ウルトラマンゼロ物語(ストーリー) in RED ZONE STAGE   作:剣音レツ

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 大変長らくお待たせしました。

 今回は、本作のテーマでもある『心の闇』を重点に置き、また、現代社会の事も少し扱った重い内容となっております。

 また、戦闘相手から、戦闘シーンには少しマニアックなネタを入れております(笑)


第11話「妄想の暴走」

 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

とある宇宙空間の小惑星。そこではウルトラマンパワード対ギンガダークの戦いが始まっていた。

 

 お互い土煙を上げながら駆け寄った後、ギンガダークは先手とばかりに走りながら右前蹴りを放つがパワードは即座に側転してすれ違うようにかわす。その後パワードはすかさず右横蹴りを放ち、ギンガダークは背を向けたまま左肘でそれを防ぎ、振り向き様に横振りの右拳を繰り出すがパワードはそれを身体を反らせてかわす。

 

 パワードは両手でギンガダークの肩を掴むがギンガダークは即座に両手でそれを跳ね除け、左右フックを繰り出すがパワードはそれを左右斜めにしゃがんでかわし、左脇腹に右拳を決める。ギンガダークは少し怯みながらもその拳を掴み上へ上げた後、腹部に右膝蹴りを打とうとし、パワードは即座にそれを左手で受け止めるが、そのまま繰り出して来た跳躍しての左前蹴りを腹部に喰らい吹っ飛ぶ。パワードは吹っ飛びながらも宙返りをして体勢を立て直し着地する。

 

 「ギンガ!目を覚ませ!ウルトラ戦士の心を忘れたのか⁉」

 

 「……つまりそれは俺の仲間を殺す力か……なら、捨てて正解だ……!」

 

 ギンガダーク(闇ヒカル)は、本来のヒカルには考えられない程の低い声で言った後、再びパワードに飛び掛かる。もはやウルトラマンテラの策略で、自身の仲間を守り、それ以外の者は全て抹殺する事にしか頭になくなっているのだろうか………。

 

 ギンガダークは高速で飛び掛かろうとするが、パワードはそのスピードを利用してギンガダークの両肩を掴み、巴投げで投げ飛ばす。ギンガダークは空中で回転して着地する。

 

 ギンガダークは振り向き様に右手を突き出して『ギンガダークサンダーボルト』を放つがパワードは滑り込むように後ろ向きに倒れる事でそれを避け、そのまま『メガスペシウム光線』を放つが、ギンガダークはそれを回転しながら右にそれて避け『ギンガダークファイヤーボール』を放つがパワードは空高く跳んでそれをかわす。

 

 パワードはギンガダークの目前に着地して、両肩を掴んで抑え込もうとする。

 

 「ギンガダークスラッシュ‼」

 

 ギンガダークは、至近距離からパワードにギンガダークスラッシュをぶち込み、パワードは光線に押され、岩山をいくつか破壊しながら吹っ飛ぶ。

 

 パワードは土煙から上空に飛んで現れ、『メガスペシウム光線』を放ち、ギンガダークも即座に『ギンガダークロスシュート』を放つ。だが、お互い光線は直撃せず右肩を掠めるのみで済む。

 

 パワードのカラータイマーは赤く点滅を始める。

 

「時間が無い……これで決める!」

 

 パワードは上空から急降下しながら渾身のキックを放ち、ギンガダークも『ギンガダークスパークランス』を持って飛び掛かり迎え撃とうとする。

 

 両者は空中で相打ちで激突し、大きな爆発が起こる………。

 

 

 

 ギンガダークは爆風の中から現れ着地し、上空を見上げる。だが、そこにパワードの姿は見当たらなかった。ギンガダークはパワードを倒したと判断したのか、その場から何処へ飛び去って行った………。

 

 パワードとギンガダークの戦いを宇宙船『テライズグレート』から見ていた幹部宇宙人たち。その凄まじい光景は、誰もが見入っていた。

 

 「ったく、相変わらずフリーダムな奴だ。」

 

