影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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多くは語りません。
まずは読んでください!
よろしくお願いしますー!





影が薄くても簡単には終わらせられません。

オラリオの上空に、大歓声が打ち上がった。

古城跡地で打ち鳴らせれる激しい銅鑼の音と共に、決着を告げる大鐘の音が都市全体に響き渡る。

観衆である多くの亜人(デミ・ヒューマン)が『鏡』の中に立つ少年二人へ興奮の叫びを飛ばした。

 

 

「エイナ、やったぁー!?」

「ベル君……ハジメ君……!」

 

 

ギルド本部前庭では、エイナがミィシャに横から抱き着かれた。

 

 

 

 

 

『戦闘終了~~~~~~っ!?

これは大判狂わせ(ジャイアント・キリング)にもほどがあるぞ!!!

戦争遊戯(ウォーゲーム)の勝者は【ヘスティア・ファミリア】━━━━━!』

 

 

そして舞台上、何故か主神(ガネーシャ)が雄々しく姿勢(ポーズ)を決める横で、実況者イブリが身を乗り出して真っ赤になって拡声器へ叫び散らす。

 

 

『『『『『『ヒャッハァ━━━━━ッッ!!』』』』』』

 

 

酒場では、ヘスティア達に賭けていた神々が勢いよく立ち上がり勝利の歓声を上げる。

 

 

 

『『『『『『ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおっ!?』』』』』』

 

 

一方で、アポロン達に賭けていた冒険者達は無数の賭券を破り捨て頭上に放り投げた。

 

 

 

 

 

「「「ッしゃあ!」」」

 

 

 

西の大通り『豊穣の女主人』ではアーニャ、クロエ、ルノアの定員娘達が三人一緒に手の平を叩き合う。他の従業員や厨房の猫人(キャットピープル)達も手を取り合い笑い合った。

 

 

 

「……ベルさん……

……リュー……良かったね…」

 

 

 

シルもまた、薄鈍色の瞳を細め、唇に喜びの微笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

「………勝ちやがった」

 

 

 

ホームの外から響いてくる歓声を耳にしながらベートは不機嫌そうにそう言い捨てる。

 

 

 

「ベート、どこに行くんだい?」

「どこだっていいだろ」

 

 

 

団長であるフィンの問いにまともに取り合わず狼人(ウェアウルフ)の青年は応接間から出ていった。

 

 

 

「ダンジョンか」

「ダンジョンじゃのう」

「ダンジョンだな」

 

「ですね……」

 

 

 

フィンとガレスが苦笑を浮かべ、リヴェリアは両目を閉じ、ティオネも呆れた顔を作る。

 

しかし気持ちは分かる。

いま『鏡』の向こうで喜んでいるのは強くなるためにロキ・ファミリアの訓練を耐え抜いたものだ。

そしてその少年は、力の半分も出さずに勝利をもぎ取った。

それにはもちろん、もう一人の少年が関わってるのだが……

 

 

 

「しかし規格外だとは知っていたが……なんだあの氷の塊は……」

 

「しかもあれは魔法ではなのだろう。呆れるわい……」

 

「……是非、ロキ・ファミリアに欲しい人材なんだけど……梃子でも動かないだろうね彼は……」

 

 

 

分かっていても言葉に出してしまう。

それほどハジメの起こしたことは大きかった。

 

 

 

「………やったねっ」

「うん………」

 

 

つい先ほどまで喚い続けたいたティオナがゆっくりと振り返り、にししっ、と満面の笑みを浮かべる。

頷き返すアイズは、駆け寄ってくる仲間に囲まれるベルとハジメの姿を見て、顔を綻ばせた。

 

 

 

「おめでとう………」

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

「な………が、ぁ………?」

 

 

 

お祭り騒ぎの中で一人、アポロンは顔を真っ白にして立ち尽くしていた。

己の子供達が力なく両膝を地についている『鏡』の光景が、彼を現実から逃避することを許しはしない。

二歩、三歩後退する彼の頭から、ぽろりと被っていた月桂樹の王冠がこぼれ落ちる。

 

 

 

「━━━ア~ポ~ロ~ンッ」

 

 

 

そして、ゆらぁ、と。

ここまで沈黙を貫いてきたヘスティアが、不気味な動きで近づいてくる。

うつむき加減の前髪の奥、瞳から邪神と見粉うような眼光を放ち、茫然自失とするアポロンに近付いた。

 

 

 

「ひ、ひぃいっ!?」

「覚悟はできているだろうなぁ?」

 

 

 

尻餅をつき後ずさるアポロンはゆっくりと近づき壁まで追い詰められた。

そして必死にこの状況を打開しようと

 

 

 

「ま、まて!!軽い出来心だったんだ!!

もう二度とお前らファミリアには手を出さない!!

だから許してくれ!!俺とお前の仲だろうッ…」

 

「だ・ま・れ」

 

「ッ!!!??」

 

 

 

このままでは何もかも失う。

するとアポロンの頭の中で電気(閃き)が駆け巡った。

 

 

 

「じょ、情報だ!!

見逃してくれたらヘスティアが知りたかった情報をやるッ!!」

 

 

 

それを聞いたヘスティアの顔が一瞬動揺をみせた。

これはチャンスだと睨んだアポロンは一気に畳み掛ける。

 

 

 

「知りたかったのだろう、あの情報を!!

どうして漏れないはずの情報が漏れたのか!!」

 

「……何が、望みだい?」

 

 

 

その言葉に流石のロキやヘファイストスも驚きを隠せずヘスティアに駆け寄った。

 

 

 

「待てやヘスティア!!

