騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第三十三話

「……足りない、な。まだこれでは」

 

「う~ん、やっぱ狼牙の覚醒には」

 

「少々強引な手段が必要ってことだな……」

 

真っ暗な闇の中。

ディスプレイの光だけがその場にいる者たちをわずかに照らす。

うっすらと見える顔は、狼牙の双子の兄である牙狼と……束博士にそっくりな、司。

共に亡国機業の一員である。

彼らは、何かのデータを表示しているようだが

 

「やつらの動きは?」

 

「最近アフリカで動いてるね……各国の基地を襲撃してる」

 

「……うちの方ではなんと?」

 

「今は動くな、だって……仕方ないけどさ」

 

司は牙狼の隣に……浮遊椅子で動く。

彼女の両脚は動かない、生まれつきのものだからだ。

牙狼はそんな彼女を支えるようにし、ゆっくり浮遊椅子から今自分が座っているソファーに移した。

移乗する中、司はひしっと牙狼にしがみつく。

 

「……ねえ牙狼、私たちは……いつ、自由なのかな?」

 

「今、じゃないことは確かだな……エム、マドカも救っていない」

 

牙狼は電気をつける。

部屋が明るくなり、どうやら亡国機業の隠れ家のようだ。

しかし、今いるのは牙狼と司のみ。

 

「ここで、彼女らと接触する」

 

「……明日は二人ともオフらしいからね。エムもそのうち戻ってくるから」

 

三人はある二人との接触の為、日本を離れていた。

もちろんスコールは承知しているが……あまり動くと、後が怖い。

 

「そうだな、司はここで二人の動きを探ってくれ」

 

「うん……私じゃ、足手まといだから」

 

と、急に部屋のドアが開かれ……どうもエムが帰ってきたらしい。

だが、帰ってきて早々……司とエムの二人が色々言い争う声が聞こえてきた。

牙狼は、そんな二人を止めようと必死で……相変わらずな三人組ともいえた。

 

翌日……牙狼は、眠っている二人を叩き起す

 

彼女らは、実は朝に弱い。

低血圧かは分からないが……共にボサボサの髪をたらし、髪の長い司などすでに貞子状態だ。

 

「……」

 

牙狼は少しホラーに感じるその光景を忘れ、二人に水を渡す。

無言でエムと司はそれを受取、啜っていた。

年頃の少女の寝姿など貴重……と思えるかもしれないが、実際は酷いものなのだ。

この二人を何度も見ていると、牙狼は少し悲しみさえ覚えている。

 

「がろ~……今、何時?」

 

「司、もう七時だ」

 

「……ガロ~」

 

「エム……さっきから妙に発音が気になるんだが」

 

水を飲んだ二人だが……駄目だ、まるで眼が開かず糸目である。

エムは体をふらふらさせながら、ポスっとベッド上でつっぷする。

 

(こいつら、本当は俺を誘ってんじゃないんだろうか?)

 

今なら簡単に押し倒せそうだが、大胆に見えている白い下着や健康的な太もも、豊満な胸元なども雰囲気で台無しだ。

牙狼は、同い年の彼女たちにそういった感情を……確かに感じることもある。

高校一年の健康な男児なので、当然だ。

だが、それでも今は逆に呆れが強くなっていた。

 

「エム、いい加減しゃきっとしろ」

 

「……眠いの」

 

(キャラが変わってるぞおい……)

 

実はこの二人、寝相も最悪なのだ。

朝起きてみれば、寝ていた位置が上下正反対になっている事など日常茶飯事。

おまけに寝言もよく聞こえる。

 

「……エム、司。起きないと襲うぞこら」

 

「……うん」

 

「……いい、よ」

 

(だめだ、冗談も理解出来てない……それと、ちょい我慢も限界だ)

 

とりあえず、一時間後に来るオータムに任せようと。

牙狼は二人をある程度直してから毛布を掛け……別室へ。

 

 

 

理由は、猛ってしまっている自身のモノを鎮めるためにであった

 

 

 

そうして牙狼が出て行って三十分後。

気配が感じられなくなったからか……むくっとベッド上で身を起こすエムと司。

 

「……エム、途中で起きてたでしょ?」

 

「なんのことだ?……お前こそ、やたら牙狼を抱き枕にしようとしてなかったか?」

 

「なんのことかな?……牙狼の言葉に、嬉しそうに返事してたくせに……」

 

並んで寝ていたベッド上で、二人は髪を直しながら……にらみ合う。

今はなさそうだが、千冬と束も敵対する時はこんな感じになるのだろうか?

