騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第二十四話

一夏が狼牙の部屋で一夜を過ごし、その翌日。

物音がしたので一夏は眼を開ける。

そうして起きてみれば、すでに隣のベッドの中には狼牙の姿が無く……

 

「狼牙?」

 

ジャージに着替えていた狼牙の姿。

その声に気付いたのか、狼牙も一夏の方を見る。

 

「っと、起こしちまったか。おはよう一夏」

 

「おはよう……まだ五時じゃないか」

 

時計の短針は5を指しており、外も若干くらい。

だが、狼牙はと言うと

 

「これからランニングさ……そうだ、今日はお前も来るか?」

 

「俺も?」

 

「ああ……千冬さんも一緒だ」

 

「千冬姉も?……わかった、少し待っててくれ」

 

一夏は一気に目が覚めたらしい。

ベッドから降り、自身のジャージを引っ張りだす。

すぐさま寝まきを放る様に投げ捨て、ジャージにそでを通した。

姉の性格を知っているため、今は余計なことをせず向かわなければと。

 

(……やれやれ、一夏は本当に姉に弱い)

 

そんな彼の姿に苦笑しつつ、狼牙はドアを開け出ていく。

その後を一夏はすぐさま追いかけた。

時刻は午前五時半。

寮を出ていけば

 

「おはようございます」

 

「うむ、今日も正確だな……一夏も一緒か」

 

「おはよう千冬姉っ!? あ、す、すみません」

 

まだ寝ぼけていたのか、先生と呼ばず普通に呼んでしまったことを謝る一夏。

だが、千冬はチラッと一夏を見て

 

「……まあ今は許す、おはよう一夏。お前も来るとはな」

 

「昨日は偶然、狼牙の部屋にいたから……でも、秘密のトレーニングなら最初から誘ってくれよ」

 

一夏の言葉に、千冬はフッと微笑む。

どうも彼女はそんな気ではなかったようだが

 

「別に秘密でも何でもない、この時間に不動兄弟と何度か会っていたからな」

 

「え、そうなのか!?」

 

「ああ……俺も牙狼も、ココに来た日からずっと続けててたんだが……織斑先生とはその時からな」

 

朝のトレーニングで鉢合わせをしたので、その後一緒に続けているらしい。

 

「お前も男なら、もう少し鍛えなければな……一夏。狼牙に置いてかれっぱなしだぞ?」

 

「うっ……箒も似たようなこと言ってたなあ」

 

少しひきつった顔で、自身の幼馴染の言葉を思い出す。

狼牙と千冬はその一夏の顔を見て笑っていた。

三人はまず、柔軟を始める。

しかし、狼牙の身体は体操選手かと思われんばかりに柔らかいようだ。

 

「一夏……ISも一応自身の一部みたいなものだから、もう少し……な?」

 

「その通りだ、技術さることながらそれに身体が付いてこなければな……特に高速戦闘では」

 

「ぐふっ」

 

座ったまま、足をのばし上半身を狼牙に押されて一夏はうなる。

どうやらこういった柔軟は苦手のようだ。

そうして軽く流すと言うことでランニングを開始……終わったころ、瀕死の一夏が転がっていたが。

千冬がいう「軽く」の次元が違うことを改めて思い知らされたようだ。

それについて行く狼牙も、少々異常かもしれないが……

 

「ふう……一夏、朝飯に行くぞ?」

 

「わ、かって……る」

 

「お前と不動兄弟の違いを少しは理解したか?……狼牙、あとを頼む」

 

「わかりました、今日もありがとうございます!」

 

千冬は頷き、そのまま着替える為に戻っていった。

そうして狼牙は……時間も押しているということで一夏に手を貸し、立ってもらう。

荒い息を吐いている一夏に苦笑しつつ、すぐさま自室へと戻る。

だが、シャワーを浴びて朝食を取りに向かった先でひと騒動が起きた。

 

「「一夏っ!」」

 

シャルが目を潤ませ、鈴音は眼を釣り上げ叫ぶ。

慌てて一夏は二人に声を押さえてもらおうとするが

 

 

 

「「今朝セシリアが部屋からパジャマで出て来たってどういうことっ!」」

 

 

 

爆弾発言頂きました。

どうやらとんでもない誤解……まあ、一夏の部屋から出て来たのは本当なので間違ってはいないが。

 

「どういうことも何も、そういうことですわ」

 

どや顔のセシリア。

ふふんと髪を横に流す……狼牙は一夏の様子が面白いのでしばし観戦するようだが。

焦る一夏にヒートアップするシャルと鈴音……まあここらが潮時かと感じたのか

 

「安心しろ、二人とも」

 

「どう安心しろって言うのよ!」

 

「そ、そうだよ狼牙! だいたい」

 

狼牙はコーヒーをすすりながら

 

 

 

「一夏は俺の部屋にいたんだからな」

 

 

 

そう二人に告げる。

セシリアがそうだったのかといわんばかりの顔を……少しジト目だった。

どうやら彼女も、最初は一夏を探していたのだろう。

 

「なんだぁ……」

 

「ま、どーせそんなこったろうと思ったわよ」

 

そう言って朝食に戻る二人。

だが、セシリアはなんで黙っていてくれなかったのかと言わんような顔に。

狼牙はそんな三人と、ホッとした一夏を見ながらカップで邪悪な笑みを浮かべる口元を隠し

 

 

 

「男同士、色々話してたからな……………一夏も、好きな女子のこととか」

 

