ウルトラマンゼロ物語(ストーリー) in RED ZONE STAGE   作:剣音レツ

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 今回はかなりのシュールな異色回です。


 始めに皆さん、『ウルトラマンA』に登場した超獣、『獏超獣バクタリ』をご存知でしょうか?


 今回はそのバクタリが主役の番外編です!

 どういう意味かは本編を見れば分かりますよ。多分(笑)


 一方で櫂君と海羽ちゃんは、今回は脇役程度の登場です(笑)

 時系列はあえて言いませんが、櫂君に関してはまだゼロに本性を露わにしていない頃です。


 まあとりあえず楽しんでいただければと思います。

 強いて言うなら、雰囲気は『ウルトラマンギンガS』の第11話、もしくは『ウルトラゾーン』に近いです。


 また、サブタイトルも一つ隠してあります。

 あと、有名アニメの小ネタもいくつかあります(笑)


 それでは、どうぞ!


番外編「バクタリ少年の夢」

 ………………これは、心の闇を利用されて超獣の姿になってしまった軟弱な少年と、一人の女性の交流を描いた物語である………………。

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 霞ヶ崎にあるとある三つの土管がある空き地。

 

 

 今日も、いつもの様に昼間は遊ぶ児童たちで賑やかになっていた。

 

 

 

 そんな最中に、突如乱入してきたガキ大将と思われる一人の男児が、男女関係なく他の生徒からお菓子を無理矢理横取りしているところだった。

 

 お菓子を横取りされたとある女児はガキ大将に「返してよ。」と訴えるが、体格の違いや風貌の怖さで強気になれない。

 

 

 この空き地を『多々良島』とすれば、ガキ大将の男児は『どくろ怪獣レッドキング』みたいな感じなのであろう。

 

 

 すると、女児はたまたま近くにいて、素通りしようとしたとある男児に助けを求める。

 

 

 「ねえ、義雄君も何か言ってよ!」

 

 義雄「え?………いやぁ………ちょっと………………。」

 

 

 突然無茶振りされた、どこか気弱そうな男児は動揺する。そして、何も言い返すことが出来なかった。

 

 

 男児・義雄は何処にでもいそうな霞ヶ崎で暮らす気弱な小学6年生。

 

 いつも軟弱な彼も、日々ガキ大将やその他の権力が強い児童から虐められており、先生に叱られることも少なくない事から、あまり楽しくない学校生活を送っていた。

 

 

 更に、今朝おねしょをしてしまって、それにより新たな弱みを握られたばかりである。

 

 因みに今日の彼のおねしょはちょっと変わった形をしており、その形は、何処か怪獣のようなフォルムであった………。

 

 両親は結婚して以来の二人きりの旅行に出掛けている、所謂今は一時的な一人暮らしであるため、おねしょをしてしまった布団は仕方なく竿に干している。

 

 選択などは母から教わり、家庭科の調理実習などで、料理等は出来るみたいなので一人暮らし自体は問題ないみたいなのだが、両親がいない寂しさもあって日々あまり元気がなかった。

 

 

 そんな軟弱な生徒の義雄。今日もいつもの様にガキ大将に狙われてしまった。

 

 

 「お前も早くそのお菓子よこせよ!」

 

 義雄「ちょ………やめてよ………。」

 

 「何だよ?おねしょした事をみんなにバラされたいのか?」

 

 義雄「う、………うぅ………。」

 

 

 結局、弱みを握られている事もあって、何も抵抗が出来ずにお菓子を取られてしまった………。

 

 

 

 その後、義雄はてぶらの状態で帰り道を一人とぼとぼ歩いている。

 

 恐らく友達もあまりいないのであろう。

 

 

 その時、

 

 

 “ワン! ワン! ワン!”

 

 義雄「うおあああっ!!?」

 

 

 突然一匹の犬が義雄目掛けて走ってきた。

 

 義雄はびっくりして尻もちを突いてしまう。

 

 

 すると今度は、犬が走ってきた同じ方向から、メガネをかけた一人の女性が慌てて慣れない足取りで走って来る。

 

 

 ???「ああ、ここにいた。 んも~勝手に飛び出しちゃダメだって言ったでしょ?」

 

 

 犬は女性に気付くと、彼女のもとに駆け寄ってなつき始める。

 

 恐らく飼い主なのであろう。

 

 

 ???「僕、ごめんね~。 じゃあ、気を付けて帰ってね。」

 

 義雄「え………ええ。」

 

 

 女性は犬を連れて歩き去って行った………。

 

 義雄はそんな女性の後ろ姿を、どこか哀愁さを感じる表情で見つめていた………。

 

 

 義雄「あの人………なんか動物臭い………………。」

 

 

 

 そしてとある公園のベンチで。

 

 

 義雄「あーあ、今日のおやつも取られちゃったよ………。

 

 おまけに水を吐く怪獣に追われる夢を見たと思えば、またおねしょしちゃうし………。」

 

 

 そう言いながら義雄は、ポケットからある物を取り出す。

 

 

 それは、母の手作りのデフォルメされた“獏”のぬいぐるみであった。

 

 おねしょ癖のある義雄のために、それが治るためにという思いも込めて母が手作りで義雄に渡したのである。

 

 彼はこれをいつもお守りとして大事に持っているのである。

 

 

 義雄「ねえ獏………早く僕の悪い夢を食べてくれよ………いや、夢だけじゃなくて、僕に降りかかる不幸も、全部食べてくれよ………。」

 

 

 義雄は、行き場のない寂しさを紛らわすように獏のぬいぐるみに語り掛ける。

 

 だが、当然ながら獏のぬいぐるみはなにも応えることは無い………。

 

 

 再び寂しさを感じた義雄は、上を向いて呟く。

 

 

 義雄「はあ………パパとママ、早く帰ってこないかな………………。」

 

 

 

 だが、そんな黄昏れている義雄を、近くの物陰から虎視眈々と狙うように見つめる一人のスーツ姿のすかした男がいた。

 

 

 敏樹「………ちょっと待てコワード。あのガキが今回の狙いか?」

 

 

 コワード「ええそうです。日々不幸な目に遭っている少年こそ、より強大なマイナスエネルギーを生み出すのですよ。

 

 まあ、私のやり方を見ていてくださいよ。」

 

 

 なんと、桜井敏樹と通信していた!

 

 

 奴は、テライズグレートから送り込まれた新たな刺客なのであろうか………?

 

 

 

 すると男は義雄の元にこっそりと歩み寄り、彼の肩を軽く数回たたく。

 

 義雄は突然の事に驚くように男の方を振り向く。

 

 

 コワード「元気がなさそうだねえ、僕ちゃん。」

 

 義雄「………誰?おじさん。」

 

 義雄は突然話しかけてきた男に動揺しつつも恐る恐る問いかける。

 

 

 コワード「んなっ!?おじさん?………………とまあ、さて置いて………

 

 君の気持ちが、だいぶ分かる人だよ。」

 

 義雄「え?」

 

 コワード「学校では先生に叱られ、友達に逆らえず虐められてばかり………

 

 おまけにおねしょもしてしまってそれまでも弱みとして使われ、頼りになる親も今はいない………

 

 なぜ君がこんなにも不幸なのか分かるか?」

 

 義雄は意味が分からず無口で首をかしげる。

 

 

 コワード「君は運が無いから! 神から見放されたから不幸続きなのです!!」

 

 

 男はまるで少年に頭に叩き込ませるように語り掛ける。

 

 それを聞いた義雄は辛さや寂しさがフラッシュバックしたのか俯き始める。

 

 

 コワード「………だが、そんな君に力を授けよう。」

 

 すると男は広げた右手に黒と紫の光を溜め始める………!

 

 義雄は驚くどころか、そのエネルギーに自身のマイナスエネルギーが共鳴しているのか、自身の目も紫に光り始める………!

 

 

 コワード「自分を見放したそんな世の中に、復讐するのだ!………そのぬいぐるみもろとも、君を怪物に変えてあげよう!

 

 はっ!!」

 

 

 男は右手に溜めたエネルギーを義雄に浴びせる!

 

 義雄の体は黒と紫の禍々しいエネルギーに包まれてそのまま巨大化しようとする!

 

 男の巧みな術にハマってしまった義雄は、怪物となって破壊活動をしてしまうのであろうか………!?

 

 

 コワード「ふははははは、やったぞ!

 

 さあ、今こそ破壊しろ!はははははは………」

 

 

 男は作戦が見事成功したと思い高笑いを続ける………!

 

 

 が、その時、

 

 

 

 “ポンッ”

 

 

 

 どこか軽い音が聞こえたと同意に、男の高笑いも止まる………。

 

 

 それもそのはず、禍々しいオーラの中から軽い音と共に現れたのは、人間サイズの『獏超獣バクタリ』であったのだ………!?

 

 

 コワード「………………あり?」

 

 

 バクタリ「………ん?………わっ!?何だこの姿は?」

 

 しかも、義雄の意識がそのまま残ってしまっていた!

 

 

 因みになぜバクタリになったのかというと、恐らく手に持っていた獏のぬいぐるみも一緒だったからであろう………。

 

 

 コワード「くそっ!まだ闇が十分じゃなっかのか………だからこんな中途半端なサイズに………………。」

 

 バクタリ「え?」

 

 コワード「作戦が失敗したからには仕方ない………今ここで処刑するー!!」

 

 

 そう言うと男は、まだ状況が分からずにいるバクタリの姿の義雄に掴みかかる!

 

 

 バクタリ「うわっ!?何するんですか?………やめ………やめてくださいっ!!」

 

 

 バクタリは嫌がりつつも、掴みかかった男を振り飛ばす。

 

 元が小学生の少年で人間サイズとはいえ、超獣になった今パワーはそれなりにあり、振り飛ばされた男は吹っ飛んで地面を転がる。

 

 

 すると男は立ち上がると、両腕をクロスし始め、それと同時に全身が光に包まれ始める!

 

 

 コワード「ナターン星人コワード様をなめるなー!」

 

 

 名乗った男は、光と共に姿が変わる!

 

 

 その姿は、かつて『ウルトラマンティガ』と戦った『侵略宇宙人ナターン星人』のモノであった!

 

 

 彼こそ、テライズグレートから派遣された新たな刺客・ナターン星人コワードなのである!

 

 

 バクタリ「うっ………う、宇宙人だ~!!」

 

 

 男の正体に驚き怯えるバクタリは必死に逃げ始め、正体を現したコワードはそんなバクタリを追いかけ回し始める!

