艦隊これくしょん -鹿屋基地第六〇三戦闘大隊の日常-   作:リュウ@夕立提督

27 / 28
最初の番外編は本編の時間軸よりも前のお話。

―旗艦「夕立」が戦闘中に行方がわからなくなり、各艦は捜索を続けていたが途中で断念(後にMIAと判断)し、通常業務に戻った。しかし、それから数か月後に本部から新種の深海棲艦の出現を確認したと通達される。だが、菊月達が「それ」と邂逅し戦闘する事はなかった。そこへ提督が本部から戻ってきて・・・?―

というわけで本編の1,2年前の出来事です。


番外編1「ある日の鹿屋基地」

今日は6月21日。何かあるかと言われると、夕立の進水日だとしか答えれん。

尤も、現在は夕立が行方知れずだが。

司令官は今は本部に居るため、執務室には居ない。まあ、もうすぐ戻ってくるとは思うが。

そう考えていると執務室の扉が開き、第2種軍装を纏った男が入ってくる。

それと同時に私は言い放つ。

 

「提督が着任しました。これより、艦隊の指揮を執ります。」

 

「あまり慣れてない事はするものじゃあないぞ。」

 

「別にいいだろう。やってみたかっただけだ。」

 

私の本心を伝えると司令官は笑う。

 

「菊月の敬語は新鮮だな。」

 

「こんなふうにじゃれ合うのは姉妹を除けば貴方くらいだ。」

 

「さて、じゃれ合いもこのくらいにしておくか。」

 

「そうだな。」

 

私がそう言うと司令官は真剣な表情で椅子に腰かける。

 

「菊月、夕立は見つかったか?」

 

私は「まだだ」と答え、付け加えるように言う。

 

「新種の深海棲艦が出現したそうだ。そいつは『駆逐水鬼』と名付けられた。」

 

「駆逐水鬼・・・?」

 

司令官が尋ねてくる。

 

「艦娘に近い容姿をしているようだ。」

 

私がそう答えると、司令官は聞き返す。

 

「人型か?それなら、重巡じゃないのか?」

 

「速力は34ノットほどらしい。駆逐艦の速度だ。」

 

私はその質問に答え、更に言う。

 

「どこの鎮守府の艦隊も撃沈させれなかったようでな、かなりの強敵のようだ。」

 

「他の鎮守府はどのくらい戦果をあげたんだ?」

 

司令官が尋ねてくる。

 

「深海棲艦としてはイレギュラーな存在で、練度が高いと聞いている。電探や水上機を用いても至近弾にするのがやっとらしい。司令官の友人がそう言っていた。」

 

「アイツの艦隊でも無理とはな・・・。しかし、高練度の深海棲艦か・・・。」

 

司令官の友人は指揮能力が高く、艦隊も強力なのだが、それでも無理だったようだ。

そして私は続けて言う。

 

「それと、火力は重巡並みで装甲は軽巡改並み、駆逐艦らしい回避の高さを備えているらしい。」

 

「駆逐艦なのにそれだけの性能とは・・・少々・・・いや、かなり厄介だな。」

 

まあ、そうだろう。しかし、いずれはその厄介な相手と戦わなければならない。

その後、司令官が私に言う。

 

「今回の出撃メンバーは菊月が旗艦、そして北上、山城、榛名、長門、赤城の6名だ。」

 

司令官が続けて言う。

 

「これより南西諸島海域、EOへ出撃する。」

 

「了解だ。全員を召集する。」

 

私は急ぎ足で第1艦隊のメンバーを集める。

少し経つと、榛名、赤城、長門、山城、北上の順に執務室に来る。

 

「よし、全員揃ったな。第1艦隊、出撃!」

 

司令官の指示と同時に私たちは海へ出て、南西諸島海域へ向かう。

そして南西諸島海域に到着。今回は「Extra Operation」…特別な任務だ。

海域に着くと、前方に敵影を発見する。

赤城の偵察機『彩雲』からの情報によると軽母ヌ級1、重巡リ級2、軽巡ヘ級1、駆逐ニ級2だ。

 

「前方、敵艦見ゆ!」

 

私の言葉で戦闘開始だ。反抗戦でお互い単縦陣と輪形陣。

戦闘は好調で、駆逐艦2隻、軽巡1隻、重巡2隻と沈め、残った旗艦の軽空母も大破まで追い詰めた。

そして、雷撃戦へ移る。

 

「北上、行くぞ!」

「20射線の酸素魚雷、2回いきますよー!」

 

北上と同時に酸素魚雷をヌ級に放つ。

その直後、北上が不意に呟く。

 

「魚雷2本が・・・」

 

その言葉の意味は私にはわからなかったが、その直後にわかった。

魚雷2本がヌ級に当たる前に爆発音が響き渡る。その直後、北上が驚いたように叫ぶ。

 

