騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第四十二話:新章突入

亡国機業のメンバー。

無事に合流できたオータムもそこにおり……ホテルの一室で、久しぶりに普段のメンバーがそろっていた。

そうして、オータムにIS学園で起こった出来事を話しているようである。

 

「随分派手にやったんだな」

 

「あいつら相手に加減はちょっと……邪魔もありましたし。しかし、心配しましたよオータムさん」

 

「はっ! お前にしちゃよくやってるさ、むしろあたしの方が無様だよ」

 

「……本当に、無事でよかったです」

 

「……お前に心配されちゃ、この先不安になるからやめな」

 

まだ完治とまではいかないオータム。

とある軍事基地に潜入中、未知の敵から襲撃を受け……全滅とあるが、オータムは無事だった。

それを一番喜んでいたのはなんと牙狼だ。

スコールも司も、実はエムも心配をしていたが……牙狼は群を抜いていた。

 

なにせ、戻ってきたオータムに抱き着くほどである

 

そこにやましい気持ちは一切なかったのだろう。

オータムは最初、自身を吹き飛ばすのではと思えるほどの突進を見せてきた牙狼に驚いていた。

だが、強くその身を抱きしめられ……さすがに振り払おうとしたが、牙狼の体が震えていることに気づく。

 

「お、おい」

 

「う、うう……よかった」

 

「……あたしがそう簡単にくたばるか?」

 

「……すみ、ません」

 

しばらく、慣れなさそうな手でオータムは牙狼の背を軽くたたく。

自身がこんなことをするなど、思いもしなかったようだが……本気で、牙狼は自分を心配していたのだとわかるほど。

強く、抱きしめられている。

 

(ははっ……いけねえな、スコールも見てる前で……こいつも、まだガキだってのに)

 

チラッとスコールを見れば……苦笑している。

その目は、程々にねと言っているようだ。

しかし、牙狼の体はかなり鍛えられているとすぐにわかる。

こうして直に触れられ腕を回されている事で……

 

(スコール曰くたまには悪くない、か……なるほどね)

 

オータムからすれば16のガキ。

しかし、少年から男になろうとしている……そういったものが、確かにある。

まあなんにせよ、こうして心配されるなど考えられなかった。

 

(お前ってやつは本当に……ん?)

 

肩越しに見えるのは、エムと司。

その顔にオータムは……一筋の汗を垂らす。

 

無表情

 

エムはともかく、司までもがああも表情を失くすなど滅多にない。

決まって束関係かコンプレックスの脚の件……それ以外では、見たことが無かった。

目の色もどこか……光が見えない。

真っ黒だった。

 

「……おい牙狼」

 

「あ、はい?」

 

「お前さ……いや」

 

オータムは牙狼をズッと押し離す。

きょとんとした顔の牙狼。

本気で邪心が見えないだけに、オータムも扱いづらそうだ。

普段そういった視線を感じる事もあるが、牙狼はありのままの自分をさらけ出している。

だからこそ

 

(絶対いつか刺されるな……こいつは)

 

聞けば、あの千冬もだいぶ怪しいと。

それはいくらでも有効利用できそうな情報でもあったが、牙狼はしないだろう。

 

「……まあ、心配してくれてありがとな」

 

「いえ……」

 

そう言いオータムはスコールの方へ。

報告も兼ねて、いろいろあるようだ。

 

「じゃあ、少し」

 

「ああ……お前らもそろそろ休みな」

 

二人は別室へ。

牙狼はお休みなさいと言い、二人は軽く手を振ってこたえていた。

そうして、そこにいるのは牙狼とマドカ、司の三人だけ。

だが、沈黙が部屋を支配する。

 

「……な、なあ二人とも?」

 

「「……」」

 

二人はそれぞれ、ソファーに座ったりウインドウを開いたり。

牙狼をスルーしている。

 

「お、お~い」

 

「「……」」

 

「……ちぇっ」

 

無視されている牙狼は、肩を落とし部屋を出る。

しばしそのまま、牙狼が出ていった後も二人は黙っていたが……唐突に、笑い出す。

 

「あははは」

 

「く、くくく」

 

笑い、再び静かになる。

 

「エム……私たちっていつまで一緒にいられるのかな?」

 

「……目的が達成されるまでだろう」

 