 

 

 義雄君………アンタも一応今の姿は“超獣”なんですよ?(笑)

 

 

 街中で追いかけっこをする二体の異形の者。それに気づいた人々は怪獣出現と勘違いし、悲鳴を上げて逃げ始める。

 

 余談だがバクタリは、その巨体に似合わず意外にも逃げ足が速く、その速さはかつて『ウルトラマンA』と戦った際、エースの掴みかかりを三度も回避したほどである。

 

 

 バクタリ「みんな~!!助けて~!

 

 ウルトラマンを……ウルトラマンを呼んでくれ~!!」

 

 

 バクタリの姿の義雄は逃げながら必死に助けを求めるが、姿が姿。人々は聞いてくれるはずもない………。

 

 

 やがて、異常事態に気付いた『竜野櫂』と『眞鍋海羽』が駆け付ける!

 

 二人ともそれぞれ『ウルトラマンゼロ』と『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身できる者だ。

 

 

 コワード「!くっ……ウルトラマンか………まあいい、まだ考えがある。

 

 それに我が超獣もいることだし………ここは一旦引くか。」

 

 

 コワードは気になる事を行った後、必死で逃げるバクタリを残して何処かへと去って行った………。

 

 

 

 櫂「出たぞっ!」

 

 海羽「あれね。」

 

 バクタリに気付いた櫂と海羽は、それぞれ既に『ウルトラゼロアイ』と『ハートフルグラス』(いずれも変身アイテム)を、銃型のガンモードに変えて構えている。

 

 

 バクタリ「あっ!お兄さーん!お姉さーん! 早く助けt…」

 

 

 櫂「撃てーっ!!」

 

 

 “ズキューン ズキューン…”

 

 

 “ズガンッ ズガガンッ…”

 

 

 バクタリ「きゃッ!? 痛ッ………ちょっと………何をするのー!!?」

 

 

 櫂と海羽は、バクタリとなった義雄の助けを求める声を聞くはずもなく問答無用で射撃し始める………。

 

 無理もない。彼らは事情を知らないのだから………………。

 

 

 バクタリ「痛い………ちょ………やめてくださいよ~!!」

 

 バクタリは銃撃を受けて痛がりながらも必死に逃げ始める。

 

 

 櫂「逃がすかーっ!!」

 

 

 櫂と海羽は、後を追いつつ銃撃を続ける………。

 

 

 やがてバクタリは、銃撃が届かない場所までなんとか行くと、そのまま一目散に走り去って行った………。

 

 

 櫂「くそッ!逃げられたか………。逃げ足早いな~アイツ。」

 

 ゼロ「ああ、惜しかったな。しかし、何故またバクタリが出たんだろうな?」

 

 海羽「それも等身大で、何だか不思議ねー…。」

 

 櫂「とにかく、このまま奴を放っておけないな。出来る限り探そうぜ。」

 

 海羽「うん、そうだね。」

 

 ゼロ「よーし、櫂、海羽、相手が相手だが、くれぐれも気を付けるんだぞ。」

 

 櫂「ああ!」 海羽「オッケー!(敬礼してウィンク)」

 

 

 櫂と海羽は、何処かへと走り去って行った………。

 

 

 

 一方、櫂たちの銃撃からなんとか逃れたバクタリは、とある商店街の魚屋さんの建物の影に隠れていた。

 

 

 バクタリ「はぁ………今日は厄日だよ~………。」

 

 

 そう言いながら建物の影からそっと表に出たその時、

 

 

 バクタリ「わッ!?」

 

 

 目の前には、魚屋さんの主人のおじさんがじっと見つめていた。

 

 

 バクタリ「あ、あの~…とりあえず話を聞い…」

 

 

 魚屋「怪獣ーッ!!」

 

 魚屋はそう叫ぶと、たまたま手に持っていた大きな魚(マグロ?)でバクタリを叩き始める。

 

 バクタリ「痛いッ………痛ッ………ち、違うんだよ!話を聞いてってば………。」

 

 バクタリは必死に訴えながら魚屋にすがるが、あくまで姿は超獣であるため、力が強すぎてうっかり魚屋を倒してしまう。

 

 

 バクタリ「ああ、ごめんなさい………」

 

 バクタリは必死に詫びるが、その様子を目の前の数人の主婦たちに見られてしまう。

 

 無論、主婦たちにとっては、怪獣(バクタリ)が魚屋を襲っているようにしか見えない。

 

 

 主婦たち「きゃーッ!!」

 

 主婦「魚屋さんが怪獣に襲われとるー!!」

 

 

 主婦たちは魚屋を助けようと、近くの果物等をバクタリ目掛けて投げつける。

 

 

 バクタリ「痛ッ!………ちがう………違うんだよ~!!」

 

 

 バクタリは悲痛な叫びを上げながら、その場から逃げて行った………。

 

 

 

 超獣の姿になってしまったがために、周りから話を聞いてもらえず怪獣として扱われる哀れな一人の小学生。

 

 もはや行き場のない状況にまで追い込まれていた………………。

 

 

 

 そして夕方。バクタリはとある河川敷の橋の下に立ち尽くしていた………。

 

 

 バクタリ「はぁ………そろそろ夜が来るな………

 

 でも姿がこれだし………家に帰ってもパパもママもいないし………

 

 僕、どうすればいいんだろう………………。」

 

 

 バクタリは途方に暮れてその場に座り込む。

 

 中の義雄君はもはや泣きそうになってしまっていた………………。

 

 

 その時、

 

 

 バクタリ「………、わっ!?」

 

 

 バクタリはあるモノに気付いて驚く。

 

 

 そこには、メガネをかけていて、髪は後ろで束ねている見た感じ20代後半の若い女性がじーっと見つめていた。

 

 

 その女性は紛れもなく先ほど義雄の姿の時に出会った、犬を連れていた女性だった………。

 

 

 その女性は怖がったり、逃げるような様子も見せず、ただじーっとバクタリを見つめている………。

 

 バクタリはどうしたらいいか分からず戸惑っている………。

 

 

 バクタリ(うぅ………やっぱりこの人動物臭い………。見た目はそこそこ良いのに………。)

 

 

 バクタリがそう思ったその時!

 

 

 

 女性「か・か・か・か・か・可愛い~~~!!」

 

 

 突然表情がガラリと変わり、瞳を文字通り光らせて「可愛い」と叫んだのだ!

 

 

 バクタリ「ええッ!?」

 

 

 女性「はあああ~まさかこんな所にこんなに人間サイズの怪獣ちゃんがいたなんて~!!」

 

 女性は困惑するバクタリを他所に、すがってあちこちを触りながら興奮する。

 

 

 バクタリ「ちょっ………ちょっと待ってよ! 僕は怪獣じゃないってばー!」

 

 バクタリは力加減をして女性を振り放して訴える。

 

 女性「え~? うふっ、おかしな事言うのね。姿が怪獣なのに。」

 

 バクタリ「まあ、今はそうだけど………。」

 

 女性「私、知ってるよ。バクタリでしょ?」

 

 バクタリ「“バク”だから“バクタリ”? 安直だな~。」

 

 

 ………おい義雄君、姿が姿だからって目上の女性相手にタメ口になってるぞ?(笑)

 

 

 バクタリがそのまま歩き去ろうとしあその時、

 

 

 バクタリ「!痛っ…。」

 

 突然、右肩を押さえて痛がり始める。

 

 

 女性「どうしたの?」

 

 女性は気になってその左肩を見てみると、そこには何かに焼かれたような小さい傷が出来ていた。

 

 恐らく、先ほど櫂に撃たれた際に出来た火傷の傷であろう。

 

 

 

 因みに、何故櫂に撃たれた傷かというと、実は先ほど櫂と海羽がバクタリを銃撃した際、二人それぞれ撃つ場所がだいぶ違っていたのだ。

 

 海羽はとりあえすおどして止めることを先決して、足元を集中的に射撃していたのだが、それに対して櫂は、その場で始末しようとバクタリの体を容赦なく射撃していたのだ。

 

 そしてその際に、櫂の射撃の一つがバクタリの右肩に直撃し、それによってバクタリはその部位に火傷の怪我を負ってしまったのである。

 

 

 その場で討伐しようとした櫂と、とりあえす大人しくさせようとした海羽。

 

 この違いだけでも、櫂の内心の腹黒さと、怪獣への憎悪が伺えるであろう………………。

 

 実際櫂は射撃する際、どこか不敵な笑みを浮かべていたのだから………………。

 

 

 

 女性「あらまあ、火傷ね。可哀想に。

 

 今治療してあげるからね。」

 

 そう言うと女性は、“動物用”と書かれた救急箱を取り出し、バクタリの患部を消毒した後、そこに絆創膏を貼った。

 

 

 白い十字形の絆創膏を。

 

 

 絆創膏を貼ってもらった事により痛みが癒えたバクタリは女性に礼を言う。

 

 バクタリ「ありがとうございます。動物相手なのにこんなにも上手いなんて…(僕、元々人間だけどね、、、)」

 

 

 女性「えへへ、私、動物大好きなの。 だから動物の治療法も勉強してるし、

 

 それに…それだからかな~…なぜか動物の怪獣に詳しいのよね~。」

 

 

 バクタリ「………動物好き………ですか?」

 

 女性「うん!だからあなたみたいな可愛らしい動物怪獣にも目が無いの。」

 

 

 バクタリ(なるほど………それで動物臭いわけだ………。)

 

 

 バクタリがそう思った時、

 

 

 “ぐ~きゅるるるる………”

 

 

 バクタリ「あ、」

 

 女性「ん?」

 

 

 どこからか聞こえた音、それはバクタリのお腹が空く音だった。

 

 

 女性「うふ、お腹空いたのね。 良かったら私の家に来る?」

 

 バクタリ「え?」

 

 

 

 よってその夜、バクタリは女性の家に入れてもらうことにした。

 

 

 バクタリ「!どひゃ~っ。」

 

 女性の家に入った瞬間、バクタリは驚愕する。

 

 

 なんと女性の家にはあちらこちらに、様々な飼育している動物がいるのである!

 

 

 ペットの定番の犬や猫はもちろん、ハムスターやリス、ウサギ、インコなど種類も様々であり、正に彼女の家自体が動物園のようである。

 

 

 女性「えへへへへ、ごめんね、ちょっと落ち着かないと思うけど、この子たちみんないい子だから。」

 

 バクタリ「え、えーと…」

 

 有理香「あ、自己紹介がまだだったね。

 

 私は有理香。沢城有理香(さわしろ ゆりか)。」

 

 バクタリ「有理香さん、本当に動物が大好きなんですね…。」

 

 

 有理香「うん!みんなどれも可愛いし! いずれは“あの鬚とベレー帽が特徴の人”みたいに、たーっくさん飼うのが夢なんだー。」

 

 バクタリ「そ………そうですか。」

 

 

 有理香「ねえ、バクタリちゃんは知ってる?

