「青い海っ! 見えてきたよ!!」
「「海だあ!」」
喜びを隠せず、叫ぶ声。
続くように、窓から遠くを見て声を上げる不動兄弟。
バスに乗ったIS学園の面々らは……生徒一同が窓に張り付く。
「いや……海なんて学園から見えてるけど、こういうのもいいな」
「俺や狼牙の住んでたとこは山だしなあ」
「む? 牙狼や狼牙はそうなのか?」
気になったのか、箒が聞いてくる。
「ああ……事情があってな」
「山育ちなんだよ、俺も牙狼もな」
「へえ……でも、なんかそんな感じがするね」
「そうですわね……名前にも狼が入っているぐらいですし」
((いや、名前はどうなんだ?))
シャルはともかく、セシリアの言葉に心の中で突っ込む。
まあ、それはそれとして
「「海が俺を呼んでいる」」
「なんか今日の牙狼と狼牙、燃えてるなあ」
「「ったりめーだ一夏!」」
二人の中では、すでに自由時間のことがいっぱいである。
そりゃ、健全な十代の男子。
周りがこれならしょうがないと言えばそうだが……
「そろそろ到着する。各々の席に戻れ」
と、千冬がそのように言うため、立っていたり席から外れていた生徒らは海が見えたテンションのまま席に戻っていた。
そうして、各クラスの生徒を乗せた数台のバスは目的地である旅館の前へと停車する。
「ひゅ~……」
「山の中じゃ味わえないよな……」
牙狼と狼牙は、その空気を吸いながら感想を漏らす。
しかし、とりあえず荷物を預ける前に旅館の人に挨拶だ。
すぐさま一同は整列をする。
「それではここが今日から三日間、我々がお世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ。挨拶!」
「「「よろしくお願いしま~す!」」」
「はい、こちらこそ。今年の一年生もまた、元気があってよろしいですね」
全クラスが整列したのを確認し、千冬が挨拶するように言う。
そうして全員で挨拶をした後、生徒らは荷物を従業員らしき人などに渡したりする。
と、不動兄弟と一夏の元へ女将らしき人が話しかけてきたのだ。
「こちらの方々が噂の……双子は初めてですね」
「男子が三人いるせいで、浴場分けが難しくなってしまい申し訳ありません」
「いえいえ、そんな。なかなか良い子じゃありませんか。しっかりしてそうな印象を受けますよ?」
だが、千冬は首を左右に振りながら口を開く。
「少なくとも印象だけですよ。織斑、不動兄弟、挨拶しろ」
「織斑一夏です。よろしくお願いします」
「兄の不動牙狼です。多数の迷惑をかけると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
「弟の不動狼牙です。三日間の間、どうぞよろしくお願いします」
そう言い、三人は深々と頭を下げる。
正直、おそらくと言うかこの旅館には迷惑をかけるだろう。
それをなんとなく感じていた三人だった。
「うふふ、ご丁寧にどうも。花月荘の女将をしております、清洲景子です」
女将もまた、スッと静かに頭を下げる。
その見事な様は、千冬とは違う大人の雰囲気を醸し出している。
(おいおい牙狼)
(あ? なんだよ)
(お前の好みそうな女性じゃないか?)
