騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第三十七話

IS学園上空。

ここでは、IS学園で非常事態が発生する直前……ある戦いが起こっていた。

それは数分前に戻る。

 

「来たか」

 

「数……確認で6、また多く持ってきてるね~」

 

「まあ、それも想定内ね……牙狼君、行くのかしら?」

 

「当然ですよ……「キバ」も、力を欲している」

 

IS学園外にあるワゴン車内で待機していた亡国機業。

その一人である牙狼は……自身のISキバの待機状態である首飾りをなで、外に出る。

 

「牙狼、学園に突入したらこちらからそっちへ「送る」ね!」

 

司は、何やらいろいろとコードのつながったヘルメットのようなものをかぶり、バイザー越しに牙狼を見ている。

そして、その手には……多くのウインドウが展開されていた。

 

「……頼む。司、スコールさん、行ってきます」

 

「ええ……くれぐれも、無理のしすぎはだめよ?」

 

「待ってるからね~」

 

牙狼は頷き、自身の首飾りを引きちぎるように……握りしめる。

光が牙狼を包み、IS「キバ」をまとい……IS学園上空へ飛んだ。

そこには、突入態勢をとっていた6つの機影。

ステルスを使っていたようだが、司の誘導で全てわかる。

 

伊達に、あの女性とそっくり……だけではない

 

牙狼は高速で接近する中、向こうも近付いてきたISに気づいたらしい。

だが、キバのデータは向こうもある程度持っているだろう……以前も、接触をしたのだから。

 

「悪いが……そうそう行かせれないんでな」

 

キバの剣が赤紫のエネルギーを帯び、すれ違いざまに一機を切りつける。

それはシールドに防がれるが……牙狼は反転し、朽ち果てたマントを翻しながら他の機影を視界に収めた。

 

(……タイプが違う、改良型だな)

 

IS学園上空に現れた機影は6。

それらは以前、司とともに山中で接触した……ゴーレムに似てはいる。

だが、牙狼が以前接触したのはもっとごつく、今回のはとてもスマートで人間に近い。

 

言うなれば鋼の乙女だろう

 

左腕は相変わらず太いが……右腕は、肘の部分から巨大ブレードに置き換わっていた。

さらに、先ほど斬りつけた機体の周囲に……何か、ビットに似た球状の物体が浮いている。

それが強力なシールドを発生させていたようだ。

 

敵は完全な戦闘用

 

牙狼はそう認識し、警戒をさらに強める。

六機のゴーレムはしばし牙狼を見ていたが、やがて五機はIS学園へ。

そして残った一機は牙狼に向かう。

 

「ちっ!」

 

牙狼は慌ててIS学園へ向かうが……その進路を妨げるようにゴーレムⅢが道をふさぐ。

あまりエネルギーの無駄遣いはできず……牙狼は、剣を収める。

その動きにゴーレムⅢはいぶかしげな、人間のような感じでバイザーに収まるハイパーセンサーを動かしていた。

 

「……」

 

突如、牙狼は相手に向け加速。

それはゴーレムⅢも予測していたのか、左のブレードをふるうが

 

「おっと」

 

地上ならまだしも、空中なら避けられる。

横薙ぎの鋭い一太刀を……牙狼は、刃の上を転がるように避けた。

そして、激突。

互いのシールドが削れる……が、ゴーレムⅢを下にし

 

「紐無しバンジーは好きか?」

 

牙狼は、ゴーレムⅢと共にIS学園へ突入した。

すでに他の五機が突撃したのか、各所で轟音が響く中……キバは、地面に叩きつけたゴーレムⅢを組みふせる。

さすがというか、この衝撃で装甲が少しひしゃげた位らしい。

だが……ゴーレムⅢは牙狼に乗られ身動きができない。

この状況なら、先ほどのシールド発生もできないだろう。

牙狼は足でゴーレムⅢのハイパーセンサーを踏みつぶし、牙狼は剣を逆手に構え

 

「お前の力を食わせてもらう……その体なら、痛みなんてないだろう?」

 