 ギンガダークを目の敵にしているナックル星人ゲドーは、冷たく言う。

 

 「しかし、ウルトラ戦士が味方同士で潰し合うのは見ていて気持ちいい物ですなあ。」

 

 「!ガスト、お前良い事言うじゃねーか!」

 

 ブラック指令ガストの言葉に、(前回ゼロにボコボコにされ絆創膏だらけの)メフィラス星人キョウは何かひらめいたようだ。

 

 「あの小僧と小娘達も、味方同士で争わせれば、絆が途切れ、ウルトラ戦士達も思うように戦えなくなるんじゃないのか?(イテテテテテ………)」

 

 バスコ「なるほど。それは面白い。早速実行するぞ。」

 

 「……と言っても、この作戦にうってつけの奴がいないのですが……」

 

 ガストの言葉に全員「はッ」と何かに気付く。実は、このテラ連合にはもう一人幹部宇宙人がいた。『凶悪宇宙ザラブ星人ブラコ』である。過去に『ウルトラマン』と戦った彼の同族は、ウルトラマンと人類の信頼を崩すために変身能力でウルトラマンに化けて(名:にせウルトラマン)町を破壊したことがある。ブラコもまた、ザラブ族特有の変身能力を得意とする幹部宇宙人である。

 

 幹部宇宙人達は、ブラコがいない事に困る。

 

 バスコ「そういやああいつ、一昨日から「(少し真似する様に)朝の散歩に行ってくるブラ~」って行ってったきり帰って来てねーな…ったく、どこで何をしてんだあいつは…」

 

 「え~い!あんな『タマゴ頭の焼肉ボディ野郎』の事なんか放っておけ!別の作戦だ別の作戦!」

 

 ナックル星人ゲドーはどうやらまだこないだの作戦失敗の事をまだ引きずっているみたいだ(第4話参照)。あれ以来、彼はブラコとは険悪になっている。

 

因みにブラコは、語尾に「ブラ」を付ける喋り方が特徴である。

 

 「ところでさ~…俺今めっちゃ面白そうな人見つけちゃった~」

 

 突然、ブラック指令ガストが陽気な口調で口を挟む。

 

 キョウ「お、面白そうな人と言いますと?」

 

 「ふふふ…今回は俺に任せろ。まあ見てなって。」

 

 ガストは何かを企んでいる様に笑う。一体何が思いついたのか………?

 

 

 キョウの策略を破って翌日、この日の竜野櫂は昼からグラウンドの整理をしていた。そしてP.M.03:00頃、新田真美と眞鍋海羽は櫂を迎えに行っている最中である。

 

 「櫂君って、何でもそつなくこなすから良いよね~。」

 

 「でも、最近それ故に忙しいから、私はサポートしているの。」

 

 海羽は本音を漏らすように櫂を羨ましがる。

 

 「ねえ、櫂君って昔からあんなにパーフェクトでモテモテだったの?」

 

 海羽は、櫂とは幼馴染である真美に櫂の事を聞く。その海羽の質問に真美は少し困惑する。

 

 「……ううん。そうじゃなかったの。」

 

 真美は重い口を開いて言う。海羽は少し顔が変わり「え?」と聞き返す。

 

 「ねえ、今からいう事はあまり広めてほしくないの。約束出来る?」

 

 「…う…うん。」

 

 真美は少しうつむいて話し始めた。

 

 「……実は櫂君、小学生の時はとても気弱で軟弱な男子だったの……」

 

 真美の言い出しに海羽は目を見開いて驚く。真美は話を続ける。

 

 「だから、しょっちゅういじめに遭っててね、その度に泣いてたわ。……私はその度に櫂君を慰めてたんだけどね。」

 

 海羽は、思いもしなかった衝撃的な真実に思わず驚きながら聞き入っている。

 

 更に話を進めていくと、櫂はそんな小学生時代に両親を怪獣災害で亡くしており、中学生時代まで叔母と過ごし、高校時代から一人暮らしを始めていたと言う。また、前記のいじめや両親を亡くしたことから、櫂は「自分や他のモノすべてを守るため、もう二度と何も失わないために強くなる」と強く誓い、小学校時代から想像できない程の努力をしてきた故に、今の様な超絶的な才能を手に入れたという。………最も、同時に性格も変わってしまったわけなのだが………。