「魚雷に魚雷を当てて相殺させてくるなんて・・・普通できないって!」

 

そう、何者かが魚雷を2本放ち、私たちの放った魚雷に命中させ、ヌ級に当たる前に爆発させた。

その後砲撃音が響く。そして赤城に直撃し、一撃で大破まで追い詰められた。

 

「一航戦の誇り・・・こんなところで失うわけにはッ・・・!」

 

「総員、赤城を中心に輪形陣を組め!」

 

そうこうしているうちにヌ級に逃げられたが、今はそれどころではない。

私の指示で輪形陣を組み、赤城の護衛をする。

 

「菊月!後ろだ!」

 

長門が私に叫ぶ。急いで振り返ると、そこには駆逐水鬼と思われる姿があった。

ゼロ距離で主砲を構えられている状態だ。

 

「サァ、素敵ナパーティー始メマショウ?」

 

そう言うと駆逐水鬼は一撃かましてくる。何とか回避に成功したが、そのせいで陣形が崩れてしまった。

新型缶が無ければ直撃していただろう。

駆逐水鬼はその直後に私たちから距離をとる。

私は駆逐水鬼に対しいくつか不思議に思った事があった。

 

まず、駆逐艦でありながら直撃すれば中破以上のダメージを受けるであろう火力。

そして、どこか見覚えのある外観。

だが、これら以上に不思議に思ったのが左手の指輪(・・・・・)だ。

普通に考えれば深海棲艦が指輪などつけるはずがない。

黒みがかってはいたが、金色の長髪、紅い瞳・・・

 

「間違いない・・・『アイツ』だ・・・!」

 

私は駆逐水鬼が何者かを確信し、奴へ突っ込んでいく。

 

「菊月!突っ込めばやられるぞ!」

 

長門の声が聞こえたが、それでも行くしかない。私の確信が真実かどうかを確かめるために。

 

「仕方ない。榛名、菊月を頼む。」

 

「ええ!榛名、いざ参ります!」

 

榛名が私を追いかける。

続けて長門が呼びかける。

 

「北上!山城!赤城を護衛するぞ!輪形陣だ!陣形を崩すなよ!」

 

「わかってますよー。」

 

「はぁ、こんな時に襲撃を受けるなんて、不幸だわ・・・」

 

私は駆逐水鬼の砲撃を受けながら接近する。

 

「菊月さん、一度下がって!沈んでしまいます!」

 

榛名が私に呼びかけるが、聞いている余裕など私にはなかった。

 

「ぐっ・・・!」

 

一撃もらい、中破してしまった上に弾幕が濃くてなかなか接近できない。

 

「こうなったら・・・!」

 

私は主砲を駆逐水鬼の砲に向け、撃つ。そのことごとくが命中し、奴を中破させる。

 

「正気に戻れ・・・夕立!」

 

私は接近し、駆逐水鬼を抱きしめる。

当然抵抗するが、それでも放さない。

司令官の妻をやっと見つけたのだから。

 

「駆逐水鬼が夕立さんって・・・どういう・・・!?」

 

榛名が驚いて訊く。しかし、私はそれに答えず、駆逐水鬼に言う。

 

「夕立、司令官がずっと探していた・・・」

 

彼女は何も言わない。だが、私は続けて言う。

 

「共に往こう、司令官の待つ場所へ!」

 

「テイトク・・・サンガ・・・・・・待ッテる・・・の・・・・・・?」

 

駆逐水鬼・・・いや、夕立は力が抜けたように私にもたれかかり、意識を失った。

 

「全く、世話のかかる秘書艦だな。」

 

少し安心して表情が緩んでしまった。

榛名が『何故?』というような顔でこちらを見ている。

大方、何故夕立と言い切れるかが疑問に思っているのだろう。

 

「左手を見てみろ。」

 

「左手・・・?あ、指輪・・・」

 

榛名も気付いたようだ。

 

「榛名、夕立の曳航を頼めるか?私は中破してしまってできそうにない。」

 

私が頼むと、榛名は元気に返事をする。

 

「ええ、お任せください!」

 

私たちは長門たちの所へ戻る。この件で警戒されそうだが。

 

「戻ってきたか・・・って、何故敵を連れてきている!?」

 

予想通り、長門がキレる。

 

「榛名、お前も何故止めない!?油断すれば沈められるぞ!」

 

榛名には当たらなくてもいいだろう・・・。

 

「いえ、駆逐水鬼は夕立さんだと菊月さんが言うので・・・」

 

榛名が申し訳なさそうに私を見ながら言う。

 

「菊月、何故そいつが夕立であると言いきれる?」

 

その問いに私はすかさず答える。

 

「こいつの左手を見ればわかる。」

 

「左手ねぇ・・・」

 

北上が夕立の左側に回り、見る。

 

「薬指に指輪があるだろう?それが最も大きな理由だ。あと外観。」

 