ゴーレムⅢの腹部に、牙狼は躊躇くなく剣を立てようとした。

赤紫の剣が装甲を削りながら突き刺さる。

剣が深く食い込み……完全に、地面へ固定する。

牙狼は、その鋭い右手でゴーレムⅢの頭部を抉るように掴み……箒の時と同じようにエネルギーを吸い出す。

キバのシールドエネルギーが回復していく中……ゴーレムⅢは、まだ動けるようだった。

自身の体を……固定された剣ごと引き抜く。

 

「っ!?」

 

予想以上のパワーに驚く牙狼を弾き飛ばし、ゴーレムⅢは宙に浮く。

ズズッと、ゴーレムⅢを固定していた剣が抜け地面に刺さった。

しかしダメージはあるようで、スパークが時折発生している。

 

「……逃がすか」

 

牙狼は、右手を横に伸ばす。

そこへ……展開された、黒く禍々しい装飾が施された巨大な斧。

前に構え、確かめるように右へ振りぬく。

その風圧で巻きあがった砂埃が晴れ……牙狼は上空に退避したゴーレムⅢを見る。

 

「コアは……諦めるか」

 

キバはその斧を持ち、飛び上がる。

ゴーレムⅢは上空で体勢を直すように腕を振るい、エネルギーの残量からか……右の砲身ではなく、左のブレードを向けた。

そしてゴーレムⅢは突撃し……突如、キバがいる下からではなく別方向からの砲撃でその身をずらす。

 

「(誰か知らないがサンキュー)貫け!」

 

動きが単調になったゴーレムⅢに、牙狼はその斧をなんと投げつけたのだ。

先ほどエネルギーを吸収し、威力も増したその斧は……激突したブレードを突き抜ける。

砲撃のダメージもあり、エネルギーの大部分を奪われていたゴーレムⅢは防ぎきれず……その身を、中心から左右に分ける。

キバは地面に着地し……背で起こる爆音を耳にしながら、地に刺さった剣を手に取る。

 

「……!?」

 

「また、会ったわね」

 

背後から……誰かが来ていた。

牙狼が振り向くと爆炎の中、光りとともに……現れるのは、楯無。

ISを装着した時の光が、牙狼にはまぶしく見えた。

先ほどの攻撃も、彼女がやったのだろう。

 

「……更識先輩、先ほどは助かりました」

 

「お礼はいいわ……手間が省けたし。確証はなかったけど……何かが来ると思ってた。そして」

 

楯無はその目をスッと細め

 

 

 

「貴方を迎えに来たわ」

 

 

 

はっきり、そういったのだ。

牙狼には最初意味がよくわからなかったが

 

「……狼牙のことですか?」

 

「ええ……彼も、貴方がいなく苦しんでいる。そして……私の妹の為にも、ね」

 

「それは、俺に関係があるのでしょうか?」

 

「どうかしらね……でも、貴方はどのみち連れ戻すわ。色々聞きたいから」

 

その目は、普段の姿とは違う。

完全に……一般の、学生の眼ではない。

牙狼は、以前のような不意打ちは通じないと思っていた。

 

前回、楯無に当てれたのは……不意打ちだった

 

それでも浅かったが、彼女のISのナノマシンを奪うことができたのである。

キバの背にあるマントがナノマシンに変わったのも……楯無の力を奪えたからだった。

その分、代償も大きく……かなりやられ、逃げるのが精いっぱいだったのもあるのだが。

 

「今回は不意打ちできそうにないですね」

 

「いいえ、前回は完全に不意打ちといえど……私も、甘すぎたわ」

 

「しょうがないですよ……誰だって、身の危険でなければ必要以上に警戒しませんから」

 

軽く触れた。

それは、楯無を傷つけるためではなかった。

しかし……すぐ異常を感じ取ったのは、さすが楯無としか言えなかったが。

 

「簪ちゃんはね、狼牙君がヒーローに見えるのよ」

 

「?」

 

「……あの子は、色々感じている。貴方の弟が、貴方に感じているように」

 

楯無の言葉。

牙狼は、黙って聞いていた。

しかし

 

