昼間の自由時間が終わり、一同はそれぞれ旅館に戻っていた。
浴衣に着替え、大宴会場での夕食が待っているからである。
だが、浴衣着用が義務付けられてるとは妙な旅館でもあると不動兄弟は考えていたが
「……うまいな、狼牙」
「ああ、これはすごい……山菜の和え物なんて懐かし過ぎるぜ」
夕食の膳に手をつけ、その味に驚いていた。
山育ちが長く、しばらく食べていなかった山菜などには特に大喜びである。
だが
「~~~~~!?」
シャルがどうやらわさびの山を食べてしまったらしい。
日本に住んでいたわけではないので、わからなくとも仕方ないと言えばそうだが……あれはきつい。
慌てて一夏が声をかけていた。
「だ、大丈夫か?」
「ら、らいひょうぶ……」
しかし、その顔は涙と笑顔と言う名なとも微妙な顔。
それでもおいしいと言うあたり、素晴らしい。
「ほらよっ……本当はアレだが、コレ呑め」
と、牙狼がシャルにペットボトルのジュースを放った。
キャッチしたシャルはすぐさま封を開け一気に飲み干す。
「ぷはっ……ああ、ありがとう牙狼」
「ちったあ顔もマシになったな……気を付けろよ? もっとすごいのが日本にはあるんだからよ?」
「ふえっ!?」
その言葉に、シャルは自らの膳を見てまだやばいのがあるのかと思っているようだ。
さらに狼牙がその後ろに来て
「(日本のこと、知っとかなきゃ一夏争奪に不利だぜ? あと、この中にはもうヤバいのはないから)」
「(うっ……そうだね、ありがとう狼牙)」
それだけ言い、狼牙は席に……と、その時ニヤッと悪い笑みを浮かべ
「セシリアの足をツンツン」
「~~~~~~~~~!?」
戻り際に、いかにも私我慢してますと言った感じで正座をしているセシリアの足を軽くつついて行った。
その衝撃は、持っている味噌汁が震え声にならない声を上げるほど。
席で正座し食べていた牙狼も、それを見て爆笑している。
「あ、あ、あああなたがたはなにをしますのっ!」
「む、無理しなさんなって……くくっ」
「そうだぜセシリア……な、一夏」
狼牙と牙狼がそう言い、二人はそんなセシリアを一夏に任せる。
一応会話の方も回してやらねば、後で報復が怖いからだ。
そしてしばらく聞いていれば、以前シャルに食べさせてやったとか何とか……また騒動が勃発。
不動兄弟は助けを求める一夏を見なかったことにし、そのまま宴会場を後にした。
「やれやれ……賑やかだなあいつら」
「狼牙、そう言うな……後はお決まりだ、先生方がどうにかするさ」
と、襖を閉めた瞬間後ろから千冬のきつい声が響く。
やはりなと、二人は苦笑しその場から離れていった。
そうして男子生徒の入浴時間が来たため、不動兄弟は浴室へ。
と
「おっ、もう来てたのか」
「「遅かったな一夏」」
少し遅れて一夏が入ってくる。
三人は腰にタオルを巻き、浴室へ向かう。
身体を流し、タオルを取り外し……
「「「ふう」」」
そろって、つぶやいた。
午前から色々疲れていたのだろうか。
「しかし、二人は結構筋肉付けてんだな」
「一夏……一応IS使うなら身体能力もあげとかないとな?」
「うっ……牙狼の言葉、千冬姉にもそう言われたよ」
「いざというとき、動かないなんて洒落にならんからな……体力もつけないとよ?」
最後に狼牙にまで言われ、一夏はしょんぼり。
まあ、剣道をやっていたこともあると言っていたし、心配はないだろうが。
「なあ、一夏……なんでお前はISを動かせるのか、理由知らないか?」
「そのことか、まったくわからん」
「そっか、俺も狼牙も知りたいんだがな」
「牙狼なんて他にも男性でいないかな~なんて期待してるぐらいだしな?」
そうして、色々雑談を交えつつ会話をしていく。
普段女性ばかりのためか、やはり男性同士の方が話は色々しやすいのだ。
「……そろそろあがるかね、狼牙、一夏?」
「ああ」
「そうだな」
結構長くは言っていたような感じだが、実際いつもの入浴時間より長かった。
そうして、三人は上がり身体を拭きながらドライヤーなどで髪を乾かす。
髪も乾き、浴衣に着替えさあ出ようと暖簾をくぐれば
「!?」
