進撃の亜人   作:薩摩芋

11 / 17
8.5話です。
何故こんな中途半端な数字がと言うと、今回は完全に8話の続きだからです。
やっと話がリュカに戻ります。
それでは、どうぞ。


8.5話

 

 

 

 

 

 

 

    9話

 

 

「ウォールマリア南区、シガンシナ区出身リュカ=プレゼンチェカです」

 

リュカの凛とした声がグラウンドに響く、その声に対する反応は2つ、1つは驚愕

主にエレン、ミカサ、アルミンがこれにあたる、

そしてもう1つは困惑、

これは前者3人と5列目の人以外全ての人間が感じていた、何故なら

 

「貴様は何しにここへ来た?」

 

「恩人に恩を返すためです」

 

「そうか、そうか」

 

明らかにおかしい、先程と比べてキースの態度が柔らか過ぎる、最後の『そうか、そうか』など、まるで孫娘に言っているかのように優しげだった、気持ち悪いったりゃありゃしない、次第に周囲の疑問は『何故教官の態度が急に柔らかくなったのか?』から『あの女何物だ?』に変わっていた、そんなことはお構い無しにキースはやや緩んだ顔のまま、サシャに向かって

 

「貴様はこの後死ぬまで走ってろ、それと今晩の飯は抜きだ。」

 

などと言って、最前列に戻って行った、サシャはあまりのショックに言葉が出なかった、特に最後の一言には強すぎる衝撃を受けたようで何やら不思議な笑顔を浮かべていた、ちなみに、リュカやサシャと同じ列だった5列目の人とその周辺は、入団早々皆度重なる非常事態にすっかり目が死んでおり、今なら目の前に超大型巨人が現れても「ふ、たしかにちょっと大きいな」程度のリアクションで済ませられるかもしれない、キースは訓練兵の正面に立つと少し緩んだ顔を引き締め、また凶悪な顔になると大声で叫んだ

 

「これにて貴様等に対する‘挨拶’は終了だ!ここで怖じ気付くような者は要らん、入り口に停まっている馬車に乗ってとっとと失せろ!行き先は開拓地だ、東西南北の順番で回って行くから、好きなところで降りて、また石拾いでもしてるんだな」

 

辺りを見れば、泣いている人がポツポツといる、キースは彼等に向かって言ったのだろう、ここで泣くような人間はどのみち途中で着いて行けなくなり止める、いや最悪死ぬことだってあり得る、開拓地へ行けばまた惨めな生活を迫られるが死ぬことは少ない、ここで諦めるのも1つの勇気だろう、キースは続けて言う

 

「だが、尚も訓練兵を目指す愚か者は、俺が殺す気で鍛えてやる、それを生き延びた者こそ、王ひていは民に心臓を捧げることを許された栄誉ある兵士となる、これが最初の敬礼だ!覚悟のあるものは俺につづけ!」

 

いくぞっ!!とキースが叫び、周りの空気が張り詰める

 

 

 

「心臓を捧げよ!!!」

 

   

 

   「「「「心臓を捧げよ!!!」」」」

 

 

ある意味ここが物語の出発点、様々な思想を持つ者が織り成す物語

ある者は、力と復讐のために

ある者は、未知の大地と自由のために

ある者は、愛しい家族を守るために

ある者は、強い使命を胸に秘めて

そして、本来ならこの場には存在しない者、異物であり、異質であり、イレギュラー、そんな彼女は何を思いこの場にいるのか?

彼女に捧げる価値のある心臓など、無いと言うのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

キースの激励が終わり、一同はそこで解散となった、ここに留まる者も、脱落する者も、皆入り口に向かっている、と言うのも、解散号令をした直後キースが

 

「留まる者も、一度は入り口の大きな建物に行け、そこのエントランスの受付に聞けば、今晩から貴様等が泊まる兵舎の部屋割りを教えてくれる、荷物はもう部屋に届いているはずだ、この後は夕食まで自由時間だ、それまでの間に荷物の整理と同室の者との挨拶でも済ましておくんだな」

 

