騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第十六話

新学期が始まり、IS学園でも色々変わり始めようとしている今日この頃。

気になるニュースが入ってきた。

 

織斑一夏を、1位の部活動に強制入部

 

IS学園での学園祭では毎年各部活ごとの催し物を出し、それに対して投票を行う。

その投票で上位組は部費に特別助成金が出る仕組みだとか。

最初に聞いたときに狼牙は呆れていたが……どうやら本当らしい。

確かにイケメンの一夏を欲しがる女子は多いだろう。

いまだ無所属ならなおさらであり、まあ人ごとなので狼牙は一夏を励まして終わるだけだった。

 

「なんで狼牙にはないんだ!?」

 

「俺はイケメンじゃないし、普通だからな……ま、がんばれ」

 

真っ白になった一夏を放置し……処置の方は、後ろに般若の顔が見える一年一組二組のメインメンバーに任せた。

実際は案だけは出ていたらしいのだが、より実現的な方を選んだらしい。

が、その後に行われたホームルームの時間。

1年1組は学園祭の出し物を何にするか話し合っていたが

 

内容が『織斑一夏のホストクラブ』『織斑一夏とポッキーゲーム』etcetc……

 

呆れて過ぎて、すでに狼牙は机に腕を置いて昼寝を始めている。

まあ、イケメン相手なら大抵の女子は食いつくからいいだろうと言う考えだ。

狼牙の名前すら上がらないが、どっちみち一夏の当て馬になる気はないのでどうでもよかったらしい。

だが肝心の一夏が拒否しまくっており、真耶にも話題が振られたところで

 

「メイド喫茶はどうだ?」

 

言葉を遮るように言ったのは……驚くことに、ラウラであった。

一夏や箒、セシリアも……何より千冬が一番驚いてるように見える。

 

「メイド喫茶なら、客受けはいいだろう。それに飲食店の経費を回収ができ、招待券制で外部から来た人達の休憩所としての需要も少なからずあるはずだ」

 

淡々とした口調で説明するラウラ……彼女がそういうのは、本当に驚きである。

理にかなっているし、クラスのメンバーは考え始めていた。

 

「いいんじゃないかな? 一夏とそこで寝ている狼牙には執事か厨房を担当してもらえばオッケーだし」

 

苦笑しながら言うのはシャルロット。

部屋も同じためか、ラウラをサポートするように発した言葉に皆は賛同し始めている。

一夏もそれならいいのか、一安心な顔で……狼牙の隣にいる女子は、狼牙を起こし始める。

 

「狼牙君、そろそろ起きないと」

 

「んっ……ん?」

 

うすら目をあけると、全員の視線がこっちを向いていた。

寝起きのためかしょぼしょぼと眼をこすり、とろんとした眼になっている狼牙。

狼牙は確かにイケメンではないが……こういう仕草は、子供っぽく見えるので

 

(な、なんか可愛い)

 

そう思うのが少なからずいた様だ。

だが、だんだん目が覚めて来たのか普段の顔に戻ってきたようだ。

 

「狼牙~なんか俺とお前で執事か厨房をやったらどうかってさ」

 

「?……ああ、そうなったんだ」

 

「おいおい……」

 

「いやあ、ここはやっぱ一夏がメインで出りゃ客来るだろ?」

 

狼牙はそう言い、自身は裏方に回ろうとする。

しかし、一夏一人に任せっ切りもまずいのだろうか……

 

「狼牙、お前も出ろ……一夏だけに任せてはな」

 

「うっ……わかりました」

 

千冬にそう言われ、しぶしぶ承諾する。

こうして一夏と狼牙が執事になり、他がメイドで決まったのだが……接客に出るメイドも決めないといけない。

そのため、色々な意見が出たのだが

 

「じゃあ先生たちにもメイド服を着てもらうとか?」

 

そんな発言が出てきていた。

しかし……千冬の無表情に見えて頬がピクッと動いていたりする。

おそろしい前触れだ。

 

「ねえねえ! 狼牙君は先生たちのメイド服をどう思う? 前にいる山田先生とか!」

 

「山田先生?」

 

狼牙はふと真耶を見る。

彼女はと言えば、教壇から少しばかり首をかしげ此方を見ている。

だが、狼牙は青少年特有の妄想力を発揮した。

顔に手を置き、隙間から覗きこむように見ながら考える。

 

 

 

(山田先生がメイド服……うーん、あえて言うなら野山に咲く一輪の可憐な花……普段の優しげな姿に似合っている格好で、ちょこんと小首を傾げる仕草……正直にいえばすげえ好みで、今すぐ結婚前提で交際を申し込みたいほどにどストライクだ!)

