影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
一気に書きました‼
本当は2話に分けようとしましたが、ここはまとめてだ‼と思い少し更新に時間がかかりました。
それなりの出来かと思います。
あっ、超余談ですが堂本光一のshock、今日見に行きます。楽しみです‼!!
ダイダロス通り
オラリオの東と南東のメインストリートに挟まれる区画にある貧民層の広域住宅街。
奇人の異名を持つ設計者ダイダロスが担当による度重なる区画整理のせいで非常に複雑になってしまい、一度迷いこめば二度と出て来れないといわれ、もう一つの迷宮と称されている。
そんな中を現在、ベルとヘスティアはシルバーバックに追われている。
「それじゃハジメ君もここに来ているのかい?」
「でも途中ではぐれてしまいまして…」
「相変わらず身内でも見失う影の薄さなんて……」
「アハハ……」
格上のモンスターに追われているというのにまるで緊張感がない二人。さっきからシルバーバックの攻撃はベルの身体ギリギリ掠めており、それが一撃となれば大ダメージを受けて立ち上がることも難しいだろう
だけど、それでも、この二人には余裕がある。
「とにかくハジメ君がくるまで逃げるんだベル君
あのモンスターを迎え撃つにしてもハジメ君が来るまでは我慢するんだ」
「はい‼」
そう、二人は待っているのだ。
ハジメが来ることを、このダイダロス通りという名の迷路だというのに、来るということに対して疑っていない。
そしてハジメが来ればシルバーバックを迎え撃つという。レベル1であるベル、ここで迎え撃つことは冒険者として「冒険」しているだろう。しかしこの戦いはまるで「勝てる」という自信があるかのようにみえてくる……
「それにベル君!!君にはプレゼントを用意してるんだ‼これさえあれば君はハジメ君に追い付けるよ‼!!」
「本当ですか!!!??」
「もちろんだとも!!!あの子にも苦労かけたんだ………今度は僕達がやるんだ‼」
「はい‼」
…………………………………………………………………………………
「どこにいったんですかねあの二人は……」
ベルとヘスティアが意気込んでいるのに、全く緊張感がない声で二人を探しているハジメ。とりあえずモンスターが出てた為に騒ぎになっている所を探しているがいまだに見つからずにいる。すると目の前にさっきよりも人が集まりガヤガヤしているのを見つけた。
人混みの周りを見渡すがその姿はなく中心へと入っていくとそこにいたのは、
「これで終わりやね」
「もう、いないですか?」
そこには『豊穣の女主人』にお得意様であるロキファミリアの神ロキとアイズ・ヴァレンシュタインがモンスターを倒し終わり一息ついていたところだった。
もしかしたら二人を見ているかもと思い、アイズに近づいて肩に触れようとしたが
「ッ!!!!」
ハジメが近づいてくるを感じたのか一瞬のうちにその場から離れたアイズ。周りからしたらいきなり行動を起こしたアイズに対して何が起きたのか分からずにいた
「どないしたんやアイズさん?」
「………いま、誰かが私に触れようとした……」
「なんやてー‼
誰や!!うちのアイズさんを勝手に触れようとした罰当たりな奴はああああぁぁぁぁぁ!!!!
アイズたんに触れていいのはうちだけやあぁぁ!!!」
といいながらロキはアイズに抱きつこうとしたがスゥーと避けた。その行動にロキはムスゥーと頬を膨らませているがアイズはいつものことだと無視をしている。それにそれどころじゃない、全く気配がなく
しかし、足元にはさっきまではなかった地面に「溝」があった
[どうも、こんにちは]
「………え、えーと……こんにちは?」
自分でもどうして返事したのか分からなかったが、さっきまではなかった文字があったので何かが自分に話しかけているようだったからか……
すると本当に会話をしているようにまた地面に文字が
[こうして話すのは初めてですね]
「あなた……誰?」
[そうですね、『豊穣の女主人』の「ステルス」と言ったらいいですか?]
「おお‼なんやあんた喋れたんかい!!!」
ロキも気づいたようで地面に書かれた言葉に対して返事をする。
[もちろんです。今回はベルを探していましたのでこうして会話をすることにしました]
「なんやそれやと普段はしたくないみたいやな」
[したくないというか「こうして会話をする」しかないので面倒くさいので]
「確かにイチイチ紙に書くなんて面倒くさいしな」
それでもこうやって会話する方法があるなら少しは会話しろよと思うロキだが、賛同した手前口に出すことはやめた
「で、ベルって言ったか?それってあの白髪の男のことか?」
[はい、知りませんか?]