(……うるせえ)
(ははっ、そうだったな。お前は)
(黙ってろ)
一夏も少しぽ~としてるように見える中、こんなことを不動兄弟は話していた。
もっとも、口にせずにだが……
「不出来の弟でご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願いします」
「いてててててっ!?」
と言って、千冬さんが一夏の後頭部を鷲掴みにし、そのまま再度、頭を下げさせた。
「あらあら。織斑先生は弟さんに厳しくていらっしゃるのですね」
「いつも、手を焼かされていますので」
そんな光景に、思わず不動兄弟はクククっと笑っている。
しかし
「こいつらにも手を焼かされておりますが、よろしくお願いします」
「「あたたたたっ!?」」
今度は二人の頭も下げられた。
無論、一夏同様に。
そうして、一同は中に入り……部屋に行こうとしたのだが
「ね、ね、ね、がーくんにろーくんにおりむ~」
そんな、どっかのアニメで出てきそうな名前で呼んできたのは同じクラスメイトの本音だ。
正直、この双子が苦手とする相手の一人でもある。
「「うっ……な、なんでしょう?」」
「わあっ、相変わらずのシンクロだね~……実はおりむーの部屋はどこかなって。一覧にもなかったし~」
「えっ? 俺は二人と一緒じゃないのか?」
予想外だったのか、一夏が不動兄弟に聞くと
「聞いてなかったのか……哀れだな、一夏」
「な、なんだよ牙狼?」
「実はな……」
牙狼は、目をくわっと開き叫ぶ。
「お前の部屋はない! 俺と狼牙が頂いたのさ!」
「な、なんだってー!?」
「そんなわけあるか、馬鹿者」
スパンっと、出席簿が牙狼に振り下ろされる。
それをまともに食らったのか、牙狼が頭を押さえながら崩れ落ちる。
狼牙は……額に手を置いてあきれていた。
すぐ後ろにいた千冬が、一夏は自分と同室だと……まあ、余計な騒ぎが起きないだけいいだろう。
その後、部屋に荷物などを確認した後……抑えられないのか、不動兄弟は真っ先に海へ向かう。
「……すげえ、広いぜ牙狼」
「ああ、海がきれいだな……山の中からじゃ、わからねえよ」
不動兄弟は初めて来た海に、ものすごく嬉しそうだ。
IS学園のとは違う、自然にあふれたと……そんな感じだ。
そしてなにより
((こりゃ、かなりきついかもな……))
周りが女女女。
健全な二人に、かなりきつい光景でもある。
しかし
「ね、ねえあれ」
「す、すごい……」
「男の子っていっても、やっぱり……」
周りの女性陣が不動兄弟を見ていた。
きょろきょろと二人が周囲を見ると、皆恥ずかしそうに眼をそらす。
(……おい狼牙、俺ら何かしたか?)
(すまん、覚えがない……水着がおかしかったか?)
(そのはずはないが……普通だし)
(だよなあ)
その視線に耐えるように二人は口を開かず、心の中で響く会話を続ける。
こういう時、この「能力」は役にたっていた。
だが、女生徒らの視線が自分らにグサグサ突き刺さる。
と……借りてきたのか、パラソルを立てようと悪戦苦闘してる女子達がいるのを二人は見つけた。
「おい」
「えっ!? あ……牙狼君に狼牙君?」
「大変そうだな、俺たちがやってやるよ」
「そんな……お、重いのにいいの?」
「ああ、任せろ」
いきなり声をかけられ、女子らはびくっとしていたが……不動兄弟がパラソルを受け取り、テキパキと組み立てていく。
意外に力もいる作業なのだが……ドスッと砂浜に打ちたてられ、完成したようだ。
「牙狼、そっちはどうだ?」
「オッケーオッケー、形も綺麗だ」
「よし……お待たせ、暑い中すまなかったな」
「紫外線すごそうだからな……じゃ、ごゆっくり」
牙狼と狼牙、それぞれが交互に喋りその場を後にする。
そんな二人の後ろ姿を見ながら、そこにいた女子らは少し普段と違う目で二人を見ていたようだ。
だが、正直あちらこちらから不動兄弟をじっと見ている女子ら。
「「……」」
かなり居づらそうな二人。
しかし、実は彼らを見ている理由はというと
(すごい筋肉……ああいう男の人の、生で初めて見た)
(顔は普通だといっても、あれはなんか……無意識に引き寄せられるというか)
(い、いけない……ちょっと体を預けたら力強そうだなんて)
そう、不動兄弟はそれなりに鍛えているのだ。
ISの「ザ・ビースト」に耐えるためでもあるが……以前からそういったトレーニングをしている。
格闘もこの二人はそれなりに得意であり、この体つきは当然であった。
「うおっ!? すげえな二人とも」
「へ~……結構いい体してるのね」
と、一夏と鈴音の声が。
不動兄弟が振り返ると……何故か鈴音を肩車をしている一夏。
「なにしてるんだ?」
「牙狼……い、いやそのさ。鈴が急に」
「おっけ、わかった」
「さすがね狼牙……微妙に納得できない気がするけど」
相変わらずのハーレム野郎だった。
まあ、一夏のそばにいればこのまますぐ面倒事になるだろうと思ってはいたが
「一夏、お前を探していたのさ」
「ん? 俺を?」
「ああ、とりあえず勝負だ」
「……なるほど、本当にやるんだな?」
「え、なに?」
男三人がどうも何事か決めていたようだ。
鈴音がついていけないのだが……と
「ちょっと鈴さん!? な、何をしていますの!?」
「何って? 見たまんまよ、移動監視台ごっこ」
「「「いや初めて聞いたなそれ」」」
突然割ってきたのはセシリアだ。
そして男性陣の見事なツッコミである。
しかし、どうもセシリアと約束をしていたような一夏だったが
「すまん、その前にこの二人とちょっとな」
「!?」
一夏が真剣な声で言うため、いつの間にか自分も一夏と肩車をと思っていた女性らに衝撃が。
(ついにきたのね!)
