影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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影が薄い、それだけで人を判断するのは愚かだ。

 

 

 

それからどれだけ時間が経ったのだろうか…

もう一層殺してくれと何度思ったか……

それでも繰り返し、繰り返し、繰り返し、終りない戦いは続いていく。

 

何を間違えたのだろうか、その原因さえも思い浮かべることが出来ないほど疲労していた。

 

復活すれば圧倒的な攻撃で全滅させられ、すぐさま元の状態に戻る。もちろん色んな戦略や攻撃パターンを変えて対処していた。

 

いたのにアレはその全てを簡単にねじ伏せていく。

戦略も攻撃も全部止められ、何をしても無駄ではないかと心が折れるまで永遠にやらされるのではないかと思うほどに。

 

主神のために、ファミリアのためにやっていたはずなのに……本当に何を間違えたら、こんな悪魔に手を出してしまうのだろうか………

 

 

しかしそんな絶望している中でもハッキリ分かるのは、まだ我らのリーダー(ヒュアンキトス様)は諦めていないということだ。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「粘りますね。降参、もしくは負けたと宣言してくれたら終わりますよ」

 

「……ふ、ふざけるな……

そんなこと……言える…はずがないだろうが……

第一、まだ…負けてないッ!!!!!!」

 

 

 

ソーマファミリアはすでに心折れており、ザニスはヒュアンキトスの隣で膝をつき頭を垂れていた。

 

 

「ザニスッ!!!立てえぇ!!

このガキを殺るまでは終りではないぞぉ!!!」

 

「………くっ……」

 

「こんな屈辱を受けて終わらせるのか!!

こんな底辺の奴らにいいようにさせていいのか!!!!

貴様はこんな男に、やられたままでいいのかッ!!!!」

 

 

 

ヒュアンキトスの叫びが届いたのかゆっくりと立ち上がるザニス。その瞳はまだ闘志がある。

 

 

 

「お前に、言われなくとも……」

 

「だったらさっさと立て。

でなければ私が先に倒すぞ」

 

「ほざくな、倒すのは俺だ」

 

 

 

周りからみたら友情が芽生えたように見えるが、その二人に対峙しているハジメからしたら

 

 

 

「いや、もう諦めてもらってもいいんですけど」

 

 

 

正直な感想であった。

この戦い誰がどう見てもハジメ達、ヘスティアファミリアの圧勝だということは。

それでも『再生』で戦争遊戯を続けるのはこの二人から「負けた」や「ごめんなさい」という敗北宣言をさせること。

一番はザニスがリーリに、ヒュアンキトスというよりもアポロンファミリア全員に謝って貰いたいのだ。

 

 

しかし、この二人の(プライド)が折れない。

さっきから敗北宣言すれば終わりますよ、と説明しているのに未だに立ち向かってくる。

 

 

これではこっちが悪者のように見えるかもしれないが、仕掛けてきたのも原因を作ったのも向こう側である。

謝れば許すとかなり優しい条件のはずなのにどうしてこう頭が、プライドが高いのか……ハジメには理解出来なかった。

 

 

もうすぐで0時を、1日が終わってしまう。

すると『再生』に使うマーカーが消えてしまう。

そうなるとまた付けなおさないといけない。

別にそれをやることは問題ないのだが、この戦争遊戯に関わっている人達皆が精神的に疲れていないだろうかと考える。

 

いつまで経っても終わらない戦争遊戯。

この戦争遊戯を見ている人達もまだ終わらないかと待っていると思うのだ。

だって現場にいる仲間も、いや、ハジメを除く仲間はすでに疲弊しているのが分かるのだから。

 

あのリューも疲れの色が出ている。

それは戦闘によるものというか、いつくるか分からない敵を前にして緊張がずっと続いているのだ。疲れないわけがない。

 

ハジメ?

無表情でそんな表情が分からないだけだと思うだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……仕方ありませんね」

 

 

するとハジメはヒュアンキトス達に背を向けて仲間の元へ戻っていく。

もちろん後ろから攻撃しようとザニスは一歩踏み出そうとしたがそれをヒュアンキトスが止める。

 

すでに小細工しても勝てないと分かっている。

かといって正面からいっても勝てる可能性が上がるわけではない。それでもそこだけはいらないプライドの中でも僅かにマトモなプライドがそうさせているようだ。

 

そんなことも知らずにハジメはまた何も言わずにリリのバックパックをあさりはじめた。

 

 

 

「ですから私のバックに勝手に入れないでください!!」

 

「大丈夫です。もう私物は入れてませんので」

 

「聞いてますか?私の話を聞いてますか?」

 

「なにかイライラしてますか?

