ツイテル話   作:笹鉄砲

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第十九話

 俺は蹴り飛ばした侍一人を陸へと引き上げて無理やり目を覚まさせさた。もう片方はどこに行ったか分からなくなってしまった。

 

 さすがは俺だ。なんという力加減だ。ちゃんと生きてるではないか。顔の形が変化しているが些細な問題だ。もう片方は諦めた。

 

「おい、なんでお前らがこっちに来てるんだよ? タズナさんの方にザブザが行ってるだろ」

 

 どうやらあっちの俺が影分身をしたらしく向こう側の情報が入ってきた。向こうの現在の状況はザブザと仮面が襲撃してきたらしくナルトとサスケがピンチらしい。

 

 ここで分からないのが何故この二人がここに来たか、ということだ。タズナさんにザブザを差し向けたということはタズナさんを殺すつもりでいるはずだ。それなら人質なんぞいらないはずだ。

 

「そ、それは言えねぇ」

 

「ほう、ならイナリ君の母さんを呼ぶしかないな。イナリ君の」

 

「わ、分かった。言うからあの人だけは呼ばないでくれ!!」

 

「ほら吐け」

 

 彼の話をまとめるとザブザが頼りないからガト―は他の傭兵を雇いみんなが弱った所で皆殺しにするつもりらしい。しかも本人はそれを見物するために来る。

 

「良い情報をありがとう。では眠っときな!!」

 

「へ?」

 

 俺はもう一度そいつの顔を蹴り飛ばした。

 

 敵に情けをかけるなが合言葉だよ。

 

 もうそろそろ、イナリ君たちの準備が終わっている頃だろう。イナリ君は戦うことを決めて村の人みんなを説得に周り見事に成功させた。

 

 俺は影分身であちらの方に情報を伝えるとイナリ君たちと共に橋に急いだ。

 

 

 

 本体の方から情報が届いた。こんなやばい状況でなんていうことを伝えてくるんだ。こちらはナルトがバーサーカーモードに突入するしサスケはどうなったのか分からないしと凄く忙しいと言うのに。さらに目の前ではザブザが大量の犬に噛みつかれて動けなくなっている。どう考えても物語とかではラストだ。

 

「今度はコピーじゃない、俺自身の術を披露してやる。雷切!!」

 

 カカシ先生が印を組むと手からチャクラが放電し始めた。

 

「お前は危険すぎる。お前が殺そうとしているタズナさんはこの国の勇気だ。タズナさんがかけようとしている橋はこの国の希望だ。お前の野望は多くの人を犠牲にする。そういうのは忍のやることじゃないんだよ」

 

「知るか。俺は俺の理想のために戦ってきた。そしてそれはこれからも変わらん!!」

 

「もう一度言う。諦めろ。お前の未来は死だ」

 

 止め宣言しちゃった!! ここからどうする? 考えている時間が無いぞ。冷静になれ。あいつらが死んだらどうなる? 幽霊になって取り憑かれるかもしれない。あいつらに対してさんざんいらないことをした俺だ。あいつらは襲いかかってくる可能性がある。忍者と勝負した後に幽霊と勝負なんて御免こうむる。

 

 それにこのまま戦って敵がたくさん来た場合、下手したら俺は無事でも他のみんなが殺される可能性もある。とにかく戦闘を止めることが肝心だ。

 

 そう考えた俺の行動は速かった。

 

「カカシ先生、ストップ!! 面倒くさいことになった!!」

 

 叫んだが遅かったのかカカシ先生が走り出した。

 

 ちくしょう、こんな時に本気出したくなかったのに。

 

 俺はチャクラを思い切り練り上げ瞬身の術を発動させ、カカシ先生の手を掴む。

なんとか間に合ったようでカカシ先生とザブザの間に割り込んできた仮面のやつ(服が一緒なので同一人物だろう)にもギリギリ当たらなかった。

 

「一体どういうつもりだ、ウツロ!!」

 

 仲間から攻撃を止まられると言う本来ならあり得ない状況にカカシ先生が叫ぶ。そして何が起こったのか分からないのか呆然とする二人。

 

「カカシ先生、面倒なことになりました。そしてザブザと仮面も聞け!!」

 

 俺は相手に考える暇を与えないように影分身から送られてきた情報をすばやく伝えた。伝えている間にナルトの方を見るがサスケがいない。そのことを不自然に思ったサクラがナルトに聞くがナルトは答えずに下を向いた。

 

 サクラはサスケに何かがあったのだと。本当は何が起こったのか理解しているのか不安そうな顔をしながら走って行った。

 

 サスケの幽霊がどこにもいないから死んではいないはずだ。

 

 そんな中、俺が伝え終わるのと同じぐらいにガト―が現れた。

 

「どうやら、そこのクソガキが言ったことは本当のようだな。カカシ戦いはここまでだ。俺にタズナを狙う理由が無くなった以上お前らと戦う理由が無くなった」

 

「ああ」

 

「ふざけんなよ!! なんでだってばよ、サスケが死んだのに、死んだのに!!」

 

「止めろナルト!! こいつらと戦う理由は無い」

 

「それでも、それでも!!」

 

 ナルトは納得できないのか仮面を睨みながら叫ぶ。相手の仮面は申し訳なさそうな顔をしながら黙っている。

 

「ふふふ、全員揃っているじゃないか。再不斬、なんだその様は?」

 

 そんな中、先頭にいたおっさんが話しだした。おそらくあれがガト―なのだろう。ただの小さいおっさんではないか。

 

「ガト―、貴様裏切るつもりか?」

 

「裏切る? 違うよこれはただ作戦変更があっただけさ。ちなみにお前には死んでもらうよ」

 

 今の会話で俺の話を完璧に信じ込んだらしくザブザはクナイを持ちガト―たちを睨みつける。

 

「カカシ、これは俺の問題だ。だからお前は黙って見とけ。それから白、お前もそこにいろ!!」

 

「再不斬さん!?」

 

 すると傭兵たちの中、もっと詳しく言えばガト―の元へ走り出した。

 

 傭兵たちを次々とクナイで殺していく。しかし途中、何度か切られたり刺されたりしている。だが、止まることなく進んだザブザはついにガト―の所までたどり着いた。

 

「霧隠の鬼人をなめるんじゃねぇ!!」

 

 そしてザブザはガト―の首を落とした。だがそこでチャクラが切れたのか、それとも戦闘による傷なのかザブザは地面に倒れこむ。

 

「う、うわあああああああ。殺せ!!」

 

「再不斬さん!!」

 

 恐慌状態になった傭兵たちがザブザに止めを刺そうとした瞬間、俺たちの後ろから何かが飛んできてザブザを殺そうとした傭兵たちを吹っ飛ばした。

 

「ちーっす、お届け物で―す。子供を殺そうとした悪い侍なんですが、受け取り人のガト―さんは……まだ生きてますかね?」

 

 そこには本体の俺がイナリ君と共に波の国の人々の前に堂々と立ち不敵に笑っていた。 

 

 


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