複数の女子らがいたのだ。
皆、何やら顔が赤く……
「ど、どうした?」
牙狼が尋ねると、先頭にいた子が
「も、もしかして三人一緒に入ってたの!?」
「あ、ああそうだが?」
「「「「きゃ~!」」」」
牙狼の返事を聞いた瞬間、彼女らは黄色い歓声を上げ……気が付けば、どこかに行ってしまった。
三人の頭上に?マークが浮かんでいたが
「あ、俺この後セシリアと約束があるからこれで」
「おう」
「ヤバかったらこっちに避難しろよ~」
と、狼牙の意味深なセリフを残し不動兄弟は一夏と別れる。
一夏が部屋に向かう中、不動兄弟はしばし男湯の前でどうしようかと話していると
「むっ……お前達か」
女湯の暖簾から、突然千冬が出て来たのだ。
しかも、湯上りのためか……色々、艶もあり色っぽい。
「!?……お、織斑先生」
「牙狼に狼牙か……一夏はもう上がったのか?」
「ええ、先ほど!?」
と、急に狼牙の言葉が止まる。
それもそのはず、千冬の後ろから真耶が現れたのだ。
しかし、彼女のある部分は千冬に勝るほどと言われ……
((か、核兵器!?))
そう感じるほどの強烈さである。
よく見れば二人は火照った身体のためか、浴衣の胸元がまだ大胆に開けられており
「きゃっ!? ろ、狼牙君!?」
「……牙狼、お前はどこを見ている?」
「「男の夢と希望を!」」
「そうか……まったく、健全な男子と言えばそのとおりだが」
牙狼は千冬の、狼牙は真耶の胸元に釘づけであった。
そして千冬の姿が消えたと思えば、二人は急に足をさばかれ廊下に尻もちをつく。
「「あいたっ!?」」
「注意力が足りないな……それではまだまだだぞ? 山田君、私達も部屋へ向かおう」
「は、はい……その、二人ともおやすみなさい」
「二人とも、夜はほどほどに寝るのだぞ?」
教師コンビはそのまま、先ほど一夏が向かった方へ。
あちらが、彼女らの部屋である。
しばし呆然としていた不動兄弟だが、二人も部屋へ戻ることにした……と、
「あ、あの」
途中に娯楽室を横切っていたら、誰かに呼びとめられる。
見ると
「君たちは……昼間の?」
「どうしたの?」
牙狼と狼牙を呼びとめたのは、昼間にパラソルを砂浜に立てていた時の子たちだ。
やはり仲のいいグループのようで、あの時と同じく三人でいる。
ただ、他のクラスのため不動兄弟らは彼女らの名前がわからなかったが
「えっとその……昼間は、助けてくれてありがとう」
「私達、力が無かったから……本当、困ってたの」
「牙狼君に、狼牙君。ありがとう」
それだけ残し、三人は慌てて出て行ってしまった。
しばらくしてから、何やら先ほどの声より多く黄色い歓声の様なものが聞こえて来たが……
「……ま、嫌われてないみたいだな」
「牙狼はともかく、な」
「どういう意味だ!?」
こちらはこちらで、相変わらずである。
そんなこんなで、あちこちで騒動は起きていたが……平和な夜は過ぎ去っていった。
翌日、見事な快晴で絶好の海水浴日和……だが、本日はISの訓練日である。
場所は四方を崖が囲み、毎年使われているIS試験用のビーチだ。
今日は朝から夜までISの各種装備試験運用とデータ取りで、特に専用機持ちは本国から届けられた新装備の運用データを取ることになっている。
もっとも……それが、ある人物の出現によってブチ壊されるのだが。
「私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」
そんな自己紹介。
しかし、その自己紹介でも皆にも伝わったようで一気に騒がしくなる。
何故か遅刻してきたラウラに、千冬がコアネットワークの説明をさせ……彼女は現れた。
天才、天災……ISの生みの親とも言われる、行方不明になっていた篠ノ之束だ
「はぁ……もう少しまともに挨拶ができんのかお前は?……そら1年、手が止まっているぞ。こいつのことは無視してテストを続けろ」
「こいつとはひどいなぁ、らぶりぃ束さんと呼んでいいよ?」
「うるさい、黙れ」
そんなやりとりに周囲は茫然としている。
まあ、無理もないかもしれんが……不動兄弟はと言えば、完全無視ですでにインストールの真っ最中だ。
