艦隊これくしょん -鹿屋基地第六〇三戦闘大隊の日常-   作:リュウ@夕立提督

10 / 28
教官電、降臨。

それから初めてルビふった。なのです。


9話「新人研修」

「今日は確か・・・特にないか。」

 

朝食を済ませた僕は部屋へ向かう。

僕は今日一日非番とはいえ、他の皆は任務や遠征、出撃があるから部屋には居ない。

そう思いながら廊下を歩いていると、窓から電の姿が見える。

艤装を纏った状態で立っている。あそこは確かランニングコースだったはず・・・

 

「ああ、そういえば江風の研修中だっけか。」

 

この鎮守府では新しく来た艦娘はそれぞれ教練担当の艦娘がついて訓練を行う。

僕たちはそれを新人研修と呼んでいる。

そして、江風の教練担当は電なんだけど、ただでさえ厳しい駆逐艦の中でも電は2番目に厳しい。

まあ、それが毎回新人が受ける洗礼みたいなものだけど。

 

「部屋に一人で居るよりは・・・」

 

僕は踵を翻し、電の居る所へ向かう。

 

 

 

電の元へ着くと、電がこちらに気づく。

 

「時雨ちゃん、どうしたのです?」

 

「いや、今日は非番でね。部屋に一人で居るよりはいい暇つぶしになるかなと思ってね。」

 

「暇つぶしって・・・ある意味ひどいのです。」

 

「それで、江風の研修の方はどう?」

 

「そうですね・・・今はまだ基礎訓練なのでなんとも言えないけれど、少しずつ、電の訓練に順応しつつあるのです。」

 

「流石江風・・・根性あるね・・・」

 

「どちらかと言うと、負けず嫌いな気もするのです。」

 

そんな会話をしていると、途中で電があ、と声を漏らす。

 

「・・・江風ちゃん、さっきから進んでないのです。その一周が終わったら休憩にするのでもう少し頑張ってください。」

 

江風がサボっていたのかな?

 

「電の電探を甘く見ないで欲しいものなのです。これでもそれなりに良いものをもらってるのですよ?」

 

「電、電探の使い方間違ってない?」

 

「どちらにせよレーダーなのです。」

 

ドヤ顔でそんな事を言われても・・・

江風も頑張ってるみたいで安心した。

まあ、僕たちに新人研修はなかったから何とも言えないんだけどね。

代わりにちょっと演習や訓練して慣れた時に即実戦投入されたけど・・・あの時は夕立も電も練度と経験不足だったから今みたいに教官をするって事はできなかったから仕方ないといえば仕方ないんだけども。

昔の事を思い出していると江風が走ってくる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・きっつ・・・!」

 

「基礎訓練程度で音をあげてもらっては困るのです。休憩したら今度は鎮守府10周なのです。」

 

「な!?マジかよ・・・」

 

「電も一緒に走るから安心するのです。休憩が終わったら自分の艤装を取ってきてくださいね。」

 

「ああ、だから電は艤装を纏った状態だったんだね。」

 

僕の発言に対して江風が「意味わからん」と言いたげにこちらを見る。

 

「要は、艤装で身体に負荷をかけて訓練するって事さ。」

 

「そういう事なのです。」

 

「僕たちは研修ができなかった代わりにそういう自主練を頻繁にやっていたもんね。」

 

「なのです!」

 

僕と電が話していると、江風が割って入る。

 

「そういや訊き忘れてたけどさ、電さんは江風に何を学ばせようと思ってんの?」

 

電は唐突に質問されて少し驚いたが、すぐに冷静に話し始める。

 

「そうですね・・・まずは『生き抜く術』です。駆逐艦は攻撃を回避して、生き残ってなんぼな艦種ですから。ここは菊月ちゃんと同じですね。」

 

そう言うと電は自分の魚雷発射管から1本模擬魚雷を抜いて持つ。

 

「次に『戦闘技術』ですね。夕立ちゃんや時雨ちゃんほど上手く教える自信はないのですが、ある程度までなら学べると思います。主に雷撃戦になると思いますけどね。」

 

僕よりは電の方が教え方上手いと思うけどな。

そう思っていると電が続けて口を開く。

 

「それから・・・『敵艦を含めた艦の救助方法』です。まあ、やる事自体は難しい事ではないのですが、行動に起こすのが難しいんです、敵でも味方でも。何せ救助対象は基本的に大破していたり炎上していたりする事が多いですから。」

 

「ったく、鬼教官かと思ったらとんでもなく甘いもんだな。味方の救助はともかく、敵まで救助しようなんて考えられねぇよ。」

 

江風がそう言った直後、電がものすごく爽やかな笑顔を見せる。でも目元が暗い気がする。

 

「江風ちゃん、休憩後の鎮守府ランニングを20周に引き上げますよ?」

 

「すみませんでした。」

 

あ、これ他所で見た事ある。「プラズマちゃん」ってやつだ。黒い。

しかし、江風に「すみませんでした」と言わせるなんて・・・つくづく恐ろしいな、電は。

これが初代秘書艦の力、なのかな。

 

「この感じだと、明日は座学をやるの?」

 

「なのです。そろそろ座学もやっていかないと。」

 

僕の質問に電はさらっと答える。

・・・返事になのです(それ)を使うのはどうなのさ。わかる僕も重症なんだろうけど・・・

 

「ん、誰からだろ?」

 

突然僕の携帯端末から着信音が鳴る。

端末を取り出してスリープ状態を解除すると、夕張さんからメールが来ていた。

 

『件名:安全装置の件

 本文:安全装置完成したからちょっと工廠まで試し切りに来てー☆

 それで、後で感想聞かせてね!』

 

あれ、完成するの早くないかな?数時間前まで作ってたよね?

 

「夕張さんに呼び出されたからちょっと行ってくるね。」

 

「いってらっしゃいなのです。さて、江風ちゃん、自分の艤装を持ってきてください。」

 

 

「艤装フル装備でランニングとかキツすぎんだろ・・・」

 

取り敢えず『今から行きます』とだけ返信する。

何か江風のぼやきが聞こえたような気がしたけど、僕は気にせず工廠へ駆け足で向かう。




電はこの鎮守府の最古参であり初期艦だったり。
それと時雨が取り出した端末(スマホサイズだけどちょっと違う)は艦娘全員に支給されてるものです。
時雨のやつは黒いフレームです。

因みに電や夕立は自分がやっても大丈夫な事しかやらせない。
ちゃんと相手の状態を見て言ってるんですよ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。