「なっ!? 狼牙それは」

 

「「それは、詳しく聞きたいな……一夏っ(嫁)!」」

 

 

 

と、これは目の前にいる三人ではなく……一夏の背後から迫っていた箒とラウラ。

先ほどのセシリアの発言を聴き向かってきていたようで……それを知りつつ、狼牙は言ったのだ。

二人とも、顔は笑っているが眼は違った。

さらに先ほどの三人も似たような顔になっている。

 

「ろ、狼牙てめえ」

 

「おっと、俺はこれで」

 

「ちょ」

 

「「「「「一夏……少し、話そうか(しましょう)」」」」」

 

背後から聞こえる断末魔と修羅の声を聴きながら、狼牙は教室へ。

席について、他の女子とかと談笑しつつ……げっそりとした顔の一夏と鈴音以外の女子が来た。

ギリギリだったが間に合ったようで……一夏は今朝の疲れもあってか、机に突っ伏する。

千冬にもどうやら何か言われたようだ。

 

(やれやれ……いい加減、お前も決めろよな)

 

正直に言えば、一夏には早く誰かとくっついてもらった方がいいと狼牙は考えている。

それが、あの6人にとっても……千冬にとっても、いいことだと思えるからだ。

 

狼牙はあの時、恋愛関係の話題で……一夏の様子を見ていた。

 

妙によそよそしいと言うか、なんというか。

もしかして気付いてはいるけど、それを気付いてないふりをしているだけではないか。

それが意味するのは、単に

 

(今の関係を壊したくない、だけ……とか)

 

ハーレム願望でもあるのだろうかと。

確かに一夏が誰かとくっつけば他の女性との関係もぎくしゃくする。

だが……それぐらいで壊れる友情なのだろうか?

一夏が優しいのはよく知っている。

しかし、考えれば考えるほど不自然な部分が目立つ。

今も楽しんで、それでこの空気を大切にしているのか?

それだけ想われているだろうに……狼牙は、自然と笑顔に変わっていく。

 

 

 

(まったく……なんて)

 

『憎い』

 

 

 

そんな声が、聞こえる。

しかし、狼牙は口に出していない。

今も「普通に」女子と会話を楽しんでいる。

 

 

 

(今もこれからも)

 

『憎い』

 

 

 

授業が始まるようだ。

狼牙は女子との会話を止める……そして前を向く。

 

(あいつの優しさが、いずれ)

 

普段の顔。

その中で意識は別の思考を続ける。

左手にある、中指の指輪の淡い光に気付くこともなく

 

 

 

 

(一夏は誰かを殺す)

 

『だからお前は戦うのさ』

 

 

 

その淡い光はすぐに消える。

と、千冬と真耶が授業を開始するようだ。

教室が静かになり……すぐさま、全員が教科書を開く。

そんな感じでIS学園が普段通りの一日を過ごしている頃。

どこかの研究所の中、数人の科学者らしき者たちが何かを話をしていた。

 

「……開発に支障はないということでいいのかしら?」

 

「今のままならな。だが、現段階ではデータが少なすぎる。もう少し実戦データが欲しいな」

 

そんな風に一人の男が口を開く。

と、その近くに立つ女性が言う。

 

「データね……試験体同士では得る者にも限界だわ、協力者達だっていつまでそうかわからないんだし」

 

「いっそ、ブリュンヒルデの詳しいデータが残っていればな……あのMという小娘はもういないのだから」

 

そのブリュンヒルデの名を持つのは織斑千冬。

彼女は、歴代の操縦者の中でもトップクラスの実力。

紛れもない、最強のIS操縦者だ。

 

「まあ、試験体の00ナンバーは……少しイレギュラーだったようだが。捕獲しないのかね?」

 

「何言ってるんだか……「もう」制御できるわけないだろう? とっくに手を離れたんだからな」

 

と、煙草を口にくわえた女性がその煙を吐き出しながら男性に言う。

だがその煙に顔をしかめた別の女性が抗議した。

 

「神聖な研究所でそんなもの吸うんじゃないわよ!」

 

「フン。これくらいやっておかなきゃ、気がおかしくなりそうなのさ……」

 

顔をしかめながら、煙草を吸っている女性に注意を加える。

煙草をくわえたまま、その女性は目の前にあるドアの向こう側を見た。

 

「いくら……必要だとは言っても、ね」

 

「まあ、そう言うなって。これには莫大な金が動いてるんだからな……」

 

「それはともかく、私たちは研究のために必要なことをしてるだけなんだからね」

 

「……ああそうさ、だが今さら命を張る必要があるとは思わなかったよ」

 

忌々しげにその女性は吐き捨て、携帯灰皿で煙草の火を消す。

それを見ながら、ほかの研究者たちもため息をつく。

 

「しかし、だ。その研究を次の段階に進めるためにも、やはり実戦のデータは必要だ。どうしたものか……」

 

男性は顎に手を当て、つぶやくように考え始めた。

と、何かを思いついたのか注意を言っていた女性の顔が輝いた。

 

「いいこと思いついたわ」

 

「む?」

 

「……兵器には兵器、なら」

 

 

 

IS学園っていう便利な試験場があるじゃない……もうすぐ、アレがあるわけなんだから。

 

 

 

その無邪気な笑みは……ある女性に、そっくりだった。

頭にある動物の耳を模した金属のヘッドギアが、ゆっくり動いている。




本格的に動き出した、
これから、登場も増えていきます。
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