迷宮都市の投影者【ストーリー修正中】   作:ドライグ

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※1変更点:『セイバー』→『ペンドラゴン』
※2変更点:干将・莫耶についての表記・説明



出会いは成長の予感

「ほぁあああああああああああああああっ!?」

 

ダンジョンの5階層に絶叫が響き渡る。その声の本人は1匹のモンスターに追われている。

たった1匹だと思うかもしれないが、その1匹の強さがその逃げ惑っている冒険者の力量を一回りも上回っているのだ。

そのモンスターの名は『ミノタウロス』。Lv.2にカテゴライズされている中層のモンスターである。本来は15層から出現するモンスターだが、何があったか現在5層にいる。

そんなやつとエンカウントした冒険者ベル・クラネルは、全力で逃げながら1週間前に出来た初めての仲間であり、パートナーでもある黒髪の少年に助けを請う。

 

「アッシュぅぅぅぅぅーーーーー!!!助けてぇぇぇぇぇーーーーー!!!」

 

アッシュと呼ばれた冒険者は、その声に応えるように全力で追いかける。しかしながら、自分よりも高い敏捷力をもつベルとミノタウロスに追いつけることは無く、その距離はどんどんと離れていく。

そんな状態に舌打ちをしたアッシュは、思考を切り替え、ミノタウロスのヘイトを稼ぎこちらに意識を向けるという方法にでる。

右手を虚空にかざしながら、一言言葉を紡ぐ。

 

「【投影、開始(トレース・オン)】」

 

すると虚空から三本の細長い鍵のような剣が現れる。それを指で挟むようにして掴み、そしてミノタウロスの頭めがけて自身の敏捷力と力の限り投剣する。三本は見事に頭に突き刺さる。

予想外の後ろのからの襲撃に、ミノタウロスは足を止め、こちらを振り向く。そして1人の冒険者を視認すると、それに向かって雄叫びを上げながら突進を開始する。

それを確認すると、アッシュは現時点で最強の剣を記憶から取り出し、投影する。

その剣は双剣にカテゴライズされるもので、二つ揃っているからこそ真価を発揮する。その名は、『干将・莫耶』。一方は白の刀身を持ち、もう一方は黒の刀身をもつ。

投影が終わると、彼は自身のスキルを発動する。

 

「魔眼、開眼」

 

その声が引き金となり、彼の瞳が水色へと変化する。それと同時に彼はミノタウロスだけに視線を絞り込み、解析を開始する。

筋肉の動き、呼吸のタイミング、一歩で進む距離、とミノタウロスに関する情報が頭を流れ込む。しかしながら、それはまだまだ全体の2割りにも届かない情報だった。

彼の魔眼は様々なものを解析できる一方で、ヒトやモンスターなどの生物では自分よりも強い、所謂格上の相手に対しては解析に時間がかかる。ミノタウロスは彼よりも格上のLv.2。そのため、完全には把握ができなかった。

その状態でも彼は、ミノタウロスを迎え撃つ。この世界に来て初めて出来た"仲間"を助けるために。

そうこうしているうちに、ミノタウロスは彼の前に辿り着き、間を入れず強靭な腕を振りぬく。その解析できていなかった圧倒的速さにアッシュはギリギリ双剣で防御するしかなかった。しかし、双剣で防御しても威力は削りきれず、彼の体は後ろに吹き飛ぶ。咄嗟に受け身を取りその威力を軽減するも、防御に徹した双剣干将・莫耶は砕け散る。

それもそのはず、その干将・莫耶はオリジナルの贋作(コピー)であるからだ。そのため耐久値はオリジナルに比べると低いのである。また、通常より早急に投影を行っているため、その分脆くなってしまっている。

だが、こんな一撃で葬られたものでも現時点での彼の投影品の中で最強であるため、もう一度干将・莫耶を投影する。投影を終えると、彼は干将・莫耶の耐久力を上げるためもう一つのスキルを発動させる。

 

魔術回路(マジックライン)、解放(オープン)」

 

発動すると彼の体に血管のような青白い線がはしる。その線を手を通じて双剣にも数本流し、纏わせる。魔力を流すことで先ほどよりも耐久値を上げることができるのだ。

それを証明するように、ミノタウロスの攻撃を受けても一度では壊れず、二度三度持ちこたえる。しかし、直ぐに刀身にヒビが入る。そしてまた、干将・莫耶が破壊される。だが、同時に解析が進んだ。

