艦隊これくしょん -鹿屋基地第六〇三戦闘大隊の日常-   作:リュウ@夕立提督

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というわけで早速遅れました。
今回は10話と11話の間の出来事です。




番外編2「来訪者」

ある日、提督(俺)が夕立から渡された書類に目を通していると突然、外で爆発音が鳴り響く。

音は港の方からだ。

 

「敵襲か!?」

 

「でも敵なら警備隊が鎮守府(こっち)に知らせてくれるはず・・・!」

 

「夕立、行くぞ!」

 

「提督さんが直接行くのはどうかと思うけど・・・!?」

 

「念のためだ。」

 

「仕方ないなぁ、もう・・・!」

 

俺は夕立と共に港へ向かう。

 

 

 

港に着くと、そこには複数の艦娘が集まって海上戦を行っていたが、その半数以上は鹿屋基地の艦娘ではないし、彼女らの艤装も俺の知るそれとは少し違う。

通常の艦娘よりも簡素な形状の艤装。まあ、生産性や汎用性を考えるとあれの方が合理的ではあるが。

 

「演習にしてはおかしい。この辺りの艦娘ではないな。そもそもここは演習用の海域ではない。」

 

「それに、初めてみる艤装・・・艦娘ではあるみたいだけど。」

 

「止めに行くぞ。お前は警備隊に加勢してくれ。俺は上陸してる奴を相手にする。」

 

「提督さん、いくら陸上限定で深海棲艦と戦えると言っても危険じゃ・・・?」

 

「大丈夫だ。最悪、死なずに足止めくらいはできる。それに、警備隊(あっち)が劣勢だ。」

 

「わかった。けど、無茶はしないでね?あと、殺しちゃダメよ?」

 

「了解だ。」

 

夕立と会話を交わした後、俺は上陸している一人めがけて全力で走り出す。

艤装を破壊すればいいだろう。そうすれば向こうも止まってくれるはずだ。

そう思いながら走りつつ試製高周波断艦刀を抜刀する。

20m程度まで接近してようやく彼女はこちらに気付き、主砲を構える。

だが、時既に遅し。俺の間合いにはもう入っている。

 

「気付くのが遅すぎたな!」

 

俺はそのまま速攻で相手の側面に回り込み、背部艤装に断艦刀を突き刺す。

振動剣なだけあってすんなりと刺さる。

そのまま振り切って艤装を破壊、そして向き直り、構える。

 

「貴方・・・一体何者・・・!?」

 

彼女の声は聞きなれたような声だった。だが、初対面のはずだ。

 

「俺は鹿屋基地の提督の一人だ。ここを潰そうとでも思ったのだろうが、相手が悪すぎたな。」

 

「鹿屋・・・なるほど、そういう事ね。」

 

彼女は何を言っているんだ・・・?

そう考えていると彼女は耳に左手を当てる。

 

「全艦、戦闘中止。この戦闘、勝ち目が無いわ。」

 

戦闘を中止させる?何かの策かもしれない。

 

「お前らも戦闘を中止し、撤退せよ。ただし、警戒は怠るなよ。何かあれば戦闘再開しても問題ない。それから抜刀も許可する。」

 

「あら、優しいのね。」

 

「相手は深海棲艦ではなく艦娘だからな。」

 

「そう・・・まあ、別に作戦でも何でもないけどね。」

 

そういいながら彼女はこちらへ向き直る。

そこには俺のよく知る人物が居た。

 

「夕立と全く同じ姿・・・!?」

 

そう、俺の率いる艦隊でもトップの実力を持つ夕立改二と全く同じ容姿だった。声も同じだ。

だが、『全く同じ』人物は存在するはずがない。

同じ名を持つ艦娘でも容姿や声、性格は違う。別々の人物が同じ名前の艦娘になっているだけだ。

驚きを隠せていない俺を見て『彼女』は軽く笑う。

 

「普通は怖がるとか、そういう感情が出ると思ってたけど、貴方は驚きなのね。」

 

「どういう事だ・・・?」

 

「私は貴方のよく知る(・・・・・・・)夕立であって、そうでない・・・そういう存在よ。」

 

「意味がわからんな。」

 

「簡単に言えば、私は彼女のクローン。私の率いた艦娘達もみんな貴方の部下達のクローンなの。」

 

「そんな馬鹿な・・・!」

 

「私が何者なのか、なぜ貴方たちを襲撃したのか・・・それは―」

 

その答えはとんでもないものだった。

 

