不動兄弟のISがその姿を現し、一同は驚きを隠せていなかった。
しかし、このままでは授業も進まない。
千冬が声を出し、他の専用機持ちにもISを展開させる。
「……全員終わったな。では、今日は予定を変え模擬戦を行う」
「!?」
突然の言葉に、副担任の山田でさえも目を千冬に向けていた。
つまり想定外の事だと。
「お、織斑先生それは」
「山田君、今日は新しい仲間も加わる……ぜひ、見せてもらいたいものだ」
その千冬の視線の先に、牙狼と狼牙。
どっちみち、ここにいる面々全員がこの二人の実力を知りたいのだと。
そして、当の二人はと言えば……
「「こちらこそ、願ってもないことです」」
笑っていた。
いや、これから戦えることについての喜びだろう。
「なるほど、やる気十分といったところか……では、模擬戦は二対二で行う」
ペアでの戦い。
それは、牙狼と狼牙にはさらに嬉しいことだ。
「牙狼、狼牙。今回はお前たちに選ばせてやる……誰と戦いたいのだ?」
そんな千冬の言葉。
一夏は驚いたように千冬を見るが……彼女の中で今朝の、そして昼休みでの言葉がちらついていた。
期待するかのような、面白いものを見つけたような。
弟である一夏は、それがわかったのかもしれない。
そして
「……皆さん」
と、急に牙狼が一夏たちの方を向く。
そして、頭を下げたのだ。
「俺は今から失礼な、不相応な言葉を言います……ごめんなさい」
「俺からも、先に謝らせてもらう……ごめんなさい」
その不動兄弟の行動に生徒たちは訳がわからないという顔。
しかし、その次の言葉と態度でその意味が分かる。
牙狼は千冬を、狼牙は山田を見て言う。
「「俺と勝負して下さい」」
この行動に、生徒たちはやっと理解した。
そして同時に……二人が謝った意味を。
片やISを動かしまだほとんどたっていない二人。
片やブリュンヒルデと呼ばれ、最強の称号を。
そして元ではあるが代表候補であった者を。
無理無茶無謀
はっきり言えば、確かに失礼でもある。
しかし、それでも不動兄弟は知りたかったのだ……その差というものを、強さを。
「……やはりそうきたか、まったくお前たちは」
「え、ええ!? わ、私ですか!?」
ご指名を受けたこの二人。
反応の違いはあれど、千冬だけは理解してたらしい。
「だが、私は今回戦う気はない……牙狼、お前の相手は一夏だ」
「って俺!?」
千冬は微笑を浮かべつつ、目で一夏を指名する。
対し、牙狼は……納得している顔だ。
「残念ですが、そうですよね」
「そういうことだ……山田君にはそのまま頼もう、一夏と組んでくれ」
「……わ、わかりました。一夏君、よろしくね」
「は、はい……悪いな、牙狼」
「何いってんだ……よろしく頼むぜ、一夏」
牙狼は嫌とは思っておらず、千冬はそれを見てまた頷いている。
そして狼牙はといえば、それで満足らしい。
改めて山田に礼を言い、頭を下げていた。
「よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
しかし、こうまで言うという事は……この兄弟、よほど自信があるのだろうか?
相手も決まり、二人以外は退避。
アリーナで向かい合う二組は、すでにISを展開。
山田だけは「ラファール・リバイブ」だったが、一夏は専用機である「白式」を。
そしてその前に、牙狼と狼牙は自身のISデータを公開しようとしたが
「お前たちは経験がないというハンデがある……それに、いつも相手のデータが見れるわけではない」
これは一夏だけでなく、他の生徒に対しても言ったのだろう。
不動兄弟は苦笑しつつ、各々の得物を構える。
牙が剣を抜き、覇鬼が左手に付けられているシールドのクローを動かした。
「……準備はいいな、では始め!」
ブザーが鳴り、互いのシールドが0になるまで。
戦いは始まったのだ……そしてここから、物語はようやく始まる。
だが……動き出そうとする一夏が、止まった。
その理由は、牙狼の構えにあった
剣を右手で持ち、左手を軽く前に突き出し……その上で軽く、刃の腹を研ぐように後ろへ引く。
弓を引き絞るかのような奇妙な構えだった。
そのため、退避している面々や、剣道をたしなんでいる箒はつぶやく。
「我流、か……しかし、気合は確かに本物だ」
千冬もそれをそばで聞いており、目が真剣だ。
しかし、黙っていては埒が明かず……先手は一夏だった。
その手に持つのは、ひと振りの刀……だが、不動兄弟はそれを知っている。
(織斑千冬さんにたどり着くには、一夏は超えなきゃな)
牙狼は、ハイパーセンサーを通じその光景を見て……目を、細める。
その武装はかつて千冬が扱っていたのと……ほぼ同じだと。
そして山田の操るラファール・リバイブはその手にアサルトライフルを展開。
さすがに早いが、どうも本気には見えない。
今回は、一夏の後方から援護するようだ。
(狼牙)
(わかってるって……俺らの会話に、コアネットワークはいらないしな)
(ああ……いくぞ!)