 

 みんな姿や形、大さは違うけど、一つだけ、私たち人間と同じところがあるの。」

 

 バクタリ「………それは………?」

 

 

 有理香「“生きてる”って事。

 

 みんなそれぞれ命を持ってて、それぞれの人生を一生懸命頑張ってる。

 

 そしてその中で、こうやって人間と触れ合う事で、互いを愛し合い、争う事なく共存できる………

 

 だから、例え姿が違っても、こうする事で人間の命は、様々な生物の命と繋がってる………凄い事だと思わない?」

 

 

 バクタリ「………はぁ。」

 

 有理香はどこか深い事を人懐っこく話すが、付いていけないバクタリはつい素っ気ない返事をしてしまう。

 

 

 有理香「あ、ごめんね、変な事話しちゃって………お腹空いてるんだよね?」

 

 

 そう言うと有理香は、バクタリを座らせ、そして籠一杯のフルーツを差し出す。

 

 

 有理香「さ、どうぞ。」

 

 

 バクタリ「ありがとう………でも………どうやって食べよう………?」

 

 

 バクタリは、どう食べようか悩んでいたその時、あるモノに気付く。

 

 

 ………それは、自身のバクのような長い鼻であった。

 

 

 すると、その鼻を使ってリンゴを一つ掴み、そしてそれを口に運んでムシャムシャと食べ始める。

 

 まるで象のような食べ方である。

 

 

 バクタリ「………おいしい。」

 

 

 早くもバクタリの姿での食べ方が分かった後、余程お腹が空いていたのか、籠一杯の果物をあっという間に平らげた。

 

 しかし、口から食べ物を食べる際は鼻を使う………ある意味バクタリの新しい発見でもある(笑)

 

 

 バクタリ「ふう、お腹いっぱい。ごちそうさまでした。」

 

 有理香「どういたしまして。」

 

 

 満腹になったバクタリは、周りの有理香が飼っている動物たちを見渡し、そして問う。

 

 バクタリ「有理香さん、この動物たちの世話、大変じゃないですか?」

 

 

 有理香は同じく動物たちを見渡しながら答える。

 

 有理香「確かに、一匹一匹世話しないといけないから大変なのは確かね~………でも、この子たちといる時が一番好きだから、だから全然しんどくなんてないわ。」

 

 バクタリ「有理香さん、本当に動物が好きなんですね。」

 

 有理香「ええ。さっきも言ったけど、みんな私たちを同じ命を持って生きている。ただ家で飼っとくだけじゃあ可哀想だから、いつもみんな散歩に連れて行ってるの。」

 

 バクタリ「どひゃ~、すごいですね。 注目されませんか?」

 

 有理香「ふふふ、実は一度散歩の最中にテレビ局の取材を受けて、世間で話題になった事があるの。

 

 “霞ヶ崎一、動物を飼う女性”ってね。」

 

 バクタリ「テレビにも出たんですか………有理香さん、凄いです。」

 

 有理香「へへへ…と言っても一時期だけだよ。 でも、今でもたまに取材が来たりするけどね。」

 

 バクタリ「有理香さんみたいな人が増えたら、もっと人間は動物と共存できるかも。」

 

 

 有理香「そうだね~…世の中にはまだ、自分たちの都合のためにむやみに動物を殺す者たちもいる………。

 

 だから私は、そんな人たちにも、どんな動物も人間と共存できるという事を分かってもらいたいの。

 

 そのためにも私は将来、立派な動物トレーナーを目指してるんだ。」

 

 

 バクタリ「………そうですか………。」

 

 

 バクタリは有理香の話を聞いて、彼女がどれだけ動物が大好きなのかを痛感する。

 

 

 そしてある決心をする。

 

 

 

 バクタリ「有理香さん、僕、力になりたいです。」

 

 

 有理香「………え?」

 

 

 バクタリ「僕………有理香さんがどれだけ動物を愛しているかがよく分かりました………だから………そんな有理香さんの役に立ちたい………。

 

 明日、散歩の手伝いをさせてください。」

 

 

 バクタリの気持ちを聞いた有理香は少し困惑するが、やがて笑顔になる、

 

 有理香「………分かったわ。よろしくね、バクタリちゃん。」

 

 有理香は笑顔で了解した。

 

 

 バクタリ「やったー。僕の方こそよろしくお願いします。」

 

 バクタリはインコたち動物にも挨拶を始める。

 

 バクタリ「しばらくよろしくね。」

 

 

 “キーッ キーッ”

 

 

 だが、インコは近づいたきたバクタリに気付くやバクタリの頭部を突きながら部屋を飛び回る。

 

 犬や猫も、威嚇するように吠え始める。

 

 

 恐らく初めて会う者という事もあって、動物たちはまだ警戒しているのであろう。

 

 

 バクタリ「痛てッ………痛い痛い………!」

 

 有理香「ああッ!みんな落ち着いて!バクタリちゃんは悪い子じゃないから………。」

 

 

 

 やがて騒ぎが治まった後、有理香は入浴などを済ませた後就寝する。

 

 バクタリも、別の部屋でちゃんと布団の中で寝かしてもらっていた。

 

 

 バクタリ「………有理香さん………凄いな~………………動物好きとはいえ、こんな姿の僕を怖がることも無く、こうやって泊めてくれる………………

 

 僕、必ず恩返しするぞ~。」

 

 

 やがて、バクタリも仰向けで布団をかけた状態で眠りについた………。

 

 

 

 

 そして翌日、有理香はいつもの様に動物たちの散歩を始め、バクタリもその手伝いを始める。

 

 

 因みに散歩コースは比較的山中であり、あまり人目の付かない所であるためバクタリも安心して散歩が出来るコースであった。

 

 

 バクタリも何匹か動物を散歩させてみるが、やはり最初はあまりなつかずに手を焼くことも多かった。

 

 でも、有理香の手助けもあって、辛抱強く付き合っていく内に、動物たちはバクタリにもなつくようになっていった。

 

 

 途中何匹か逃走してしまうが、その際はバクタリの大きな鼻の嗅覚を利用して探すことで見つけて行った。

 

 嗅覚で目的を探す………これもある意味新しい発見である。

 

 

 こうして様々な壁に当たりながらも交流を続ける事によって、やがて夕方になる頃には、動物たちはバクタリにも完全になつくようになった。

 

 全動物の散歩を終えたバクタリと有理香は、河川敷で座って川を眺めながら語り合う。

 

 

 有理香「バクタリちゃん、夕方まで散歩に付き合ってくれて…ありがとね。」

 

 バクタリ「いえ、有理香さんの役に立てて嬉しいです。

 

 それに、有理香さんが言っていた“命は繋がってる”………この意味がなんとなく分かった気がします。」

 

 バクタリの言葉を聞いた有理香はどこか嬉しそうだった。

 

 

 有理香「確かに、最初はお互い違う姿だったら警戒するよね………でも、今日バクタリちゃんが動物たちと仲良くなれたように、違う姿の者でも、必ず分かり合える。

 

 もしかしたら、今でもバクタリちゃんの事を警戒している人がいるかもしれない………でも、そんな人たちとも、必ず分かり合える日が来ると思うわ。

 

 現に今日、私の動物ちゃんたちと仲良くなれたんだもん。」

 

 

 バクタリ「…有理香さん………。」

 

 有理香の言葉を聞いたバクタリは、義雄だった頃のある事を思い出す。

 

 

 それは、自分も幼い頃からこうやって母と楽しく散歩している事だった。

 

 思えばどんなに辛い事があっても、母と散歩する時が一番楽しく、そして母の優しさに癒されてきた事を、、、。

 

 今は両親ともに旅行に出ていてしばらく不在だったため、義雄は辛さや寂しさの方が大きくなりつつあり、うっかりこの事を忘れかけていたのだ。

 

 そして改めて思い出せた今、自分はまだ神に見放されていないという事に気づく事ができ、少し前向きになれるような感じだった。

 

 

 すると有理香は手を合わせて、何かを思い出したかのように言い始める。

 

 有理香「あ、そうだ!」

 

 バクタリ「?どうしたのですか?」

 

 

 有理香「バクタリちゃん、、、明日手伝ってほしい事があるの。」

 

 バクタリ「………?」

 

 

 

 そして翌日、バクタリと有理香は動物たちと共にある場所へ。

 

 

 それは、遊園地である。

 

 

 実は有理香、数週間に一回は遊園地を訪れ、自身の動物たちの芸を子供たちに見せるというボランティアもやっているのである。

 

 今日はそれを、バクタリにも手伝ってもらおうとしてるのだ。

 

 

 準備をしながら、二人は話す。

 

 有理香「ホントごめんね〜。これまで手伝わせちゃって。」

 

 バクタリ「いえいえ、有理香さんの役に立てるなら何でもしますよ。

 

 それに、これも、人と動物の繋がりを深めるための一つだと思いますからね。」

 

 有理香「バクタリちゃん………。」

 

 

 すると、有理香はバクタリにある事を話し始める。

 

 

 有理香「…ねえ、昨夜、私の夢、食べたでしょ?」

 

 

 バクタリ「えっ?!」

 

 

 有理香の突然の言葉にバクタリは慌てるような反応をする。

 

 どうやら本当みたいである。

 

 

 有理香「ふふふ、やっぱりね。」

 

 バクタリ「で…でも、何で分かったんですか?」

 

 

 有理香「だって、貘って“悪い夢を食べてくれる”という言い伝えがあるでしょ?

