20XX年。人類は進化を進めていた。
技術も然り、科学も然り。
それにより人の寿命は伸び、今や平均寿命はゆうに90歳を超える。
しかしながら、病気など技術などによって治すことの出来るもの以外は、まだまだ対応出来ていない。
そう、それは『自然』である。
幾ら予測しても、予想外の事態は起きてしまう。死亡率の約4割は自然災害で占められている程だ。
そんな時代にまた新たな災害が迫ってきた。
地上では消防車の耳をつくようなサイレンが鳴り響き、遥か上空では自衛隊のヘリの割れんばかりの羽の音が広がる。
地獄のようだ。
辺り一面が火の海と化し猛威を振るう。
燃え盛る火は山だけでは
燃えた家屋の所有者であろう人物達は、その光景を目の当たりにし、泣き叫ぶ。
その後、救援に駆けつけた救急隊や自衛隊によって、山の麓まで避難誘導が開始された。
しかし、一人の母親が誘導の束縛から逃れようとしている。
母親は言う。「まだ子どもが家にいる」と。
その母親は自分の家の近所の人で、いつも良くしてもらっていた。
そのため家も知っており、子どもの顔も知っている。
その母親は助けるために自宅へ必死に向かおうとするが、救急隊の人に固く止められていた。
「もう、助からない」
そんな残酷であり、現実的である言葉を掛けられ、母親は泣き崩れた。
母親自身心の中では分かっていたのであろう。しかし受け止めきれなかったのだ。そのような現実を。
そんな様子を眺めていた俺の足は、ふとした時には山の方へと向いていた。
それを意識したと同時に、俺は走り出した。
静止の声が聞こえる。
しかし、耳に聞こえても心には聴こえない。
固い自身の心と身体を形成する決意を胸に抱いた今の俺には、届かない。
住宅地に辿り着くと、やはり先程よりも増して、辺りは炎に包まれていた。
俺はその光景を一瞥すると、途中拾った水入りのペットボトルを取り出し、中身を頭から被る。
十分な水分を得た俺の身体は、炎から放たれる熱波を軽減する。
それを確認した俺は、一つの家屋に向かう。
窓を突き破り、部屋に侵入すると、泣きわめく声が聴こえる。
声の方向からして二階と判断した俺は、荒ぶる炎を出来る限りかわしながら階段へと向かう。
動ける状態を維持したまま二階へと到達する。燃え盛る炎の中、目を凝らすと、右から二つ目の部屋に人影があるのを視認する。
その部屋は倒壊寸前であった。
その中で、一人の子どもが机の下に潜り込んでいた。
咄嗟の子どもの判断力に非常事態にも関わらず感服した。
しかしそれは一瞬の思考であり、直ぐに意識を切り替える。
子どもの視線に合わせるように屈み込み、声をかける。
その声に反応したのか、子どもはこちらを向く。
俺の顔を認識した子どもの表情には、驚きが浮かび上がる。
子どもは俺に対して言葉を発しようと口を開くが、そんな時間は無いと分からせるために脱出のための説明を無理やり被せる。
察してくれたのか、子どもは口を閉じる。
その様子を見た俺は、子どもを引っ張り出し、自身の濡れた上着を子どもに頭から被せ、そして抱き上げる。
屋根の一部が落下してくる中、俺は子どもを守るように背中を丸め、部屋から出る。
背中には火を纏った建造物がぶつかり、身体は悲鳴をあげる。
そんな中、ギリギリの状態で階段を下りきった所で視線を上げると、そこにはもう既に足場という足場は存在していなかった。
そこで初めて俺の顔が歪む。
「助けられないのか」と。
しかしそこで、一つの希望が見える。
建物の倒壊によって出来た大きく開いた穴に救急隊の姿を見つける。
恐らく俺を追ってきたのであろう。
視線を向けていると、救急隊員と目線が交わる。
救助隊員の顔が驚愕に染まる。
声をかけようと口を開けようとしているが、俺はまた言葉を被せる。
先程とは打って変わり、それはそれは短い一言を。
「この子を頼んだ」
言葉を発したと同時に子どもを残りの全ての力を振り絞り、救助隊員に向かって投げた。
子どもは面白いように綺麗に穴を通り抜け、隊員の腕にすぽりとはまる。
その様子を見届けると、建物は限界を超え、轟音をたてながら崩落する。
そして、それと同時に、俺の意識も暗闇へと崩落していった。
ふと、身体全体に固い感触を感じる。まるで、床に寝転んでいるようだ。
そんな感覚を感じながら、俺はゆっくりと瞼を持ち上げる。
そこは、辺り一面真っ白であった。
雪でもなく、白い大理石でもない、なんの混じりのない、真っ白な世界。
その光景を焼き付けながら、俺は身体を起こす。
そして不思議に思う。
何故、こんな場所にいるのか。
俺は死んだのではないのか。
そこから導き出される答えを呟く。
「...ここは、天国なのか?」
「ううん、違うよ。でも半分は合ってる、かな?」
予想外の後ろからの返答の声に、身体をビクリと震わせる。
そして身体を反転させ、声の主を視認する。
そこには女性、いや女神がいた。
それは決して大袈裟ではない。
髪は光を反射してキラキラと輝く、黄金色。
瞳は空のように透き通った蒼色。
細くしなやかな身体は一枚の布で包まれていた。
そして何よりオーラが、人知を超えていた。
「ふふっ。そこまで素直に褒められると、なんだか気恥ずかしいわね」
なんと、考えていたことを見抜かれた。本当に何なんだ、この
「その疑問を補足と共に答えましょう。貴方が察した通り、私は女神。正確には転生神よ」
本当に神様なようだ。それならこのオーラも、そして思考を読めるという事も頷ける。
...ん?転生、神?なんだそれは。
「それについては後々話すわ。それよりもまず、話してくれないかしら。一人で話しているみたいで、なんだか寂しいのよ」
「え、あ、うん、はい」
「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいのに」
そんな事言われても、ねぇ。
「ムムム。じゃあ少しだけ神格を抑えましょうか」
その言葉と共に、
「どう?これなら少しは気を抜ける?」
「あ、はい、大丈夫です」
敬語は抜けないけど。
「まあ良しとしましょう。と言うわけで改めてよろしく。わたしの名はアテ、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします。俺の名前は.....ッ!」
思い出そうとした途端、激痛が走る。な、なんでだ?