 

 櫂に勝手なイメージを持っていた海羽は、櫂の壮絶な過去を知り、少し複雑な気分になる。

 

 「……櫂君、とっても努力してたんだ……何か泣けてきたわ。」

 

 「正直、いつの間にか櫂君が万能になった時は驚いたけどね。でも、今ではとっても頼りになるわ。よしよし…」

 

 思わず涙を流す海羽に真美は優しく頭を撫でながら笑顔で語りかける。

 

 「櫂君、待ってて。今から私と真美ちゃんが手厚く迎えるからね!」

 

 海羽が再び気合を入れたその時、二人は木陰でうずくまってすすり泣きをしている高校生ぐらいの少女を見つけ、歩み寄る。

 

 「どうしたの?何かあったの?」

 

 真美は少女に優しく話しかけ、少女は少し顔を上げる。

 

 「暑いわね……お水飲む?」

 

 真美は鞄から水筒を出して少女に手渡す。水筒を受け取った少女は一口水を飲み、なんとか泣き止む。もっとも、この水筒は櫂のために用意してたものなのだが(笑)

 

 「私は眞鍋海羽。」

 

 「そして私は新田真美。覚えてね。」

 

 「ねえ、お姉ちゃんたちで良かったら言ってごらん。」

 

 「力になるよ。」

 

 海羽と真美の言葉に少女は重い口を開けて話し始める。

 

 「私は早苗………『小野早苗』。」

 

 海羽「へえ~、早苗ちゃんって言うんだ。良い名前だね。」

 

 「大好きな人を……助けたいんです。」

 

 「え?」

 

 真美達は少女の言葉に疑問を感じる………。

 

 

 

 一方、同じ頃櫂は、汗流しグラウンドの整理をしながらゼロに自分の過去を話していた。

 

 「なるほど……お前にそんな過去があったとはな。」

 

 ゼロは驚きを隠せない状態だ。

 

 「俺は今までいろんな青年と一体化してきたが、お前が一番刺激を感じるかもな。」

 

 「まあな。でも、おかげでこんな風に強くなれたから、悔いはないっす!」

 

 「フッ、まあ、これからもよろしくな。苦労して手に入れたその力を、これからも地球のために使っていこうぜ。」

 

 「ああ。一緒に頑張ろうぜゼロ!」

 

 櫂とゼロが再び決意を固めたその時、

 

 「へえ~……お兄さん、とってもすごいんだ………。」

 

 突然話しかける声が聞こえ、櫂は振り向く。そこには高校生ぐらいの一人の少年が少し険しい顔をして立っていた。

 

 「誰だい?僕。」

 

 「僕じゃないです。俺は健二…『稲葉健二』です。」

 

 少年がいきなり話しかけてきたことに困惑しながらも櫂は話す。

 

 「俺に何か様かな?」

 

 「いいえ。何もないです。ただ、俺はあなたみたいな何でもできて信頼される人が羨ましま~と思いまして、思わず話しかけちゃいました。すいません。」

 

 「あ…あははは…いきなりだが、ありがとな。まあ、おかげでこの通りとっても忙しくて参っちゃうけどな。」

 

 櫂は困惑しながらも何とか笑って答える。ひっそり不敵な笑みを浮かべながら………。

 

 「忙しい……ですか……それほど何でもできるって事ですね………実に羨ましいですよ………憎いほど………」

 

 少年は少しドスの利いた声で小声で言う。

 

 「ん?どうした?健二。」

 

 「いや、何でもないです。忙しい中すいません。では、頑張ってください。」

 

 そう言うと少年は手を振って去って行った。いきなりの事だったので櫂もゼロも少し動揺している。

 

 「……何だったんだ?あの少年は……」

 

 「さあな。でも、俺のこと羨ましいって、なんでいきなり言ってくるんだろう?………ま、いいか。そろそろ真美達が迎えに来る頃だろうし、もうひと踏ん張り頑張るぞー」

 

 櫂は再び作業に取り掛かり始める。

 

 

 

 いきなり櫂に話しかけ、別れたばかりの健二はと言うと、一人になった瞬間、表情が一気に険しく変貌する。そして、怒りで右拳を思いっきりビルの壁に叩きつける。

 

 「……あんな奴に、俺の気持ちなんて分かるわけないんだ………!チクショウ‼」

 

 何やら怒り始め、壁を何度も拳で叩き始める。一体彼に何が起こっているのか?

