騎士と獣と二つのコア   作:kouma

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第八話

上級生たちとの戦いから数日がたち、狼牙は今日明日運動をするにあたり無理はしない方がいいと言われたようだ。

「ザ・ビースト」による急激な動きは、慣れていない狼牙の身体にダメージを与えていたとか。

それでも、その映像を見る限り……かなり速く正確な動きが行えていたため、政府の方では大満足のデータが得られているようである。

 

「……狼牙、俺とお前の口座に今回は結構入ってたわ」

 

「そうか……ま、上乗せ分がないとやってられねえよな」

 

「ああ……無理しなきゃ明日には運動開始だと」

 

「わかった。当面、今以上に体を鍛えるか」

 

「そうだな……」

 

牙狼はそう言い、自身のベッドへもぐりこむ。

電気を消し、小さくおやすみとだけ残し……2人は、すぐに寝入ったようである。

あの日の後、上級生らは倒れそうな狼牙を支える牙狼に対し……何も言わなかった。

 

少し、少しだが……視線が、優しかったような気もしていたと。

 

そうして次の日、今日は日曜日であり外出しようという事になっていた。

目的は、臨海学校に必要な水着の調達である。

 

「おっし、というわけで行くか!」

 

「……悲しいな、男2人」

 

「言うな狼牙よ……一夏たちはそっとしておこうぜ、触らぬに何とやらだ」

 

どうもこの二人。

女性陣にアプローチを食らっている一夏を見捨ててきたようだ。

というか、人の恋路に興味はない。

後が怖いからである……まあ、そんなこんなで2人は街へ出ていた。

さすがにIS学園の近場の為か、かなり発展した都市である。

それでも

 

「暑いなあ……」

 

「だな」

 

牙狼と狼牙、私服で行動してはいるがそれでも汗をかいていた。

それほどまでに暑い。

 

「……で、今日は何の用ですか?」

 

「ふむ、相変わらずだなお前たちは……仕事だ」

 

「またそんな黒スーツで……あ、長くなりそうだし座って下さい。メニューどうぞ」

 

「む……せっかくだし、頂こう」

 

不動兄弟が近くの喫茶で見かけた黒スーツの男性。

どうみてもサラリーマン……という感じには見えない。

そうして2人が声をかけ、そのまま喫茶に入ったというわけだ。

 

「我々が制作したISはどうだ?」

 

「上々です、データはこちらに」

 

牙狼がデータを渡す。

それをすぐさま展開し、確認を始めていた。

 

「うむ……例のシステムによる後遺症は?」

 

「俺が模擬戦で使用した結果、フルバーストまでは至ってませんが……数日筋肉痛です」

 

「フルバースト、まではさすがに厳しいか……まあ、君らはまだ成長期だからな」

 

この男、どうやら不動兄弟にISを渡した政府の人間だろうか?

データを解析しながら質問をしてくる。

 

「なんにせよ、君らのデータでまた研究がはかどるよ」

 

「そうっすか……なあ狼牙」

 

「ま、お金ももらってますし」

 

「そうだな……本当は君たちのような子供にやらせる役目ではないのだが」

 

黒スーツの男は、申し訳なさそうな顔で2人を見る。

それを不動兄弟は笑って返していた。

 

「いいんですよ、俺らはそれで夢をかなえられる」

 

「ギブアンドテイクってやつですかね……気にしないでください」

 

「そうか……私にも息子がいるが、君らを見習わせたいよ」

 

「「碌でもないからやめたほうがいいですよ?」」

 

そういう返しに、三人はクックックと笑う。

どうやら、思ったより仲は悪くないようだ。

 

「研究分、報酬は振り込んでおいたが」

 

「あ、昨日確認しました……で、さっきのがさらに詳しい方のデータになるので」

 

「ああ……今日はおごらせてもらおう。私たちからの総意だ」

 

「すみません、ごちそうになります」

 

男は、代金を置き……そのまま去って行った。

不動兄弟らは、自身の注文した飲み物を飲み……清算後、外に出る。

また照りつける陽の光。

2人は本来の目的である水着を買う為……デパートらしき場所に入っていった。

 

「うへえ」

 

「すっげ」

 

入った瞬間、驚きの声。

田舎育ちの二人にとって、こんな大規模なショッピングセンターなどは見たことがない。

きょろきょろと周囲を見渡してしまうほど、田舎っぽいのが丸出しであった。

 

「えっと……向こうだな」

 

「こんなでかいと、案内板がなけりゃ道に迷っちまうぜ」

 

牙狼が確認をし、二人はそちらへ向かう。

どうも女性の水着コーナーより小さくはあるが、男性のもあるようだ。

そうして到着して、さあどうしようかと思っていると

 

「ちょっと、そこの2人」

 

唐突に声をかけられそちらを見ると……一人の女性がいる。

どうも不動兄弟に声をかけたようだが

 

「そこの水着、片付けておいて」

 

いきなり何を言っているのだろうか、と不動兄弟は思ったが。

今の時代を考えると、こういうのが多くいるのだろうか?