 

 それに、その頭。輪っかの一つがたまに光ってるでしょ? それが証拠。」

 

 

 有理香に言われた事でバクタリ自身も気づく。

 

 それは、自身の頭にある無数の輪っかの内、一つだけ時たま紫に光るのである。

 

 バクタリは伝説の生き物・貘と同じく人間の夢が好物であり、食べた夢は、頭にある無数の輪っかの中に保存する事が出来るのだ。

 

 すなわち、この光ってる一つの輪っかこそ、バクタリが人間の夢を食べた何よりの証拠なのである。

 

 

 流石は動物好きなだけあって、有理香はバクタリの能力にも非常に詳しかった。

 

 

 有理香「…でも助かったわ。すごく怖い夢だったから…。」

 

 

 有理香はそのまま夢の内容を語り出した。

 

 

 それは、一本杉のある湖のつり橋の上に立っていたその時、突如その湖の中から激しく水しぶきを上げながら一匹の怪獣が現れて追いかけ回して来たという。

 

 その怪獣は口から白、赤と二種類の色の水を吹き出しながら追いかけ続け、やがてその水が自身に降りかかろうとしたその時、

 

 

 突如、自分を残して周りが一気に暗くなり、最初は戸惑ったが、やがて自分は助かった事を確信した。

 

 

 そして目が覚めて、先ほどの出来事が夢だと分かった時、バクタリが夢を食べてくれたんだと確信したという。

 

 

 有理香の夢の内容を聞いたバクタリは、数秒黙った後話し出す。

 

 

 バクタリ「………有理香さん、とても苦しそうだったから………。」

 

 有理香「………え?」

 

 

 バクタリは、自ら有理香の夢を食べたのである。

 

 

 それは、自身も寝付こうとした時、有理香の部屋から何やら苦しそうな声が聞こえ、気になって部屋に入ってみると、そこには有理香がベッドの中で寝ながら苦しそうな声を上げていたという。

 

 それを見たバクタリは、有理香が悪い夢を見てうなされている事に気付き、何とかしてやろうと悩んでいたその時、突如、自身の頭部の輪っかが光り出したかと思うと、有理香の中から紫の光のようなモノが飛び出して自身の頭の一つの輪の中に入って行った………。

 

 そして動揺している間にそのオーラを吸収し終えて頭部の発光が治まった頃には、有理香はさっきまでの苦しそうな感じではなくなり、気持ちよさそうな表情で寝付いていたという………。

 

 そしてその時初めて、自分が獏の力で有理香の悪い夢を食べたのだと実感したという。

 

 

 バクタリが、自分のために悪い夢を食べてくれたことを知った有理香は笑顔で感謝の言葉を言う。

 

 有理香「………ありがとうバクタリちゃん。おかげで気持ちよく眠れたから、今日も無事にこの子たち(動物たち)の芸が出来そうだよ。」

 

 バクタリ「い………いやあ~…そんな………。」

 

 有理香「あとちょっとで開園時間だわ。急ぎましょ。」

 

 バクタリ「あ、はい。」

 

 

 バクタリと有理香は残りの準備を急ぎ始める。

 

 

 しかしバクタリは準備しながら、さきほどの有理香から聞いた夢の内容が気になっていた。

 

 

 バクタリ(有理香さんの夢………僕がおねしょした時の夢と似てるなぁ………。一本杉の湖から水を吐く怪獣が出てきたところも………。)

 

 

 

 一方で、テライズグレートでは、そんなバクタリと有理香の様子をモニターから見ているコワードは、

 

 コワード「くっ………うかつだった………バクタリを野放しにしていたばっかりに、あの女(有理香)におねしょをさせて陥れる作戦が失敗してしまった………。

 

 バクタリめ………あんな能力を持っていたとは………………。

 

 まあいい。こうなったら次の策を考えるまでだ。」

 

 そう言うとコワードは、部屋から出て行った………。

 

 奴は、今度はどんな策を考えているのであろうか………………?

 

 

 

 同じ頃、義雄の家の竿に干されたままの布団には、なんとまだ昨日の“怪獣のような形のおねしょの跡”が残っていた………。

 

 

 “ビヨヨ~ン”

 

 

 するとなんと、そのおねしょの跡が、奇妙な音と共に布団から離れ、何処かへと飛んで行ったのだ!

 

 何処に飛んで行くのかは分からないが、このように義雄や両親が不在の間に、常識ではあり得ない事が起こっていた………。

 

 

 はて………この突如飛んで行ったおねしょは、有理香の夢と何か関係があるのであろうか………………?

 

 

 

 そのことを知るはずもないバクタリ(義雄)と有理香は、やがて遊園地が開園し、寄って来た子供たちの前で様々な動物の芸を見せ始める。

 

 

 自転車に乗る犬、玉乗りをする猫、動きでボケる猿に有理香が突っ込むというちょっとした漫才、おもちゃのダンベルをくわえて持ち上げるインコなど、様々な凄くて微笑ましい動物たちの芸を見ている子供たちは非常に楽しそうだった。

 

 

 特に今日は、バクタリがいるという事もあり、着ぐるみの怪獣だと思った子供たちは一斉にバクタリに駆け寄る。

 

 バクタリは着ぐるみの怪獣になりきるために、無口でそんな子供たちと戯れ始める。

 

 

 有理香の手伝ってほしい事、それは動物たちの芸の手伝いの他に、集客のためにこうして着ぐるみの怪獣として子供たちと戯れるようにしてほしいという事だった。

 

 姿がバクタリという超獣とはいえ、大きさが等身大であるため、着ぐるみの怪獣としてなら遊園地に入ることが出来、またそれによって子供たちも寄って来るだろうと考えたのである。

 

 正に、見事に成功したのである。

 

 

 バクタリの姿の義雄にとてっては、子供たちが喜んで自分に寄って来る姿はどこか新鮮に感じ、またそれによって自分も自然と嬉しく感じていた。

 

 そして、同時にこんな事も思っていた。

 

 

 バクタリ(………有理香さん………好きな動物たちのためじゃなくて、こんな風に子供たちの笑顔のためにも頑張ってるなんて………………。

 

 この人には是非、全動物と仲良くなって、立派な動物トレーナーになってほしいな………………。)

 

 

 粋な計画により、今日も動物芸のボランティアは成功をおさめ、閉園後の後片付けを終えたバクタリと有理香は帰宅した。

 

 

 大きな疲れからか、有理香はどこか満足そうな顔で椅子に倒れ込むように座る。

 

 

 バクタリ「有理香さん、本当に、お疲れ様でした。」

 

 有理香「はあ~、バクタリちゃんこそ、私の無理を聞いてくれて、疲れたでしょ?

 

 今夜はゆっくり休むといいよ。」

 

 有理香はぐったりした体勢で椅子に座ったままバクタリに労う言葉をかける。

 

 

 “ピンポーン”

 

 

 その時、インターホンが鳴る。

 

 有理香「ん?何かしら?」

 

 有理香は疲れた体を起こしながら玄関に向かう。

 

 有理香「はーい。」

 

 返事をしながらドアを開けると、なんとそこには櫂と海羽の姿があった!

 

 バクタリ「げげっ!」

 

 部屋の入り口からこっそりと見ていたバクタリは、昨日自分を撃った櫂と海羽の突然の訪れに驚く。

 

 

 櫂「突然にすいません。麟慶大学二年の竜野櫂です。」

 

 海羽「同じく、眞鍋海羽で~す。」

 

 櫂「最近この辺りに怪獣がうろついているという噂を耳にしたのですが、何か心当たりはないですか?」

 

 海羽「ないですか?」

 

 

 櫂と海羽の問いかけに、有理香ははっとなって少し黙ってしまう、、、。

 

 

 恐らく、最近見かける怪獣とは、自分が今かくまっているバクタリの事だと感じたのであろう………………。

 

 

 櫂と海羽は、昨日に引き続きバクタリの捜索を続けていたのだ。

 

 

 海羽「………?どうされましたか?」

 

 有理香「え?、、、い、いえ、私は何も………。」

 

 有理香は思わず嘘を言ってしまった。

 

 

 櫂「そうですか………突然すいません。失礼しました。」

 

 有理香「え、ええ………気を付けてね。」

 

 櫂「はい。おい海羽、次行くぞ。」

 

 海羽「オッケー!」

 

 

 櫂と海羽は、有理香に挨拶をした後足早に何処かへと去って行った………。

 

 

 自分がその探している怪獣を家に入れているというのに思わず嘘をついてしまった事に少し罪悪感を感じつつも、有理香はそっと部屋に入り、やや怯えるバクタリに笑顔で話しかける。

 

 

 有理香「もう大丈夫よ。」

 

 バクタリ「そうですか………ありがとうございます。」

 

 

 有理香「(手を合わせて)それじゃ、今夜はゆっくり休みますかー………

 

 ……あ、あとうさぎちゃんの餌やりをしなきゃいけなかった。」

 

 有理香はあと一つやり残しがあった事に気付く。

 

 

 バクタリ「あ、有理香さんはお疲れですから、うさぎの餌やりは僕に任せてください。」

 

 有理香「本当に~?………じゃあ、お願いしちゃおっかな。」

 

 バクタリ「分かりました。」

 

 

 バクタリは早速人参を取り出す。

 

 実は義雄は、学校の飼育係の一人であり、うさぎ担当なのである。それにより、人参はうさぎが食べやすい形に切らないといけない事を知っているバクタリ(義雄)は、なんと腕の一本爪の先端を使って人参を切り始める!

 

 

 バクタリの一本爪にはこういう使い方もあったとは………我々も驚きである。

 

 

 やがて人参を何本にも細長く切ったバクタリは、それを持ってうさぎの元へ。

 

 細長く切った人参を差し出すと、うさぎはそれを食べ始めた。

 

 うさぎもまた、バクタリになつくようになっていたのである。

 

 

 バクタリ「………やった、食べてくれた。」

 

 有理香「本当だわー。」

 

 それに気づいた有理香も、歩み寄ってしゃがんで、餌を食べるうさぎを見つめる。

 

 バクタリ「やっぱりかわいいですねー。」

 

 有理香「完全にバクタリちゃんにもなついちゃってるしね。」

 

 

 有理香は餌を食べ続けるうさぎを見つめながら呟き始める。

 

 有理香「………バクタリちゃんが来てくれたおかげで、私、結構助かったわ………。」

 

 バクタリ「え?」

 

 有理香「この子たちもなつくようにもなったし、そのおかげで家がいつもより賑やかになった感じで、今日の芸ボランティアも今まで以上に成功できた………そして今、こうやって餌もやってくれるようにもなってくれて………………」

 

 有理香は感謝の言葉を語り続けていく内に、徐々に涙声になっていく………………。

 

 

 

 有理香「………ぐすんっ………すん………………バクタリちゃん………………ありがとね………………ありがとう………………。」

 

 

 

 わずか数日の付き合いながらバクタリへの感謝がいっぱいの有理香は遂に感極まって、しゃくり泣きをしながら、涙を拭きながらお礼を言った。

 

 

 バクタリ「………有理香さん………………。」

 

 

 嬉し泣きで自分にお礼を言う有理香。それを見たバクタリは、自分は本当に有理香の役に立てたのだなあと実感し、改めて嬉しい感じになった………………。

 

 

 その後、二人は今日の疲れを取るために、ぐっすりと眠りについた………。

 

 

 

 だが、その頃別の場所………それも、義雄や有理香の夢に出てきた一本杉のある湖に似た場所で。

 

 とある一匹の怪獣らしきものが湖面から姿を現しており。周りに口からの水流を吹き付ける。

 