「そうだね……正直、スコールは私たちを殺すかもね」

 

「ふんっ」

 

そういうとエムは首から下げたペンダントをいじる。

牙狼のキバの待機状態とは違うが、何故キバが指輪からペンダントに変わったのか。

その意味を、ここにいる全員が知っている。

 

「今はない、それだけだ」

 

「うん……私にとってスコールもオータムも、姉みたいなものだけどね」

 

「あんなのが姉など、考えたくもない」

 

エムはそれだけ言い、ソファーに腰かけたまま。

今はすることもなくしばらくは暇なのだ。

 

「私は、エム……マドカだって、大好きだからね」

 

「……」

 

その言葉にエムは返さず、司もそんなエムの隣に。

腕の力で浮遊椅子からソファーに座るエムのもとへ移る。

 

「っ……おい」

 

「いいじゃない、今日ぐらい女同士で」

 

「私にそんな趣味はないがな」

 

「私もないよ~……でも」

 

司はマドカにぎゅっと抱き着く。

マドカは、そんな司を……突き放さず、そのままにしていた。

 

千冬と束にそっくりな二人

 

だが彼女らは、あの二人ではない。

今、二人が一緒にいるのは……彼女ら自身の意思なのだろうか。

司はそのまま、エムの隣で静かに寝息を立てる。

 

「……」

 

エムはそんな司に対し、普段見せない笑みを浮かべ……生きているぬくもりを、感じる。

そのまま彼女も目を閉じ、静かに寝息を立てていた。

 

(……え~)

 

そんな光景を見ていた牙狼。

手に持っているジュースなどをどうしようかと……あと、二人の関係に少し疑問を抱き始めていた。

後日、その件でいろいろごたごたが起きることになるのはまた別の話である。

 

 

 

「……やっぱあんた、筋はいいわね」

 

 

 

場所は変わり、IS学園。

アリーナのある一角で、狼牙がゼロを纏い双剣をふるっていた。

それを指示しているのは……訓練機である打鉄をまとった鈴音。

 

「そうかな……僕にしてみれば、剣関係は扱ったことがなかったから」

 

「元々、才能があったんでしょ?……牙狼だって我流だったけど、動きは良かったんだし」

 

どうやら似たような武器を使う鈴音に訓練を頼んだらしい。

と、ゼロは銀狼剣を連結させる。

それは少し違うが、甲龍が持つ得物の双天牙月に似ているのだ。

 

「本当、特性までそっくりね……でもそっちは遠隔操作も可能なだけ、まだ上かしら」

 

「実際、遠隔操作は咄嗟だったけどね……セシリアに教えを乞いてもらってる」

 

「そうね……あたしは銀狼剣の方をメインに教えることしかできないから」

 

ゼロの銀狼剣は、投擲武器にも使える。

手放した後に自身の方へ戻すことも可能な、二対で一つの武器なのだ。

 

「じゃ、そろそろ戻ろうか」

 

「そうね」

 

二人はピットへ戻る。

そうしてISスーツ姿で、再び合流した。

ベンチに腰掛け、先ほどの訓練の内容を復習する。

 

「……やっぱり、使い慣れないな」

 

「キバに対抗するためにも、今は耐えるしかないんじゃない?」

 

「そうだけどさ……正直、キバは防御も相当なものだから」

 

「……あの時の戦いのはあたしも見たけど、あいつのISも化け物よ。ゼロ距離で爆発して立っているなんて」

 

キバの背にある、ナノマシンのマント。

それがキバを守る鎧の一つでもある。

あれも、元々は楯無から奪ったものだと狼牙たちは……昨日、聞かされたのだ。

 

「あたしらも気をつけなきゃ、いけないのがよくわかったわ」

 

「鈴音もそうだが……一番やばいのは」

 

そこは、鈴音もわかっているようだ。

 

 

 

「「一夏の零落白夜」」

 

 

 

あれはむしろワンオフ・アビリティーだが、キバの奪える限界がわからぬことは警戒しないといけない。

もしあれが奪われ、なおかつ他のISからエネルギーを奪えるISとなってしまえば

 

「最悪よ」

 

「……でも、兄さんはむしろ白式を嫌ってるみたいなことを言ってたけどね」

 