 

 と、その時、

 

 「……いい……いいマイナスエネルギーだねえ。」

 

 突然陽気に話しかける声が聞こえ健二は振り向く。そこには何やらイケメン顔だが表情は何だか恐怖を感じるもので、少し逆立った茶髪にダークなスーツを着た青年が立っている。

 

 「だ……誰だよ?お前。」

 

 「俺はあなたを助けに来たのさ。お前のその気持ち、俺もよ~く分かるからね。刺激だよ刺激。」

 

 「…何言ってんだよ?」

 

 「お前のそのマイナスエネルギー………使わせてもらうぜ!」

 

 そういうと青年は、右手の平から何やら黒いエネルギーを溢れさせている………。

 

 

 

 一方、早苗から訳を聞いている真美と海羽はと言うと、

 

 「………そんな……」

 

 「そう言う事だったなんて……」

 

 二人は何やら驚きを隠せないでいる。

 

 早苗の話によると、彼女は健二とは幼馴染で仲が良く、高校まで同じだったと言う。だが、健二は劣等性で早苗は優等生であるように二人の学力には大きな差があり、更には彼女たちの高校は、女子の方が成績優秀な人が多い事から、男子の立場が段々と弱くなり、やがてその高校は、「女性優勢」の高校となってしまったと言う。(つまり、どんな行事をする際も女子が中心で、男子は女子の言う事を必ず聞かなければいけない。仮に逆らえば単位を落とされる。)正に「男女平等」をポリシーとする麟慶大学からしたら信じられない学園である。

 

 その高校の中でもそこそこ成績が良く、男としてのプライドを持っていた健二は、そんな環境になってしまった事により、勉強が捗らず成績は段々と下がり、ストレスが溜まっていく一方であった。

 

 さらに、そのルールが出来たことと、いじめっ子の女子が増えてきたことで、女子達は調子に乗り、男子の数名が女子からのいじめなどを受けるようにもなったと言う。健二もその一人であった。

 

 女子の中の数少ない良心の早苗はそんな事を知ってはいたが何もしてやれず、やがて健二は高校を辞め、家に引きこもるようになってしまったと言う………。

 

 「私が無力だから……何もしてやれなくて………ケンちゃんは学校に来なくなってしまった………だから、私、彼を助けたいんです。でも、どうすればいいか分からなくて………」

 

 話し終えた早苗は顔を上げる。すると、真美はいつの間にか涙を数筋流していた。健二と早苗の事を聞いて胸を打たれたのだろうか。因みに海羽は、同情の余り木に寄り添って泣いている。

 

 「私、ダメなの………可愛そうな人を見ていると、放っておけないの。力になりたい。」

 

 真美は、涙を拭きながら立ち上がり、少し笑顔で力になりたいことを伝える。

 

 「本当ですか?ありがとうございます。」

 

 「私たちに任せて。早苗ちゃん。」

 

早苗は元気を取り戻し、少し笑顔になる。真美も笑顔を返し、海羽も泣き止み、笑顔でサムズアップをする。

 

 「とりあえず、まずは健二君を見つけないとね。」

 

 真美達は健二を探そうとした。その時、

 

 「探す必要はないし、助ける必要も無いよ。」

 

 突然声がしたので三人は振り向く。そこには健二が立っていた。

 

 「!ケンちゃん?」

 

 早苗は健二の思わぬ言葉に動揺する。

 

 「俺はもう、誰からも助けてもらう必要はない。」

 

