騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第十八話

IS学園から離れた、とある高層マンションの最上階。

そこには……薄い金色の髪の女性が、学園祭で得られたデータを見直しながら誰かと話している。

 

「……IS学園も、少しゆるすぎですね」

 

「そうね、あっさり入れたぐらいだし……今回の被害も自業自得みたいなものかしら?」

 

「意外に一夏などを餌にしていた感じはありましたけどね……でも、収穫はありました……スコールさん」

 

「確かに……私達が来ることは、もしかしたら予想されてたのかもね」

 

その女性はスコールというようだ。

彼女の本名ではないだろうが……薄く微笑み、口を開く。

 

「でも貴方らしいわね。それで、彼のISは……」

 

「まだ、でしょう。しかしその時は近づいてると」

 

「……やっぱり、心配しているのかしら?」

 

「スコールさん」

 

どうやら男性と話しているようだ。

漆黒の服に身を包めたその男性は……意地が悪いと言わんばかりにスコールを見る。

スコールと呼ばれた女性は、それを見てため息をついた。

 

「オータムさんは?」

 

「軽傷よ、でも一番は貴方の使った技の爆風のせいかしら?」

 

「……殴られました」

 

そう言うと口元に手を置き、クスクスとスコールは笑う。

しかし馬鹿にしている笑みではないようだ。

 

「あまり女性の肌に傷をつけては駄目よ? 坊や?」

 

「坊や……って言わないでください」

 

「ふふっ、そうね。ごめんなさい……っと、貴方達は何かある?」

 

スコールがそう言い、別のソファーに座っている二人を見る。

その二人はこちらをジッと見ているようだが

 

「…………」

 

「うーん、みんなが戻ってきただけで私はいいよ?」

 

一人は無言、もう一人は嬉しそうな笑みで……何かの端末をいじっていた。

その光景に坊やと呼ばれた男性は頬をかく。

 

「エム、お前は」

 

「知るか」

 

そしてエムと言われた……少女は、部屋から出ようとする。

同じソファーに座っているもう一人、こちらも少女だった。

彼女は端末をいじり、何か見つけたのか嬉しそうな顔で男性に話しかける。

 

「おいそれは後で……エム、さっきうまそうな飯屋を見つけたんだが後で一緒にどう?」

 

「……空腹なのは確かだが、シャワーぐらい浴びさせろ」

 

「わかった、待ってるぞ」

 

そう言うとどこか満足そうな男性。

しかし、そのエムと呼ばれた少女の隣でぶーたれている少女がムスッとした口調で言う。

 

「えー私は~?」

 

「もちろん一緒だぞ?……スコールさんはどうしますか?」

 

「そうね、私も行ってみようかしら……お土産もいるでしょうし」

 

別室で休息中の、オータムがいる。

彼女に何かご機嫌とりのモノが必要だから男性はこう言ったのだろうと……見抜かれてる彼は、苦笑していた。

 

「ああエム、それはいいけど貴方のISを整備に回しておいて頂戴。サイレント・ゼフィルスはまだ奪って間もない機体だから、再度調整が必要よ。今回は戦闘には使わなかったけど、次は働いてもらうわ」

 

「わかった……お前も待っててくれ、坊や?」

 

エムと呼ばれた少女は部屋から出ると、胸のクロケットを握り締めて瞼を閉じる。

すると、閉じられた扉から

 

 

 

「お前が坊やって言うなこら!」

 

「まあまあ、カルシウムとらないと~はい、にぼし」

 

「お前は俺をおちょくってるのか!」

 

「私は久しぶりにお寿司とかも食べてみたいわね、スコールも好きみたいだし」

 

 

 

先ほどのシリアスをぶち壊すような会話が聞こえる中。

そんな喧噪を聞きながら、エムは……その身から湧き出る感情を抑え込もうとしていた。

自然に、口元にその気持ちが表れそうで……

 

(もう少し……もう少しだ……)

 

ずっと、あの時からずっと待っていた。

焦がれたときは、もうすぐ側まで来ている。

 

(これで、私の復讐がはじめられる……そう、やっと)

 

再びあいつと会うことも、こうして今一緒にいることも叶ったのだ。

だから次は……やっと、もう一人の待ち焦がれた存在と会うことができると確信して。

 

(織斑千冬(ねえさん))

 

少女の口元は邪悪に歪むのだった。

だが、先ほどの男性は……そんなエムの後ろ姿を見た時

 

一瞬……悲しそうな顔をしていた

 

スコールだけが、その顔を見て……薄く微笑んでいたのだが。

そして、場所は変わり……薄暗い部屋の窓際。

ここはIS学園の寮で、狼牙がいる部屋だ。

今は夜だと言うのに電気も点けず、月明かりだけ。

 

「……あの、黒いIS」

 

その中で狼牙は、一人……昨日の戦いを思い出していた。

アリーナに突如現れた黒いIS。

それは……その剣を天に向け、剣からあふれんばかりのエネルギーを集めていた。

すぐに狼牙、一夏、楯無が気付き向かったが……まるで剣から枝分かれするかのように伸びたエネルギーを、黒いISは地面にたたきつける。

 