干将・莫耶を再投影すると、今度は攻撃を受け止めず、受け流すことにする。これは、ある程度解析が進んだことで、相手の動きを予測することが出来るようになったからだ。それでも完全には流しきれず、ダメージを負う。それを何度も続けていると、体は限界に達し、再度吹き飛ばされる。受け身を取ることもままならず、地面に叩きつけられる。立ち上がろうとするも、体が軋み、動くことが出来ない。

もう、ここまでか.....

そう思っていると、倒れている彼を庇うように一つの人影が躍りでる。視線を上に向けると白い髪が目に入った。

そう、先ほどまで追われていたベル・クラネルがいたのだ。

 

「なんで来たんだよ!そんなんじゃ俺が助けた意味がねぇじゃねえか!」

 

珍しく、彼は汚い言葉遣いで叫ぶ。

その言葉に、ミノタウロスと対峙しているベルは恐怖を滲ませながらも、力強く返答する。

 

「僕は、僕は仲間を見捨てたりなんかしたくないんだ!」

 

その言葉と同時にミノタウロスの腕が振り落とされる。

危ない!と思った次の瞬間、ミノタウロスの胴に横一線の斬撃が走る。間髪を入れず、足、肩、首と連撃が放たれる。反撃する間もなく、ミノタウロスは肉塊へと変わり、血飛沫を撒き散らし魔石を残して四散する。

アッシュはベルに庇われていたため血のシャワーは浴びることはなかったが、案の定ベルは体全体に飛沫を受けた。後ろを除いて、真っ赤に染まる。

ミノタウロスが消え失せた後現れたのは金色の髪をもつ少女(ヒューマン)。蒼の装備に身を包んだ女剣士は、有名な大型ファミリア『ロキ・ファミリア』に所属する、女性冒険者最強とも謳われる第一級冒険者"アイズ・ヴァレンシュタイン"。

 

「あの...大丈夫、ですか?」

 

衝撃的な有名人の登場に2人は唖然。だが、アッシュはすぐさまその状態から回復すると、軋む体を起こし感謝の意を述べようとした。が、それはベルの行動によって妨げられることとなる。

 

「だっ」

 

「「だ?」」

 

アッシュとアイズの声が重なる。次の瞬間。

 

「だぁああああああああああああああああああああっ!?」

 

全力疾走でベルはその場を走り去った。その様子にアイズは勿論、同じファミリアのアッシュでさえも呆然とする。

キッカリ10秒間動きを止めた後、アッシュはアイズ・ヴァレンシュタインに声をかける。

 

「えっと.....取り敢えず、助けていただいてありがとうございました」

 

アッシュの言葉にハッとしたアイズは、留まってくれたアッシュに対して返答する。

 

「無事なら、良かった.....あの子と同じファミリア?」

 

そう言ってベルが逃げた方向を指差した。

 

「そうです。.....俺としてもなんで逃げたのか全くもって分かりませんが.....」

 

そう話していると剣姫の後ろから、仲間らしきヒトがやってくるのを視認した。このまま留まるのはマズイかな、と思いアッシュは切り上げることにする。

 

「それじゃあ、あいつを追わないといけないので失礼します。本当に助けていただいてありがとうございました」

 

そう言ってベルの向かった方向 ー ダンジョンの出口に向けて歩みを進めようとした。すると、後ろから声がかかる。

 

「君.....名前は?」

 

何を思ったか剣姫はアッシュに名を訪ねた。問われたからには返さなければならないので、向き直り、名乗る。

 

「アッシュ・ペンドラゴンと言います。まだまだ矮小で無名なヘスティア・ファミリアに所属しています。それでは」

 

今度こそアッシュは、ダンジョンの出口へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこいったんだ、あいつ...」

 

ダンジョンから出てきたのはいいものの、ベルの姿は見えなかった。

どうしようかと思案していると、ふと地面に赤い点が付いているのに気づく。

 

「これって、血か?」

 

そうだとするとこれを追っていけば、もしかしたら.....