「そう、ね……それはあいつ本人に確かめるしかないわ」

 

牙狼の行動。

それは、彼らには分からない。

だがなんであれ、敵となっている今は戦うしかできない。

 

「……そういえば一夏のやつって」

 

「明日らしいわ……ま、しょうがないんじゃない?」

 

「明日、か」

 

一夏の白式。

多大なダメージを受けた彼のISは、一度オールメンテナンスを行う。

そのため、平日だが一夏は外出することになっていた。

 

「何もないといいんだけどね」

 

「毎回毎回あったらこっちがもたないわよ……」

 

「違いない……じゃ、僕たちも行こうか」

 

二人はそこで別れ、それぞれ更衣室へ。

アリーナでの訓練を行いつつ、狼牙はゼロが自身に合わせてくれるような感覚が強まっていた。

ゼロとなら、まるでどこへでも飛んでいけるような

 

(……宇宙、か)

 

狼牙はその夢をあきらめてはいない。

今は少し、遠回りをするだけだ。

いずれ必ず、行って見せようと……そう思いながら、再び鈴音と合流。

二人はそのまま雑談をしながら食堂へ向かう。

すでに専用機組が席を取ってくれているはずだ。

 

「お、鈴に狼牙」

 

一夏が手を振っている。

大きめのテーブルに座り、最近は一年の専用機組らで放課後集まり雑談をしている。

 

「お疲れ様……狼牙」

 

「ああ、ありがとう簪」

 

簪の隣に座る狼牙は、彼女から水をもらう。

鈴音は箒の隣に腰かけていた。

 

「鈴、これ」

 

「ありがと……まったく、打鉄とはいえ違うISだと慣れないわねえ」

 

「すまんな鈴音……今日のでだいぶ感覚がつかめてきたよ」

 

「お二人の動きを私たちも見させていただきましたが、中々ためになりましたわ」

 

アリーナでのことを、彼女たちもモニターで見ていた。

最近の雑談では、もっぱら狼牙のIS関係の話題ばかりである。

 

「セシリア、実際どう見える?」

 

「そうですわね……私はああいった近接はそこまで得意ではありませんが、狼牙さんの動きは以前より良くなっているかと」

 

「あ、やっぱりセシリアもそう思う? 僕もだよ」

 

「私も同意見だな……あれにくわえ、ザ・ビーストもあると気が重くなるが」

 

以前模擬戦で狼牙と戦ったラウラ。

その動きについて行ききれず、へたをすればやられていたという状態。

さらに今はその動きがよくなっていることに、少々疲れたような顔。

 

「だが、結局は狼牙の技量と精神力の強さ故なのだろう……一夏も見習え」

 

「箒……そこで振るなよ」

 

「同じ男として、引き離されても知らんぞ?」

 

「ぐっ……」

 

確かに、身体能力では一夏より狼牙の方が上だ。

おまけに五感の鋭さでは、狼牙はかなりのものだった。

 

「でも、狼牙……体は、どう?」

 

「……一応は問題ないが、ワンオフ・アビリティーは微妙」

 

簪の心配そうな声。

その意味を全員が知っている。

 

「狼牙でさえ、相当な疲労だったものな」

 

一夏がいうように、狼牙のゼロが持つワンオフ・アビリティーである「心滅獣身」……破壊力では、おそらく学園一だ。

だが、巨体をカバーできるほどの動きがあるといっても操縦者にかかる負担は相当なものである。

 

「しょっぱならから使ったとしても【99.9秒】が限界、だってよ」

 

「……その方がいい、何かあったら私たちがカバーする」

 

「そうだな……ラウラみたいに頼れる仲間もいるし。まあ、使うなんて事件が起きなきゃいいよな」

 

そうして談笑していると

 

「楽しそうだな、お前たち」

 

「!?」

 

突然会話に入ってきたのは、千冬。

そのそばに真耶も、楯無もいるようだが……

 

「お、織斑先生!?」

 

「ふむ、放課後を利用して訓練はいい心がけだ。しかし、結果を伴わせるようにな」

 

やましいことはしていないが、やはり緊張してしまう。

全員が固まっていると

 

「狼牙、お前に持ってきたものがある」

 

「え?」

 

どさっと、狼牙の前に紙の束が。

それらはすべて、今の時代では珍しい便箋だったが

 