 

 

 

と、急に周囲が静まり返っていることに気付く。

狼牙が妄想から戻ると……真耶の顔が真っ赤になり湯気が出そうな感じに。

 

「ろ、ろろろろろろ」

 

真耶が、ろれつの回らない口で何やら連呼しているのだが。

周囲の静けさを破るように、一夏が震えた声で

 

「狼牙……お前、今」

 

「…………まさ、か……俺、口に出してた?」

 

「「「思いっきり」」」

 

ギギッと錆び付いたドアのように一夏や他のメンバーを見る。

そうしたら、周囲が一斉に頷いていた。

千冬が笑いを堪えるように顔をそむけ、出席簿で顔を覆っていた。

 

「か、可憐とかけ、結婚前提とか交際とか……そ、それは教師と生徒ででも女と男であうぅ」

 

そしてこちらは面白いぐらいにテンパっている真耶。

さらに周囲の面々は面白い獲物を見つけたと言わんばかりにニヤニヤしている。

 

「ほう、狼牙は……」

 

「そうでしたの、狼牙さんは……」

 

「狼牙ってそうなんだね」

 

「……ふむ、何やら悪くない関係のようだな」

 

「お前ってすごいな、狼牙」

 

「こら専用機組! なんだその顔は!? 悟りきったような顔するなお前ら!」

 

紅、蒼、橙、黒、白から言われる狼牙。

お前らは戦隊モノでもやってろと言いたくなるが……我慢したようだ。

 

そうして、結局はそのまま決定したようである……真耶は使い物にならないので千冬が仕切っていたが。

 

だが、騒動はここで終わらなかった。

その後、またも出て来たのはあの生徒会長。

今度は何かと思えば……一夏のISコーチになったと狼牙は聞いたのである。

もしくは一夏に惚れてる一人かと思っていたのだが……そこは狼牙にはわからなかった。

 

「ふ~ん、織斑君も大変なのね」

 

「そうなんですよ、桔梗先輩」

 

「でもでも、あの会長じゃだれも逆らえないよね~桔梗ちゃん」

 

ここはアリーナ。

実は狼牙も、この前のことから交友がある二年の桔梗と瑠璃に模擬戦の相手をしてもらっているのだ。

 

「あの人はそんなに強いんですか?」

 

「強いよ~私と桔梗ちゃんも闇討ちしたんだけどね」

 

今さらりと恐ろしいことを言ってたような気がしたが

 

「返り討ちだったよね、瑠璃」

 

「そうだね」

 

「……うん、なんか人間離れしてると思いました。あの会長さん」

 

どうも訓練は終わったようだ。

使用時間が限られているため、早めに退散しないといけないのだが……

 

「それはそれとして、狼牙君のISはやっぱり試作の域を超えてるわね」

 

「本当だよ、パワー重視だけど装備も普通じゃないし」

 

「そうですかね……しかし、いまだに左のウルフファングだけ……か」

 

今の狼牙のISは、左腕にあるシールドクローのウルフファングのみ。

しかし、このクローを上下に出してハサミに変え、相手を捕まえ電撃、もしくは引き寄せてシールドについている砲口からゼロ距離ビーム攻撃も可能なのだ。

ある意味では、今ある専用機組の中でも攻撃力に関しては上位に入っているのだが……決め手がそれしかない。

 

「もっとも、「ザ・ビースト」はそれのカバーのためについているシステムなんですけどね」

 

「あのシステム……私や瑠璃もだけど、女性ではよほど鍛えてないと筋肉がズタズタになっちゃうと思う」

 

「だね~男性向けって感じで……スペックは相当なものだよ、最終段階でフルバーストだっけ?」

 

「はい……もっとも、俺のもいまだそこまでは使えていませんが」

 

牙狼と狼牙のISにのみあるシステム「ザ・ビースト」

このシステムは後の男性候補者のISにも使われる試作システムであり……稼働時間の減少と引き換えにパワー・スピードが跳ね上がる。

しかし、エネルギーを喰うため稼働時間が短くなり連続で攻撃を喰らえばシールドで喰われてしまうため早々使えないのだ。

 

「まさに諸刃の剣ってことね」

 

「でも桔梗ちゃん、狼牙君は……もうだいぶ慣れて来てるようにみえるよ?」

 

「いえ、瑠璃先輩……もし完全に扱えるなら、瞬時加速を連続で使うことだってできるはずなので」

 

そう言いながらISの戦略について話しあう。

最近の狼牙は、戦術面でも先輩らに聞きながら模擬戦を行っている。

専用機持ちは一年だけではない、各学年におり……会長もその一人。

一夏も、その会長の指導でますます強くなるだろうが……狼牙は、こうして地道に進むことにしていた。

 

「狼牙?」

 

「お、一夏か」

 

急に聞こえた声。

それはISスーツを纏った一夏と……噂の更識楯無会長だった。

 

「お前も訓練中だったのか」

 

「まあ、もう上がるから……会長さん、こんにちは」

 

「こんにちは、狼牙君……その様子だと、無事に終わったみたいね」

 

と、楯無は桔梗と瑠璃を見る。

二人は……乾いた笑いでそっぽを向いていた。

 

「しかし、そのまま訓練ね……なんなら君も参加する?」

 

「いえ、俺にはもう立派なコーチが二人も付いておりますので」

 

「そう……それはいいことだわ」

 

狼牙も確かに彼女の指導は興味あるが、あまり信用できない人物なので無理と思っていた。

むしろ桔梗や瑠璃の方が、色々さらけ出してくれる分頼れるのである。

 