「あ、確かにこれ夕立のケッコン指輪ですねぇ。」

 

北上が納得する。それを聞いて赤城や山城も納得したようだ。

 

「なるほど・・・ならよいが。」

 

長門も納得してくれたようだ。私は念を押すように全員に言う。

 

「大丈夫、万一何かあれば私が責任を持って処分する。」

 

当然、それはないと確信を持っての発言だ。

 

「それならいいか。」

 

「さて、帰投するぞ。」

 

全員で鎮守府へ帰る。夕立は榛名が曳航する。

 

「っと・・・」

 

少しばかりふらつきつつも航行していた私だったが、急に北上に腕を掴まれる。

 

「北上・・・?」

 

「そんな傷じゃ航行が危なっかしいって。アタシが曳航するよ。」

 

「すまない・・・。」

 

こうして私たちは岐路に着く。

 

 

 

夕方ごろ、私たちは鎮守府に到着した。

 

「全員、無事帰投したか・・・って!?」

 

やはり、司令官も驚いたか。だが、すぐに気付いたようだ。

 

「もしかして・・・夕立、なのか・・・?」

 

それに対して私が答える。

 

「ああ、夕立だ。」

 

司令官は安心した表情を見せている。

 

「とりあえず、菊月と赤城は入渠してきてくれ。」

 

赤城が「了解しました」と言ってドックへ向かった。

私は夕立を抱きかかえ、執務室へ向かう。

執務室にはベッドがあるためだ。

 

「菊月、すまないな。そんなにボロボロになるまで・・・」

 

司令官が私に謝る。必要ないのだが。

 

「気にするな。私が自分の意思でやった事だ。あの機会を逃したらまたいつ遭遇できるかもわからなかったからな。」

 

「そうか。だが、ありがとう。」

 

司令官のために頑張った、とは口が裂けても言えんな。恥ずかしい。

そうしているうちに執務室に着いた。

私は部屋に入るとベッドへ向かい、夕立を寝かせる。

夕立は未だに深海棲艦の状態になっている。

 

「夕立・・・」

 

ベッドの近くに腰掛けた司令官が呟く。

 

「明日には戻るだろうが・・・心配だな。」

 

「ああ、無事ならいいんだがな・・・」

 

私は執務室を後にして入渠ドックへ向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「・・・ぅ・・・・・・」

 

気付いたら寝てしまっていたようだ、不覚。

体を起こしてベッドを見ると、夕立が眠っている。

どうやら、無事戻ったようだ。

 

「んぅ・・・」

 

夕立が目を覚まし、体を起こす。

 

「ん・・・てーとくさん・・・?」

 

夕立は寝ぼけているのか、目を擦りながら俺に言う。

 

「夕立、おはよう。」

 

俺が声をかけると夕立は「おはよー」と言いながら再び寝ようとする。

 

「こらこら、起きろよ。」

 

「んー・・・」

 

夕立は体を起こし、ベッドに座る。

その後菊月が部屋に入ってくる。

 

「夕立、動けるか?」

 

菊月が訊くと、夕立は寝ぼけながら答える。

 

「一応・・・戦闘には支障は出るけど・・・」

 

「そうか。なら・・・秘書艦の仕事は任せても大丈夫だな?」

 

すると夕立は少し膨れて言った。

 

「むー・・・もうしばらく菊月にやって欲しいっぽい。」

 

すると菊月は持っているファイルで夕立の頭を軽く叩く。

 

「いたいっ!」

 

「動けるのだから秘書艦の仕事くらいできるだろう。」

 

夕立はまだ膨れている。もう少し休んでおきたかったのだろうか。

 

「それじゃあ司令官、出撃してくる。」

 

「ああ、無事戻って来いよ。」

 

菊月は「わかっているさ」と言い、部屋を出て行った。

 

「うー、もうちょっとのんびりしたかったっぽい・・・」

 

夕立が文句を言う。

 

「まあ、仕方ないだろう。お前が居ない間はきつかったんだから。」

 

諭すように夕立に言うと、夕立は機嫌が直ったようで、満面のどや顔で言い放つ。

 

「ふふーん、私の力が必要っぽい?夕立、提督さんの為にもっと頑張っちゃうっぽい!」

 

我が妻ながらちょろいな。

 

「早速仕事を始めちゃうっぽい?」

 

夕立は結構張り切っている。

 

「わかっているって。」

 

そう言うと俺は椅子に座り、執務を行い始める。

今日も、鹿屋基地はいつも通りだな。




これ、原文(?)だと「駆逐水鬼」じゃなくて「駆逐ユ級」だったんですよね。
それと同時に「ただの駆逐艦が人の言葉を話すわけがない」的な一文が入ってたり。
これ書いた時は駆逐棲姫居なかったし・・・w(15夏イベ中に書き直した)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。