そう思い、前に注意しながら後を辿って行った。

 

 

 

 

 

辿った先にあったのはギルドだった。っていうことはエイナさんなら知ってるかな。

ギルドに入りエイナさんの姿を探す。するとエイナさんも俺を探していたのか立ち上がって俺に向かって手を振っていた。

 

「ベルはどこですか?」

 

「今はシャワーを浴びに向かったよ。血まみれだったんだもん」

 

「なんかすいません。.....ダンジョンであったことベルから聞いてますか?」

 

そう聞くと、エイナさんは頬をぷくっと膨らまし、いかにも「私怒ってます」という意思を示しめきた。いつも大人びているエイナさんが珍しく子どもっぽい反応をしたので、そのギャップに不覚にも一瞬ドキリとしてしまった。

 

「なんで怒ってるのか、アッシュ君なら分かるよね?」

 

恐らく、というか絶対に5階層まで降りたことを言っているのだろう。エイナさんの口癖は「冒険者は冒険しちゃいけない」だしな。Lv.2相当のミノタウロスにエンカウントするのは予想だにしないことだが、エイナさんに言わせれば3、4階層で止めておけばそんなことにはならなかった、と言うだろう。本当に剣姫が来てくれて良かった、と改めて思う。

自分に非があることは分かっているが.....俺一人でエイナさんの説教を受けるのは避けたいところだ。ダンジョン講座で学んだことだが、エイナさんのありがたいお話は、とても長いのである。

 

「.....ベルが来てからそれについては話しましょう」

 

その言葉にジト目で見られるが、まあそれもそうだね、と納得してくれた。良かった良かった。

 

 

 

 

 

ベルがシャワー室から戻ってくると、俺たち3人はロビーに設けられた小さな一室に向かい、お互い椅子に着いた。

そしてベルに向かってエイナさんは分かりやすく溜息をつき、血まみれで帰ってきたことに対して注意を促す。ベルもその言葉に頭を縦に猛烈に振る。

 

「それで...アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だって?」

 

「あっ...はい」

 

「戻って来て早々何を聞いてるんだ、お前は」

 

と、直ぐさまツッコミを入れる。ベルはえへへ、と頭を掻く。

 

「ベル君ね、『アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてください!』って言ってギルドに突っ込んで来たんだよ」

 

「.....変態か、お前は」

 

想像してくれ。血まみれで街中を走っていたと思ったら大声で異性の有名人の名前を叫んでいる。どこからどう見ても変態野郎だ。

 

「ううぅ、ごめんなさい.....」

 

ベルも反省しているようだし、話を進める。話題は2階層から5階層に一気に降りたことに移り、こっぴどく叱られる。だが、それは俺たちのことを思って叱ってくれているということは俺もベルも理解しているので、エイナさんに言われたことを二度と忘れないと心に誓った。

 

「あの、それでヴァレンシュタインさんのことを...その趣味とか好きな食べ物とか...そういう情報を.....」

 

その言葉に俺とエイナさんは目を何度か瞬かせた。

 

「もしかしてベル君もヴァレンシュタイン氏のことを好きになっちゃったの?」

 

「ぇぇっと...はい.....」

 

「おい、待てベル。お前はハーレムを求めに来たんじゃなかったのか?」

 

ベルから聞かされた、オラリアに来た理由と合っていない。というか真逆だ。そのことを問いただすと、あはは、と乾いた声を出した。

 

「まあ、でも、しょうがないのかな。同性の私でも彼女には思わず溜息ついちゃうし...」

 

とエイナさんは苦笑して口元に紅茶を運ぶ。

その言葉に対して、俺は思ったことを率直に声に出してしまった。

 

「いやいや、エイナさんも十分綺麗でしょう。あんまりそういうこと言うと他の人から嫉妬されてしまいますよ?」

 

するとエイナさんは一瞬、キョトンとした後、頬を赤く染めた。そして恥ずかしそうながらも嬉しさを含んだような声で返答してくる。

 

「もう...アッシュ君は上手いね」

 

「本心を言ったまでですから」

 

その言葉にさらに顔を赤くする。ストレートで言われるのが慣れていないのだろうか?かという俺も、気恥ずかしいのだが。

 