「ごめんなさい。貴方はもう既に輪廻転生の軸に片足を突っ込んでいるから、一部の記憶が欠落しているの。そこは私でもどうにも出来ないの。本当にごめなさい」
「いっ、いえいえ。お気になさらず。なんとなく察しましたから」
いわば俺は魂の塊のようなものだ。
そして新たな肉体へと入り込む直前で止められている、という事だろう。
「その通りよ。理解が早くて助かるわ。さて、そろそろ貴方をここに止めた理由を説明しなくちゃね」
「あ、ちょっと待ってください!」
確認したい事がある。この今の俺に残されている数少ない記憶。最期の記憶。
「あの子、助かりましたか?」
その言葉だけで理解してくれたのだろう。
「ええ、助かったわ。軽い火傷を複数箇所受けていたけど、あの時代の医療技術で直ぐに元の状態に戻ったわ」
「そう、ですか。良かった...」
本当に良かった。彼女が無事で...
「...本当に変な人ね。自分が死んだっていうのに他人の事を聞くだなんて」
「そうですかね?」
当たり前だと思うのだが.....
「ふふふ。それを当たり前だと思える人は貴方ぐらいよ。そういう所が私の目に強く写ったのよ」
「は、はあ」
少し、というかかなり意味が理解できない。そのため、情けない声を発してしまった。
「安心して。今から説明するわ。」
そう言って
曰く、
曰く、俺のような目に留まった人の魂をここに呼び、対話をする、と。
曰く、そしてこのまま元いた世界の輪廻転生の軸に入るか、全く別の世界の世界に転生するかを、呼び寄せた人に問い、選ばせる、と。
曰く、別の世界に転生する時にはそれ相応の特典を渡す、と。
ん?それって、小説とかでよくあるテンプレってやつじゃね?
「そうね、言うなればそういう事よ」
「マジですか...」
「マジよ」
目線をこちらに合わせ、ジッと見てくる。俺の判断を待っているようだ。
勿論、興味が無いわけではない。
そういう類のもの死んだ時よりももっと若い時に読み耽っていた、気がする。
そして「こんなのがあったらいいなぁ」とも思っていた、気がする。
記憶を失っても、その興奮は魂が覚えているようだ。
ならば折角の機会だ。少年の頃に想い描いた妄想であったであろうものに乗ってみてもいいではないだろうか。
それにこの機会は、俺と言う存在ではもう訪れないだろう。ならば...
「別の世界に転生します。いえ、転生させてください!」
その言葉に女神は一瞬キョトンとしていたが、やがてニコリと笑みを浮かべた。
「分かったわ。じゃあ、特典を決めましょう。はい、これを持って」
渡されたのはまあまあ大きめの立方体。それには赤や黒の点が打ってある。これって...
「サイコロ、ですか?」
そう、サイコロである。
うん、意味不明。
「それを振って頂戴。そして出た数分、貴方に特典を与えるわ」
「な、なるほど」
要するに運試しみたいなものだ。
多ければそれほど特典を自由に選べる。少なければ、特典をよく考えて選ばなければならない。
ゲーム感覚で決めていいのかよ。
「いいのよ」
さいですか...
「それじゃあいきますよ。よいしょっと」
「何が出るかな、何が出るかな♪」
「ノリノリですね」
どこかで聞いたことがあるようなリズムだなぁ。それもちょっと古い映像で。
そうこうしているうちにサイコロが止まる。その目は...