そんなもん、いまからアポロンに命令すればええやろうが!!」

 

「そうよ!!

ヘスティアが勝ったときはどんな要求も出来るのよ!!」

 

「言っておくがどんなことされようが私はこの情報だけは吐かないからな」

 

 

 

完全にやられた。

完璧に有利に立っていたというのにアポロンの持つ情報一つで状況が変わってしまった。

アポロンも明らかな悪い顔をしているがヘスティアは気にもせずに、

 

 

 

「いいから言うだけ言ってみてごらんよ」

 

「簡単だ。

………再戦を求める」

 

 

 

その言葉に全体がざわついた。

あれだけやられたというのにまだ戦いを求めている。

それだけ自信があるのかは分からないが

 

 

 

「あかんでヘスティア!!

こいつ何を考えとるか分からんで!!」

 

「そうよ。

ここは情報は諦めて終わらせるべきよ」

 

 

しかしこんなめちゃくちゃな要求にも関わらず即答しないヘスティア。

するとヘルメスの方を向いて

 

 

 

「ヘルメス、ハジメ君と繋いでくれないか?」

 

「あ、あぁ、いいよ」

 

 

 

突然の指名に困惑をしたが何かあるのだろうと思ったヘルメスはハジメの方に受信側の『鏡』を送った。

これで互いに会話が出来るのだが一体何を話すつもりなのか……

 

 

 

「ハジメ君聞こえるかい?」

 

「はい聞こえます」

 

「プランBだ。準備は出来ているだろうね?」

 

「問題ありません。じゃ()()()()()()()行いますね」

 

 

 

まるでこうなることを予知していたのか二人の間にはすでに作戦があったようだ。

しかしそれはベルや他の仲間も誰も知らず一体何が起きるのかと不安になってきた。

 

それはそうだろう。

だってあのトキサキ・ハジメなのだから。

プランとか知らされていない時点で絶対にマトモではない。

 

それを感じ取った二人の神はそぅーとヘスティアに

 

 

 

「何を考えとるかは知らんが止めとき……

絶対にマトモなことやないやろう、なぁ??」

 

「そうよヘスティア。

怒っているのは分かるけどこれ以上は……」

 

 

 

すると俯きながら「ふふふ……」と笑いだしたヘスティアにこれは不味いと悟った。

 

そう、ヘスティアは完全にキレている。

あれだけ好き勝手に言われて負けた途端に我が儘を言い出して再戦しろ。

これを聞いて穏やかな心のままでいられるわけもなく

 

 

 

「そうだよハジメ君。

今回は特別に許可するよ。

見せつけてやるんだ、君の力を!!!」

 

 

 

するとハジメは左手人差し指をつきだして()()()()()にゆっくりと円を描いていく。

すると人差し指の先端から光が現れ、徐々に光の円が作られていく。

 

そしてそれと同時にある現象が起きていた。

 

 

 

「な、なんやこれは……」

 

 

 

ロキが見ている『鏡』には映る映像に驚愕していた。

何故なら倒壊した筈の古城のガレキはなくなり、倒れていた支柱もなくなり、一瞬、刹那で()()()()()()()()()()()()()()

 

そして驚くのはそれだけではない。

倒れていたアポロン・ファミリア、ソーマ・ファミリアの冒険者達の傷も治り、一体何が起きているのか周りの人や本人達も理解はしておらず恐怖している。

それはそうだろう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

 

 

「な、なによ…これ……」

 

「発展アビリティ『再生』の力だよ」

 

「ちょっ、ちょっと待てやッ!!?

発展アビリティはこんな魔法みたいなもんやない!!!」

 

 

 

 

そう、発展アビリティはいわば補助的であること。

 

 

例えば《耐異常》は毒を始めとした様々な異常効果を防ぐ

 

例えば《魔導》は威力強化、効果範囲拡大、精神力効率化。魔法を使用する上で様々な補助をもたらす魔法円(マジックサークル)を作り出すことが出来る

 

 

つまり身体や魔法等の補助的な役割を持つのだが、ハジメの《再生》は補助どころではなくメインのような働きをしているのだ。

 

 

 

「僕だって驚いたよ。

でも間違いないよ、発動条件もあるし、すべてがすべて再生できる訳じゃないからね」

 

「それでも……異常よ、これは……」

 

「今更だよヘファイストス。

……ハジメ君に常識はないって知っているだろう……」

 

「……そうやったな……」

 

 

 

3人の神が遠い目をしている。

現実逃避したいのは分かるけど目の前に起きているのは現実ですからねー

 

するとベル達の方でも何が起きているのか分かっていないようで皆がハジメに駆け寄ってくる。

 

 

 

「こいつは一体何なんだよ!!」

 

「徹底的に潰すためにですけど」

 

「そんなことは聞いてません!!

また非常識なことをしてることについて聞いてるんです!!!」

 

「神様に許可が降りたのでやりました」

 

「あのですね、結果についてではなくこの現象を聞いているのですが……」

 

「発展アビリティ《再生》です」

 

「皆さん、ハジメにこれ以上聞いてもマトモに返事が返ってくるとは思いません」

 

「ちょっと失礼じゃないですか」

 

「普段の行いのせいだと思うよハジメ……」

 

 

 

しかし誰もが説明を求めているだろう。

だっていまこの状況はほとんどゲーム開始直後と変わらないのだから。

 

 

 

「さて、第2ラウンドにいきましょうか」






どうでしたか?タイトル通りでしたか?
終わらせませんよー屑とも。
ここからが本番ですよー!!

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