「アッシュってさらっと言うよね.....」

 

そんなやり取りをしているとベルから何だか羨ましそうに言われてしまった。何がや。

 

「と、とにかく!恋愛相談は受け付けてないから!もう用がないなら帰った帰った!」

 

余程恥ずかしかったのだろうか、エイナさんは無理やり話を終われせようとする。

 

「そんなぁ〜」

 

「ベル君はもう、ヘスティア様に恩恵を授かったんでしょう?他の派閥(ファミリア)であるヴァレンシュタイン氏とお近付きになるのは難しいと思う。想うのは自由だけど、現実は見据えておかなきゃ」

 

その言葉にベルはガックリと項垂れる。しかし、それは仕方のないことだろう。実際問題、違うファミリア同士で婚約すると子どもができた時にどちらに所属させるかで問題が起きる。また、神同士が仲が悪い場合はもっと希望は薄い。神ロキとヘスティア様の仲は知らないが。

話は一通り終えたので、落胆するベルを引っ張り、換金所に向かう。途中で抜け出してきてしまったため、何時もより少ない。だが、お金よりも命の方が大切なので、ミノタウロス相手に生き残れたことを幸せに思うとしよう。

換金を終え出口に向かうと、見送りに来たエイナさんが口を開く。

 

「ベル君」

 

「は、はい」

 

「女性はね、やっぱり強くて頼り甲斐のある男の人に魅力を感じるから...めげずに頑張ってみれば..........ヴァレンシュタイン氏も振り向いてくれるかもよ?」

 

.....本当にエイナさんは良い人だ。現実を見させるようにしたものの、落胆したベルを見計らってしっかりと気遣ってくれる。これは将来良いお嫁さんになりますな。

そう思っていると、言われたベルは顔をみるみるうちに綻ばせ、笑みを咲かせる。そして、勢いよく飛び出した後、振り向きエイナさんに向けて叫ぶ。

 

「エイナさん、大好きー!」

 

「えうっ!?」

 

そうしてベルはファミリアの本拠地に向けて街を駆け抜けて行った。

あれ?また置いてかれた?

 

「.....もう、ベル君ったら」

 

エイナさんは先ほどと同じように顔を真っ赤に染める。

その様子を見て、一つ疑問に思ったことを言う。

 

「エイナさんの好みって、さっき言ったようなのじゃなくて、ちょっと頼りない感じですよね。例えばベルみたいな」

 

「どうしてそう思うの?」

 

と赤さが引き切らない顔で聞いてきた。

 

「エイナさんってお世話好きですよね。こう、人に対してアドバイスをする時のエイナさんの顔って、一番生き生きしてますもの」

 

まあ、と言っても憶測ですが、と言葉を切る。

 

「よくヒトを見てるんだね」

 

「経験ですよ、経験」

 

そう言うとエイナさんに、まだまだキミは若いでしょう、と笑われた。

むぅ、確かにそうだ。見た目が。

 

「さてと、じゃあ俺も行きますね」

 

「うん、気をつけてね。次は無理をしない事!いい?」

 

「了解です」

 

そう答え、俺もギルドを後にしようとした。が、その前にエイナさんに振り向き、アレンジを加えて復唱する。

 

「エイナさん」

 

「何かな?」

 

「大好きです」

 

「へっ!?」

 

「ではまた」

 

直ぐ様踵を返し、失踪する。

「こ、こら!大人をからかうんじゃないの!」そんな声を背に受けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、本当に.....アッシュ君も大人びていると思えば、あんな風にからかってくるんだから.....」

 

そう呟きながら、担当する2人の冒険者が走って行った跡を見つめる。

 

「.....私だって、強くて頼り甲斐のあるヒトも好きだよ.....」

 

その言葉は、風に揉まれ、空へと溶け込んでいった。




本当はベルのスキル発現まで行きたかったのですが、このままだらだら行きそうだったのでここで区切らせてもらいます。

エイナさんとの会話の部分とかが少し余計だと思うかもしれませんが、あの会話はベルが諦めずにいられたは重要な事だと私は思ったので入れさせてもらいました。原作引用しまくってすみません。

何故、干将・莫耶が投影できたのかは今後書きますのでそこんところよろしくお願いします。

ではまた!
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