(これで次回作は完璧よ!)
なんていう危ない妄想をしているようだった。
だが、それは違う。
「勝負だ不動兄弟!」
「「きやがれヘタレ野郎!」」
どうも様子がおかしい。
そうして三人が移動し……その手に、あるものを持って来ていた。
そのまま、少し互いに離れ……向き合う。
「先手必勝!」
一夏の持つライフルから突如撃ちだされ、不動兄弟へ向かう。
それを華麗に回避し、砂浜でありながら一夏へ高速で迫る不動兄弟。
「さあやろう、牙狼……僕たちの時代の幕開けだ」
「ふっ……我らの時代に栄光あれ!」
ライフルを撃ちながら一夏は動くが、不動兄弟の息の合ったコンビネーションに翻弄される。
一夏はそんな中、声を荒げ叫ぶ。
「これが! お前たちの求めていたものだってのか!」
「そうだ! そして……我々は利益を望んでいる!」
「だから……君が邪魔なんだよ!」
「ふざけるなっ! そんな勝手な理由で……」
牙狼と狼牙の言葉に、一夏の持つライフルが向けられる。
「俺のあんな写真をばらまかれてたまるかあ!」
「「お客様が求める限り、我々の戦いは終わらないのだよ!」」
緊迫してた空気が、一気に霧散する。
なんて情けない理由での対立だろうかと……しかし
「一夏!」
「鈴!? みんな!?」
いつのまにかそばに来ていた鈴音。
彼女は決意した顔で
「貴方に……力を」
そう言い、新しいライフル……水鉄砲を手渡す。
さらに一夏の近くに、いつものメンバーが現れ、全員が水鉄砲型ライフルを構えていた。
このままではまずい、そう感じた不動兄弟だったが
「くっ、狼牙! こちらも発射だ!」
「で、でもチャージが」
「構わん!」
「「「「「「いっけええええええ!」」」」」
不動兄弟の持つ、特大水鉄砲が撃ち出されるが……数の暴力。
水は打ち消され、不動兄弟は全身に海水を浴びせられた。
そうして、不動兄弟は今まで集めて売りさばいていた一夏写真店を閉店することに……
だが、しっかりとデータなどは先ほどの女性陣に抑えられていたのだから笑えなかった。
敗北した不動兄弟。
仕方なく一夏たちと別れた後は砂浜でごろっとしていたが……その間、鈴音がおぼれかけたり先ほど姿を見かけなかったラウラの水着でひと騒動が起きていた。
まあ、この二人は救出はともかくその後別行動をしているのだが
「……で、なんで俺なんですか?」
「ちょうどいいところにいたからだな、一夏は昼食に行ってしまってる」
「いやあの……俺なんかに触れさせていいのですか?」
「なに、そう言った面で信頼できるのはわかっている……一夏には以前やってもらったこともあるし、二度も同じではな」
牙狼、現在千冬の背にサンオイルを塗る真っ最中、
その隣に……同じく、真耶の背にサンオイルを塗る狼牙。
「山田君、たまには男に頼るのも悪くないだろう?」
「~~~~~~!」
千冬の言葉に真耶はといえば、すでに顔が真っ赤な上に湯気が噴き出しそうである。
顔を伏せてはいるが……声にならない声だけだ。
「……牙狼、お前の手はどうも一夏よりごついようだな」
「うっ……痛いですか?」
「いや、そうではない……そういった男の手自体、あまり……な」
どうやら大丈夫そうだと、ホッと一息の牙狼。
だが……狼牙の方は、もう目をそらしながらやっている。
真耶も真耶で、かなり初々しい。
「そして……牙狼」
千冬が、小さく、強く声を出す。
「お前も狼牙も、いい加減私たちに隠し事はやめろ」
ピタッと、不動兄弟のサンオイルを塗る手が止まる。