「―このままいけば日本は全艦娘のうち8割を失い、深海棲艦との戦いにおいて絶対的不利になる・・・そしてかつて死亡した艦娘の記憶データを利用してクローン艦娘が作られた。そのうちの一人が私、『ユウダチ』よ。」

 

未来では艦娘の8割が失われてクローンの艦娘が作られる?そんな話、にわかに信じがたい。

だが、それの証明が今目の前に居る・・・声も容姿もあの夕立と全く同じ・・・

 

「お前は、アイツのクローン・・・というわけか?」

 

「あら、すんなり受け入れてくれたのね。そう、私は彼女の記憶データから作られた存在。他にも居るけどね。」

 

「信じがたいが、目の前に証拠があるんでな。信じざるを得まい。」

 

襲撃の目的も訊いておかなければならないな。

 

「それで、なぜ俺たちに奇襲を仕掛けた?」

 

「ここで多くの艦娘を失えばクローン艦娘の製造開始が早まって劣勢を強いられずに済むから。うちの提督さんの命令だけどね。」

 

「なるほど・・・それなら上に具申しておこう。通るとは思えないが。」

 

「・・・ありがとう。」

 

俺は無線機を取り出し、全員に呼びかける。

 

「全艦、そのまま相手方を全員連れて帰投せよ。」

 

「助けてくれるのね。」

 

「そりゃ、敵じゃないってわかったしな。お前も来い。」

 

俺は『ユウダチ』の腕を引いて鎮守府へ戻る。

 

 

 

鎮守府に着いたところで、『ユウダチ』を執務室に呼び出す。

 

「それで、話って?」

 

「お前達の今後だ。まず、一つ聞きたい。」

 

「何かしら?」

 

「お前達は帰れるのか?」

 

「一応はね。みんなは帰すつもりよ。『作戦は失敗したが目的は達成できた』ってね。」

 

「みんな『は』?お前はどうするつもりだ?」

 

「ここに残るわ。貴方やオリジナルの『朝陽夕奈』と共に戦う。」

 

すると夕立が話に入る。

 

「でも艤装はどうするの?大破以上の損害だから戦闘は・・・」

 

「貴方の艤装を借りたいの。私は貴方のクローン体だから適合率は高いはずよ。」

 

ユウダチは夕立の言葉を遮るように話す。

 

「提督さん、どうする?」

 

「俺は構わん。単純に戦力が増えるのはうれしいからな。」

 

「それならいいけど・・・」

 

だが、一つ問題が出てくる。

 

「しかし、どう呼んだものかな。」

 

そう、呼び名だ。艦娘は個人名があるものの、平時や作戦中は艦娘名で呼ばなければならない。

だが、彼女らはどちらも『夕立』だ。夕立を夕奈と呼ぶ事はできない。(ケッコンしてるんだけどなぁ・・・)

そう考えているとユウダチが提案する。

 

「それなら、『ユウ』って呼んでくれれば問題ないんじゃない?」

 

U-511とかぶるが、俺はあまり『ゆー』と呼んだ事がない。呼び出しなどはもっぱら艦娘名だからな。

だから平時などでは困る事は少ないだろう。

 

「それに、私も『夕立』だから夕立(彼女)と同じ艦隊には配属できないし。」

 

ああ、それは適応されるのか。

 

「呼び名に関しては了解した。が、外見での夕立との違いを作ってくれるとありがたい。」

 

ユウは「ああ、それなら」と言いながら白いヘアピンと眼鏡、ヘアゴムを取り出し、身に着ける。

これで夕立との差はヘアピンの色、眼鏡、ポニテになった。

確かにこれなら見分けがつくな。平時では、の話だが。

 

「その眼鏡は?」

 

「伊達よ。」

 

即答された。なぜ伊達眼鏡を持っているのか・・・。いや、可愛いけど。

 

「ユウは下がっていいぞ。」

 

「それじゃあ、また。」

 

ユウはそう言いながら執務室を後にした。

 

「さて、夕立。」

 

「?」

 

「ユウの研修、任せるぞ。」

 

「あ、うん、了解したっぽい。」

 

俺は夕立と軽く雑談しながら仕事に執りかかる。




実際にはそこまで劣勢ではなかった模様(近接戦を仕掛けていたから)。
因みに夕立が加勢する前に提督から帰投命令が出ました。つまり夕立なんもしてない。

あと、「提督チョロすぎね?」とかつっこんではいけない。
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