「牙狼、どうだ?」
「こっちは一通り……といってもスペック見た感じじゃ、きついな」
「俺のは、なんていうかさらにゲテモノ化が進んでるぜ」
と、あちらでは話が進んでいたようで箒の専用機があるとのことらしい。
しかし、不動兄弟にとっては今するべきことはこっちだった……
自身らの、生活に必要なお金のために。
データを取るためには一刻も早く作業を進めなければならない。
千冬が無視してもいいと言っていたので、続けながらやるべきことを進めるだけだった。
そうしてある程度終わり、あとは自身がISを纏って扱えばデータは十分に取れるほどになっていると
「た、大変です! 織斑先生!」
突然、真耶が慌ててやってきた。
「どうした?」
「こ、これを……」
彼女が持っていた端末を見た瞬間、千冬の表情が曇る。
ちょうど作業を終えた不動兄弟は、そんな二人の顔に厄介事かと考えだした。
この学園にいると、騒動に巻き込まれる可能性があると……事前に政府から説明を受けているためだった。
そして離れていたため、二人の声は聞こえないが……どうやら口でなく手話で話しているようだ。
千冬が一同を見て
「全員注目!」
パンパンと手をたたきながら出された声で、全員の視線を向けさせる。
どうやら、よほどよくないことが起こったようだ。
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る……今日のテスト稼動は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。一般生徒は自室にて待機すること、以上だ」
((……やっぱり厄介事か))
不動兄弟はISを展開する前に止め、千冬の指示通りにすることにした。
他はまだざわめいていたが
「ちゅ、中止? なんで? 特殊任務って……」
「状況が全然わからないんだけど……」
「とっとと戻れ! 以後許可なく室外に出たものは我々で身柄を拘束する! いいな、これは命令だ!」
「はっ、はい!」
全員急いで準備していたものを片付け始める。
不動兄弟は、声を出さずすぐに戻ろうとするが
「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰、不動兄弟!……それと、篠ノ之も来い!」
「はい!」
「「……了解」」
箒の気合の入った返事が聞こえる。
だが逆に、不動兄弟はため息交じりだった。
そうして専用機持ちは宿に戻っていく……緊迫した空気の中、戦いは始まろうとしていた。
「では、現状を説明する」
千冬がそう言い、宴会用の大座敷に専用機持ちが集まっていた。
無論、不動兄弟もそこにいる。
照明を落とした薄暗い部屋に、大型ディスプレイがあり……映し出された。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域から離脱したとの情報があった」
予想通り、しかも最大級の厄介事である。
他のメンバーが厳しい顔になる中、不動兄弟は……他と違い、あまり関わりたくなさそうな顔をしているが。
軍人であるラウラなど、目が物凄く真剣である。
「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから2キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして50分後、学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった」
淡々と千冬は続ける。
しかし……全員の心の中は、今何を想っているのだろう。
「教員は学園の訓練機を使用して空域、及び海域の封鎖を行う。よって本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」
無茶苦茶であった。
そもそも、そのようなことをほとんど実戦経験が無い者達……学園生徒に任せるなど。
「作戦会議を始める……意見のある者は挙手するように」
