艦隊これくしょん -鹿屋基地第六〇三戦闘大隊の日常- 作:リュウ@夕立提督
ずいぶん長い事更新が滞って、過去編が書けてるかと言うとそんなこともなく…
本家ではただただ水無月の育成をのんびりしながら任務やEOをこなしていただけという…
さて、今回は宮城提督についてちょこっと掘り下げていこうと思います。
ある日、
そしてお昼過ぎには書類はすべて片付き、艦隊業務も一段落。
「よし、今日の分の事務作業は終わりだ。」
「提督さんも電もお疲れ様。」
「久しぶりに書類を片付けましたが・・・やっぱり疲れるのです。」
「お前たちももう上がっていいぞ。まあ、緊急時には出撃できるようにはしておけ。」
司令官さんは机の上の置時計で時間を確認した後、軽く身なりを整える。
「提督さん、どこかに行くの?」
「ああ。昔の仲間とお茶会だ。」
彼はそう言って執務室を出ていきました。
尾行するのはいけない。それはわかっているんです。でも気になってしまいます。
声色がいつもとちょっと違いました。司令官さんが嘘を吐く時の癖です。
そんなわけで彼にばれないよう尾行します。
「電、ばれても知らないわよ?」
夕立ちゃん、大丈夫です。ばれません、絶対に。
司令官さんは電車で移動するようです。
切符は1000円弱・・・地味に距離があるみたいです。
乗車してから1時間ちょっと経った頃、司令官さんが降りました。
海上では2時間以上普通に航行しているのに1時間の乗車が長旅に感じました・・・
さて、ここからは徒歩での移動ですか。
歩くこと約10分、目的地に着いたようです。
その先には墓地がありました。お墓がかなりの数あります。目的はお墓参りだったのですか。
ばれないように近くの石垣の陰に隠れます。すぐ近くには同じように隠れて様子を窺っている艦娘が2人。「吹雪」と「漣」・・・どこの鎮守府の所属かはわかりません。
こっそり司令官さんの様子を見てみると彼を含め女性が2人、男性が3人居ます。服装から2人は提督だと思います。
黙祷を終えると司令官さんと提督2名が立ち上がり、こちらに視線を送ってきました。
「さて、隠れて覗くくらいならこっちに来い。電。」
「吹雪もね。」
「漣、お前もだぞ。」
一体いつからばれていたんでしょうか・・・極力ばれないよう気配も消していたつもりだったのですが…
まあ、ばれてしまったのでおとなしく彼らの許へ向かいましょうか。
「いつから気づいていたのですか?」
「そうだな、俺が鎮守府の門を抜けた時からだな。」
最初からばれていましたか・・・さすが司令官さん。
「・・・なるべくなら見てもらいたくはなかったんだがな。」
見て欲しくなかった、ではなく見てもらいたくはなかった、ですか・・・
「見ての通りここは墓場だ。第零世代艦娘及び迎撃部隊員のな。」
「ここのお墓すべてが・・・ですか?」
「そうだ。」
前戦争での戦死者の墓標の数々・・・確かにあまり見たいものではありません。
ですが、そういった方々から目を背けるわけにはいきません。精神的には辛いものがありますが・・・
「大丈夫です。電はそんなに弱くはありません。乗り越えるべきものは乗り越えたつもりですから。」
司令官さんは「そうか」とだけ言い、すぐ近くの方々の紹介を始めました。
「まずは鈴崎玲奈元帥。昔俺が居た迎撃部隊の隊長だった人だ。」
なるほど、彼女が噂の隊長なのですか。金色の長髪が綺麗なのです・・・
「そして三里裕也少将。佐世保鎮守府所属の提督だ。」
手を見る限りだと右腕は義手のようです。
「天城百合さん。俺とは違う部隊で副隊長をやってた人だ。」
短髪の美人さんなのです。クールな印象を受けます。
「稲垣智哉。面倒って理由だけで俺に副隊長を押し付けてきた。」
あの、隣でいろいろ言ってるんですが・・・
紹介が終わった直後、「漣」さんが稲垣さんに近寄ります。
「やっほー伯父さん。」
伯父さん・・・家族だったのですか・・・
「伯父さん・・・ということは君は
稲垣漣さん・・・艤装の適合試験と定期検査で何度もお会いしました。
彼女、娘さんいらっしゃったんですね。
そんな風に考えていると司令官さんが他の方々に話し始めました。
「しかし、俺と百合さん以外はどっか食い千切られたよな。」
「そうね、私は回避が間に合わなかったら上半身全部持っていかれてたでしょうね。左腕だけでよかったわ。」
「俺は右腕まるまる持ってかれたからな。義手に神経を直接繋いでるせいでメンテナンスの時が大変だよ。」
「それ考えると左足の脛まで無事だった俺は軽傷で済んだな。」
あの、みなさん?それ笑いながら話す内容じゃないですよ?
心の中でツッコミを入れていると司令官さんが用事があると言って私の手を引いて早足で歩いていきます。
「あ、あの・・・司令官さん・・・?」
人気のない場所まで連れて来られました・・・一体何でしょう・・・?
「電、無理してただろう。」
・・・感づかれていましたか・・・
でも心配はかけたくありません、何とかして誤魔化さないと・・・
「無理なんてしてないのです。」
「そんなんで誤魔化せるわけないだろう?」
もう気づかれてる。前戦争の戦死者の数を見た
「死者」という枠で考えたらもっと多いと考えたら余計につらくなってきます。
「お前もそうだが、艦娘である前に一人の人間だ。人は感情を完全に殺す事はできない。つらい時は泣いたらいい。一人の時でも、誰かと一緒の時でも。それで何かが変わるわけではないが、ずっと抱え込んでいるよりはずっと楽になる。」
「電は・・・艦娘は強くないといけません。だから弱気になって、泣くわけにはいかないのです。」
亡くなったお母さんもそう言っていました。だから電は・・・
「電、今くらいは弱気になってもいいんじゃないか?」
その言葉を聞いた途端、感情を抑えきれず涙が溢れてきました。
「電は・・・みんなを助けたいなんて言いながら何もできなくて・・・無力で弱くて・・・!」
「人は己の手と目が届く範囲しかすくえない。電は自分の手の届く範囲に居る人たちを護り、助けているよ。届かない場所に居る人は仲間の手の届く場所だ。お前の仲間は何もしない物じゃない、誰かを助けようと、護ろうとしている艦娘だ。だから大丈夫、電は無力でも弱くもないさ。」
泣きじゃくる私を抱いて、撫でてくれる司令官さん。
優しく、温かな手から彼の気持ちが伝わってくる。
「司令官さん・・・」
涙でくしゃくしゃになりながらも精一杯の笑顔を彼に向け―
「ありがとう、なのです。」
「どういたしまして、だな。」
今も変わらない、私の居るべき場所はここにあります。
ラストの電をやりたいがために半ば無理矢理話を展開してしまったw
余談ですがあの墓場には電のお母さんのお墓もあります