千冬の策略?により、昼休みが消えた二人。
教室へ戻れば……やたらぐったりしているため、一夏らに心配をかけたようだ。
「だ、大丈夫か?」
「「いや……食堂の場所が分からなくてな」」
「やはりそうだろう」
とっさに誤魔化すためにそう言うと、箒がその言葉に苦笑していた。
すると一夏が、次は一緒に食べようと言ってくれたので次回はお言葉に甘える事にしたらしい。
そんな中に開始される五限目。
不動兄弟は授業内容をノートへ必死にとりながらも、空腹と戦い続けた。
終わったころには半分燃え尽き……そして迎えた6限目は
「では、実習を開始する」
アリーナに響く、千冬の声。
牙狼と狼牙、二人にとっては初めての実習だ。
先ほどのだらしない顔から一転、真剣な顔つきに戻る。
そして周囲の目は、やはり不動兄弟が持っているとされる専用機に対してだろう。
多くの視線が突き刺さるように向けられている。
今、不動兄弟はISスーツを付けてはいるが……まだ展開していない。
「今日から新しく専用機持ちが二人加わる事になるが、特別扱いはしない。いつも通りだ」
千冬は全員にそれを改めて言い聞かせるような口ぶり。
そのまま視線を、不動兄弟へ向ける。
「牙狼、狼牙」
「「はい」」
「まずはお前たちの専用機を展開しろ……ここへ来る前に扱いは学んでいたはずだ、できるな?」
「まだ遅いかもしれませんが」
「やれます」
牙狼は右手、狼牙は左手。
それぞれ指輪をはめている手を前に突き出す。
専用機の起動。
そして不動兄弟の身が……それぞれの相棒をまとい、現れた。
「ほう」
その光景に、千冬は面白そうだと言った声を出す。
副担任の山田も同様……いや、こちらは息を呑んでいた。
他の生徒たちも、その光景に目を見開く。
「き、金の狼?」
一夏がつぶやくように言う。
牙狼の姿は全身装甲に近く、頭部や体は完全に覆われている。
一応人の形だが耳に当たる部分が頭部近くから生え、口には牙が見えている。
それでいて翠の目に黒い瞳があり、伝説の人狼の姿はこういうものなのかもしれないと感じさせられる。
ボディから腕、脚にいたるまでほぼ金色に染められており……日本製の量産IS「打鉄」に近い、鎧の様な印象でかなり派手だ。
時折、装飾のように黒いラインが数箇所入っている。
腰には、一振りの劔があるだけで……あとは両手首付近に反り返った刃が出ているだけだ。
背部には畳まれている大型の機械的な翼があり、それだけでも威圧を感じられる。
「……狼牙のは、まるで鬼だな」
それに対し、箒が顔をしかめ言う。
狼牙の姿は、牙狼と違い色は銀。
だが、同じように顔はマスクを付けている様に覆われているが……その額近くから一本の角が伸びている。
さらには、つりあがっている赤い目。
血に染まっているような色で……映画に出てくる吸血鬼の目にも見える。
胸部は装甲を数枚重ねたように、男性の鍛え上げられた胸筋をあらわすかのごとく盛り上がっていた。
腹部は黒く染まり、銀の装甲が保護するように覆っている。
さらに、左腕の盾らしき部分から伸びる上下につけられた、ハサミに似たクロー。
二体とも完全な、近接型とわかる専用機だ
と、展開を終えた二人が声を出す。
聞こえるようにオープンにしてだが。
「これが俺の専用機「牙(きば)」です……ま、見た目とか結構気に入ってるんですが」
「で、こっちが「覇鬼(ばき)」……名前まで反対にしなくてもいいんですがね」
不動兄弟が軽い口調で言っているが、生徒たちは目の前のものが本当にISなのかと。
そう感じるものは少なからずいるようだ。
「これは男性用にしたため、こんな全身装甲にしたらしいですよ?」
「女性のと違って……まあ、男性の好みに合うような甲胄とか。そういった見た目のも気にしてるようですね」
「確かお前らのは元々プロトタイプ、テストタイプと聞いてはいたが、完全に戦闘向けの様だな……こういう風に区別をつけるとは」
千冬は、一夏の専用機と目の前の二人が扱う専用機の違いを考えていた。
しかし
「でも、なんだか男性っぽい感じはしますね」
山田が、率直な感想を言う。
女性と男性の感性には、全てがそうとは言わないが違いもある。
美しいスタイルを維持したIS、これから戦に向うような、荒々しささえ感じられるIS。
女性が華なら男性は勇
女尊男卑と言われる今の時代に対する、研究者の男性達による抵抗なのかもしれない。
男ならこうであるべきだ、という。
「……私、こういった不思議な感覚に陥るのは初めてな気がしますわ」
「うん、僕も」
「何と言えばいいのか、複雑だ」
セシリアやシャルロット、ラウラといった専用機を持った女性。
目の前のISに、どうも違和感がぬぐえないらしい。
しかし
「二人ともかっこいいなそれっ! 俺も自分のISは好きだが、二人のもいいと思うぞ!」
男性の一夏だけは違った。
目を輝かせ……やはり彼も、まだ歳は十代。
こういう、わかりやすいものに対し憧れやかっこよさを求めるのも……歳相応でもある。
「ありがとう、一夏」
「でも一夏のISも、俺たちは結構好きだぜ? データでしか見たことないけどよ」
牙狼や狼牙も、一夏の駆るIS「白式」は嫌いではなかった。
あの洗礼されたフォルムや色合いなど、とても美しいのだから。
そんな男性三人の光景に、女性らはというと
(こ、これは……男の友情、もとい)
(その先に至る、あんなこんなそんなことも)
(あ、ありえる! あの顔と声からして!)
とまあ、男子一人だったのが今は三人。
顔はイケメン一人に普通二人だが……その中の良さは、本物らしい。
そのため一部の女子の間では、すさまじいスピードで脳内妄想ストーリーが生み出されていく事になる。
「お前ら、互いの感想はまた今度にしろ……二人以外の専用機持ちも、準備だ」
苦笑しつつ、見かねた千冬が割って入り、一夏は周囲の視線に気づいたようだ。
すぐに顔を赤くし戻っていく。
そして……訓練が、始まったのだ。
ようやく出せました、しかしもろそのまま。
男性用とありますが、やはり私はこういったものが好きですね。