「あいつは、ヒーローになってはいけない」

 

「!?」

 

「あいつは……」

 

牙狼は、剣を構え……言い放った。

 

 

 

「復讐者になるべきなのさ」

 

 

 

剣を左手の上で滑らす様に撫で、赤紫のエネルギーを剣に蓄える。

楯無もすぐさまランスを向けるが……突如後退した。

先ほどまで楯無がいた場所に、何かが降ってきたのである。

 

(司……ちゃんと目印を見つけてくれたか)

 

先ほどから強烈なジャミングが発生していたが……いまだに途切れない。

そのため、牙狼は斧を投げることで司に現在位置を知らせたのである。

そして、彼女が作り上げてくれた新たな力が牙狼の前に現れた。

砂埃が晴れ……そこにいたのは

 

 

 

「う、馬!?」

 

「……これが、雷剛(らいごう)」

 

 

 

驚く楯無を前に、牙狼は目の前の馬……という形をしたモノに近づく。

雷剛と呼ばれたそれは……四足でゆっくり歩き、キバの隣に立った。

漆黒の鎧をまとった巨大な馬、というのがわかりやすい。

頭部には鋭い角のような突起が数本伸び、全身の色はキバにそっくりだ。

ただ、雷剛はただの機械ではなく……

 

「牙狼~やっと繋がったよ。遠隔しかできないから苦労したんだ!」

 

「司、ありがとう」

 

「いえいえ~……その子は、前にキバがとりこんだコアを源にしてあるからね!」

 

そう、この機体は元々……以前ゴーレムと戦って取り込んだコアを再び流用した。

取り込まれたコアは、そのためかキバ……牙狼を主とし、命令を受け付けるのである。

だが実際、人型でないものの製作はかなり難航していたらしい。

 

「援護なら私でも手伝えるよ!……それ以外だと、この子は補助的な役割しかできないから」

 

「いや……司が一緒に戦ってくれるのは心強い」

 

「えへへ……私は、ISが使えないからね」

 

と、司の意思とは関係なく雷剛が蹄を鳴らし首を振る。

どうやらこのコアは……結構性格が荒いのかもしれない。

だが、司の言うことも聞くように命令してるためか……遠隔とはいえ、期待できる。

 

「……なんて非常識」

 

「学園最強で国家代表の先輩に言われたくありませんよ?」

 

先ほどの会話も、キバと雷剛の間でしか聞こえていないようだ。

楯無からの攻撃を雷剛が前に出て……シールドで防いでいた。

これならキバのエネルギーを無駄に消費せず、同時に戦いの幅が増す。

しかし……

 

「先輩、今日は貴方達と戦いに来たのではありません」

 

「?」

 

「……ちょっと、むかつく奴らがここにいるので」

 

その意味を楯無は理解する。

同時に、今本当に戦うべき相手は……本当に牙狼なのかと。

 

「貴方は、IS学園を救うために来たのかしら?」

 

「救う?……いいえ」

 

「そう……いいわ、貴方と今の敵は同じなら」

 

楯無はランスを収める。

どうやらかなり切羽詰まった状況らしい。

それもそのはず、いまだに……IS学園は襲撃されているのだから。

 

「なら、妹さんの方へ向っては?」

 

「……」

 

何も言わず、楯無は動きだす。

その後ろ姿が見えなくなり……まあどこへ行こうが、牙狼には関係がない。

それに

 

「狼牙がいるなら、問題ない」

 

「……そうだね」

 

(それに……司の敵は、俺の敵だ)

 

牙狼にとって司やエムの敵は、自分の敵なのだ。

キバは、剣を収めひらりと……雷剛にまたがる。

雷剛は特に動じず、キバはその手綱を取る。

そして……駈け出した。

ジャミングは激しさを増し、その一番強い点へ向うが

 

「……本当、お決まりだな」

 

全てのドアがロックされているようだ。

大方、襲撃者がハッキングでもしたのだろう。

 

「司?」

 

「う~ん、出来るけど……今日はこの子を思いっきり暴れさせたいなって」

 