 水流の威力は凄まじく、当たっただけで小さな山なら簡単に削れ飛ぶほどであった。

 

 怪獣は、今度は赤い液体を周りに浴びせる。

 

 するとなんと、赤い液を浴びた場所は爆発し、炎が燃え上がる。

 

 恐らく怪獣が吐く赤い液隊は爆発性がある危険なモノなのであろう。

 

 

 そしてそんな暴れる怪獣の様子を見つめるコワードは、不気味に笑っていた、、、。

 

 

 コワード「ふっふっふ………ではそろそろ、次の策の実行と行きますか~。」

 

 

 コワードがそう言うと、怪獣は湖の中に潜って姿を消した、、、。

 

 

 そしてそれと同時に、今朝何処かへと飛んで行ったおねしょの跡が、奇妙な音と共に干されている義雄の布団に戻った………。

 

 

 ………はて、怪獣はもしかして、このおねしょに擬態しているのであろうか?………………。

 

 

 

 

 そして翌日、この日もバクタリは、朝から有理香の動物たちの散歩を手伝っていた。

 

 

 バクタリ「今日もいい天気ですね~………暑いけど。」

 

 有理香「そうね~…これが終わったら後でアイス食べようよ。私が奢るから。」

 

 バクタリ「え?いいんですか?」

 

 有理香「うん。バクタリちゃん、昨日芸の手伝いに餌やりと色々やってくれたでしょ。そのほんのお礼。」

 

 バクタリ「やったー!」

 

 有理香「ふふふ…。」

 

 

 はしゃぐバクタリは犬と共に走り、それを有理香が笑顔で見つめていたその時、

 

 

 コワード「ここにいたか………バカ超獣!!」

 

 

 突如、バクタリの行く手を阻むように目の前に、人間態のナターン星人コワードが現れる!

 

 

 しかもバクタリを“バク超獣”ではなく“バカ超獣”と言いながら…(一文字違い笑)。

 

 

 バクタリ「!うわっ!!」

 

 

 バクタリは突然目の前にコワードが現れたことに驚く。

 

 連れていた犬は威嚇して跳びかかるように吠える。

 

 

 “ワン! ワン! ワン!”

 

 

 コワード「うわーっ!!」

 

 

 思いの外、コワードは驚いた(笑)

 

 だがすぐさま体勢を立て直す。

 

 

 コワード「いつまで人間なんかと一緒にいる気だ?ええ?」

 

 非情な問いかけをするコワード。

 

 

 バクタリ「な、何でそんなことを言うんですか!?」

 

 コワード「君は神に見放された存在なんだぞ?いまだにその姿でいるのが何よりの証拠だ。」

 

 またしても巧みな術でハメようとするコワード。バクタリは再び心が揺らぎ始めたのか、黙り込んでしまう。

 

 

 有理香「ちょっと…あなた一体何なんですか?」

 

 不審者が来たと思った有理香はバクタリを庇うようにコワードに突っかかる。

 

 

 コワード「ん?何だこの女は?」

 

 するとコワードは有理香の腕を掴み、引き寄せ始める!

 

 

 有理香「ち、ちょ…何するんですか!?」

 

 有理香の動物たちも、彼女を助けようとしているのかコワード目掛けて接近する。

 

 するとコワードは、空いている左手から光線の鞭を出して動物たちをまとめて縛って捕えてしまう。

 

 

 有理香「バクタリちゃんっ!………。」

 

 バクタリ「はっ………やめろ!有理香さんと動物たちを放せ!」

 

 コワード「ははははは、それだよ!その怒りだ!さあ、もっと怒れー!!」

 

 そう言いながら、なんとコワードは捕えている有理香の腕を締めつけ始め、有理香は痛がり始める。

 

 動物たちも怯えるような鳴き声を上げ始める………。

 

 

 有理香「ちょっ……痛い……やめてよ!…せめてこの子たち(動物たち)だけでも放しなさいよ!」

 

 コワード「やーだーねー!」

 

 有理香は痛がりながらも、動物たちの事を第一に考えて必死に抵抗するが、コワードはやめるはずもなく、バクタリの怒りを煽るために有理香たちをなぶり続ける、、、。

 

 

 バクタリ「どうして………どうしてそんな酷い事ができるんだあああぁぁ〜!!!」

 

 

 バクタリは遂に怒りの叫びを上げ、それと共にマイナスエネルギーと思われる紫のオーラを放ち始める、、、!

 

 怒りによって我を失いかけているのであろうな、、、?

 

 

 コワード「ふっふっふ、いい感じだ。さあ、仕上げといくか、ふんっ!!」

 

 

 コワードはそう言うと、有理香たちを乱暴気味に開放した後、怒り狂うバクタリに手からの黒と紫のエネルギーを浴びせる!

 

 

 エネルギーを浴びたバクタリは苦しそうな声をあげながら見る見る巨大化していき、やがてそれにつれて義雄少年の叫び声がバクタリの鳴き声へと変わっていく、、、!

 

 

 “オヴァヴァヴァヴァオウーン”

 

 

 そして遂に、バクタリは巨大な超獣となってしまった!

 

 

 コワード「成功だ…大成功だぜー!」

 

 コワードは、バクタリを巨大化させる事に成功して狂ったように叫ぶ。

 

 

 有理香「…バクタリちゃん………。」

 

 有理香は動物たちを庇いながら、巨大化してしまったバクタリを悲しそうな顔で見上げる………。

 

 

 巨大化したバクタリは、引き続き捜索していた櫂と海羽にも既に見えていた。

 

 海羽「あっ、あれ、バクタリちゃんじゃない?」

 

 櫂「あのヤロー遂に巨大化しやがったか!」

 

 ゼロ「急いで向かうぞ!」

 

 櫂・海羽「おう!」

 

 

 コワードは、咆哮を上げるバクタリに更に叫びかける。

 

 コワード「さあ、己の怒りに加え異次元エネルギーを浴びたお前は今、完全なる超獣だ!

 

 さあ暴れろ………たった1日の女のために、多くの人が犠牲になる……これほど最高な事は無いぜ〜フハハハハハ!!」

 

 

 コワードの声を聞いたバクタリは、それに応えるように街に向けて歩みを進め始める………遂に破壊活動を始めてしまうのか………!?

 

 

 有理香「やめて………バクタリちゃん!」

 

 有理香は必死に呼びかけるが、まるでバクタリに聞こえる様子がない………。

 

 

 やがてバクタリは、市街地の目前にまで向かっていた…。

 

 街の人々は既に、超獣が出現した事により逃げ始めている。

 

 

 コワード「ハハハハハ!さあ、破壊しろバクタリ!」

 

 

 

 ………だが、市街地の目前にまで来た時、突如バクタリの足が止まってしまう。

 

 

 その事にコワードはもちろん驚き、有理香もはっと驚く。

 

 

 櫂と海羽も、突然動きが止まったバクタリに反応する。

 

 海羽「………あれ?急に止まった?」

 

 櫂「…いきなりどうしたんだ?」

 

 

 コワード「おいどうしたバクタリ!さっさと街を破壊しろー!」

 

 

 バクタリ「………それはできない…。」

 

 

 コワード「!なんだと〜!?」

 

 なんと、あれほどのマイナスエネルギーを浴びて巨大化したにもかかわらず、バクタリは今も義雄の理性を保っていたのだ!

 

 予想外の出来事にコワードは少しうろたえる。

 

 

 バクタリ「街を壊したら……有理香さんだけじゃなく、たくさんの人が悲しむ………有理香さんが笑顔にした、たくさんの人が。」

 

 コワード「なにい〜!?」

 

 有理香「…バクタリちゃん………。」

 

 

 バクタリ「僕は確かに、自分は運がなく、価値のない人間だと思っていた………

 

 でも、有理香さんと過ごすうちに、そんな事は無いと気づけたんだ。」

 

 バクタリの言葉に有理香は少し嬉しそうな表情になる。なおもバクタリは語る。

 

 バクタリ「大好きな動物たちだけじゃなくて、こんな姿の僕にも優しくしてくれて、家に入れてくれて、僕が少しでも手伝いをしたら、笑顔で礼を言ってくれた………。

 

 そして僕は気づけたんだ…人間の価値は運がある無いじゃない………動物も入れて、他のモノのためにできるかどうかで分かるんだと…。

 

 僕、有理香さんならどの動物とも仲良くなれて、立派な動物トレーナーになれると信じてる………だから、将来そんな有理香さんの幸せな姿を見るのが、僕の夢なんだ。

 

 だから………僕にはそんな有理香さんが楽し暮らすこの街を、破壊する事はできない!」

 

 

 有理香「…バクタリちゃん…。」

 

 

 バクタリの気持ちを聞いた有理香は嬉しそうな表情で安心する。

 

 一緒に過ごしていくうちに紡いで来た二人の絆が、見事闇の力に勝ったのてある!

 

 

 櫂「…そっか、そういうことか。」

 

 海羽「…ほえ?」

 

 櫂も何かに気づいたのか、納得するような反応をする。

 

 

 コワード「ちぇっ、こうなってしまっては仕方ない。俗物はちゃんと始末しないとな。

 

 

 ドリームギラス!!処刑しろ!!」

 

 

 “ゴゴゴゴゴゴゴゴ…”

 

 

 コワードの叫びが響くと、突如地面が激しく揺るぎ始める!

 

 

 有理香「!ひゃっ!?」

 

 バクタリ「な、何だ?」

 

 

 櫂「何が起ころうってんだ!?」

 

 海羽「はっ、櫂君あれ!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 “キュピキュピキュピ キョッキョッキョ”

 

 

 突如、地面が割れて爆発が起こり、そこから奇妙な鳴き声と共に巨大生物が現れる!

 

 

 魚を奇妙にデフォルメしたような顔に口の下のドリル状の突起物、長い尻尾が特徴の超獣『夢幻超獣ドリームギラス』である!

 

 

 ドリームギラスは手始めに周囲に口からの水流や赤い液体を吹き付ける!

 

 水流の威力は一撃でビルが粉々になるほどであり、赤い液体は浴びた場所が大爆発し炎が燃え上がる。

 

 

 バクタリ「あ………あれだ!」

 

 有理香「夢に現れた怪獣!」

 

 

 ドリームギラスを見たバクタリ(義雄)と有理香は驚く。

 

 なんでも先日の夢に出てきた怪獣と同じ姿をしているというのだ!