長い戦いに疲労が溜まるのは分かりますが相手に当たるのは間違いですよ」

 

「その…その……その原因がハジメ様だということがどうして分からないですかああああああああぁぁぁ!!!!!」

 

 

「お、落ち着けリリ助!!」

 

「怒ったら負けだよリリ!!!」

 

 

「離してください!!!

今日という今日はこの唐変木にハッキリと分からせてやらないと気がすまないんです!!!!」

 

 

「気持ちは分かるがやめろ!!!」

 

「相手はハジメだよ!!

話を聞くわけがないんだからやめた方がいいよ!!!」

 

 

「リーリを止めるためかもしれませんが何気に酷いことをいいますねベルベル」

 

 

「「自分が悪いと自覚しろおおおおおおおぉぉぉ!!!」」

 

 

 

何をいっても分からないと分かっているのに言わないとやってられない二人だった。

 

そんな様子を命はアワアワと見ており、リューに限っては全く見ておらずいつ襲いかかるかと警戒しながらヒュアンキトス達を見ていた。

 

 

「大丈夫ですよリュー。

もう色々小細工しても無駄だって分かっているようですので」

 

「その慢心がいつかハジメに襲いかかると思いますが」

 

「慢心というより、事実だと思いますけど?」

 

「……ハジメなら大丈夫だと分かってますが……」

 

 

言葉が途切れるリュー。

その様子にハジメはリューの隣に立ち

 

 

「ありがとうございます。心配してくれているんですよね」

 

「……私は、もう…何も失いたくない……

……ただの怖がりになってしまったのです……」

 

「それはいいことですよ。それがあれば立ち向かうことも出来るんですから」

 

 

無意識にハジメはリューの手を取って

 

 

「僕の分も怖がってください。

それはとても辛いかもしれませんが、その代わり僕は絶対にリューの隣に戻ってきますから」

 

「……ハジメは卑怯だ。

そんなこと言われたら……耐えるしかなくなるじゃないですか……」

 

 

リューもハジメの手を握り、強く握り、そして離した。

別にこの戦いでハジメが負けることはない。

それでもこれから先のことは分からない。

そう、万が一この戦いだって負けるかもしれない。

 

そんなことを考えると不安がドンドン募っていくリューにハジメが約束をする。

特別なことをしたわけではない。ただ戻ってくると言っただけ。確かめるように手を握っただけ。

 

それだけでリューの心は晴れた。

 

 

「早く終らせて戻ってきてください」

 

「はい、分かりました」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「別れの挨拶は終わったか?」

 

「それ、敗北フラグですよ」

 

「ふん、そんな風にしていられるのも今だけだ」

 

「ですから敗北フラグ立ちますよそれだと」

 

 

 

とにかく強気に出ようと考えているのか、さっきから完璧に負けてしまうようなお決まりセリフを吐く二人。

もしかしたら本当に大逆転するものを持っているのかもしれない。

 

だが、そんなことはどうでもいい。

 

なぜならハジメが本気でこの二人の心を折りにかかるからだ。

 

 

 

「いまさらそんな()()を持った所で何も変わりはしない!!」

 

「そうですね、ずっと負けてますからね」

 

「負けを認めるなら手荒な真似はしないが」

 

「いや、すみません。それ今から僕が言おうとした言葉だったんです。」

 

 

 

変わらずどうしても負けを、自分達が不利だということさえも認めない。

そしてハジメがこのタイミングで手にした()()さえも一切警戒していない。

 

その高すぎるプライドさえなければこの先に待ち受けている現実を受けることはなかったのだろう。

 

 

「それでですね、本当に負けを認めることはしないんですよね」

 

「ふん、認めるもなにも敗北受けるのは貴様らだ!!」

 

「あっ、もういいです。分かりました。

全く認める気はないということなので実力行使に移らせていただきます」

 

 