「6だ」
「6ね」
「マジですか」
「マジよ」
さっきもしたようなやり取りである。
「さて、どうするの?大まかな意見を出してくれたら、既存の能力を貴方に見せるわ。と言っても、元のものを若干変えたものになるけど」
「ちなみに、なんでそのままじゃダメなんですか?」
「普通は同じものが二つ存在するのはあり得ないことなの。そのあり得ないことが起きてしまうと、世界が歪むなどの問題が起きるの」
なるほど。ドッペルゲンガーみたいな感じか。
「そんな感じね。さて、どうするの?」
まさか6が出ると思っていなかったから、あんまり考えていなかったんだよな...
あ、そうだ。なんとなく覚えてる小さかった頃に想い描いたものを出してみるか。
「えーっと...一つ目は、"剣"に関わるもの」
「剣、ね...かなりあるけど」
「6つ言ってから細かく決めます」
「了解したわ」
「二つ目と三つ目は、その"剣"に関わること」
「うんうん」
「四つ目は、師匠みたいなヒトが欲しいです」
「(コクコク)」
「五つ目は、色んな体術を覚えたいです」
「なるほど...」
「六つ目は、うーん.....お任せで」
その言葉にまるで漫才のように椅子から転げ落ちた。
(ちなみに二人は、女神が説明を始めた時から何処からともなく現れた椅子に座っています)
「.....いいの、それで?」
「あ、はい。特にこれといったことが思いつかないので」
「絶対的な防御力とか、一撃で相手を倒せる攻撃力とか考えないの?」
それはそれで強者としての優越感を感じられるだろう。けれど、
「最初から最強なんて、面白く無いじゃないですか」
強くなるという成長を感じられないだなんて、もうそれは人ではない。
俺はまだ、人を辞めたつもりはない。
「...本当に貴方って、面白いのね」
「変な奴、って言われた記憶がほんのり残ってます」
お互い笑い合いながら、言葉を交わす。
「さてと、じゃあ一つを抜いた五つの内容をどうする?今から一つ目の要望からデータを送るけど...」
「やっぱりいいです」
「はい?」
またもや驚きの表情を女神は浮かべる。
それに構わず俺は言葉を続ける。
「五つの要望に沿ったものを神様が選んでください」
「なんでそこまで適当なのかしら?」
おおう。ちょっとキレてる。
神様から湧き出てくるオーラに呑まれそうになるが、必死に堪え、言葉を発する。
「その、所謂冒険心なものでして...あっ、でも、選ぶ神様も大変ですよね。じゃあ六つ目の特典を『神様が五つ選んでくれる』に変えてください」
その言葉に神様は真顔になる。
ヤバい。また地雷を踏んだか...?
そんなことを考えていると神様はフゥと一息ついた。
「分かったわ。そこまで言うならそうしましょう。転生者をよりよくするのも私の務めだしね」
どうやら認めてくれたようだ。
ホッと一息つくのも束の間、これからのことについて神様は話し始める。
「特典は私が選ぶとして、これから貴方に私が指定した世界へ転生してもらうわ。そうね...15歳くらいの年齢にするわ。それからはほぼ私はノータッチ、干渉しない。特典は手に入れたと同時に基本的な使い方を示すわ」
「ってことは、特典はバラバラに渡されるんですね?」
「そうよ。普通は転生直後にすぐに渡すのだけど、貴方は段々と強くなりたいと思っているようだから徐々に渡すわ」
「ご配慮、ありがとうございます」
そこまでしっかり考えてくれるとは...流石神様といったところかな。
「じゃあそろそろ行きましょうか」
「はい!」
そして目の前に一つの扉が現れる。
「そこを通れば、転生されるわ。頑張ってね」
神様はまさに聖母の笑みを浮かべ、手を振っている。
俺もそれに反応し、手を振りかえす。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと開ける。
さあ、新たな冒険の始まりだ。
そう決意しながら、俺は眩い光に包まれた。
行った、わね。
ふむふむ、転生も無事完了。
さてと。彼のご希望通り、特典を選びましょうか。
一つ目は...っとそうね。剣でロマン溢れるものと言ったらあれよね。うん、そうしましょう。
二つ目三つ目は...あれに必要な技能だから...うん、これとこれね。
四つ目は.....そうだ!一つ目の特典と関連付けてオリジナルのものにしましょう。
五つ目は...3つの世界のものを混ぜて渡すことにしましょう。
六つ目は.....後で考えましょうか。あの子面白そうだから、成長の仕方で判断して選びましょうか。
えっ?六つ目は私が決めるというので使ったのではないか、ですって?
まさか。私はそこまでケチではないわ。まあ、あの子もその気でいるみたいだし、六つ目を渡した時の驚きっぷりをしかと拝見しましょうか。
プロローグなのにも関わらず五千越えとは...
最後の方は駄文で酷いですね。まあこれから頑張りますw
挨拶が遅れました。ドライグと申すものです。
この作品を手に取っていただきありがとうございます。
プロローグの次の話なので次の投稿は明日です。
ではまた次の話でお会いしましょう。