「そう言ってもな~」
するとガヤの中から「そういえばやたらデカイモンスターが白髪の少年とツインテールの女の子を追いかけていったな」「そうそう、確かダイダロス通りに向かってたな」と話が聞こえてくる
「どうやら分かったみたいやな」
……………………………………………………。
なんだろう………ハジメに話しかけているはずなのにどういうわけか返事がない。暫く沈黙が続く中痺れを切らしたロキは
「おい、返事せんかい‼」
「…もう、いないんじゃ……」
「だったら尚失礼や!!!!なに情報だけもらって消えとるねん‼!!」
イラッとしたロキはその場で地団駄を踏んでいる。その姿をどうでもいいような目で見ているアイズはその場から駆け出した。
「ちょっ、ちょっとアイズ!!!!置いていかんで‼!!」
ロキの言葉は届かずアイズの頭のなかではただシルバーバックに追われている白髪の少年の安否と、さっきまでいた「ステルス」の実力を見てみたいと考えていた
(……あなたは一体、どんな戦いをするの?)
……………………………………………………………………………
「来ました神様!!!」
「あともう少しなんだ‼」
ベルとヘスティアはダイダロス通りにある隠れた空地でステイタス更新を行っていた。ステイタスによる能力上昇とヘファイストスに作ってもらったヘスティア・ナイフの所有者にすること
しかし思ったより時間がかかり、すでにシルバーバックは壁をよじ登りベル達に迫っていた
「まだですか!!?」
「上手くいかないんだよ‼
ベル君!!!僕がいない間にハジメとどれだけ一緒にいたんだい!!!!間違いなくベル君にも影響出てるよ‼!!」
「そんなことあるんですか!!!?」
「それしか考えられないよ!!実際ハジメ君のステイタス更新はやたら時間がかかるからね‼って、モンスターが来たああああぁぁぁぁぁ!!!!」
どうやら一時停止によるものか普段の更新速度より遅い。それがまさかハジメと一緒にいただけで影響が出るなんてそんなことあるのか!?
ハジメが悪いわけではないがどうしても考えてしまう。どうしてこんなときになんてことをしてくれたんだと‼!!と。
迫りくるシルバーバックに思わず目をつぶるヘスティア、馬乗りされていたベルは起き上がりヘスティアを覆い被さり守ろうとする。二人とももうダメだと思った。
「相変わらず仲がいいですね」
ベルとヘスティアがゆっくりと目を開けるとそこにいたのはハジメだった。それもシルバーバックの拳を
あり得ないことが目の前で起きている。レベル1の冒険者がシルバーバックの攻撃を無傷で、片手で、平然としているのだから。
しかしそんな異常な事が起きているのにも関わらず
「ハジメ君!!僕のベル君に一体何をしたんだい!!!!!」
「いきなりですね。お久しぶりです神様。お元気で何よりです」
「ひ、久しぶりだねハジメ君……じゃないよ‼
ベル君のステイタス更新が遅くなってるんだよ‼」
ハジメのマイペースについつい乗せられてしまったヘスティアだが、それどころではないと直ぐに思考を戻して今起きている事を元凶かもしれないハジメに……
「あぁ、昨日ベルの背中に虫が寄ってきたので背中を叩きましたからその時じゃないですか」
「やっぱり君かいいいいいぃぃぃ!!!!!」
「何してるのハジメ!!!!!!」
元凶だった。
それも思いっきりハジメが関わっていた。
するとさっきまで突然の出来事に放心状態だったシルバーバックが後方へ飛んで距離を取った。目に写らない「何か」に恐怖したが直ぐ様それを「敵」と見なした
「よく分かりませんがステイタス更新しているなら、僕が時間を稼ぎますね」
「頼んだよハジメ君!!