ハジメは持っていた武器を、短剣を構えて二人に近づく。

もちろん二人はその攻撃に対して警戒していた。

しかし、気づいたときには終わっていた。

 

さっきまで近づいたハジメの姿が突如消え、気づいたときには二人の背後にいた。

 

すぐさま方向転換して攻撃を仕掛けようとしたが、もう遅かった。

 

 

 

「忠告はしましたからね、恨まないでくださいね」

 

 

 

何を言っているのか分からなかったがとにかく背中を向けている今を!!と足を動かそうとしたが

 

 

「なっ!!?」

 

 

どういうわけか足が重い。

それどころか両手両足が重くなっている。

麻痺効果のあるものをつけられたと思った。

 

実際ハジメが背後に現れた直後に両手両足に一太刀受けていたのだ。それでもちょっと傷が入っただけだと思い特に気にしていなかった。

 

 

 

だがそれが絶望の始まりだった。

 

 

 

 

「僕は昔から影が薄かったのでこうして認識されずに攻撃は出来るんですよ」

 

 

その傷口から麻痺効果のあるものを受けたと思っていた。たがその傷口が徐々に大きくなっている。

 

 

「ただ、攻撃しても意味がなかったんですよ。

攻撃が全くない僕が攻撃しても意味がありませんから。

一時停止の攻撃も別にこうして見えなくなる必要もありませんし、正面からぶつければいいだけだったので」

 

 

 

火傷のようなものかと思った。

しかしいつまでたっても収まらず、それどころか痛みは酷くなり傷口も大きくなっていく。

 

 

 

「ですけどこの攻撃なら意味があります。

止められてもいいですけど、目的はその部分を止める(終わらせる)ことが目的ですから」

 

 

 

広がっていく傷口。

それもドンドンスピードが上がっている。

そこでやっと気づいたのだ、ハジメから受けた恐怖の正体を。

しかしもう止めることは出来ない、すでにその傷口は皮膚の表面からドンドン皮膚深くへと進行し、そしてそれは骨が見えるまでに………

 

 

 

「や、やめてくれええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「だからいいましたよね。もう遅いですよ」

 

 

そして絶望の叫びと共にザニスとヒュアンキトスの両手両足は、完全に人としての役割を終えた。止まったのだった。

 

 

 

「「ギャアアアアアアアアァァァァ!!!!」」

 

 

 

僅かな傷口から広がってきた傷口は二人の両手両足を落とした。まるで傷口がドンドン腐りかけていくのが速まっているかのように。

 

 

 

「[時喰い(タイム・イーター)]

お二人の傷口、その進行に対する時間をこの短剣に喰わせました。

普通ならあっという間に治る傷口でも、治るという進行を止めてしまったら、そして傷口の悪化をしてしまうだろう先の未来の時を奪われたら……ということです」

 

 

 

誰もが言葉が出てこなかった。

確かにすでに圧倒したハジメの戦いだったが、それでもここまで残忍なことはなかった。だが、これは……

 

 

 

「か、かえせ………」

 

「無理ですよ。

マーカーさえもこの短剣が喰らいましたから」

 

「ふ、ふざけるなああああああああぁぁぁ!!!!」

 

「いいましたよね。

負けを認めるだけでよかったんです。

今までのことを許すとはいきませんが、少しは配慮があったはずですよ。

 

でも貴方達はそれを捨てたんです。

あとはどうなるか、分からなかったんですか?」

 

 

 

そうハジメが言っていることは間違ってない。

この戦いはそういうことが起きても文句が言えない戦い。

それを回避させようと何度も忠告したのに一切聞かなかった二人が悪い。

 

しかし、それでも、これは……

 

 

 

「僕がどう思われようとも構いません。

ただ僕の大切なものに手を出すということはこういうことだと()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

それはこの二人に向けたものなのか。

それともここにはいない、この様子を見ているものに向けたものか。

それはハジメにしか分からないが、

 

 

 

『し、終了~!!!!

ソーマ、アポロンファミリア両者のリーダーが戦闘不能ということでこの勝負はヘスティアファミリアの勝利ですッ!!!!!』

 

 

 

この戦いで、トキサキ ハジメという者がどういうものかが知られることになった。

 

 






どうでしたか?
この結末、予想できましたか?
……悪魔か……まだ可愛いですよね?

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