巻き起こる大爆発

 

狼牙は左のシールドを構え、地面にしがみつくようにそれに耐える。

だが……爆風に全てが覆われ、シールドエネルギーによりIS自体に相当無理が来ていた。

そして爆風が晴れたころには……先ほど捉えようとした女性と、黒いISの姿はなかった。

その後、偵察に出ていたが撃墜された真耶。

 

学園祭時で現れたとされる……セシリアの駆るブルー・ティアーズに似たIS「サイレント・ゼフィルス」の姿。

 

またしても未知の……いや、あの女性の持っていたIS「アラクネ」も元は強奪されたものだと。

なにより、狼牙と同じ姿の存在がいたということ。

千冬はそのことで真耶と他の教員にも確かめていたらしい。

よって、今回の事件で真っ先に疑いが持たれたのは……狼牙だった。

 

 

 

事件発生時の目撃証言から、酷似した人物がいたのだ……真っ先に疑われるのは仕方なかった

 

 

 

だが、クラスメイトや他の上級生らの証言。

さらに千冬らがしばし一緒に行動していたこともあり……その疑いは、晴れたようである。

もっとも、楯無などはまだ色々聞きたそうだったが。

 

「……くそ、俺はどうすりゃいい」

 

聞こえたのだ、声が。

見知っている声、同じ声。

そして……気配が。

決めつけるのは早い、だが実際被害が出ている。

打ち明けるべきか否か。

繰り返される自問自答、思考の渦にのまれそうな時……ノックが響く。

 

「どうぞ」

 

「あ……し、失礼しますね」

 

入ってきたのは……真耶だ。

しかし、その服装はいつもと違いジャージである。

狼気はすぐに身を起こしていた。

 

「山田先生?」

 

「狼牙君……ごめんなさい、こんな時間に」

 

「い、いえ……しかし」

 

「織斑先生の許可は、得ています……貴方と少し、お話しがしたくて」

 

普段なら喜ぶとこだった。

だが今の狼牙は……

 

「!?」

 

「……どうしましたか?」

 

鋭い、獣のような眼。

ギラギラとし、胸の中で収まりきらない気持ちが全身にあふれている。

 

真耶はその時に……目の前の男性に、恐怖した

 

自分には持っていない、そんな怖さを。

千冬とは違う、威圧を。

だから、今の狼牙が……余計に、小さく見えた。

真耶は一歩一歩、狼牙に近づき……その隣に行く。

 

「ここ、いいですか?」

 

「……どうぞ」

 

緊張もあるためか、ゆっくり座る真耶。

しかし、狼牙は……気配を変えていない。

 

「狼牙君のこと、先ほど聞きました」

 

「そうでしたか……先生は無事だったんですね」

 

「はい……あのISは逃がしてしまいましたけど」

 

技量は負けないだろう。

だがISの性能もあり、負けてしまった。

狼牙は撃墜時のことを聞き、そう判断している。

 

「それぐらいならいいじゃないですか、自分が無事だったんですから」

 

「……でも、私は生徒に危険が及ぶのを見ていることしか出来ないダメな教師です」

 

「行動していたのとしていないのは違いますよ……先生がやるべきことをしていたのは、間違ってません」

 

だから狼牙は、真耶を責めない。

それをわかっているのだ……しかし

 

 

 

「でも、山田先生も俺を疑っているのでしょう?」

 

「!?」

 

 

 

突然の言葉に、真耶は狼牙を見る。

狼牙はそのまま続けた。

 

「俺の姿を見たっていう証言が多い上に、一部では俺を犯人扱いしている」

 

「で、でもそれは違うって」

 

「一度疑いを持たれちゃ……その疑いはそうそう消えないんだ」

 

それは人間ならよくあること。

そのことで、罪を負ってもないのに背負わされることさえある。

今回の件でも……全員がそうではないが、そういった目で見ているのもいることは事実。

 

 

 

「だから俺は、一人で行きますよ」

 

 

 

狼牙は、決めた。

IS学園を出ようと。

 

「なっ」

 

「こうも疑われてちゃ、もうここにいられない……上の人間ってのは、信じられないんで」

 

自身の立場を考えれば、狼牙は上を信じられないのは仕方ない。

身柄をつねに、押さえられているようなものだからである。

 

「で、でもそんなことしたら」

 

「知ったことじゃないです……もう、俺も限界だ。だから一人で動く」

 

眼をつぶり、狼牙はそう言い放つ。

 

「それにこの部屋も、つねに監視下にあるんですから」

 

「えっ!?」

 

「……貴重な男性操縦者、とか言ってますがね。ようはモルモットに近いんですから」

 

無防備のまま過ごさせるわけがない。

今もどこかで、学園関係者がこの会話を聞いてる可能性がある。

 

「でも、行く場所は」

 

「先生、貴方には関係の無いことですよ……」

 