 「そんな事言わないで、ほら、このお姉ちゃん達が力になってくれるよ。」

 

 「……力なら、もうすでに手に入れてるよ。」

 

 そう言うと健二はポケットから何かを取り出す。それは、『ウルトラセブン』の人形だった。だが、それは何やら黒いオーラの様な物を放っている。

 

 健二はウルトラセブンが好きで、お守りとして人形を常に持ち歩いており、何か嫌なことがあると、それを見つめてセブンの活躍を思い出し元気を出していたと言う。そんなセブンの人形がいつもと違う事に早苗は気づき動揺する。

 

 「?セブンの人形が何かおかしい……ケンちゃん、一体何があったの?」

 

 「力を貰ったのさ。ある黒い格好の茶髪でイケメンの青年にね。」

 

 真美達も不安な表情で健二と早苗のやり取りを見つめる。

 

 「何言ってるの?もう苦しむことは無いのよ。ここにあなたが苦しみから解放される様に協力してくれる人もいるから。」

 

 「……そんなことをしたところで、変わるのか⁉男が虐げられる環境が!」

 

 早苗は必死に声を掛けるが、健二の言葉に思いとどまる。

 

 「俺はもううんざりなんだよ……男が女に屈する環境が……これまで俺は、どんなに男が軽蔑されても、女子の後に言われても、我慢してきた………死ぬかと思ったんだぞ。だが、環境は一向に変わろうともしない………!俺はただ、仲良くしたいだけなのに………「男子と女子」という順番じゃなきゃ、満たされないのに‼」

 

 健二は少し男としてのプライドとしての本音を吐きながらも自分の苦しみを訴える。早苗は俯き始める。健二は話を続ける。

 

 「……だから俺はこの力で変えるんだよ……まずは男が一方的に軽蔑される学校をぶっ壊し、弱い男が増えつつあるこの世の中を……変えてやるんだーー‼」

 

 「なるほど、そういう事か。」

 

 突然声がした方に健二は振り向く。そこには、グラウンドの整理を終え、後を付けて来た櫂だった。

 

 「!櫂君。」

 

 真美達は驚きながらも少し安心する。

 

 「お…お前は……!」

 

 「お前の気持ちは良く分かる。俺も昔は、酷いいじめられっ子だったからな。」

 

 櫂の言葉に真美達は「はっ」と言い、健二と早苗も少し驚く。

 

 「だがな、俺は努力を続けてこれほどまでに成長した……健二、お前も努力すれば、思いっきり変われるんじゃないのか?」

 

 健二はいらだつような表情で少し俯く。

 

 「世の中男女平等だぞ。」

 

 だが、その言葉を聞いた瞬間、健二は突然顔を上げ、櫂を突き飛ばす!

 

 「平等って何さ⁉だからって、女をひいきしてもいいってのか‼」

 

 櫂は少し動揺し、早苗は口を押えて驚く。

 

 「その平等の所為で、男の立場がどれだけ弱くなりつつあると思うんだ‼………変えてやる……この力で、再び男の強さを見せつけ、世の中を変えてやるーーー‼」

 

 健二は興奮のあまり、号泣しながら叫び、怪しげなオーラを放つセブンの人形を揚げる。

 

 「⁉あれは、親父の人形⁉」

 

 ゼロは、健二が自身の父親(ウルトラセブン)の人形を持っていることに驚く。

 

 セブンの人形からは、黒っぽい青のエネルギーがあふれ、健二はそれに包まれて巨大化する。そして、なんと「ウルトラセブン」の姿となった!