 

 

 コワード「怪獣じゃない。超獣ドリームギラスだ。

 

 その通り!こいつには人の夢に現れたり、擬態したりする力がある。

 

 こいつに水をかけられる夢を見させることでおねしょをさせ、それによって更に馬鹿にされることでマイナスエネルギーを発生させようとしたのだ。

 

 まあ最も、その女(有理香)に関しては失敗したけどね………あの俗物(バクタリ)のせいで!」

 

 

 作戦を邪魔された上に用済みとなったバクタリに怒りを向けるコワード。

 

 

 バクタリ「じゃあ、僕のおねしょももしかして…!?」

 

 コワード「その通り!こいつが擬態していたのだ。

 

 子供のおねしょが一番、怪しまれずに隠れられるからね~。」

 

 

 有理香「それで人が寝静まった所を狙って夢の中に侵入させてたわけね………人の中に入るなんて………俗物はどっちよ!?」

 

 

 コワード「俺様の作戦の邪魔をする方だろ~!今からそれを始末させるんだ。行け!」

 

 

 コワードの指示を受け、ドリームギラスは進撃する。

 

 

 バクタリ「有理香さんが好きなこの街を………壊させない! うおおおおああ………!!」

 

 

 バクタリはドリームギラスに立ち向かう!

 

 そして二体は組み付く。悪夢を食べるバクタリと、悪夢を作るドリームギラス。所謂“夢”関係の超獣同士が今、ぶつかり合う。

 

 

 変身しようとした櫂と海羽もふと手が止まる。

 

 櫂「何なんだ一体?」

 

 海羽「何が起こってるの~!?」

 

 

 二体の巨大な超獣の戦いの激しさは、周りに地響きが起こり、土砂などが巻き上がるほどである。

 

 ………だが、バクタリは次第に押されていき、やがて力負けして押し倒される!

 

 

 姿は超獣とはいえ、中身は小学生の少年。本物の超獣に叶うはずもなかった。

 

 

 だが、バクタリは立ち上がって再度ドリームギラスに立ち向かう。

 

 有理香の存在が、軟弱だった義雄をここまで強くさせたのだ。

 

 

 バクタリはドリームギラスにがむしゃらに両腕のパンチを放つが、ドリームギラスはそれを受けても物ともせず、逆に右フックで返り討ちに遭わせ、次にしゃがんだところで腹を蹴り上げて吹っ飛ばす。

 

 

 バクタリは横たわりながらも爪先から火炎を噴射して攻撃を仕掛ける!

 

 だが、ドリームギラスは即座に水流を吹き、水流は火炎を消し飛ばしながら飛んで行き、やがてバクタリに直撃する!

 

 バクタリはそのまま主流に押されて吹っ飛び、地面に落下する。

 

 

 ドリームギラスはうつ伏せに倒れるバクタリに尻尾を何度も打ち付けて追い打ちをかける!

 

 

 尻尾で何度も打ち付けられても立ち上がろうとするバクタリを見守る有理香。

 

 

 すると、有理香は動物たちと共にバクタリに声を掛け始める!

 

 

 有理香「頑張ってバクタリちゃん!」

 

 

 バクタリ「………有理香……さん………?」

 

 

 有理香「私、あなたならもっと強くなれると信じてる!だからあなたは俗物なんかじゃない!

 

 

 この子たちの散歩を手伝ってくれた………遊園地での芸に、協力してくれた………うさぎちゃんに、餌をやってくれた………とってもいい子なんだもん!!」

 

 

 バクタリ「有理香さん………。」

 

 

 有理香「私、バクタリちゃんと過ごして、とっても楽しかった!

 

 この子たちもそう思ってるよ!」

 

 

 有理香に同調するように、動物たちも一斉に応援のような鳴き声を上げる。

 

 

 バクタリ「………僕も同じだよ、有理香さん………。」

 

 

 有理香「………へ?」

 

 

 バクタリ「僕も、有理香さんと過ごしたおかげで変われた………今なら、自信持って言えるよ!」

 

 

 有理香「………バクタリちゃん………。」

 

 

 バクタリ「君を想う力が………僕を強くしてくれたんだ………………。」

 

 

 互いの絆を確かめ合うバクタリと有理香、動物たち。

 

 櫂と海羽もそれが分かったのか、みつめながらふっと笑顔になる。

 

 

 コワード「くだらん。ドリームギラス!やれ!」

 

 だが、無情にもコワードが指示を出し、ドリームギラスは口から赤い液をバクタリに吹き付ける!

 

 

 “ドガガガガーン”

 

 

 バクタリ「あああ!………ああっ!………。」

 

 

 赤い液を浴びたことにより、爆発を起こしたバクタリは、崩れ落ちるようにその場に倒れ込む。

 

 有理香は両手で口を押さえ、動物たちも鳴き声が止んでしまう。

 

 

 うつ伏せに倒れた状態で身体から煙を上げながら痙攣するバクタリ。完全に弱っていた。

 

 

 コワード「いっひっひ、そろそろトドメと行きますか。ふんっ!」

 

 

 コワードは腕をクロスさせ、光と共に巨大化する!

 

 

 コワード「今こそこれの出番だな。」

 

 そう言いながら、何やら妙な形状の銃を取り出すコワード。

 

 コワード「俺が開発した新兵器・ナターンビームガンだ。

 

 今こそこれで俗物を………焼き尽くしてやる!!」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 コワードは叫びと共にナターンビームガンからエネルギー弾を放つ!

 

 

 邪悪な光の弾丸はバクタリ目掛けて一直線に飛んで行く………!絶体絶命!

 

 

 バクタリ「うわあああああ!!」

 

 有理香「はああっ!!」

 

 

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ!!」

 

 

 “ギュイインウウウゥゥン”

 

 

 左腕のウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させていた櫂は、それを目に装着して赤と青の光と共に巨大化し、『ウルトラマンゼロ』へと変身する!

 

 

 

 バクタリ「………僕………もうここまでか………………。」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 バクタリ「………ん?」

 

 

 諦めかけてたバクタリは、自身の前で眩い光とともに何かが爆発した音を聞いてふと振り向く。

 

 

 

 そこには、両手を突き出して光の障壁を出現させて立っている一人の巨人の後ろ姿があった。

 

 

 そしてその巨人はバクタリの方を振り向き、ゆっくりと頷く。まるで「よく頑張ったな、あとは任せろ。」と語り掛けるように。

 

 

 鋭い目つきに頭部のトサカのような二本のスラッガーを持つその巨人こそ、櫂が変身した光の巨人『ウルトラマンゼロ』であった!

 

 現れたゼロは光の障壁『ウルトラゼロディフェンダー』を展開させ、バクタリに向かう弾丸を防いだのである。

 

 

 バクタリ「………ウルトラマン…ゼロ…。」

 

 

 ゼロの登場に安心したのか、バクタリはどこか嬉しい表情をしているようであった。

 

 

 はて、しかし最初はバクタリを撃破しようとした櫂だが、なぜ今“守ろう”という意思に変わったのであろうか、、、?

 

 

 それは、バクタリが元は軟弱な少年だと分かったからである。

 

 思えば自身もかつて、気弱でいじめられる日々を送る過去がある、、、。

 

 そして、大切な女性の存在のおかげで強くなれた…。

 

 これらの事から、櫂はバクタリになってしまった少年に何かしら自分に似た所を感じ、それにより憎悪から同調に変わり、行動も撃破から肩入れに変わったのであろう…。

 

 

 自身もかつては虐められる立場だった櫂。なので彼は、軟弱で虐められる人の気持ちがよく分かるのである。

 

 

 

 コワード「現れたなウルトラマンゼロ!」

 

 コワードはドリームギラスと共に構えを取って威嚇する。

 

 

 バクタリ「ゼロ………有理香さんが好きな………この街を守って………。」

 

 バクタリはだいぶ弱っていてのか、若干震えた声でゼロに懇望する。

 

 そして、疲れて倒れ込むように横たわる。

 

 

 ゼロ「…任せろ!」

 

 ゼロはお疲れとばかりにサムズアップを決めた後、コワードたちの方を鋭く振り向き構える。

 

 

 コワード「貴様も今にあの俗物みたいにしてやる!かかるぞー!」

 

 コワードは叫びながらドリームギラスと共にゼロ目掛けて掛け始める!

 

 

 ゼロ「さあっ!!」

 

 

 (BGM:DREAM FIGHTER)

 

 

 ゼロも気合いの掛け声と共に颯爽と駆け寄る。

 

 そしてドリームギラスの腹部に正拳突きを叩き込む!

 

 強烈な一撃によりドリームギラスはたちまち怯んで後退する。

 

 

 だが、すぐさま負けじと右フックを繰り出して反撃するが、ゼロはそれを側転してすれ違うように交わした後、胸部に渾身の右脚蹴りを叩き込む!

 

 ドリームギラスは反撃の頭突きを繰り出すがゼロはそれを両手で掴んで押さえ込む。

 

 

 コワード「今がチャンス!」

 

 

 その隙にコワードが後ろから襲いかかるが、、、

 

 

 ゼロ「せあっ!」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 コワード「!あら〜!?」

 

 

 歴戦の勇者・ゼロに死角無し!ゼロはそのまま後ろ回し蹴りを打ち込んでコワードを吹っ飛ばす。

 

 そしてその後ドリームギラスを横方向に投げ飛ばした。

 

 

 少年を利用し、更に人の夢を踏みにじる卑怯な作戦を展開したナターン星人と超獣。それに怒りを燃やすゼロはその2体を物ともせず圧倒していく、、、!

 

 

 コワード「小癪なっ!」

 

 コワードはナターンビームガンからエネルギー弾を放つが、ゼロはそれをしゃがんで避けると同時に滑り込むように突っ込み、腹部に右脚蹴りを叩き込み、それを受けたコワードはスピンして地面に叩き付けられる。

 

 

 ドリームギラスは長い尻尾を振るって攻撃を仕掛ける。

 

 ゼロはそれを避けるどころか掴んで受け止める。

 

 

 コワード「よーし、今のうちに…」

 

 コワードが再びエネルギー弾を撃とうとしたその時、

 

 

 海羽「どーん!」

 

 

 “ボーン”

 

 

 コワード「うおあっ!!?」

 

 

 突如、死角からソルの跳びかかってのヒップアタックを受けてたまらす吹っ飛ぶ。

 

 海羽もいつの間にかウルトラウーマンSOL(ソル)に変身していたのだ。

 

 

 コワード「貴様も邪魔するというのか!?」

 

 

 海羽「ええ。人の心を利用するなんて許せない!