しばらく互いを見ていた二人だが……やめたようだ。

エムはスッとベッドからおり、着替えを始める。

司はそんなエムをボ~と見ているだけだ。

 

「ねえエム」

 

「なんだ?」

 

パジャマを脱ぎ、スラッとした身体。

その中、司はエムを見ながら

 

「ちょっと太った?」

 

「…………なんだと?」

 

かなり長い間のあと、エムは返す。

だが、若干声が震えていたような……

 

「お尻、大きくなってない?」

 

「なっ……お、お前はどうなんだ! 最近運動も」

 

「ちょっと……今のだと胸がきついかな?」

 

司はさも自然に、といった感じで己の胸を触る。

その光景に、頬がぴくっと動くエムだが……司は続ける。

 

「最近、牙狼もよく私を見てるんだよね~……気付かれて無いつもりらしいけど、そこがいいんだよ~」

 

牙狼がよく、自分の胸に視線を向けているのを司は気付いていた。

それを「どうしたの?」といった感じで視線を向けると、慌てて目をそらす様子が可愛いと。

女性は男性の視線に敏感なのか……ただ、牙狼に向けられるなら悪くないと司は思っている。

 

 

 

「……司、お前はやっぱり好きになれない」

 

「それでいいよエム~……親友と恋敵は別だから、ね」

 

 

 

二人はにっこりと笑う。

だが、そんな二人を前にし……

 

「あ~……終ったか?」

 

「「!?」」

 

突然の声に驚き、二人はいつのまにか来ていたオータムに視線を向ける。

 

「いや、なんつーか……お前らもそういった顔するんだなって思えたよ」

 

「……ふんっ」

 

「あはは……おはようオータム。今日はよろしくね」

 

エムは無表情になって着替えを続け、司は苦笑しつつ挨拶をする。

司は自力で着替える事が出来ないので……専用の介護ロボに衣服を替えさせる。

 

「しかし、スコールもガキのお守りさせるとかよ……」

 

「そんなガキのお守りも大事な仕事ってことですよ、オータムさん」

 

「牙狼……ったく、付き合わされるこっちはどうなんだ?」

 

と、オータムは牙狼の言葉に返す。

どうやらスッキリさせてきたらしい……先程より落ち着いている。

 

「朝食を作ったので、どうですか?」

 

「……頂くよ、この先のことも話そうじゃないか」

 

「牙狼~私はご飯がいい~」

 

「私はトーストだな」

 

「お前ら。なんであっても食べろ文句は許さん」

 

牙狼はそのまま、机にそれぞれ皿を置き盛り付けていく。

だが……

 

「なあ牙狼、お前なんでそんな……文字入りのフリル付きエプロンなんだ?」

 

「……スコールさんがせっかくプレゼントしてくれたので」

 

「……そうか」

 

オータムは考えるのをやめた。

自身の相方の意図はわからないが……まあ、受け狙いだとそう思う。

エプロンには大きく「暗黒」と書いてあったが……まあ、気にしてはいけない。

しかし、エムや司は終始微妙そうな顔だった。

 

「それで、あたしが通訳的な感じか?」

 

「そうなりますね……さすがに俺、英語は完ぺきじゃないし」

 

「あとは、訛りもあるよね~……どこの国でもさ」

 

司がソーセージをフォークで転がし、突き刺す。

エムは黙々と食べているが……ちらっとオータムを見た。

しかし、一体誰と会う気なのだろうか?

 

「……そろそろ時間だ」

 

エムは食べ終えたのか、立ち上がる。

他の一同も食卓上のものを全て胃に収め……立ち上がった。

牙狼、エムは自身のISを確認。

オータムも得物を確認し……司は、予定の場所をウインドウに表示する。

 

作戦開始

 

そして場所は変わる。

多くの人々が行き交う大都市。

そこに、二人の女性がいた。

どちらも見目麗しいが……彼女らも、ISの操縦者の二人。

 

ナターシャとイーリス

 

かつて一夏達が戦った「シルバリオ•ゴスペル」、そして「ファング・クエイク」の操縦者。

だが、シルバリオ•ゴスペル……銀の福音はすでに存在しない。

いや、凍結処分となりもうナターシャの手を離れていた。

そんな彼女たちは……今日、つかぬ間の休暇を楽しんでいたのだ。

 

「……この空気も久しぶりね」

 

「まったくだな……本当に久しぶりだしよ、満喫しようぜ」

 

彼女らは普段はある場所に勤務している。

今回は休暇……となってはいるが、そこまで行くのに苦労したらしい。

二人は久しぶりのオフということで街の空気になつかしみを感じていた……

 

だが二人の前に、いつの間にか金髪の女性が立っている

 

二人が最初気づかないほど。

周囲の声が聞こえなくなるほど、ナターシャたちは……感じ取った。

そして、自分達の背後にもいることに。

 

「……少しよろしいかしら?」

 