 

 驚愕するゼロと櫂達。

 

 早苗「そんな……」

 

 櫂と真美、海羽は戸惑うようにセブンを見上げ、早苗は膝を付き愕然とする。

 

 「……よりによって親父の姿にかよ……。」

 

 ゼロは偽物とはいえ自身の父親の姿になった健二に動揺する。

 

 「どうだ早苗!俺はこの様に誰にも屈しない力を手に入れた!この力で、俺は自分が満たされる世界を作るんだーーー‼」

 

 セブンの姿になった健二は荒れ狂う野獣が雄たけびを上げる様に上を向いて叫んだ後、暴れようとする。

 

 「あれは……親父の様で親父じゃねえ…あの少年の邪念がマイナスエネルギーの影響でセブンの人形と一体化して変身した……いわばあれは、『妄想ウルトラセブン』だ!」

 

 ゼロは健二が変身したセブンが『妄想ウルトラセブン』だと言う事に気付く。妄想ウルトラセブンはかつて、暴走族によって重傷を負わされたサッカー少年の邪念が、彼が持っていたセブンの人形に乗り移って巨大化する事で出現したことがある。その時は当時地球で活躍していた『ウルトラマン80』と戦っている。

 

 今回は、虐げられた少年の邪念が実体化したものと言えよう。

 

 「させない……苦しい気持ちはわかるけど、そのために他の人を傷つける訳には……」

 

 海羽は何処か悲しげな表情で俯きながら『ハートフルグラス』を取り出しゆっくり静かに前に突き出す。

 

 「だから、今はあなたを止める!」

 

 海羽は一回転してハートフルグラスを目に当て、光に包まれ巨大化し『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと変身した。

 

霞ヶ崎のとある広大な平地で、戦いは始まる。ソルは妄想ウルトラセブンに駆け寄り、腕にしがみ付く。彼を説得しようとしているのか。

 

 だが、妄想ウルトラセブンはそれを振りほどき、容赦なくパンチ、キックなどで攻撃を仕掛け、ソルはそれを必死で受け止め続ける。

 

 櫂は怒り・悲しみ・憎しみの赴くままに攻撃する妄想セブンと防戦一方のソルを見て、変身をためらい、ゼロもまた、偽物とはいえ自身の父親と戦う事に抵抗があるのか、ゼロアイを出す事をためらう………。

 

 早苗は悲しさで膝を付いて泣き始め、真美は泣いている彼女の背中を摩っている………。

 

 戦いは激しく土煙が上がる。ソルは防戦一方から、容赦ない攻撃に徐々に押され始め、やがて顔面、腹部にパンチを喰らう、脇腹に蹴りを喰らうなど一方的に攻撃を受け始める。

 

 苦戦するソルを見て櫂の焦りは募り始める。やはり戦うしかないのだろうか………。

 

 ソルは右前蹴りを胸部に喰らい地面に仰向けに倒れる。ダメージにより横たわり身もだえるソルに妄想セブンは容赦なく右腕を踏みつけ、続けて腹部を踏みつける。

 

 「もうやめて!争ったって何の解決にもならないよ!」

 

 「うるせー‼女であるお前に、虐げられた男の気持ちが分かるのか⁉引っ込んでろ‼」

 

 ソルの必死の呼びかけも空しく、妄想セブンはソルの腹部を踏み続ける。

 

 

 その時、妄想セブンの言葉を聞いた櫂の目つきが変わった……そして、UBの付いた左腕をゆっくりと胸前で折り曲げる。すると、UBから『ウルトラゼロアイ』が現れる。櫂もゼロも、ついに戦う事を決心したのだろうか………。

 

 「レッツ……ゼロチェンジ……!」

 

 櫂はいつもより静かに掛け声を言い、ゼロアイは櫂の目にくっ付く。櫂は光の中でゼロの姿に変わり巨大化する。

 

 妄想セブンもゼロの登場に気付きソルへの攻撃を止める。

 

 「ゼロ……お前も俺の邪魔するのか………なら、倒す‼」

 

 「やってみろよ……!お前なんかに負けねーよ。」

 

 「ほざけえええぇぇぇ‼」

 

 妄想セブンは逆上してゼロに駆け寄り始め、ゼロも駆け寄る。

 

 まずはお互い駆け寄りながら繰り出す右跳び蹴りがすれ違う。そして、ゼロの右回し蹴りを妄想セブンはしゃがんでかわし、一回転して右拳を繰り出すがしゃがんでかわされる。

 

