突然周囲に鐘の音が鳴り響いた
「んなっ!」
「な、何だ!?」
キリトとクラインは驚きの声を上げている
「お兄ちゃん、怖いよ……」
ミルは少し震えていた
「大丈夫、どーせ例のバクに関してのお知らせかなんかだろうから」
俺はそう言ってミルの頭を撫でてあげる。
突然目の前が青い光に包まれた。俺は思わず目をつむってしまった。
光が弱まり目を開けるとそこはさっきの狩場ではなく
広大な石畳の広場だった。そこはもちろん見覚えのある場所だった。
なぜなら、そこは最初のログインの時に必ず転送されるはじまりの街の広場だったからだ。
俺は、はっとして周りを見る、ミルの姿がない。どこ行ったのだろうとキョロキョロしてると後ろから突かれた。
俺が振り向くと、そこには俺の服の裾を掴んだミルがいた。
「ミル、大丈夫だったか?」
「うん、お兄ちゃんの服の裾を掴んでたから大丈夫だったよ」
(昔から甘えん坊なとこはあったけど、少し大げさな気がする……不安のせいかな?)
俺がそう考えながらミルと話しているそばで周りの人々はログアウトできないことに関して騒いでいる。
少し見渡すとキリトとクラインの姿が確認できた。
「はぁ……うるせぇなぁ……もう少し静かに待てないのかよ」
俺が呆れたように文句を言っていると、
「みんな不安なんだよ、永遠にこのゲームから出られなくなるかもしれないんだから」
そう言っているミルの表情は暗かった。
確かにミルの言っていることは分からなくもない、だが、そんなことはありえない、ゲームから出られないなんてことあるはずない、そう思っていた時、ある一人のプレイヤーが叫んだ
「おい!上を見ろ!!」
俺は言われるまま上を見てみるすると空全体に赤いパネルが隙間なく並んでおりそこには
「System Announcement」
と表示されていた。やっとログアウトできると思い肩の力を抜いてミルに微笑みかける。するとミルも安心したのか微笑み返してきた。
だが、その後起こった現象は俺がよそうしていたのとは全く異なることだった
突如赤いパネルの隙間から血液のようなものが流れだし何かを作り出し始めた。そして作り出されたものはこのゲームをやっている人なら誰でも知っているローブ姿の人物だった。
しかし、妙な点がひとつあった、それはローブの中身が空っぽなのである。
周りの人々もそれに気付き不審に思っているようで、
「何で顔がないんだ?」
「あれってGMじゃないの?」
など、いろいろささやいている。
その直後、そのローブの男が喋りだした。
「プレイヤー諸君、私の世界へようこそ」
(私の世界だと……)
確かにローブの男はGMなのだから私の世界へと言ってもおかしくない。しかし、俺は妙な違和感を覚えた。
それはミルも同様らしく不服そうな顔をしている。
「私の名前は茅場晶彦、現時点でこの世界を唯一コントロールすることのできる人間だ」
「なっ!!」
俺はこの男の名前を知っている、いや、むしろ知らなかったらおかしい。何故ならその名前は今、自分がプレイしているSAOの開発ディレクターであり、このゲームをプレイするために使っているナーヴギアの基礎設計者だ。
「君たちプレイヤーは、ログアウトボタンが消失していることに気づいていると思う。そして、多くの人が何らかの不具合だと思っているはずだ。しかし、これは不具合ではなくこのゲームを本来の仕様だ」
「馬鹿な…じゃあ、どうやってログアウトするんだよ……」
俺は頭が混乱してきた
「お兄ちゃん、私達本当に帰れないの?」
ミルはもう泣きそうになっている
「いや、そんなことはないはず、あの茅場のことだ何か方法を用意しているはずだ」
俺は少しでもミルが落ち着けるようにフォローをする。
「君たちがこのゲームから抜け出す方法はただひとつ、このアインクラットを100層まで制覇するしかない」
(ふざけんな……βのときじゃ俺とキリト意外ろくにクリアできなかったんだぞ)
「そして、このゲームを行うにあたって君たちには1つ忠告をしておこう。それはこの世界でライフポイントがゼロになるとこの世界と現実世界から永久に退場することになる」
彼の言っていることは言い方を変えているが、2つの世界から永久に退場する、つまり『死』ということなのだ。
多くの人が唖然し固まっている中茅場は演説を続ける
「まぁ、信じがたいことだろう、そこでこの状況をわかってもらうために君たちのアイテムストレージにプレゼントが用意してある、開いてみてくれ」
俺然り、ほとんどのプレイヤーが音を鳴らしメニューウインドを開きアイテム欄を選択、するとそこにはあるアイテムが増えていた。
『手鏡』
(なんでこんなもの……)
そう思いながらもオブジェクト化してみる。どっからどう見ても普通の手鏡だった。不思議そうに眺めていると
隣にいたミルが急に光に包まれた
「きゃっ!!」
ミルも思わず悲鳴を上げている
「おい、ミル!!」
その瞬間俺も光に包まれる。
すぐに光は弱くなり視界が戻ったしかし、その時に目の前にいたのはミルの顔ではなく美咲の顔だった。
「「どうゆうこと!?」」
見事に俺とミルはハモった。そして周りの人が同じように騒いでいるのを見て、ひとまず手鏡を見てみた。そこに写ったのは俺が作り出したアバターの顔ではなく俺の現実の顔だった。
「お兄ちゃん、なんで私達の顔現実のまんまなの?」
「スキャンだ……ナーヴギアは顔全体を覆っているから骨格などの情報を得て本人の顔を作り出せる。でも、どうして背丈まで」
「そうだ、ナーヴギア装着の時にあちこち体を触らされたよ?それじゃないの?」
確かに、ミルの言うとおりその作業をさせられた。
「でも、わざわざ現実の姿にする必要あるの?」
ミルは不安を隠せない様子で俺に聞いてくる
「現実……やつはこのゲームが現実と分からせるためにこんなことをしたんだ!」
「や、やだよ……私死にたくない、いつものように過ごしたいよぉ〜~!!」
ミルは今まで溜まっていた不安が爆発したのか泣きだしてしまった。
「ミル!落ち着け!!不安なのは分かるが冷静さを失っちゃいけない、とりあえずキリト達と合流するぞ」
俺はミルを泣き止ませ手を引いてキリトたちの元へと向かった。服装が変わってないためすぐに判断できた。
「キリト!俺だ、ゼノンだ」
俺がそう言うとキリトはすぐに分かってくれた。
その後、いろいろ話し合った結果次の街へ向かうという案出た。しかし、クラインは大切な友達をおいてけねぇと言って離れることになった。
「キリト、今日はサンキューな、俺はやっぱクリア以前にミルのことが大事だ、ひとまずここで別れよう。何かあったら連絡してくれ」
俺はそう言って、キリトとも別れた。あいつなら死なねぇと信じて。
ひとまず、ミルが落ち着けるようにはじまりの街で宿をとった。
寝るときになるとミルが俺の布団に入ってきた
「ねぇ、私…死なないよね?」
完全に見るは怯えていた。俺はそんなミルをギュッと抱きしめ
「当たり前だ、ミルは俺の妹なんだから絶対に強い、だから死ぬわけがない。それに、何があってもお兄ちゃんが守ってやるから安心しろ!二人で一緒に帰ろうな」
俺がそう言うと
「うん!」
とミルはにっこり笑った。そのままミルは寝てしまった。ミルの寝顔につられ俺もすぐに眠りについた。
デスゲームが始まるにあたって怯えるミル。それを支えていくゼノン。この二人の展開をお楽しみに