影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
あれから三日後
未だに神ヘスティアは帰ってこない。出掛ける前から何日か帰ってこないとは聞いていたがこんなに時間がかかるとは思っていなかった。
だからいまはベルベルと一緒に朝食を取り、今日も朝からダンジョンに向かうことになっていた。
ちなみに冒険以外はバイトをしているのだがどういうわけかリュー姉が「トキサキさん、休憩を取った方がいい。一体何時間働き詰めなんですか?」とか、シル姉が「ミア母さんも休んでいいって言ってますよ」とか、本人であるミア母さんが「元気なのはいいけど体を壊したらただのバカだよ!!いい加減に休みな!!!!」と激怒された。
キチンとバイトしているのにどうして怒られるのか分からないが、働いた分以上に給料をもらえたので気にしないことにしている
「神様、まだ帰ってきませんね……」
「あの方は抜けている所がありますから道に迷っているんじゃないですか??」
「……ハジメって神様に対してもブレないよね……」
「そうですか?」
朝食を食べ終わりダンジョンに向けて準備をして家を出る。失われるものは少ないが念のためにお金が入っている机には必ず一時停止で開かないようにしてあるので問題はない
「戸締りはいいですね、さて行きましょうか」
「本当にハジメの魔法って便利だよね。金庫番とか向いてるんじゃないの」
「失礼ですねベルベルは、これでも僕は冒険者。それに金庫番になっても泥棒が僕の姿を見えないから次々に現れて対処するのが面倒くさいです」
「今のバイトはいいの?大変じゃない?」
「ミア母さんやリュー姉にシル姉の皆さんは良くしてくれますから。それにお客さまをからかうのは楽しいです」
「そんなことしてるから怒られるんだよ……」
昨日のバイト中もベルベルが夕食を食べに来てくれたので知っているのだが、姿が見えずに料理がいつの間にか現れる「ステルス」は店の名物となっている。なのだからか……サービスとして背後から「うわっ!!」と脅かしたからか……サービスをしているのだがミア母さんに度々怒られている。サービ……からかっているだけなのだが。
「それはともかく」
「誤魔化したね……」
「ともかくこの前のダンジョンはなかなか良かったと思います。エイナ嬢が言ったように僕はサポーターに向いているようですね」
「……あれって
「ベルベルの戦闘を効率よくしているじゃないですか」
「そうなのかな……」
納得いかない顔をするベルベル。何が不満なのだろうかと考えながら歩いていると『豊穣の女主人』の近くを歩いていることに気づいた。店から出できた
「お~い、鉄仮面こっちにくるニャー」
「いい加減に鉄仮面は止めてくださいアーニャちゃん。それだと僕はあまり話さず、考えていることを表に出さない、無口な ・押し黙った ・ 寡黙な ・ あまり喋らない ・ 口数の少ない ・ 口が重い ・ めったに口を開かない ・ 感情を表に出さない ・ 何を考えているか分からない ・ 口数が少ない ・ 静かな ・ 物静かな ・ 喋らない ・ クールな ・ ポーカーフェイスみたいじゃないですか?」
「絶対に無口だけはないニャー……それにアーニャはアーニャだニャー!!年上だから「ちゃん」付けするなニャー!!!!」
「しかしリュー姉とシル姉とは違い、明らかに子供なので」
「失礼な事をいうなニャー!!!!」
両手を上げて威嚇をしてくるアーニャちゃんに何故かポケットに持っていた猫じゃらしをユラユラと揺らす。すると目の前に揺れている猫じゃらしに反応するアーニャは左右へと動くそれを追いかける。ある程度遊んだアーニャはまるで意識を取り戻したように「ハッ!!」と表情をして
「アーニャで遊ぶなニャー!!!!」
「すみません、つい」
「ついで遊ぶなニャー!!そこの白髪頭も見てないで止めろニャー!!!!」
「す、すみません!!!!」
「本当ですよベルベル」
「ハジメが悪いって分かってる!!??」
するとはぁーとため息をつきながらお店から出てきたリュー姉は、いまにも飛び付こうとするアーニャの肩に手を置いて
「落ち着いてください。トキサキさんが人をからかうのは今に始まったことではないはずですよ。毎回相手していると身が持ちません」
「それはそうだけどニャー…リューはそんな被害がないから言えるんだニャー!!」
「当たり前です。リュー姉は僕の憧れの方なのですから」
すると普段は冷静なリューの頬が若干赤く染まっているように見えたが、直ぐ様後ろへ向いたので本当だったのか分からない
「ちょっと待つニャー!!」
「待ちません。受け付けません。
早く用件を言ってください」
「む、ムカつくニャー……あぁもうー!!これをシルに届けろニャー!!!!!」
そういって悪意を込めてハジメに投げつけたのは財布。それも女の子らしい財布であり、これをシル姉に届けるということは
「お使いに行ったのに財布を忘れた愉快なシル姉、ということでしょうか」
「いえお休みを貰って
「なるほど
「………もう、それでいいですので渡してもらえませんか?私達は仕事がありますのでお願いしますクラネルさん」
「ええっ!?ハジメじゃなくて僕ですか!!!!」
「…………何故かトキサキさんに渡すとトラブルに巻き込まれそうな、そんな予感しかしませんので」
「酷いこと言いますね」
それでは僕がいつもトラブルに巻き込まれていると言っているようですね、本当に失礼です。
「もう何処にいったのでしょうか?」
ここは闘技場の周りの一角。さっきまで一緒にいたはずのベルベルが勝手に何処かに行ってしまった。少し目を離した隙に……
「あっ、ハジメさん」
「シル姉、こちらにいたんですか」
ここでシル姉に会うということはやはり僕がトラブルを招くなんてないことが証明されましたね。うん。
「こちらって…私に用があったの?」
「ありましたがベルベルがいないと達成できませんね。ちなみにシル姉の財布を届けにきたんですよ」
「私はそんなドジじゃないですよ!ほらちゃんと……」
すると財布がないことに気づいたのかパタパタと身体中を調べ回っている。その現実に気づいたシル姉は
「……え~と……」
「
「事実だけど言わないでー!!」
可愛らしく真っ赤になったシル姉は両手で顔を塞いでその場に座り込む。
「可愛いですから問題ないですよシル姉」
「こ、こういう時にそんなこと言わないでください!!」
そんなやりとりをしているなか、周りがざわめきだしてきた。何事かと立ち上がったシル姉の不安は的中することになった。そして
「モ、モンスターが逃げ出したぞー!!!!」
その叫び声と共に少し離れた場所で爆音と粉塵が立ち上がった。次々と何かを追いかけるように立ち上がる粉塵。
「モンスターって……」
「どうやら本当にトラブルがやってくるなんて…うーん、これは困りましたね」
「ハジメさん、安全な場所に逃げましょう!!」
「そうですね、シル姉だけでも安全な場所に行って貰わないといけませんね。移動しましょう。」
その言葉に初めは唖然としていたシル姉だったが、その意味を理解したのかハジメの腕を取って
「ハジメさんもですよ!いくら冒険者でも相手はモンスターなんですよ!危険です!!」
「すみませんがベルベルを探さないといけませんので、あの子は迷子になっているようですし僕が見つけてあげないと」
その言葉とハジメの瞳を見たシルは分かってしまった。きっとこれ以上何を言っても聞いてくれないだろうと。それにハジメには「アレ」があるから……なら、
「ハジメさん………気を付けてください」
「はい、ベルベルを見つけて財布を渡さないといけませんので待っててくださいね」
さてさて、何処に行ったのかなベルベルは…