「突然すぎますね、一体何の御用かしら?……イーリ、だめよ」

 

「ちっ……」

 

イーリスが動こうとする中、ナターシャは制した。

それを見て、背後の気配が収まる。

 

「話が早く、助かりますわ」

 

「私たちをだれか……知っての行動みたいね」

 

「ええ……それはもう。では、そこで少しお話でも……何もしないなら、こちらもいたしませんわ」

 

オータムのこういった口調は仕事の時のものだ。

普段あまり聞かないだけあり、新鮮である。

二人も、自分らだけならともかく周囲は民間人ばかり。

事を起こすわけにもいかず……静かに、背後を見ることなくオータムについていく。

そうして向かった、ある廃ビルのような場所。

 

中はすでに、そこに「いた」存在を全て掃除された後らしい

 

二人はオータムの入った部屋に入り……背後の存在も入りドアを閉める。

と、オータムは二人にソファーをすすめ……見れば、部屋の中央にテーブルと椅子が。

抵抗もせず、二人はその椅子にそれぞれ座り……初めて、背後の存在を見た。

 

少年と少女

 

共に若い、と……だが、ナターシャはわかった。

彼らが何かを。

 

「……亡国機業」

 

「なっ!? こいつらが!?」

 

イーリスは周囲の者たちを見る。

さすがとしか言えないが……

 

「なら、自己紹介はいらねえな」

 

「……そうですね、それとそちらが地ですか?」

 

「ああ……ったく。まあ用事があるのはそうだが、メインはこっちだ」

 

と、オータムの両隣に……少年と少女が座る。

東洋人、二人は顔つきから判断するが……少女はサングラスで眼を隠している。

少年の方は、ごく普通に顔をさらしているが……ナターシャは、気づいた。

 

「っ!? き、君は」

 

「どうも……英語はうまく話せないので、日本語ですみません」

 

見覚えがあった。

かつてIS学園のメンバーと少しだけ話したナターシャが……オータムの通訳で、ようやく動き出す。

 

「あの夏、弟が貴方とお会いしたと思いますよ?」

 

「……君は、確か最近見つかった例の男性操縦者……双子の、お兄さんの方かしら?」

 

「はい……ただ、貴方とお会いするのはこれで三度目になりますが」

 

「三度目?」

 

ナターシャはその言葉に違和感を覚える。

しかし……牙狼の言葉で、納得した。

 

「一度目は、あの海の上で……二度目は、あの基地で」

 

「!?」

 

「まさか、坊主……おめえは」

 

「あの黒いISは俺です……銀の福音と戦った時は、金色でしたが」

 

牙狼は普通に明かしていく。

あの時の、牙狼とナターシャの戦いの事を。

 

「そう、だからあの時……私をかばった時の言葉を?」

 

「ええ……ちゃんとした状態で、貴方と戦いたかったんですが」

 

「……ってことは、そっちのお嬢ちゃんがサイレント・ゼフィルスの操縦者か」

 

イーリスはそう言い、エムは……変わらず黙ったまま。

しかし、あの時の体型を見ても確かに一致する。

 

「この傷も、貴方に付けられました」

 

牙狼は、両目の間を通る×字に残った傷をさする。

あの戦いで、牙狼は一時生死の境をさまよっていたのだから。

 

「でも、貴方の意思でなかったことも理解しています……だから恨んではいません」

 

「……では、今日私たちを連れ込んだのは?」

 

「はい……長々と申し訳ありません、本題に入らせていただきます」

 

牙狼たちの動きから、どうやら本当に話がしたいだけだと判断できる。

何より相手は、おそらくISを二つ所持している……現状では、従うしかなかった。

 

「まず、このマークを見たことは?」

 

そう言い牙狼は……二人にある写真を見せる。

写真には、髑髏に似たようなマークがあった。

それは……かつて牙狼や狼牙がいた施設にもあったマーク。

楯無が見つけ、千冬たちもそのマークの存在を迫っていたのだが……

 

「……おい、ナタルこれは」

 

「ええ、何度か話題になっていた……」

 

二人には見覚えがあった。

ここ数年、何度かアフリカ方面でテロが行われその度々で目撃されている。

そういった情報も、二人はある程度はしっていた。

 

「俺が話すのは、単純なことです」

 

牙狼は……その目で、憎しみをこめた眼で、口を開く。

 

 

 

「俺たちに、協力をしていただきたい」

 

 

 

黄金の騎士は闇に堕ちた。

力を求め、その力を手に入れるために……そして、変えるために。

 

騎士は、福音を求める……闇の中で、自身の「半身」と同じ色を。

 

そして共にある少女たちも、先の見えぬ闇を進む。

亡国機業は、その闇を進む。




牙狼サイド。
今回、スコール姉さんは別行動中。
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