「それじゃ、俺はこれで……」

 

「「私達も失礼します」」

 

そのまま狼牙と桔梗、瑠璃はアリーナを後にする。

一夏は……いつもの専用機メンバーの視線も気にしながら訓練を始めていた。

あっちはあっちで、こっちはこっちということである。

 

「ねえ、狼牙君……いいの? あの会長の指導なんだよ?」

 

「桔梗先輩、今の俺のコーチはお二人ですから」

 

「もう嬉しいこと言ってくれるよこの子は~」

 

瑠璃が狼牙の頭を撫でようと……撫でようと、しているが届いていない。

まあ、桔梗は160手前で瑠璃に至っては150にすら身長がいたってない。

170センチの狼牙に届く訳もなく……虚しく手は狼牙の髪をぺちぺちしていた。

 

「あの、瑠璃先輩くすぐったいので」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

「瑠璃……少しは先輩らしくしないと」

 

けらけらと笑う瑠璃に対し、桔梗はため息。

ここらへんは結構対照的な性格である。

そうして三人は着替え終わり、それぞれの寮に戻ろうとすると

 

「あ、狼牙君。やっと見つけましたよ」

 

「「「山田先生?」」」

 

こちらに駆け寄ってきたのは真耶だった。

しかし、走るたびに色々……まあ、狼牙が少し目をそらしたのを隣にいる二人は見逃していない。

 

「ごめんなさい、ちょっと重いモノがあるので手伝ってほしくて……」

 

「そういうことですか、わかりました……先輩、俺はここで」

 

「あ~うん……また明日ね」

 

「うん、夜もメールするね~」

 

そう言いながら二人と別れる。

狼牙も、今派牙狼がいないため一人部屋になっており……夜は暇な時も多いのだ。

なのでこういうメールや電話をしていたりする。

 

「……狼牙君、そろそろ」

 

「はい、すみません」

 

真耶に促され、狼牙はその後をついて行く。

そうして職員室から大量の紙束……チラシのようだ、それもドッサリと言う言葉が似合うほど。

段ボールに詰められているそれを、狼牙はひょいっと持ちあげる。

職員室に残った教師一同がお~と言ってたりしていた。

 

「やはり、こういう時に男手があるといいわね」

 

「そうね……腰にも悪いから、助かるわ」

 

と、他の女性教員の話を横目に真耶と共に狼牙は職員室を後にした。

静かな廊下を歩いて行く二人。

 

「そういえば……狼牙君は、二年の子たちとも仲がいいのですね」

 

「あはは、この前の件以来で……今では色々ご指導をしてもらってますね」

 

生徒指導室の戸を真耶が開け、そこに二人ははいる。

狼牙は段ボールを机の上にゆっくりと下ろした。

 

「はい、ありがとうございます」

 

「いえいえ、この程度の仕事ならいつでも」

 

「……狼牙君、あまり……背負いすぎないでくださいね」

 

資料を取り出している時、真耶はそう言ってきた。

その意味を狼牙は理解しているが

 

「俺は、大丈夫ですから」

 

「でも」

 

「大丈夫です」

 

拒絶に近い言い方だった。

二人はその後無言になり、片付けが終わったのを見て狼牙はすぐに出て行ってしまう。

 

「……はあ」

 

「ため息とは君らしくないな」

 

「ひゃっ!?……お、織斑先生?」

 

突然入ってきたのは千冬。

ドアの前で腕組みをし……中に入ってくる。

 

「狼牙の奴は、今あがいている最中だろう……乗り越えるために」

 

「あがいているのでしたら、なおさら」

 

「あいつは男だ……私達が深くかかわろうとすれば、逆効果だろう」

 

千冬は窓にまで歩み寄り、外を眺める。

真耶はそんな千冬を見て……自然と口が動いていた。

 

「織斑先生は……その、牙狼君のことを……」

 

「……あのように言われたことなど、なかったらな……あいつは私の眼を通し、心を見ていた」

 

「心、ですか?」

 

「最初は見た目だけで判断していたのかと感じたがな……今までの牙狼を見て、違うと思った」

 

少し顔を真耶に向け、千冬は続ける。

 

「そして、牙狼は私を超える……そんな感じもしていたのだ」

 

「え……でも」

 

「何故そう思ったのかはわからない。しかし……男としては、悪くないと思っていた」

 

夕陽をバックに、千冬は真耶を見る。

薄暗く見える千冬の姿だが……それがとても美しいと真耶は感じた。

 

「あいつを失ったのは私の責任でもある……一夏達を、その身を犠牲にして守ったというのに……私は、気持ちに気付きすらしなかった愚か者だ」

 

千冬はその時、どう思っていたのか。

あのメンバーだけで行かせたことは、自身の失策だと。

 

「だから、狼牙は必ず守る……一夏達も、同じ気持ちだろう」

 

「……私も、同じですから」

 

「そうか……」

 

そうして、会話が途切れる。

千冬も真耶とともに作業を再開し、来る学園祭に備えるのだった。




次回、学園祭。
ついに悪役登場……なのかな。
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