「すべてお前宛てのラブコールだ、受け取れ」

 

「は?」

 

いきなり何を言い出すかと思いきや、千冬は……疲れたような顔。

真耶は……あまりいい顔をしていない。

一体なにかと、狼牙はふと目に入った一つの便箋を見ると

 

「……アメリカ?」

 

「ああ、お前の勧誘はすべてシャットダウンしているが……会えないからとこういう方法で勧誘してきている……様々な国がな。わざわざ日本語に訳してまでご苦労なことだ」

 

見れば、アメリカだけではない。

EU、果てにはアジアの国々からもあるのだ。

 

「イギリスのもありますわね」

 

「フランスのも……」

 

「ふむ、ドイツでも確かにそういった話は出てきているとあったが」

 

「げっ、中国もあるじゃない」

 

「……これ、ロシアのもある」

 

どうやら各国家から勧誘が来ているらしい。

牙狼が消えた今、一人しかいない無所属の狼牙を巡って水面下で相当激しく行われているのか。

一応はEU関係の国々、という話だったが……それも牙狼がいた時の話。

一夏は日本所属で手が出せないため、なんとしてでも狼牙を引き込みたい国が多いらしい。

 

「男性で二人目のセカンドシフト……それは、喉から手が出るほど欲しがるだろうな」

 

千冬も声に感情がこもっていない。

それほど、普段からそういった勧誘関係がうざったいらしい。

 

「お前に直接会っての交渉は禁じられている、だからこういった方法しか取れないのはわかるが」

 

「……本当、狼牙君を何だと思ってるんでしょうね」

 

ぼそっと真耶が呟くように言う。

簪もあまりいい顔をしていない。

だが、急にがたっと狼牙は立ち上がり、その紙束を集める。

 

「狼牙?」

 

「悪い一夏、部屋で読んでおくからさ……先に帰る」

 

「そ、そうか……じゃあ」

 

「ああ」

 

狼牙はそう言い、歩いていく。

それについていこうとした真耶は、千冬に止められた。

 

「っ……織斑先生?」

 

「山田先生、ここは私が行くので」

 

「え」

 

「更識もいろ……いいな?」

 

同じように動こうとしていた簪も千冬は止めた。

だが、彼女はどこか納得できない様子だったのだが

 

「今、お前が行くのはむしろ逆効果だ……山田先生もな」

 

「「!?」」

 

「なに、あいつは私たちが思ってるほど弱い男ではない……」

 

それだけ言い、千冬は狼牙の後を追う。

残されたメンバーは……そんな千冬の後姿を見つめていた。

狼牙は食堂を出た後、一人で寮へ戻ろうとしていた。

 

「狼牙」

 

「織斑先生?」

 

向かう途中、後ろから追ってきたのか千冬が声をかけて来たのだ。

どうも真耶はいないようだが

 

「少し話がある」

 

「……わかりました」

 

深刻、そうではないようだが……狼牙は千冬の後をついて行く。

そのまま指導室に入り、千冬は狼牙に声をかける。

 

「ISの調子はどうだ?」

 

「問題はありません……ただ、武装関係にまだ」

 

「ふむ、凰と訓練をしているところを見るとしっかり対策はとれているようだ。問題ないだろう」

 

「……先生、あまり兄さんのことでは」

 

千冬のことで何を考えているのか、狼牙は何となく察しがついた。

彼女もやはり、そういった話題には直接踏み込もうとしないのだから。

 

「まあ、私もそういう感情があると言うぐらいだ……しかし狼牙、お前に対しての圧力が強まっていると聞いた」

 

「あ~……はい」

 

政府から、アメリカが勧誘を強めてきていると。

それ以外でも女性権利団体がかなりうるさくなってきていると。

特にISがセカンドシフトを果たしたことで、その勢いは増すばかりだった。

 

「ここを卒業したら、どうするつもりだ?」

 

「……それは」

 

考えていたこと。

一つはこのままEUへ。

もう一つは、アメリカへ。

最後は……

 

「いっそ宇宙開発の方面に、と」

 

「ほう」

 

ISの本来の用途……これも、当時言われただけで実際怪しいモノだが。

宇宙空間での活動のため、狼牙はそれを行える働き場所があればいきたいと。

 