 

 

 月に代わって、お仕置きよ!」

 

 ソルは某変身ヒロインのような台詞を口走り、更にポーズまで真似てしまっている(笑)

 

 

 コワード「…今は昼間だが?」

 

 海羽「なっ……ノリだよノリ~!」

 

ソルはコワードの的確なツッコミに思わず恥ずかしそうに慌てる。

 

 

 コワード「どうでもいい!貴様も容赦はせんぞ!」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 ソル目掛けてエネルギー弾を撃つコワード。

 

 

 海羽「よっと。」

 

 ソルはそれを脚を前後180度に開脚しながらしゃがんでかわし、その後前転をしながら接近して………

 

 

 海羽「えいっ!」

 

 

 “チーン”

 

 

 コワード「!!?ぎょおおおおあああぁぁぁぁ~!!」

 

 

 なんとコワードの大事な“あそこ”に蹴りを打ち込んでしまった!

 

 

 痛さの余りにあそこを押さえてしゃがんで悶絶するコワード。ソルはそれを土台にして「よいしょ!」と言いながら跳び箱の要領で跳び越える。

 

 

 一方のドリームギラスの尻尾を掴んでいたゼロも、そのまま数回手刀を打った後、背中に右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ドリームギラスはコワードの傍に落下する。

 

 

 立ち上がったドリームギラスは、再度ゼロに尻尾攻撃を繰り出す。

 

 

 ゼロ「せいっ!」

 

 

 ゼロは頭部の二本のゼロスラッガーを投げつける。

 

 二本の宇宙ブーメランは複雑な軌道を描きながら飛び、そしてドリームギラスの尻尾を瞬時に切り刻んだ!

 

 

 ドリームギラスが怯んでる隙にゼロスラッガーはゼロの頭部に戻り、ゼロとソルは一旦合流する。

 

 海羽「お待たせ櫂君。」

 

 ゼロ「おう!」

 

 

 二人は二体の方を向いて構える。

 

 ゼロ「超獣の方は任せた。」

 

 海羽「オッケー。」

 

 ゼロの指示にソルは了解する。

 

 いつもよりどこか物静かに喋るゼロ。その様子からはどこか静かな怒りを感じる………。

 

 

 コワード「二人まとめて吹っ飛ばすぜ!」

 

 ゼロとソルをまとめて吹っ飛ばそうと、逆上したコワードが再びナターンビームガンを構えたその時、

 

 どこからか霧のようなものが飛んで来て、それがナターンビームガンに当たったかと思うと、その光線銃は一瞬にして溶けてしまった。

 

 

 コワード「あああ~!!俺のナターンビームガンがっ!?」

 

 

 自身の武器が突如溶けてしまった事に驚くコワードは、その霧が飛んで来た方へと振り向く。

 

 そこには最後の力を振り絞って立ち上がっているバクタリの姿があった。

 

 

 そう、先ほどナターンビームガンを溶かした霧は、バクタリの頭頂部の突起から噴射されたあらゆるものを風化する溶解霧・バクタリ光線である。

 

 

 コワード「おのれ貴様~!」

 

 

 怒るコワードがバクタリに向かおうとしたその時、

 

 

 “ガシッ”

 

 

 コワード「ぬっ!?」

 

 

 ゼロ「どーこ見てんだ? お前の相手は、この俺だっ!」

 

 

 “ズガンッ”

 

 

 コワード「!!ぐうおはっ!!」

 

 

 ゼロに後ろから頭を掴んで止められ、振り向いたところに右フックを喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 

 コワードは怯まずゼロに接近し、二人は組み合いを始めるが、そこにゼロが腹部に膝蹴りを二発打ち込み、跳躍して首筋に手刀を打ち込んで右アッパーを叩き込んだ後、一回転しての右ハイキックを頭部に打ち込んで吹っ飛ばした!

 

 立ち上がった後、再びゼロ向けて跳びかかるが、ゼロはそれを跳躍してかわすと同時に背中に右脚蹴りを叩き込む!

 

 コワードはたまらず小さな岩山に激突し、そのまま地面に倒れ伏した。

 

 

 かつて同族がウルトラマンティガに瞬殺されたように、戦闘力自体は低いナターン星人。

 

 今回も怒りに燃えるゼロにほぼ一方的に圧倒されていく………。

 

 

 

 ドリームギラスと戦うソルは、ドリームギラスの高圧水流を跳躍して避けると、そのまま肩車をしてもらうように跳び付き、そのまま「エイ、エイ、エイ、…」と言いながら頭部に小刻みのパンチを連打する。

 

 そしてそのまま頭部を脚で挟んだままフランケンシュタイナーの要領で地面に叩き付ける。

 

 

 ドリームギラスは右腕を振るって殴り込むが、ソルはそれを両腕で掴んで受け止め、そのまま「えいっ! とうっ!」と言いながら左脇腹に右脚蹴りを二発打ち込み、更に腹部に右足蹴りを打ち込んでしゃがませたところに「それっ!」という掛け声と共にヒップアタックを顔面に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 ソルは両腕に赤とピンクの光を纏わせてライトニングハンドを形成して猛接近する。今こそトドメを刺すのだ!

 

 ドリームギラスは口から赤い液体を噴射して返り討ちに遭わせようとするが、ソルはそれを咄嗟に後ろ向きにしゃがんでかわし、そのまま滑り込むように接近し続ける!

 

 

 海羽「ソリッドライトブレイク!!」

 

 

 ソルは滑り込んで接近しながらライトニングハンドの両手を合わせ、すれ違いざまにドリームギラスを一直線に斬りつける!

 

 これぞ、ライトニングハンドを用いた中での最強技・ソリッドライトブレイクである!

 

 

 ドリームギラスは切り口から光を発しながら倒れ、やがて大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 海羽「やったーっ!」

 

 

 ソルはドリームギラスの爆風を背に、身体を横向きにして首をかしげて右拳を顎の下に当ててポーズを決めた。

 

 

 

 怒りのパワーで、卑劣なナターン星人コワードを圧倒していくゼロ。

 

 

 既にストロングコロナゼロになっていたゼロは、両拳に炎を纏って猛接近し、そして左右交互の炎のパンチを物凄い速さで連続で打ち込んだ後、強烈な右拳の一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 だが、コワードはなおも立ち上がって腕から光弾を発射するが、ゼロはそれを手を突き出しただけで防いでしまう。

 

 

 ナターン星人コワード………戦闘力はそれほど無いくせにタフさだけは中々の者である(笑)

 

 

 コワードは動揺しながらも光弾を連射し続けるが、ゼロはそれらを手を少し振るうだけで弾き飛ばしつつ歩いて接近する。

 

 完全に余裕綽々である(笑)

 

 

 コワード「なっ………何故だ!? なぜ、あんな俗物のために!!?」

 

 

 コワードは最後のあがきとばかりにゼロに心無い事を叫ぶ。

 

 

 ………だが、その心無い言葉こそ、命とりとなってしまうのだ!

 

 

 ゼロは一旦立ち止まり、少し俯いたまま拳を震えるほど強く握り始める………。

 

 

 ゼロ「………俗物………だと?」

 

 

 コワード「えっ?」

 

 

 ゼロは俯いたまま静かに呟いた後、そっと顔を上げて握った右拳を上げ始める。

 

 

 ゼロ「何故そう言い切れる?

 

………何かと言えば俗物俗物と………お前にはそれにしか見えないのか?あいつ(バクタリ)が…。」

 

 

 コワード「………なっ………なにを?」

 

 

 コワードは、ゼロの強力な怒りの闘志に完全に怖気づいてしまっていた。

 

 

 そしてゼロは右拳を振り上げて………

 

 

 

 ゼロ「歯ぁ、食いしばれーーーーーっ!!!」

 

 

 

 “ズバキャッ”

 

 

 コワード「ぐおあああぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 

 怒りの鉄拳を顔面に叩き込み、それを受けたコワードは空高く吹っ飛び始める。

 

 

 ゼロ「お前が人間の価値がどうとか決めつけるにゃ、二万年早いぜッ!!

 

 お前のその腐った正念、訂正してやるーっ!!」

 

 

 ゼロはそう言いながら飛び立ち、青い光を発しながら今度はルナミラクルゼロへと変わる。

 

 ゼロ「ルナミラクルゼロ。」

 

 怒りが頂点だからこそ、頭がシーンと冷えるモノである。そういう時こそ、クールに決める時だ!

 

 

 そしてゼロはコワードの位置まで飛んで静止すると、右手を額に当てて精神を統一する。

 

 

 ゼロ「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 

 そして右手を突き出すと共に、頭部から無数に分裂する光のゼロスラッガー・ミラクルゼロスラッガーを飛ばす!

 

 

 無数の光の宇宙ブーメランは四方八方へと飛んでいき、やがて全方向からコワードの体を滅多斬りにする!

 

 

 そして、ゼロが着地すると同時にゼロスラッガーも元に戻り頭部に収まる。

 

 

 コワード「ぎゃあああぁぁぁ……アイ・アム・ジ・エンドーーーッ!!」

 

 

 “ドガガガーン”

 

 

 空中で滅多斬りにされたコワードは、ゼロが着地した後時間差で叫びながら大爆発して消し飛んだ。

 

 

 ゼロ「ヘッ………きたねえ花火だぜ。」

 

 

 ゼロは爆風を見上げて親指で口元をさすりながら、某サ○ヤ人のような台詞を言う(笑)

 

 

 バクタリ「………やった。」

 

 有理香「勝ったわ。」

 

 バクタリはゼロたちの勝利を喜びつつ多少よろけながらも立ち上がり、有理香も両手を合わせて握って、嬉しそうな表情で呟いた。

 

 

 海羽「やったね、ゼロ(ピース)。」

 

 ゼロ「ああ、お疲れ。

 

 ………人間の価値ってのは、力とか、運じゃねえ。

 

 他のモノのために、尽くせるかだ。」

 

 海羽「(陽気そうに)そうそう。」

 

 

 ゼロはそソルと合流した後、残ったバクタリの方へと歩みを始める。

 

 

 有理香は、ゼロとソルの方へと向かうように走った後、こう叫ぶ。

 

 

 有理香「ウルトラマーン!