「はい、目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
すぐさまセシリアが手を挙げ、挙手をする。
これは予想していたのか、千冬もすぐさま答えていた。
「わかった。ただしこれらは2カ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判などで最低でも2年の監視がつけられる」
「了解しました」
モニターに映し出された「福音」の詳細なスペックデータが出てきた。
このデータによると、広域殲滅を目的とした特殊射撃型のISであった。
専用機持ちたちはこのデータを見て、すぐに理解をしたようである。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……私のISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方を特化した機体ね、厄介だわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利ね……」
「この特殊武装が曲者って感じはするね。ちょうど本国からリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」
セシリア、鈴音、シャル。
各国家の専用機持ちらでさえ、かなり厳しいことがうかがえる。
「しかもこのデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限度だろう」
ラウラも今の状況では見えないことも多いと感じ、すぐさま千冬に意見をする。
しかし、突発的な事態であり……こちらに対し不利なことが多過ぎた。
一夏と不動兄弟はずっと黙ったまま……ついていけないのと、ある程度諦めが入ったようだ。
「一回きりチャンス……ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持つ機体で当たるしかありませんね」
自然と、一夏に視線が集まる。
その理由は当然……わかっていた。
「えっ?」
「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」
「それしかありませんわね。ただ、問題は」
セシリアが、チラッと一夏の方を見ている。
その理由は……おそらく、移動手段とエネルギー関係。
「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか」
「しかも、目標に追いつける速度が出せるISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! お、俺が行くのか!?」
「「「「当然」」」」
慌てる一夏へ畳み込むように言うシャル、鈴音、ラウラ、千冬。
はっきりいって、無茶もいいとこであろう。
見ると、今喋っていた以外のメンバーも頷いて……いなかった。
不動兄弟だけは、頷いてもいない。
しかし、今それに気付く者はいなかった。
「織斑、これは訓練ではない。もし覚悟がなければ無理強いはしない」
「……やります。俺がやってみせます」
そうして、一夏がオフェンスとなったようである。
さらに移動手段は……セシリアのISに使うパッケージが最適となったようだ。
「オルコット、超音速下での戦闘訓練時間は?」
「20時間です」
「ふむ……それなら適任」
「待った待ーった! その作戦はちょっと待ったなんだよ~」
千冬の言葉を遮り、どこから底ぬけた明るい声……天井からだ。
声の正体は束である。
その後、真耶の声を振り払うかのようにくるっと器用に回転し、千冬の前に降り立った。
「聞いて聞いて!ここは断然、紅椿の出番なんだよ~!」
「なに?」
すると、束の言葉に空中投影の画面が紅椿のスペックデータに変わる。
一同が注目する中、束は楽しそうに説明を始めた。
「紅椿なら展開装甲をチョイチョイといじれば、超高速起動なんて朝飯前だよ」
展開装甲とはなんだろうか?