そう言い狼牙は立ち上がる。

よくみれば、荷物その他がすでにまとめられていたのだ。

それでも真耶から見れば、それは無謀以外なんでもない。

 

「だ、だめです!」

 

グッと狼牙の手をつかむ。

いつも穏やかな真耶が、表情を変えて止めようとしている。

 

「離してください」

 

「離しません! もう貴方まで失うわけには」

 

 

 

その瞬間、狼牙は真耶の腕を逆につかみ……ベッドへ押し倒す。

 

 

 

力任せの技。

上に乗られ、見下ろすそのギラ付いた眼。

真耶は……息をのみ、震えた。

 

 

 

「IS学園がなんだ、世界の言葉がなんだ!」

 

「ろ、狼牙k」

 

「僕は! 籠の中の小鳥じゃない! あんたら大人の道具でもない! 人間だ!」

 

 

 

叫ぶ。

抑えていたモノがあふれ出す。

 

「結局、僕の居場所は……兄さんとの、思い出の中だけ」

 

「……そんなこと」

 

「ISが使えるからって何が偉い……使える使えないで僕の価値を決めるの?」

 

涙が真耶の頬に堕ちていく。

その涙は熱く、そして冷たかった。

 

「自由になりたいだけなんだ! 僕は、兄さんは……それだけなのに」

 

「……男の子が、泣いちゃだめですよ」

 

真耶は、力の抜けていた腕を伸ばし……狼牙を、自身の胸に抱き寄せる。

優しく……回されてきていた腕に狼牙はほとんど抵抗できなかった。

普段なら顔を赤くするほどのことなのに……今感じるのは、柔らかく安心できる温もり。

昔、こうしてもらったことがあった気がしていた。

 

「っ……卑怯ですよ、先生」

 

「私だって、狼牙君の言う大人ですから……こうして、慰めることしかできませんけど」

 

「……先生って、意外に冷静なんですね」

 

「そうですよ? みんなのお手本にならないといけないんですから……」

 

普段の姿からは想像できないほどに、彼女は落ちついていた。

真耶の心臓の鼓動が、大きく速く。

緊張しているはずなのに……とても落ちついた、心地よい音色に聞こえている。

彼女の胸にこのまま、怒りも悲しみも忘れて身を預けてしまいたいと狼牙は思ってしまったが

 

 

 

「おほんおほん」

 

「「!?」」

 

「あ~……取り込み中ですまないが、いい加減見過ごせ無くてな」

 

 

 

声の方向。

開けられたドアの先に……千冬や一夏らが。

一夏は顔を赤くし、他のメンバーらも……多少赤くなっているようだが。

千冬も、ノックの体勢で頬をひくつかせている、

 

「山田君、確かに私は狼牙を慰めてやれとは言ったが……」

 

「ひゃっ、ひゃいっ!?」

 

そう言われ、自身の胸に抱きしめている狼牙を見……一気に顔から湯気が噴出し、バッと離れた。

抱きしめていた狼牙を放り投げて、だが。

放り投げられた方はと言うと……ベッドから転げ落ちて哀れだった。

 

「さて、狼牙」

 

「……織斑先生」

 

「お前には確かに……共犯の疑いがかけられている、現に織斑も見たと言っていた」

 

そう、その証言もかなり重要だった。

何せ交戦していた本人のことなのだから。

 

「生徒会長の更識も、似たようなことを言っていてな……」

 

千冬が狼牙のそばに歩いてくる。

薄暗い部屋で、廊下の灯りがまるで光の道を示しているようだ。

 

「お前は、どうしたい?」

 

「……僕は」

 

「このままで終わるか?……逃げても、それはいい。ただ少々強引な手段に訴えるかもしれないが」

 

確かに、専用機を持った貴重な男性操縦者。

他の国や組織が見過ごすはずもない。

 

「そうですね……どうせならクソ政府を道連れに自爆もいいかなと思ってました」

 

「……」

 

「さっきまでは、ですけど」

 

狼牙は真耶を見る。

その眼は……普段の狼牙の目だった。

 

 

 

「僕は、男だったんだなって……一つ、夢以外に成し遂げたいことができました」

 

「ほう……興味はあるが、それは今聞くわけにはいかないようだな。場所が悪い」

 

 

 

千冬は何かを察したようで、真耶を見て苦笑する。

真耶は、まだ少し呆けていたが……

 

「だけど、その前に一度……遠出をします」

 

「遠出だと?」

 

「はい……行く場所は」

 

狼牙は、自身の左手にある待機状態のISを見て

 

 

 

「俺と牙狼の育った、孤児院です」

 

 

 

そう言い放った。

あの孤児院へ……狼牙は、何故か一夏にも協力を要請した。

一夏はすぐに承諾する。

そのため、教師一同も同行する形で……極秘で向かうことになる。

不動兄弟にとっての、始まりの場所。

そして知ることになる……黒く、深い……闇の中へと。




新しいキャラ登場だ……一度設定関係出さないと。
感想をくださった方々、本当にありがとうございます。
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