ということだ、そこのモンスター君。
君は僕の、僕達の、「敵」として認識したよ‼!!」
その瞬間シルバーバックの瞳に何もなかった所から、いや、さっき「敵」と認識した場所からモヤが現れゆっくりとそのモヤが消えてくる。そして現れた「敵」は真っ直ぐこっちを見ている。見えるならその「敵」は脅威ではないと判断したシルバーバックはその者に向かって攻撃を始めた。
……………………………………………………………………………
アイズが走り出して暫くすると目の前に人混みがあるのを発見した。ざわざわと隠し扉の向こう側を見ている野次馬に対して、アイズはそこに残り一匹のモンスターがいるのではないかと考えた。それと同時に白髪の少年と「ステルス」がそこにいるのではないかと。
近づくと野次馬達が何かを話している
「あれ、なにしてるんだ?」
「さぁ~練習してるんじゃねぇのか」
「はぁ、モンスターが!?ありえねぇー!!!」
「だけどよ、さっきからずっと何もないところを攻撃してるぞ」
「酒でも飲んで訳が分からなくなってるんじゃないのか!!!」
アハハ!!!とモンスターがいるのに全然怖がっている様子がない。不思議だと感じたアイズは人混みをかき分けて先頭に出ると、そこにはさっき聞いた通りのことが起きていた。
シルバーバックは何もない空間を「殴る」「蹴る」「噛みつく」「引っ掻く」「押し潰す」「体当たり」「物を投げる」などなど考えられる攻撃をひたすら
それを見ていたアイズは直感した。
そこに「あの子」がいることが分かった。
そしてあのモンスターの攻撃が効いていないことも。
何十回も攻撃しているシルバーバックが息切れを起こし、何処と無く恐怖している表情を見せている。それでも攻撃を続けているのはそれを止めた時、死が待っていると悟っているからだろう
「………………………………」
見てみたいと思った。
特殊な子がどのような戦いをしているのかを…
それを目の前にしてアイズは言葉をなくした
………………………………………………………………………………
「神様~まだですか~!!!!」
「もう少し!!!!」
「一分前にも同じこと聞きましたが」
「君のせいだろう!!!それにそっちは全然平気そうじゃないか」
「平気じゃないですよ、怖いですよ」
「変わらない表情で何をいってるんだい……」
さっきから「もう少し!!!」と聞いているが一向にステイタス更新が終わる気配がない。その間もずっとシルバーバックが攻撃をしているが一切効いていない。全く防御もしていないのにだ。
《魔法》【一時停止】はあらゆる
そしてオート発動により自ら防御する必要がなく、当たってきた攻撃を次から次へと止めている。
「よし!!!!ステイタス更新終わったよベル君!!ハジメ君!!」
「ありがとうございます神様!!!
ハジメ、いつも通りにいくよ‼!!」
「いいですよ、それではいきますよ」
ステイタス更新が終わったベルはヘスティア・ナイフを手に取り戦いの場に向けて走り出す。
ハジメはシルバーバックのパンチを片手で受け止めて懐に入る。そしてもう片手でシルバーバックの腹部近くに、掌を空に向けるように構える。
そして次の瞬間、シルバーバックは空へと吹き飛んだ。
『ガァアアアアッ!!!!??』
突然のことに思いっきり吠えて苦しむシルバーバック。
何もしていない「敵」が突然ノーモーションで吹き飛ばすほどの攻撃をしてきたのだ。驚くのも無理はない。
《魔法》【一時停止】の「停めたものを再生させる」と「再生する際は方向を変えられる」を使い、今まで受けた攻撃を掌から発するように設定したあと、止めていた衝撃を
完全防御と100%カウンター
これがトキサキ・
そして空中に飛ばされたシルバーバックの身体は重力に負けて落下して、下で待ち構えていたベルのヘスティア・ナイフによって胸部中央を貫かれて、魔石を破砕された肉体は灰へと還り、風に乗ってその姿を跡形もなく消滅させた
『──────────ッッ!!!!』
歓喜の声が、迸った。
よく分からないが突然吹き飛んだシルバーバックを仕留めたベルに対して、「あれもあの冒険者が何かをしたんだ」と思いベルを称えている。
ヘスティアは寝不足のためかその場に倒れ、それに気づいたベルはすぐさま駆け寄る。
「これなら………僕でもダンジョンを攻略できますかね……」
誰も聞こえない中、一人そう呟いた。
「ヘスティアには悪いことをしたけど……もう、妬けちゃうわね」
とある人家の屋上。
ベルのいる付近一帯を一望できる高台で、フレイヤは呟いた。
「おめでとう。まだまだだけど……ふふっ、ええ、格好良かったわ。
そして………貴方も、すっごく良かったわ。」
脇目も降らず出口を目指し、通路を走り抜けていくベルとそこにいるだろう少年をアツく見つめながら、フレイヤは目を細める。
日の光を反射する銀の髪を翻し、彼女はその場を後にした。
「また遊びましょう───ベル。
そして、