全員が初めて聞く言葉である。
そして説明を聞いて行くと、箒がもらったとされる紅椿は第四世代のISであり、従来の第三世代のパッケージ換装を必要としない万能機。
さらに、一夏の扱う白式の武装「雪片弐型」もそれに値するのだそうだ。
ぶっとんでいた、何もかも
全員が言葉を失うのは無理もない。
世界の、各国の持つ技術の先をいっているのだから。
だが千冬だけは動じていない……不動兄弟は、そこにだけ注目していた。
(牙狼……)
(ああ、あまり考えたくないけどな……どうもきな臭いぜ)
そんなこんなで、説明を受けているメンバーら。
それを冷めた目で見ている不動兄弟。
いつの間にやら、十年前のある事件に関する話題も出ていたりしたが……そんな暇はあるのだろうかと。
「話を戻すぞ……紅椿の調整はどのくらいかかる」
「7分もあれば余裕だよ」
「そうか……ならやれるか篠ノ之?」
「はい……やります!」
そうして出撃メンバーが決定したかのように見えたが
「ちょっと待った」
突如、声を出しその雰囲気を断ちきる。
全員の視線が向けられ
「牙狼……何か意見があるのか?」
「んー何かな君は? せっかくまとまって今から」
「俺は反対だ、一夏と箒両方にな」
束の声をスルーし、牙狼は真っ向から意見を否定していた。
これには一同が驚き、狼牙は……目をつぶっている。
「どうしてだ牙狼!」
「私と一夏では役不足だと言うのか!」
「ああそうだよ……はっきり言ってやろうか? お前らじゃ、無理だ」
束を押しやり、牙狼の前に来たのは険しい顔の一夏と箒。
雰囲気が、少しずつ険悪になっていく。
「なんでだよ! 俺の攻撃でないと落とせないんだぞ!」
「私だってそうだ、新しいISも」
「一夏」
と、急に牙狼が一夏へ近づき……
右手で、一夏の股間を鷲掴みにした
「!?」
「……ふん」
これには一同も目を見開き、束も……見ている。
しばし手を一夏の股間へ置いていた牙狼は、ため息をついた。
「やっぱな……」
「な、なな何しやがるんだお前!?」
一夏が慌てて下がる。
千冬も、さすがに今の光景は驚いたのだろう。
真耶など、他の女性メンバーは……少し、顔が赤い。
そして、牙狼は一夏を見て
「一夏、お前……ビビってるだろ?」
そう言い放った。
だが案の定、一夏はすぐに反論を口にする。
「なっ! 俺はビビってなんか」
「股間が縮みあがってたぜ?……口はそうでも、体は正直ってな。本音はビビってんだよ、お前」
「……っ!?」
牙狼は、真っ正面から一夏へ……強く、静かな言葉をかける。
一夏はそれを見ていたが……視線を、ずらした。
「だからさ……今のお前が、訓練もしていない箒と一緒に飛んで……本番でビビって墜落する光景しか見えないぜ?」
「くっ……牙狼!」
箒が激高し、いつの間にか持っていた竹刀を手に
「だから」
「!?」
箒の竹刀を右手で受け止め、その肩に左手を置く。
「俺と狼牙も一緒に飛んでやる……ダチの、処女飛行だしなあ」
不敵な笑みで、牙狼は狼牙を見る。
狼牙は閉ざしていた瞼を開き、ニッと笑う。
「相変わらず、お前は言い方がアレだな」
「うるせえよ……一夏」
「!?」
「てめえ一人だけに背負わす気はないぜ?……同じ男同士、だろ」
「お前たちの後ろに、俺たちはいる」
牙狼は言い、狼牙が続けて周囲を見ていく。
セシリア、鈴音、シャル、ラウラ、千冬、真耶、束、そして……箒。
一夏は……視線を、牙狼と狼牙に戻す。
「我が道を行く【白い騎士】のエスコートは【黄金騎士】がしてやるよ……俺たちのISは、もう換装が終わってる」
「そして、この夜空には【銀色の悪鬼】が【紅い花】を咲かせてやろう……いつでも、行けるぜ」
一夏と箒は……二人の言葉に、驚きを隠せなかった。
あの砂浜での時間に、自身たちはしっかり行動をそこまで終わらせていたことに。
そして何より……二人の言葉で、ここまで気力が湧いてくるなどとも。
千冬は、無言で……許可を出していた。
それを確認し、ついに始まる。
「行こうぜ、二人とも。本命はお前たちだ!」
「牙狼や俺にとっても、初陣だからな……ビシッと決めるぜ!」
「ああ……頼むぜ、牙狼!」
「ふふっ……男がそう言ったからには、期待させてもらうぞ? 狼牙!」
牙狼と狼牙。
一夏と箒。
自然と手を合わせ、四人の決意が……固まった。
そして、銀の福音との戦いは幕を開ける。
次回、福音戦突入……同時に、不動兄弟らのパッケージも公開です。