九人の女神は完全犯罪の夢を見るか?   作:猫丸@柄杓

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※この作品ではラブライブ!の主人公らが犯罪を行います。読んでて不快になられる可能性がありますので、予めご注意ください。


脅迫状

 「‥‥脅迫?」

 

 冗談じゃない、とも言いたげな顔でツインテールの少女、矢澤にこは呟いた。

 伝統校音ノ木坂学院のアイドル研究部の部室で、にこを含めた九人の女子高生が沈鬱な表情で一枚の紙を凝視している。

 

『ラブライブへの出場を止めろ。さもなくば高坂穂乃香の命はない』

 

 ラブライブ――全スクールアイドルの憧れであるその大会は、当然の如くこのμ'sの目標でもあった。

 

「悪質です」

 

 凛とした目を鋭く光らせ園田海未が言った。

 

「同感ね。警察に届けた方が良いわよ」

 

 赤い髪を指で弄りながら西木野真姫が同調する。

 二人の怒りを秘めた冷静な言葉が部室に木霊し、再び静寂が訪れる。いくら強い心を持とうとまだ高校生なのだ。この反応は至極当然のものだろう。

 

「でも、ラブライブを控えた状態で警察沙汰かぁ‥‥」

「何よ。放っておく方が危険じゃない」

 

 小泉花陽は眼鏡の位置を整え、不安そうな呟きを漏らした。だが、それに真姫が間髪入れずに反論し、部室は再び暗い雰囲気に支配される。

 

「警察に通報するなら、すぐにした方がええと思うんよ。こんなんが届いた以上帰り道だって安心は出来んやろ?」

 

 独特の似非関西弁で東條希が進言する。

 

「うん‥‥私もちょっと不安かな?」

 

 南ことりはまだ震えが止まらないようで、先程から隣の海未の手をぎゅっと握っていた。

 

「とりあえず理事長に報告ね。悪戯かもしれないけど‥‥こんなのがあったら練習にだって身が入らないでしょ」

「凛は帰りにラーメン食べれなくなるかもしれないのが不安にゃ」

 

 慌てず対処する絢瀬絵里と、能天気な心配をする星空凛の声が重なり、高坂穂乃香はクスッと笑った。

 

「大丈夫だよ! 最近のケーサツは凄いし! 何とかなるっ!」

 

 この明るい太陽のような台詞は、少なくとも周囲の人間からは空元気と受け取られなかったようだ。穂乃香の笑顔に触れた海未らは徐々に微笑んでいく。

 部屋に立ち込めていた翳りが消え去ったところで、真姫があっと声を上げた。

 

「どうしたんですか? 真姫」

「‥‥いや、何でもないわ」

 

 「そうですか」と呟いた海未を横目に、真姫はその紙の右端を凝視していた。いびつな線で書かれた、クローバーのような模様。それは、まだ真姫しか知らない"あのマーク"と酷似していた――。

 

 七月中旬、油蝉の合唱が徐々に音量を上げてくる頃。豪邸と言っても違和感がない自宅前で、真姫は溜め息をついた。

 安全のため凛、花陽と共に帰路についていたのだが、却って不安が増幅することとなった。何故なら、二人――いや、μ'sのみんなには絶対に言えない事実があるから。

 

「あのマーク‥‥」

 

 ここ最近、手紙がくるのだ。ファンレターのような明るい内容ではない、もっと闇の深いような中身のものが。

 そしてその手紙の最後に決まって描かれているのが、あのクローバーのマークだというわけだ。

 メンバーに心配をかけまいと隠し通してきたが、ついに部室にまで届いてしまった。

 そろそろ限界なのかもしれない。

 二度目の深い溜め息をつくと、真姫は自宅に足を踏み入れた。

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