と、気の利いたアドレスをしてくれたからだ、ただまぁリュカは直ぐに行く気はない、理由は2つあり、1つ目は、今行っても恐らくまだ込み合っているだろう事だ、事実制服の採寸の時はそうだった、2つ目は、丁度今、人気が無くなった瞬間ズイズイとこっちに来る3人への挨拶の為だ、まだ少し距離があるがそれでも分かる、やっぱり彼等も少しずつ大人になっていっていた

 

「久しぶりだな!3人とも、大きくなったな!」

 

「「リュカ!ど何う故して今まあなでたは過ごしてここにいたんるだの?い?」」

 

「お、落ち着け二人とも!一人づつ喋ってくれなきゃ聞き取れないだろう!」

 

前言撤回、ミカサとアルミンには少し落ち着きが足りないようだ、意外なのは一番落ち着きがないエレンが黙っていることだ、見れば少しうつ向いていて何か考え事でもしているようだ、リュカはその事に違和感を感じつつ3人に提案する

 

「こんな所で話をするのも手間だろう、時間も丁度頃合いだし食堂で話さないか?」

 

「賛成」

 

「うん、そうだねボクもその方が良いと思う、エレンは?」

 

「……おれも、それで良い」

 

相変わらずエレンの歯切れが悪い、それでも付いては来るらしく、無言のままリュカ、ミカサ、アルミンの後にいた。

 

 

 

食堂に着くと、案の定人は一人もいなかったが、食事は出来ていてエレン、ミカサ、アルミン、リュカの4人は適当な皿にシチューを注いでパンを取り、奥の席に陣取った、食事を済ませるとリュカが言う

 

「それじゃー私に対する質疑応答を始めよう、さっきみたいなコントはゴメンだからな、一問一答でいこう」

 

リュカが意地の悪い笑みを浮かべながらアルミンとミカサを見る、ちなみにまだ二人は食べ終わっていない、ミカサは無反応でアルミンは少し頬を赤く染めながらこう切り出す

 

「じゃあ、ボクから、リュカは今までどうしていたの?、やっぱり開拓地にいたのかな」

 

「そうだな、話せば長くなるが良いか?」

 

「勿論かまわないさ」

 

「そうか、私があの時提案した作戦は知っているか?」

 

「たしか、……‘二手に分かれて逃げよう作戦’だっけ」

 

「分かっているなら話は早い、あの後私は民家の中に入ってベッドの下に隠れた、そこで巨人が町からいなくなるまでやり過ごしたのだ」

 

ウソっぱちである、あの後リュカはしっかり巨人に食われてウォールマリアの平原で‘吐き出されている’、当たり前だがそんなこと言えない、言えば自分の不死身がバレる、エレン達のことを信用していない訳ではない、だが残念な事に、これは信用以前の問題である。

リュカのウソは続く

 

「巨人が町からある程度消えたら、何故か、穴が空いている内地側の門から、ありったけ保存食を持ってシガンシナを出た、当たり前だが船はもう全て出ていて、一つもなかったからな」

 

「大変だったね……」

 

アルミンが伏せ目がちに言う、リュカの境遇に同情しているのだろうが、全部作り話のためリュカの良心が痛むだけだ、本当はもっと苛酷だったが

 

「ん?まぁそうでもないさ、話を続けるぞ、」

 

「うん」

 

「それで、しばらくウォールマリアの壁内の平野をブラブラしていたら、丁度そこに領地奪還作戦で、偵察部隊の役割をしていた調査兵団に拾われたのだ」

 

「それじゃあリュカは

 

「そのとおり、私は今まで調査兵団の世話になっていた」

 

「やっぱりリュカはすごいね!」

 

「……ありがとう」

 

アルミンは感心しているが、本当の事を言ったのは後半の3分の1だけである、リュカの気分は晴れない、次はミカサの番だ、質問によってはまた、リュカはウソをつかなければならない、大事な家族には、あまりのウソはつきたくないものだ

 

「どうして貴女が私達の同期なの?貴女は私達より年は4つ上のはず」

 

どうやら、リュカの願いは叶ったようだ、これなら全て話しても問題ない

 

「あぁ、そんなことか、お前達なら必ず適齢になれば訓練兵に志願すると思ってな、年齢を聞かれた時に4つ若く言ったのだ、明らかに不信な顔をされたが、幸い私の戸籍はシガンシナの区庁の中、いくら疑おうと確かめようもないからな」