千冬の言葉に留まったことで、真耶も……顔を上げる。
「ま、もういいだろう……しばらく後ろを向け」
「えっ……」
「牙狼、お前は私のを見たいのか?」
「あ、はい!」
意味を理解したのか、牙狼と狼牙はすぐさまあさっての方向を見る。
すぐさま千冬と真耶は……ブラの部分を元に戻し、二人をこちらに向かせた。
しかし、真耶はまだ理解してなかったようだ。
「お、織斑先生?」
「山田先生……不動兄弟のこと、貴方も気付いていたのでしょう?」
「…………はい」
「だ、そうだが?」
理解したのか、真耶はしばらく黙り……か細い声で答える。
そして挑むかのような、そんな声で千冬は二人に対して言う。
不動兄弟は黙ったままだが
「まず、お前らは戦闘の時……無駄がなさすぎる。いや、動きにはまだまだ無駄が多いが……あのコンビネーションは、どう見ても互いの行動を理解し合っているとしか思えない」
「「……それで?」」
「さらに、今までもそうだった。二人の行動は互いのフォローを完璧にし過ぎだと……素人にできることではない」
千冬は、その持っている称号もそうだが今までISの動きを見続けていた。
そしてそれは、真耶も似たようなものなのだ。
「会話をしていたようには見えず、お前たちはそれでも……いい加減、話してくれないか?」
「……ははっ、まあ……いいか。なあ狼牙?」
「ああ……どっちみち、普通は信じられないだろうし。お二人になら」
そうして不動兄弟は、話し始める。
自身らにある、その能力を。
それは、互いの心を通じ意思を疎通させる「シンクロ」というものだった。
双子の不動兄弟は、生まれながらに不思議なことがあった。
互いの意思や見ている風景が伝わると言うもの。
それによって、互いの危機を察知したりそれを回避したりと……今も、使える。
あのISでの戦闘も、会話なしに互いの視線から相手の動きを察知し、先を読んでいたのだと。
話を終えた不動兄弟。
聞き終えた千冬と真耶は……教育者の顔でもなく、二人を見定めようとする顔。
千冬はともかく、あの真耶でさえこのような顔になるとはと、不動兄弟は驚いている。
「そうだったのか……確かに、にわかには信じがたいが」
「そうでしょうね、こんなのもはやアニメの世界ですから」
「で、でもそれならあの動きには納得です……狼牙君のハサミのタイミングは、完璧でしたから」
「うっ……あれはすみませんでした」
食らった時のことを言われ、狼牙は申し訳なさそうな顔をする。
牙狼は、千冬をまっすぐに見つめる。
「ただ、俺らはこの能力……を超能力だとは思っていません」
「俺もです……俺らはただの人間ですから」
「……私もそう思っている、が……そのことは他言無用だ」
「わ、私も喋りません……絶対に」
それを聞き、不動兄弟はホッとする。
やはり、話して正解だったと……
「お前たちは正直に話してくれたからな……やはり、信用はできる。一夏の友としてもな」
「私、嬉しいですね……ちゃんと話してくれたので」
「「……はは、俺らもです」」
四人はしばし微笑みあい、パラソルの下で潮風を楽しんでいた。
と……そこへ一夏らがやってきて、また騒動となる。
不動兄弟がほかの生徒たちから疑惑の視線をむけられたりしたが……今、確かに平和だった、
事件は、すぐそこまで迫っていると知らずに。
ガンダムXは素晴らしいです……ぜひ一度、見てもらいたいですね。
セリフやネタなど多用しており、わからない部分があったら申し訳ありません、