 

 バクタリちゃんを助けてあげてー!」

 

 

 その声を聞いたゼロとソルは静かに頷く。

 

 

 ゼロ「フルムーンウェーブ。」

 

 海羽「ゴッデスピュアリファイ。」

 

 

 二人は右手を突き出し、ゼロは鎮静光線・フルムーンウェーブ、ソルは浄化光線・ゴッデスピュアリファイを放つ。

 

 二つの光線はゆっくり飛びながら合わさり、その様子はまるでオーロラの夜空に雪が降ってるようでどこか幻想的である。

 

 

 光線を浴びたバクタリは、粉雪とオーロラのような光に包まれる。

 

 そして、少しずつではあるが体が透け始める。ゼロとソルの奇跡の力により、今まさに超獣バクタリから少年の義雄に戻ろうとしているのである。

 

 

 有理香「バクタリちゃん………。」

 

 

 光線に包まれて姿が消えかけているバクタリは有理香の方を振り向き、少ししゃがむ。

 

 

 バクタリ「有理香さん………ありがとう………………楽しかった………。」

 

 有理香「………(涙をこらえて少し笑顔で)私も同じだよ。」

 

 バクタリ「僕………有理香さんの幸せな未来を夢見てます………(手を振りながら)また、会おうね。」

 

 有理香「………約束だよ。」

 

 

 バクタリを有理香は、別れの会話と同時に次また会う事を約束する。

 

 有理香の目からは、一筋の涙が頬を伝い、やがて下に落ちていく。

 

 

 やがてバクタリは光に包まれた状態で手を振りながら小さくなっていく様に消えていき、やがて完全に姿を消してしまった………。

 

 

 有理香「バクタリちゃん………………

 

 さようならーーー!!!」

 

 

 バクタリが消えていくのを見届けた有理香は、遂に感極まったのか、別れの挨拶を精一杯の声で叫ぶと、そのままその場で泣き崩れ始める。

 

 

 いずれ別れることにはなる………そう感じてはいたのだが、いざ別れると寂しさは思ってたよりも倍になるモノである。

 

 

 動物たちは、泣き崩れる有理香を慰めるように彼女に寄り添う。

 

 有理香「ぐすんっ………ぁ………ごめんね君たち………。」

 

 有理香はなんとか泣き止み、動物たちを抱き寄せる。

 

 

 有理香「必ず………全ての動物と仲良くなって、立派な動物トレーナーになるからね、バクタリちゃん………………。」

 

 少し涙ぐみながらも、少し笑顔で上を向いて夢に向かっての決意を新たにする有理香。

 

 未知の生物との生活。それが、一人の女性に再び夢を追う自信を持たせたのである。

 

 

 海羽「一件落着だね。」

 

 ゼロ「ああ、俺たちもそろそろ手を引くか。」

 

 海羽「オッケー。」

 

 ゼロとソルも、光と共に姿を消した。

 

 

 動物たちとともに帰り道を歩く有理香。

 

 その様子を見つめている一人の少年がいた………。

 

 その少年こそ、バクタリから元の少年の姿に戻れた義雄であった。

 

 

 義雄「………有理香さん………。」

 

 

 

 あれから数日後、沢城有理香はごく普通の生活に戻っており、いつもの様に動物たちと散歩をしたりなど、動物たちと触れ合う毎日に戻っていた。

 

 

 ………だが、動物好きな有理香にとっては楽しい一時のはずなのに、どこか浮かない顔になっていた………。

 

 バクタリとの生活が終わった事により、心にぽっかりと穴でも開いたのであろうか………?

 

 

 そしてある日、この日有理香は雑誌などの編集記者からのインタビューに答える日だった。

 

 

 今の動物たちの調子や将来への目標など、記者たちの質問に答えていく有理香。

 

 だが、心の中ではバクタリの事を思い続けていた………。

 

 

 有理香(バクタリちゃん………………元気にしてるかな………?)

 

 

 その時、有理香はあるモノに気付く。

 

 

 有理香「はっ………。」

 

 

 それは、とある一人の少年が、自分たちの前を通り過ぎていくところだった。

 

 しかもその少年は、手に何やらデフォルメされた獏のぬいぐるみを持っている………。

 

 

 そう、その少年こそ、バクタリの姿で有理香と交流した義雄であった。

 

 

 有理香はバクタリの正体を見てはいないが、その獏のぬいぐるみを持った少年を見た瞬間、何かを確信したのか、ふと笑顔になる。

 

 

 有理香(………バクタリちゃん………私、頑張るからね………………。)

 

 

 そして再び感極まったのか、その場でしゃがんで、嬉しさも含めたすすり泣きを始めてしまう。

 

 

 「あれ?沢城さん?」

 

 「どうされましたか?」

 

 

 記者たちの心配も無視するように嬉し泣きを続ける有理香。

 

 だが、彼女の泣き顔自体はどこか笑っているようにも見えた………………。

 

 

 

 そして、先ほど有理香たちを通り過ぎた義雄はというと、いつもの空き地に向かっていた。

 

 

 義雄「有理香さん………僕、頑張る。だから有理香さんも頑張ってね………楽しみにしてるから。」(独り言)

 

 

 その顔には、バクタリになる前までのどこか冷たい感じはまるでなく、自身のある笑顔に溢れていた。

 

 

 怪獣とか関係なく動物好きの一人の女性との出会い、そして交流が、ネガティブだった彼に自身を持たせたのであろうか………。

 

 

 義雄が空き地に着いた時、また例のガキ大将が、他の人からお菓子を横取りしている最中だった。

 

 男女関係なく威張ってお菓子を横取りするガキ大将。中には泣き出す者までいた。

 

 

 義雄「またかよ………仕方ない。」

 

 

 そう言うと義雄は、なんといつもなら逃げ腰になるはずが、足早にガキ大将に向かって行く………!

 

 

 威張り続けるガキ大将。すると、自身の肩に何かが触れる感覚がして振り向く。

 

 そこには、自身の肩に手を置く義雄の姿があった。

 

 

 「なんだ義雄!?」

 

 義雄「やめなよ。お菓子をみんなに返すんだ。」

 

 

 「ああ?何言ってんだお前?」

 

 ガキ大将は勢いよく振り向き義雄を威嚇し始める。

 

 義雄は思わずビビる。少しながら強くなっていたとはいえ、やはりガキ大将の威圧感からの恐怖は凄いモノだった。

 

 

 「義雄のくせに、生意気だぞ?」

 

 某国民的アニメのガキ大将のような台詞を言いながら詰め寄るガキ大将。義雄は思わず後ずさりを始めていた………。

 

 

 今回も、力敵わず負けてしまうのだろうか………?

 

 

 

 だが、その時義雄は横目であるモノに気付く。

 

 

 眼鏡をかけていて、長髪を後ろに束ねていて、、、そして多種の動物を連れている女性が空き地を通り過ぎようとしているのを………。

 

 その女性こそ、義雄がバクタリの姿で交流した有理香であった。

 

 有理香はインタビューを終えたばかりで今帰る最中である。

 

 

 その有理香の楽しそうな横顔を見た義雄は、さっきまで怖気づいていた顔がふと笑顔に変わった。

 

 

 義雄(有理香さん………………逃げちゃだめだ………有理香さんのおかげで、自信がついたんだから………!)

 

 

 勇気を取り戻した義雄は仁王立ちをしているガキ大将を睨み付けるように見つめ始める。

 

 

 そして、仁王立ちをしているからこそ大きく開いている脚を見て“ある所”に気付き、それにより“ある事”を思い出す………!

 

 

 〈回想〉

 

 海羽「えいっ!」

 

 

 “チーン”

 

 

 コワード「!!?ぎょおおおおあああぁぁぁぁ~!!」

 

 〈回想終了〉

 

 

 そう、先日の戦いで、ソルがコワードの“あそこ”を蹴って悶絶させた事だった………!

 

 

 義雄は一旦足を踏ん張り、その仁王立ちしているがためにむき出しになっている“あそこ”目掛けて………!

 

 

 

 “チーーーン”

 

 

 

 有理香「ん?………誰かオーブントースターでパンでも焼いてるのかな?」

 

 空き地を通り過ぎたばかりの有理香は、そのまま歩き去って行った………。

 

 

 

 その頃、空き地の様子はというと………、

 

 

 さっきまで仁王立ちをして威張っていたガキ大将が、何やら横になって完全に伸びていた………。

 

 しかも股間を押さえて(笑)

 

 

 そして義雄は、ガキ大将が横取りしていたお菓子を取り戻しており、皆から感謝の言葉を受けていた、

 

 

 義雄は、ガキ大将のむき出しになっていた股間に蹴りを炸裂させ、見事ダウンさせたのである!(笑)

 

 

 見事ガキ大将を倒した事であっという間に皆から注目される義雄は、一人ずつにお菓子を返していく。

 

 

 

 義雄(有理香さん………僕、やったよ。)

 

 

 有理香との交流は、確かに彼を強くさせていた。

 

 

 

 しばらく経って、義雄は駆け足で家に帰った。

 

 なんでも今日は両親が帰ってくる日であるらしい。

 

 

 家に帰った義雄は、部屋でテレビを見ながら今か今かと待ち続けていた………。

 

 

 “ガチャッ”

 

 父「ただいまー。」

 

 

 両親が帰ってきた。

 

 

 義雄「あ…パパとママだ!」

 

 義雄は嬉しそうに玄関に走って行く。

 

 

 義雄「ただいま~!」

 

 母「ただいま義雄!ちゃんとお留守番してくれたみたいね。」

 

 義雄「うん!」

 

 

 父「義雄、元気にしてたか?」

 

 

 義雄「………うん!」

 

 

 

 義雄は満面の笑みで元気に返事をした。

 

 

 自身がバクタリになった事については、自分だけの秘密という事であえて黙っておくことにした………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?


 今回はウルトラマンギンガS第11話を思う人もいれば、ウルトラゾーンを思う人もいたと思います(笑)


 バクタリ自体は結構マイナー寄りの超獣ですが………実は私、幼い頃バクタリの見た目などがが怖くて、夢にも出てくるほどのトラウマだった思い出があって、それも含めて個人的に印象に残っている超獣なのです。

 まさか自身のトラウマだった超獣が主役の、しかも等身大で人間と交流する話を書く日が来るとは思いもしませんでした(笑)

 因みにバクタリは鼻を使って物を食べる、嗅覚が鋭いなどの新設定は、私が自分なりに考えてみた新解釈です(笑)


 私自身、ウルトラマンAの超獣が結構好きでもあります(笑)何と言うか、他の怪獣には無い、あの派手で毒々しい感じがたまらないのです。

 出来たら本作で全超獣を出したい程ですね(笑)

 因みに私、超獣だとドラゴリーがお気に入りです。


 因みに今回、事情を知らなかったとはいえ、前半は櫂君と海羽ちゃんが少し悪者に見えてしまいましたね。(特に櫂君(笑))


 余談ですが、Aでのバクタリの動きが意外にも俊敏で、その様子が某梨の妖精に似てると思うのは私だけでしょうか?(笑)


 後書きが長くなってすいません。

 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 因みに隠れていたサブタイトルは、

 『君を想う力』(ウルトラマンダイナ第46話)

 でした。
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