「……お前が、の間違いだろう?」

 

牙狼は苦笑しながら、雷剛を引き少しばかり離れる。

そして、前面に目をむけ

 

「道がないなら」

 

「作っちゃおう!」

 

一気に加速し、前にさえぎる壁をぶち破っていった。

その破壊力は、多少の衝撃とともに……壁を突き抜ける。

牙狼はそのまま雷剛を駆っていく。

そして、新たな戦いの気配を感じた方へ向かった。

 

「このぉ!」

 

別の場所では、鈴音が放った衝撃砲の龍咆がゴーレムⅢに向かう。

だが、やはりあのシールドに防がれてしまう。

 

「いただきましてよ♪」

 

同時にセシリアは、放ったビームを……セシリアの指の動きと同時に、曲げる。

彼女が使えるようになったBT兵器の醍醐味である精神感応制御こと『偏向射撃』。

そのレーザーは完全にゴーレムⅢの死角から向かったのだが

 

「なっ!?」

 

無人機による、人間ではありえない急激な動き。

そして正確なスラスター制御……計算された動き。

全てが合わさり、完璧な回避を実現した。

 

「じょ、冗談でしょう!? あの防御力で、あの機動力!? それに」

 

「ええ」

 

鈴音は、目の前のゴーレムⅢが姿勢を制御し……その左腕を向けているのを見た。

砲口から、エネルギーがうなっている。

 

「火力もありそうね……」

 

爆発。

放たれた攻撃でピット全体が揺れる。

セシリアと鈴音は……何故か、自分達に攻撃の余波がまったくこないことに気づいた。

そして……目の前に、ゴーレムⅢとは違う黒……いや、【闇】があることに。

白い双眼が、二人をとらえていた。

 

「……よお、セシリアに鈴音。元気そうじゃん」

 

現れたのは……雷剛に跨ったキバ。

それが二人の前に躍り出て、シールドを最大にし……攻撃を防いでいたのだ。

その声を聞いて、二人は……驚きと同時に、その姿を見ていた。

 

「あ、あんた……なんで」

 

「悪いな、一夏でなくてよ……お姫様を助けるための、白馬の王子様でもないが」

 

「が、牙狼さん……え、馬?」

 

「セシリア、言いたいことはわかるが……とりあえず」

 

牙狼は、その装甲に隠された中で笑顔を向ける。

 

 

 

「無事で一安心だ」

 

「……一応言っておくわ、ありがとう」

 

「私からも……ありがとうございます」

 

 

 

今は、敵である。

しかしそれでも、間違いなく助けてくれたのは牙狼だ。

二人もわかっているし……友達なのだから。

 

「でも、この前の借りはまだ返してないからね!」

 

「お~怖い怖い……じゃあ、今日の分の借りは別として今度二人に、俺と一回デートでもしてもらうかな?」

 

「あら、牙狼さんからそう誘われるとは思いませんでしたわ」

 

少しリラックスしたのか、二人の声に明るさが戻る。

セシリアが再びビームを打ち、ゴーレムⅢは変わらず防御する。

だが、キバの出現で少し警戒をしているようだった。

 

「だめか?」

 

「まあ、そうね……考えとくわ」

 

「前向きに考えておきますわ……でも今は、これを終わらせてからでしょう?」

 

「ふっ……ああ」

 

牙狼は、雷剛の手綱を引く。

雷剛は少し蹄を鳴らし……軽い金属音が周囲に響いた。

 

「俺が突っ込む、援護をいいか?」

 

「……ええ、任せなさい!」

 

「牙狼さん、派手に美しく……やってあげてくださいな!」

 

その威力は相当なものだと、二人も感じたのだろう。

すぐに左右に分かれ……牙狼は、雷剛と共に駆け抜ける。

牙狼は剣を抜き一直線に向かうが……ゴーレムⅢの砲撃。

雷剛を操る司だが、やはり現場にいるのといないのでは操作も難しいようだ。

 

「……直撃は危険だな」

 

「火力計算……過去のデータを超えてるみたい」

 