話し掛けて来たのは名前も知らない女性。

ISが普及してから、世界はあっと言う間に女尊男卑になっていた。

そうして、今ではこうして見ず知らずの男に命令する女もおり、それに従う男はどこでも見かけるようになっている。

だがこの二人はそういう事を嫌うし、今はそれに逆らえる力も持っているのだが……ここはあえて

 

((人違いだろうな、無視しよう))

 

すぐさま2人は何も見えず聞こえなかった事にし、自身の水着を選び始める。

すると

 

「ちょっと聞こえてるんでしょ!」

 

「「……うーん、迷う」」

 

「男のくせにシカトするんじゃないわよ!」

 

だが、牙狼と狼牙はサイズにあった水着で唸っている。

意外にデザインが決まらないようだ。

こうしている間に、騒音をまき散らし続ける女性。

 

 

 

しかし、傍から見れば一人で叫び続けている残念な人にしか見えないのだが……

 

 

 

牙狼と狼牙はマイペースに水着を選ぶ。

色は、どうやら牙狼が黒で狼牙が青になったようだ。

 

(ここは男らしくブーメラン……はまずいな)

 

(牙狼、さすがにそれはな……普通にトランクスタイプかな)

 

そうして手に取っている水着を持ってレジへ。

女性は完全に無視され続け、警備員を呼ぼうとしていたが……その間に二人は買い物を終えていた。

 

「あ、こんにちは」

 

「お先に」

 

牙狼と狼牙はたっていた女性にそう言いながら、颯爽とそのフロアから出ていった。

残された女性は……一人で怒りに震え、周りからクスクスという笑い声に対し歯を食いしばっていたようだ。

そして、水着コーナーから出た二人だったが

 

 

 

「さっきのは傑作だったな、不動兄弟」

 

 

 

何故か買い物袋を持った千冬と真耶の教師コンビがいたのだ。

不動兄弟が驚いていると

 

「先ほどは、あまりに騒がしくてな……」

 

「でも、二人とも無事でよかったですよ」

 

どうも、別の場所にまで聞こえていたようである。

その様子を見に来て、彼女らは不動兄弟とあの女性を見つけたようだ。

しかし

 

「ん? なんかありましたかね?」

 

「俺も牙狼も、覚えがないですけど?」

 

そう言い放った。

千冬はそれに頷き、真耶は苦笑する。

 

「お前たちの行動は間違っていない……あれは、大人として恥ずかしいがな」

 

「そうですよね……いい年した女性なのに」

 

2人はそう言いながら、溜息。

はやりこの2人は、そこらの女性とは考えも違う。

だからこそ、不動兄弟は……生徒以外で、彼女らに一番信頼を置いているのだ。

と、牙狼は何かを思いつき

 

「そうだ、せっかくだしお二人とも」

 

「一緒に昼食はどうでしょう?……今は、学園外ですから」

 

すぐさま狼牙が続く。

さすがのコンビネーションである。

 

「……ふむ、悪くないな」

 

「えっ!? で、でも生徒と教師で」

 

「山田君、こういう時はあまり細かい事を気にしないでいい……こいつらなら、な」

 

千冬はどうも乗り気らしい。

というか、教師の時とは雰囲気もだいぶ違うようだ。

不動兄弟も、あっさり乗ってくれた二人に驚いているが……笑顔になる。

 

「では、決まったのでいきましょう」

 

「うむ、そういえばお前たちに給料が入ったといってたしな」

 

「えっ!? そ、そこは大人のおごりでは」

 

「狼牙よ、男がけち臭い事を言うな……牙狼、そうだろう?」

 

「あ、あのその……ご、ごちそうになります?」

 

千冬と真耶の顔に、不動兄弟はと言えば……財布を確認。

互いを見て頷いた。

 

「「どっからでもかかってこい!」」

 

「では決まりだ」

 

「ご、ごめんなさい……ありがとうございます」

 

そうして、四人は昼食を取る為移動を開始する。

長い一日はまだ、これからだ。




今回は九話に続きます。
ヒロインや一夏が出ていない、と思われるかもしれませんが……今後も不動兄弟との絡みで出ます。
次回、千冬と真耶という教師コンビ相手にどうなることか……
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