイナさん!!」
周りからしたらエイナは「二人に説教している」ように見えるが、そこには一人に対して二人分説教しているように見えている。以前にも同じようなことが何度もありエイナと同じ職員からは「エイナが仕事のし過ぎで壊れた」と見られてしまった。いくらそこにもう一人いると言っても誰も信じてくれない。
ハジメがエイナに会った時はヘスティアと共に来ており、ハジメの担当だということでヘスティアも認めてくれた。なのでエイナはハジメを認識出来る。基本的にハジメはどんな人でも好意的に思っている。しかし神であるヘスティアでも全てのものを好意的になんてことは出来ない。それに常にハジメと一緒にいることも出来ない。だから大抵のものにハジメを認識することは出来ない
ともかくそんな状況下においてもすでに免疫のついたエイナは気にせずに説教を続ける。
「ハァ~、とにかく二人とも今度からは一緒に行動すること」
「やめたほうがいいと思いますよ。僕ではベルベルの足手まといになるだけです」
「ハジメはまだそんなこと言ってるの!!」
「ハジメ君はベル君と一緒のファミリアなんでしょう。だったらベル君を頼ってもいいと思うなー。戦闘に参加しろって言っているわけじゃないの、ベルのサポーターとして手助け出来るんじゃないかな」
「………ベルのサポーター、ですか………」
ふむ、と考え込むハジメ。
サポーター、ベルと共に戦うではなくベルの手助けをする。確かにそれなら自分にも出来るかもしれない
「でもサポーターと言っても何をすればいいんでしょうか?」
「口で説明するのは簡単だけどこういうのは経験するのが一番じゃないかな。ベル君にとってのサポーターだから一緒にダンジョンに行って何をすればいいのか、どうしたら助けになるのか、実感するのが一番の近道だと思うの」
「なるほどですね」
今まで考えたことのないこと、自分がモンスターと戦うだけではなくベルの為に手伝いをする。そんな新しい事に挑戦すると考えたトキサキは表面では表情では分かり難いがかなり喜んでいる
「分かりました、前向きに考えさせてもらいます」
「前向きじゃなくてやってほしいところなんだけどな…」
「なるほど、つまりはエイナ嬢は「だから嬢ってつけないでって言ってるでしょう!!!!」今すぐにでもベルのサポーターとしてやってもらいたいんですよね」
「そうじゃないとベル君一人じゃ心配じゃない」
するとまた考え込むように唸るハジメ。それを見たベルは「あっ、ヤバイかも」と直感的に感じ取る。そしてその分かり難い表情のまま
「いま神様は『神の宴』でいません。そしてエイナ嬢はベルベルと担当者ですよね」
「そうだけど……」
「つまりは今現在僕達の行動の決定権はエイナ嬢にあるわけですよね」
「えっ、なに?何を言っているの?」
エイナが気づいたときにはもう遅かった。トキサキがこれだと思ったら誰も止められない。特にこういう面倒くさいことが起きるときは
「それではお願いします」
強制的に話が進んでいくのだ。
………………………………………………………………………………
「僕は今日から1週間タダ働きをしないといけませんでしたが、ベルのサポーターとして付き添うことになりました。ベルがダンジョンに行ってお金を稼いで貰わないと食べ物さえ買えません。つまりはベルは絶対にダンジョンに向かう必要があります。そしてそんなベルのサポーターと僕も付き合わなければいけません。すみませんが1週間初日で休みを取ることになりました。
ということでベルのサポーターを
「…………………ほう」
「…………………………」
僕の目の前には今にも激怒しそうなミア母さん。隣には顔が真っ青になりかけているエイナ嬢。そして僕の後ろには呆気にとらわれているベルがいて、周りのお店の仲間も突然のことに驚いている。
「人様のバイトのシフトを勝手に変えるなんて、いい度胸してるじゃないか」
「ちょっ、ちょっとお待ちください!!勝手なことだとは分かりますが、ハジメ君も冒険者ですしバイトよりもダンジョンに行った方が……」
「つまり私達の仕事が冒険者より劣っていると言いたいのかい?」
「ち、違います!!!!ハジメ君にとってはダンジョンに行った方がいいと思うだけです!!!!ベル君一人でダンジョンに行かせるわけには行きませんし、だったらハジメ君がサポーターとして行ってくれると安心するんです」
「ちょいと心配し過ぎじゃないか。大体の男なら危険の一つや二つ自分の力で乗り越えなくて何が冒険者だい!!」
「ベル君はまだ初心者なんですよ!!!!そんな子が危険の一つあるだけでも向かわせたくないのに、二つも三つもあったら命がいくつあっても足りません!!」
「命張らずに何が冒険者だあ!!いいかい、冒険者ならダンジョンで冒険しなきゃ冒険者じゃないのさ!!!!」
「そういう考え方は如何かと思います!!!!初心者にも同じようなことを簡単に言えというのですか!!モンスターの倒し方も知らない子が簡単に命を落とすような場所なんですよ。冒険者は冒険をしない。これはダンジョンを冒険することに対して大事なことなんです!!」
「冒険者は冒険しない、なんて何バカなことを言ってるんだい!!この街は冒険者がいることによって賄っているといっても過言ではないんだよ!!あんただってギルドの人間なら分かっているはずさ、冒険者は冒険するからこそこの街が成り立っていることを!!」
「そうだとしても……」
「何を言っているんだい……」
「違います………」
「分かってないね……」
「いいか…」
「ちが……」
「トキサキさんはどうしてこうもトラブルを持ってくるんですか?」
「そんなつもりはないのですが……解決しないと僕が怒られると思いまして」
ゆっくり近づいてきていたリューはハジメに愚痴をこぼす。そうでもしないとこの場の空気に耐えられないと感じたのだろう。実際リュー以外の店員は聞こえないふりして掃除を念入りにしている
「間違いなく後で怒られますよ、お二人に」
「……………あー………ダンジョンに行きましょうかベルベル」
「僕まで巻き込む気でしょうハジメ!!!!」
その後今日1日と明後日だけ休みをもらったハジメ。しかしその後に二人から別々にこってりと怒られたのは言うまでもない。