「まったく、この化け物め」

 

司の言葉を聞きながら、愚痴るようにキバは雷剛を跳躍させる。

と、そこへ合わさるように鈴音とセシリアからの援護射撃。

ゴーレムⅢは予測していたように回避したが、牙狼が同時に斬りつけ……弾かれていた。

 

「やはり硬い」

 

「撤退もしないといけないから……あまりエネルギーは使えないよ?」

 

「……」

 

セシリアが牙狼の合間を縫うようにビームを放っているが、弾かれたり避けられたりと直撃は無い。

鈴音も、同時に右側から接近戦を挑み……双天牙月を振るう。

だが、鈍い衝撃だけが伝わり防がれていた。

 

「くっ! ああもうイライラするわね!」

 

「まずいですね……攻守ともに無駄がありませんわ」

 

「……いや、確実に押してる。段々対応しきれなくなってきてるぜ?」

 

牙狼の言葉。

それは、間違いなかった。

さすがに三対一ではいくら性能が良くても、一度に対応するのは難しい。

だが、決定打が与えれなければ意味がない。

現に三機の攻撃は全て防がれているのだから。

 

「セシリア、鈴音」

 

「なに?」

 

「どうかされましたか?」

 

「奴を少しだけでいい、足止めしてくれ」

 

牙狼は何か策があるのだろう。

その声は自身に満ちている。

二人もそんな牙狼の声……いや、彼の行動はよく知っている。

 

「相変わらず無駄に硬いよね」

 

「承知してるさ……司、使うぞ!」

 

「了解……」

 

牙狼が、他の二人に聞こえない中で司に指示を出す。

すぐに司は遠隔で操作を始めた。

そして……セシリアと鈴音は、あの福音事件でも牙狼が一夏達を救うためにたった一人で戦った姿を知っている。

だからこそ、彼の言葉が信じれたのだ。

牙狼も、二人が必ず動いてくれると信じていた。

 

「いいわよ、セシリア!」

 

「ええ……鈴音さん!」

 

鈴音は双天牙月を上空で回し、一気に突っ込んだ。

その動きに、ゴーレムⅢはブレードを構え防ぐ。

 

「そこです!」

 

間髪いれずセシリアがビームを打ち放った。

鈴音の左右を回るように向かったが……ゴーレムⅢは鈴音を蹴りつけ、同時に跳躍。

ビームは完全にかわされる。

 

「きゃっ!」

 

「くっ!」

 

蹴りつけられた鈴音は踏ん張りながら、セシリアが受け止めた。

そんな二人の動きを見ながら牙狼も……動き出した。

 

「展開準備、完了」

 

「はあっ!」

 

突如、雷剛がいななき……先ほどより強く蹄を打ち鳴らす。

と……その時、何かが響きを上げ

 

「斬馬剣!」

 

キバはその手に、巨大な大剣を展開する。

これはキバと雷剛が同時に展開させるもので、エネルギーは全て雷剛から流されるものだ。

禍々しい装飾が施された漆黒の大剣。

鈴音とセシリアは眼を丸にしているようだが

 

「セシリア、鈴音! 合わせてくれ!」

 

牙狼の声。

そして向かっていくキバを見て、二人は微笑み声を出す。

 

「ええ、お任せあれ!」

 

「しょうがないわね!」

 

二人の声を聞きながら鎧の奥で牙狼は口を軽く釣りあげる。

飛び上がったゴーレムⅢ。

そこへ向かい、一気に加速した雷剛は……キバを乗せたまま跳躍。

ゴーレムⅢはブレードと可変シールドを展開。

それを承知で牙狼は突っ込む。

 

「鈴音! セシリア!」

 

「行くわよ!」

 

「そこですわ!」

 

牙狼の顔、その擦れ擦れを鈴音が投げつけた双天牙月が通り過ぎ……ゴーレムⅢへ。

しかし、それに対しても驚くべき反応速度で弾いたが……追撃の、セシリアの放ったビームが直撃。

キバと雷剛の影。

その死角からの連続攻撃に、ゴーレムⅢは反応しきれない。

完全に動きが止まる。

 