「……その意思を大切にしろ、いつの時代も国のトップどもは同じことしか考えん」

 

「人間ですからね……」

 

「まったくだ」

 

あきれ顔の千冬。

だが、思ったよりは元気そうである。

 

「そういえば、一夏は明日でしたっけ?」

 

「うむ……まあ、問題はないと思うがしばらく学園でも警戒は続ける」

 

「……そうですね」

 

今扱える専用機持ちは狼牙と楯無のみ。

その楯無も完全とまではいかず……実質、狼牙のみ。

 

「何もないことを、祈ります」

 

「……時間を取らせたな」

 

二人はそこで別れる。

だが、望みというのは簡単に外れるものだった。

翌日になり、一夏はIS学園を離れていた。

倉持技研……そこで白式のオールメンテナンスを行うために。

一方IS学園ではちょうど合同授業が終わったばかりで、資料運びなどの力仕事は狼牙が行っていた。

しかし

 

「うーん……」

 

狼牙は一人、唸っていた。

現在廊下の灯りが全て消えている。

教室、電子掲示板などなど……同様に消えていた。

 

「悪い予想ばかり当たる、ってか」

 

さらに付け加えれば、あらゆる防御シャッターまでも降りていた。

おまけに二秒たっても復旧せず……決まりだろう。

 

「……よし」

 

狼牙がゼロを纏う。

その際に発生する光が、一瞬周囲を照らした。

全てのセンサーを総動員し、有り得ない存在が近くにいないのを確認。

視界はすでに暗視に切り替わっており、はっきり見える。

 

『狼牙、無事か?』

 

「織斑先生?」

 

割り込んで来た回線。

教師達が主に使うモノだが……この様子では、まずいことに変わりはない様だ。

ウインドウもすぐに表示され、真剣な表情の千冬が映る。

 

『お前以外の専用機持ちは全て地下に向かっているが、遮断されている部分もある』

 

「こちらでは今のところ何も……遮断されても壊せばいいんですが、少し気になります」

 

『……私がなにを言いたいのか、わかるな?』

 

「他のクラスメイト、教師の避難誘導……後に撤退ですね」

 

『すまない、本来は私達が行うべきなのだがな……更識も、他の方へ向かわせている』

 

正直に言えば、彼女の方がいいかもしれない。

だが、逆に集合途中の……まだ復帰していない専用機持ちが狙われる可能性もある。

おそらく楯無の方が彼女らの場所に近いのだろう。

狼牙がいるのは、資料を仕舞った直後だったのでまるで正反対側だ。

 

『そのため障害となるのは特例として破壊を許可する』

 

「わかりました……そっちは、みんな来てますか?」

 

『……ああ、今そろった』

 

「では少し……簪、聞こえるか?」

 

狼牙は簪に声をかける。

すると、しばし静かになった後……彼女の声が聞こえて来た。

 

『狼牙?』

 

「無事見たいだね……ちょっと遅れるから、そっち任せたよ」

 

『……うん』

 

と、今度は真耶の声が響く。

 

『狼牙君、そちらも大丈夫なんですね!』

 

「はい……それと、生徒以外の教員の方々は」

 

『おそらく職員室だと思います……他は各担当クラスですね』

 

「……さすがにISは持っていないですよね、持ってなくても強そうですが」

 

そう言うと、向こうから少し笑い声。

どうやら冗談がわかったらしい。

 

『はい、私達だって強いんです』

 

「わかりました……箒、セシリア、鈴音、シャル、ラウラ、簪。僕もすぐ行くよ」

 

『わかった……狼牙、あまり無理をするなよ』

 

『狼牙さん、お待ちしておりますわ』

 

『しっかり頼んだわよ!』

 

『気をつけてね……』

 

『お前なら心配ない、待っている』

 

『狼牙、頑張って』

 

一人忘れているが、狼牙はスルー。

 

『狼牙君~誰か一人忘れていない?』

 

「……え?」

 

『ちょ、それは酷くないかしら?』

 

画面向こうの楯無がいい笑顔でそう問いかけている。

その手に持った扇子は……見ないことにしよう。

 

「冗談ですって……先輩、また後で」

 

『……ええ、また後で会いましょう』

 

IS学園での次なる戦いが、始まった。




皆様、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
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