 その隙にゼロは身体を起こしながら右アッパーを顔面に決める。妄想セブンは怯まず右横蹴りを繰り出すがゼロはそれを両腕を胸前で折り曲げて防ぎ、その後ゼロは再び右アッパーを繰り出すが妄想セブンはそれを顔を左に反らせて防ぎ、お返しとばかりに右横振りの右拳を放つがゼロはそれをしゃがんでかわし、その後お互いほぼ同時に右横蹴りを繰り出すが相打ちになりお互い後退する。

 

戦っていくうちに、健二と早苗の心に反応するかのようにさっきまで晴れていた空が一気に雨雲に覆われ雨が降り始める。夏の夕立であろう。

 

 雷雨が降り注ぐ平地で戦う二人は次第に泥まみれになっていく。

 

 二人は駆け寄りながらお互い右拳を繰り出すがまたしても相打ちになる。妄想セブンは抱き付くようにゼロの胴体にしがみ付き、そのまま押し倒す。そして、ゼロを掴んで起き上らせ、胸部に右膝蹴りを打った後、アウトローに右前蹴りを腹部に打ち込んで転倒させる。

 

 妄想セブンは仰向けに横たわるゼロをあざ笑うようにゆっくりと歩み寄り、倒れるゼロの腹部に蹴りを入れ始める。ゼロが苦しむのを楽しむかのように連続で蹴り続ける。三発、四発、五発と蹴りを入れ、右肩を踏みつけグリグリした後、さらに憎しみを込める様に二、三発と乱暴気味に腹部を踏みつける。その姿はまるでヤクザの様だ。

 

 二人の体は既に泥まみれになっており、文字通りの泥試合が続く。妄想セブンはゼロを掴んで起き上らせると、顔面に右膝蹴りを打った後、しがみ付くように前屈みのゼロの胴体を掴み、そのまま後ろに倒れこむように叩きつける。

 

両者の体はもはや原型を留めない程に泥まみれになっており、激しい戦いにより泥が飛び散る。ソルは雨に打たれながら二人の戦いを見つめ、真美達も雨宿りをしながら一方的にボコられていくゼロを見守る………。

 

 はて、歴戦の勇士であるゼロがなぜこうも押されているのか………?

 

 「………なぜだ……なぜ攻撃してこない⁉」

 

 妄想セブン(健二)もさすがに違和感を感じ始める。だがゼロは立って身構えたままである。

 

 「……答えろよ………答えろー‼」

 

 妄想セブンは逆上し、腕をL字に組んで『ワイドショット』を放つ。光線がモロ胸部に命中したゼロは吹っ飛び、仰向けに倒れる。更に妄想セブンはゼロに馬乗りになり、顔面の左側面を殴り始める。

 

 「答えろ‼答えろ‼ お前は俺に同情してんのか⁉ 答えろ‼答えろ‼ ふざけんな‼エリートなんかに俺の気持ちが分かるもんか‼ 答えろ‼……」

 

 ゼロはただ殴られ続ける。妄想セブンはゼロを数回殴った後、倒れるゼロの横腹を右足で蹴り、転がした。

 

一向に攻撃せず、一方的にやられ続けるゼロを見て居ても立っても居られなくなったのか、早苗は雨宿りの場から飛び出し叫び始める。

 

 「櫂さん!どうして反撃しないのですか⁉やられちゃいますよ~‼」

 

 その時、ゼロは泥まみれの身体をゆっくり起き上らせながら櫂の意思で早苗に語り掛ける。

 

 「……早苗、お前に聞きたいことがある。」

 

 「……え?」

 

 「お前には健二と俺、どっちが苦しんでると思うんだ?」

 

 櫂の思わぬ言葉に早苗はふと困惑した後、思い止まる。ゼロはなおも語り掛ける。

 

 「さあどうなんだ?殴られた俺と、殴った健二。傷ついてるのはどっちだ⁉」

 

 そう、竜野櫂は、健二や早苗の気持ちが痛いほど分かるが故に、そして、早苗に本当に傷ついてるのは健二だと気づかせるために、わざとやられ続けてたのだ。

 