口を開いて会話もせず、しかし互いにすることは……伝わる。
それを、一夏と山田はまだ知らなかった。
向かってくる一夏。
斬りかかるが、それを牙狼は軽く体をずらしかわす。
その中……牙狼の背後にいた狼牙が、山田に向かうと思いきや突如一夏に突撃。
代わる様に、一夏を避けた牙狼は山田へ向かっていたのだ。
(任せたぞ狼牙)
「なっ!? 俺と牙狼じゃないのか!?」
「(了解)悪いな一夏」
一夏は振り切った姿勢から再度刀を振るう。
突撃の勢いもあり、かわすのは容易だが威力はありそうだ。
そこへ、すでに覇鬼は左手のクローをふるい火花が散る。
横から払われる感じになりつつ、一夏は地面を蹴る様に体勢を戻していた。
「うおっ……やるなっ!」
「そいつはどうも!」
軽口をたたき合いながら、互いの刃と爪が押し合っている。
白式の前で、覇鬼の血に染まったような目が一夏を見ていた。
一方、山田の元へ向かった牙狼。
こちらでは射撃の正確さに苦戦し、牙狼は牙のシールドを削られながらも何とか近づこうとしていた。
「速いですね牙狼君!」
「ありがっ!? とう! ございま! す!」
銃弾を剣で弾くように……見れば、その剣が淡く輝いている。
山田はそれに気付いている。
エネルギーが集まり、剣はまばゆい光へと。
「はあ!」
牙狼の操る牙の剣がX字に振られ、切られた順にビームが飛び出す。
どうやらあの剣は、ビームの発射口にもなっているようだ。
しかし、山田はその攻撃をいともたやすくかわしていく。
その間続けて射撃を行っているのだから、さすがとしか言いようがない。
(そろそろでしょうか)
牙の持っている剣から光がなくなりかけ、元の剣になりそうだ。
やはり、今までチャージをしながら攻勢の機会をうかがっていたのだろうと。
シールドの消耗も激しい牙狼は、この連続攻撃で倒すつもりだったのだと。
そう判断した山田は……剣の光が消えた瞬間、頬をかすめるような最後のビームをかわし一気に向かい
真横から飛来した何かに、腹部をつかまれた
ビームを交わした方向から飛来したそれは、シールドを消耗させながら腹部をつかむ。
腹部を見ると、ワイヤーに繋がれた……覇鬼の左手にあったクローが見える。
いや違う、クローに見えていたのは上の部分だけ。
下にも同じような爪があり、これは
「は、ハサミ!?」
ハイパーセンサーでとらえながらもとっさに動けなかった。
みると、クワガタやカニが持っているような、そんなハサミに見える。
それが腹部をぎりぎりと締め上げていく。
「くっ」
山田はすぐさまそのワイヤーを切断するために動こうとし……電撃が、その身を襲った。
ISを通して山田に伝わるのは衝撃でなく、その威力は武装を破壊するための物。
電撃による攻撃でアサルトライフルがやられたのか、バチッと火花を散らし破裂。
シールドが爆発の余波で削られ、山田に衝撃が襲う。
「きゃあっ!」
しかし、その体勢を崩さず維持しているのはさすがだった。
すぐさま思考を切り替えようとする、だが……
爆風の晴れた目の前に、金の狼が剣を突き付けていた
首元に突き付けられた剣。
再び淡い光が戻っており……至近距離から撃たれたら、絶対防御が発動するだろう。
そうして緊張の一瞬が
「終わりですね」
スッと、剣を仕舞う牙狼がいた。
そして振り返り……一夏を抑えていた狼牙。
「一夏、まだやるか?」
「……いや、負けたよ」
悔しげな声で言う一夏。
しかし、狼牙と一夏は両方激しくやり合っていたのか……息が荒い。
狼牙は覇鬼のクロー、いや……ハサミを引き戻し、左手に戻す。
そのまま元のクローとして、収納されていた。
「そこまでだ……牙狼、とどめを刺さなかったな?」
「山田先生が本気には見えなかったので……それに、二対一になりますから」
「……そうか。山田君、大丈夫か?」
「あ、はい……えへへ、見事にやられちゃいましたね」
千冬がアリーナに出てきたのを見て、山田はISを戻す。
しかし、その眼は素直に牙狼と狼牙を褒める目だった。
「一夏」
「……かわされ続けて」
「空振りというのは、一番体力も精神力も消耗させられる……よくわかったろう」
そうして、弟に対し厳しいと思えるような説教を始める。
しかし、はたから見れば心配していた姉の姿にもみえた。
だが、驚いたのは他の面々だ。
動かして間もないはずのISをこうも操り、手を抜いていたとはいえ山田と一夏を相手にした。
「牙狼、狼牙……実戦はこうはいかないが、今はそれでいい」
「はい」
「ありがとうございます」
ISを戻し、不動兄弟は戦ってくれた二人と千冬に礼を言う。
山田と一夏も同じ様に、礼をした。
そうしてそのまま、今日の授業は続いてくのであった。
……難しい。
書く事がこんなに難しい、他の投稿者の方々はすごいと思えます。
詳しい設定は、近いうちに出します。