「終わりだ!」

 

見逃す牙狼ではない。

すれ違うように、大剣が振られ……シールドを無理やり叩き、そのまま刃が進む。

 

「俺の、血肉となれ」

 

ブレードより巨大な大剣が、すれ違いざまに振りきられ……ゴーレムⅢは、胴で真っ二つにされた。

上空で二つに分かれたゴーレムⅢは……地に堕ちる。

牙狼は大剣で地面を削るように、雷剛を反転させる。

大剣と蹄によって地面に後が残り……牙狼は、大剣を消した。

 

「やった!」

 

「さすがですわ……牙狼さん」

 

「……二人とも、ありがとな」

 

ゆっくり雷剛を促し、二人の元へ。

しかし……まだ二体。

ゴーレムⅢはあと四体いたはずである。

 

「俺が確認しただけであと四体いるはずだ、二人も他の専用機持ちと合流した方がいい」

 

「それじゃ……牙狼はどうするのよ?」

 

「俺は、俺で動くよ……いろいろあるんでな」

 

「……わかりました、牙狼さん」

 

セシリアは頷き、鈴音は納得できなさそうな顔だが……しぶしぶ頷く。

 

「この分じゃ一夏達もやばそうだ、急いだ方がいいぞ」

 

「わかってるわ……あの二人でも、やばそうだし」

 

「そうですわね……では、またお会いしましょう」

 

セシリアと鈴音は先ほど牙狼がブチ開けた場所から出て行こうとしていた。

しかし……牙狼の方を突然振り返り

 

 

 

「約束したわよ? なら、一度しっかり戻ってきなさいよね!」

 

「牙狼さん、殿方が約束を反故するのはマナー違反ですからね?」

 

 

 

牙狼は、軽く手を上げるだけ。

それでも……二人は、わかってくれたようだ。

完全に姿が見えなくなり、牙狼は雷剛から降り……真っ二つになったゴーレムⅢの元へ。

そして、その鋭い右手をゴーレムⅢの装甲に食い込ませ……コアを取り出した。

 

「……くっ、ああ!」

 

取り出したコアを自らの胸、髑髏の部分に押し当て……キバは、喜びに震えていた。

再びコアを取り込むことに成功し、それを司は一人……哂っていた。

牙狼はしばらく膝をついていたが、立ち上がる。

 

「……狼牙、存外に苦戦してるようだな」

 

「仕方ないよ、まだ覇鬼は……」

 

「……そうだな」

 

そうして、牙狼は再び雷剛にまたがる。

だが、まだ脱出には早く……

 

「対IS用、敵のシールド発生を阻害できる試作機動馬【雷剛】……順調だな」

 

「うん……さっきもある程度弱体化させれたから。データは集まってるし、コアも特に反発は無いし大丈夫みたい。さすが私!」

 

「ああ、本当……司のおかげだよ。お前がいるから、俺もエムも……」

 

その声に、そして雰囲気に司は口を閉じる。

違和感と不安。

司はまた、牙狼の静かな声に……操っている目を細める。

 

「……どうしたの、牙狼?」

 

「いや……お前の願いをかなえるために、俺もキバも強くなる」

 

「……」

 

「白式、そして紅椿。今のキバでは太刀打ちできない……もっと、もっと力を手に入れなければ」

 

その声は先ほどの声と違う。

司には、悦びに満ちた声に聞こえる。

牙狼は司と……エムのために、戦う。

そして何より

 

 

 

「そして千冬さんのためにも」

 

(……牙狼、それこそ駄目なんだよ、あの女なんかに……)

 

 

 

司がその言葉にどう思っているのか、牙狼は知らない。

口を閉じた牙狼は、雷剛の手綱を引き……別の目的地へ向かう。

IS学園での戦いも……いよいよ、大詰めだろう。




次回は学園組がメインになります。

千冬「狼牙……牙狼と同じ道をたどる気か! 怒りで我を忘れるな!」

次回予告するとこんな感じになるかと思います。
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