ゼロの言葉を受けた早苗は妄想セブンの姿の健二をじっと見つめる。すると、「はっ」と何かに気付く。

 

 「攻撃しながら………泣いてた?」

 

 早苗はようやく気付いた。健二の変身しての暴走は、憎しみだけではなく、悲しみでもあったと言う事を。そして、粗い呼吸をする妄想セブンを見上げながら、彼にに近づくように歩き始める。

 

 「ケンちゃん……ごめんね。……私、何もしてやれなくて……。」

 

 妄想セブンは早苗が語り掛けているのに気づく。

 

 「私はまわりの空気に押されて過ごして来た……。でも、今度こそあなたを救いたいの……。友達として、あなたを助けたい!」

 

 ゼロとソル、そして真美は見守り続ける。

 

 「これからは………あなたのためなら何でもする……。あなたを満たすためにも努力するから……。だからお願い。元に戻って!」

 

 “ドクンッ”

 

 早苗の声が、フェードアウトする様に妄想セブンの中の健二に響く。そして、妄想セブンは葛藤を始めたのか、苦しむように頭を抱え始める。

 

 ゼロ「よし、相手の力が緩み始めた。今なら奴を倒せるぞ!」

 

 櫂「……ああ。」

 

 ゼロはゆっくりと呼吸を整えながら頭部からゼロスラッガーを取り出し構える。

 

 「切り裂いてやるぜ……お前の闇を!」

 

 ゼロは体中の泥を散らしながら苦しむ妄想セブンに駆け寄る。そして、すれ違い様にまずは右手のゼロスラッガーで腹部を切り裂き、その後一回転して左手のゼロスラッガーで腹部を斬りつける。妄想セブンの腹部には「✖字」の傷が出来た。

 

 妄想セブンは数秒苦しんだ後動きが止まり、仰向けに倒れて爆発した。

 

 爆発を背に、ゼロはゼロスラッガーを頭部に収め、泥まみれの体で凛々しくもどこか虚しさを感じさせるかのように立っていた………。

 

 

 

 

 ゼロが変身を解いて櫂に戻ったと同時に夕立が止み、日が差し始める。櫂達は急いで妄想セブンの爆発した方へ駆け寄る。その場には、健二が横たわっていた。

 

 「……!ケンちゃん!」

 

 早苗は真っ先に駆け寄り、必死に何度も呼びかけるが、健二は一向に反応しようとしない……。早苗は、健二が死んでしまったのではないかと泣きそうになる。

 

 櫂「きっと、闇の力で変身した事での負担やその闇から解放された事での衝撃や疲れで眠っているだけじゃないのかな。」

 

 櫂は早苗の肩に手を置き、話しかける。

 

 真美「そうね。病院に連れて行った方がいいかもね。」

 

 真美は、気落ちする早苗にしゃがみ込んで話しかける。

 

 海羽「さあ、行こう。」

 

 海羽は笑顔で早苗に手を差し伸べる。早苗は少し硬めの笑顔で手を握り立ち上がる。

 

 四人は、健二を病院へ運び始めた………。

 

 

 

[エピローグ]

 

『テライズグレート』では、ブラック指令ガストが、妄想セブンが倒されるところを見ていた。

 

 「あーあ、やられちまったよ………。マイナスエネルギーはある程度集まったが、これじゃあ俺の作戦を実行するには少なすぎるなあ……」

 

 ガストは右手の水晶を上に揚げる。すると、水晶が光った瞬間、それに応えるかのように電球の様な丸く透明な体に下部からは無数の赤い触手が無数に生えていて一見クラゲの様にも見える生物『円盤生物シルバーブルーメ』が現れる!

 

 「シルバーブルーメ、ちょっくら行ってこい!」

 

 シルバーブルーメは、ガストの命令に反応し、地球向けて飛び始めた………。

 

 (ED:赤く熱い鼓動)




 今回の戦闘シーン、『ウルトラスーパーファイト』をご覧になった人なら気付いたと思います(笑)

 次回、新たなゲストウルトラマンが登場します!

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