 

言いきってから一人カラカラと笑うリュカ、年齢を聞かれた時点で直ぐに思い付くあたり、流石リュカである、頭が良い

 

「よし、ミカサが聞きたいのはそれだけか?」

 

「うん」

 

残るはエレンだけである

 

「さて、じゃあエレンの番だな!」

 

リュカは無理やり軽快にい言う、何故か先程からエレンの様子がおかしい、リュカが話をふっても生返事ばかりだし、さっきから一度も目を合わせてくれない、そこでリュカは“もしかしてエレンは私との再会を良く思っていないのか?”と思った、自分はエレンを大切な家族と思っているし、自惚れでなければ、エレンも自分を大切な家族と思ってくれている、とリュカは信じていた、だが、もしそうでなければ、自分が信じていたモノが間違っていたことになる、そんなのは嫌だ

 

「エレンは私に何か聞きたいことはあるか?」

 

だから、希望を込めて聞く、ここでエレンが何かリュカに聞けば、それが原因で悩んでいたことになる、それはつまり、自分の思った事が間違っている事を意味する、だから聞く、間違っていることを望んで、しかし

 

「……いや、ない」

 

やはり歯切れが悪い、だがしっかり返事はする、しかし、この返事はリュカにとって

 

「ーーそうか(やっぱりエレンは……)

なら、もう聞きたいことは無いな?それじゃあ、私はこれから部屋割りを見てくる、3人ともあまり遅いと荷物の整理が夕飯までに終らなくなるぞ、ごちそうさまでした」

 

早口で言い、逃げるようにその場を後にする、思いの外ショックだったようだ。

一人去って行くリュカにミカサは頭に“?”を浮かべている、だが、頭の良いアルミンはリュカの考えていることが何となく分かった、間違っているかもしれないので、口には出さないが、まぁ何にしても取り敢えずは

 

「二人とも早く食べ終わっちゃおうよ、早くしないと本当に荷物の整理が終わんないよ」

 

「分かった」

 

「……」

 

お昼の完食が優先である。

 

残っている昼食を食べながら、エレンは先程出ていったリュカの背中を思い出し、チクリと痛む胸をシチューを丸飲みして誤魔化す、その様子を見てアルミンが言う

 

「エレン、どうしてさっきリュカにあんな態度取ったの?」

 

アルミンの口調は穏やかだか、瞳に少し怒りが含まれている、せっかくの再会があんな終わりかたでは台無しだ、そんなことはエレンだって自覚している

 

「……ゴメン」

 

「はぁエレン、ボクじゃなくてリュカに謝りなよ、流石にあれは可哀想だ」

 

この再会を一番楽しみにしていたのはリュカだ、なにせリュカは訓練兵団でエレン、ミカサ、アルミンと合流できるようにキースに色々頼み込んだりと、事前に根回しをしていたのだ、“会えば必ず3人は喜んでくれる”そう信じて疑わなかった、でも終わってみればこのザマだ、後味が悪いにもほどがある、期待していた分そのショックは大きいだろう

 

「分かってる……でも無理だ」

 

「何で!?」

 

「ゴメン……」

 

これ以上は不毛、と判断したアルミンは黙る事にした、3人しかいない食堂に重い沈黙が漂う、結局エレンは一言も話さずに食べ終わった昼食を片付け、イソイソと食堂を出て、入り口の大きな建物に向かっていった。

 

リュカは知らない、2年という月日がどれだけエレンを罪悪感で苦しめたか、無事だったからそれで良い、そんな生易しいモノじゃない、リュカはエレンを待たせ過ぎたのだ。

誰かが言った、あらゆる事柄は全て時間が解決してくれる、と、だが同時に、時間はあらゆる物を朽ちさせる、どちらも正しい、だが、少なくとも今回、時間は小さいが決して無視出来ない亀裂をエレンとリュカの間に残していった。




はい、8.5話終了です。
感動の再会とはしませんでした、こっちの方が面白いかな~と思って書きましたが、気を悪くさせてしまった人には申し訳なく思ってます。
感想、待ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。