ツイテル話   作:笹鉄砲

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第三十五話

『では紹介していこう、今回、お前を追い詰める鬼の皆さんだ。この人たちは‘あの世木の葉連合’でもあるぞ』

 

 昨日の夜に逃走を失敗した俺は今日、再び捕縛されながら柱間の演説を聞いていた。鬼の皆さんはなんか恐ろしい人ばかりです。あれかな、木の葉はヤクザの集まりかな。しかも意味の分からん連合も作ってる。

 

『いちいちみんなを紹介するのはめんどくさいので……』

『え?』

『ひとまとめに俺と一緒に木の葉の里を作った忍びの人たちとかだ。ちなみに日向の初代や奈良家、秋道家もいるぞ』

 

 鬼のみなさんがちゃんと紹介しろよみたいな顔をしているぞ。

 

『今回のルールは簡単、お前が12時にこの家から逃げ出す。そしてその10分後に俺たちが追いかける。鬼に気絶させられたらお前の負けだ』

 

 ん?

 

『ここまでで、質問は?』

「一つ目、あの世木の葉連合って何?」

『うむ、それはな俺がお前が任務に行っている間に暇だったのでそこらへんで浮いていた幽霊をスカウトして作ったものだ。生前は殺し合った者も多くいたがここではそんなこと忘れて最強の忍を作ろうとみんなが協力してくれているぞ。最終的には他の里も入って忍び大連合になる予定ぞ!』

 

 馬鹿なの?

 

 いやいや、それにしてもそんなの無理でしょ。生前殺し合いしてたのに仲良くなれないだろうし。確認のために千手一族と仲の悪いらしいうちはの人に質問する。

 

「あの、尋ねにくいことなのですが生前の柵ってそんな簡単に忘れないですよね、イズナさん?」

 

 この人はうちはイズナさん。詳しいことはよく知らない。

 

『うーん、まあ確かに俺もそこの扉間のくそ野郎に殺されたけど、そこまで深くは考えてないよ』

 

 絶対に嘘だ。今ぽろっと憎しみの声出した。

 

『ウツロはまだ生きているから分からないかもしれないけど、死んだら意外と何もかもどうでもよくなるんだよね生きていた時のことが。扉は死ね』

 

 ……笑顔でめちゃくちゃ言うな。ほら扉間も眉がぴくって動いている。

 

『けど、大切な人のことはどうしても忘れられないかな。I WANT TO DESTROY THE DOOR』

『おい、いますぐ貴様をあの世に送ってやる。着いてこい』

『行くのは貴様だ!』

 

 部屋の中で止めてくれぇ。こんなハイレベルな殺し合いみたくないよ。しかも、幽霊って成仏以外では消えないらしいから満足するまで止めてくれないんだよな。

 

『他に質問は?』

「じゃあ、気絶したら負けって何? 普通タッチしたら負けだよね」

『タッチで終わったらつまらんだろう?』

「知ってた」

 

 お前がそういうくそ野郎だって。

 

『さてもう質問は無さそうだしさっそく始めるとするか。ほれさっさと影分身せい!』

 

 命令された俺は渋々影分身を複数した。

 

「先に言っとくけど変化だけはしてくれよ。俺が俺を追いかけるなんて恥ずかしいからな」

『あい、分かった』

 

 本当かよ。俺は疑う気持ちがありながらももうどうでもいいと思い無視することにした。その結果、木の葉に新たな行事が加わることになるなんて想像していなかった。

 

 

 ここは温泉近くの川。ここでナルトは伝説の三忍である自来也に修業をつけてもらっていた。本来ならエビスがやる予定であったがいろいろあり交代したのである。

 

「ほら、エロ仙人飯を買ってきたってばよ」

「おう、ご苦労じゃったな」

 

 ナルトと自来也が昼食を摂っているとナルトが話し始めた。

 

「そういえばさ、さっき店に行ったとき大騒ぎだったってばよ」

「ん? それはなぜだ?」

「それがよくわからないんだけど、何か妖怪になったウツロが幽霊に追いかけまわされていたらしいってばよ」

「ちょっと意味が分からんのだが」

 

 ナルトもちゃんと分かっていないのか疑問を持ちながら話す。

 

「まず、ウツロが逆立ちで高速移動をしていたってばよ。注意しようと全速で走っていた中忍を軽く追い抜く速さで。あまりの速さにあいつが妖怪になったんじゃないかって」

「ほう」

「それに大きな声で‘それはあかん、ガチで死ぬ’って泣きながら走っていたって話を聞いたってばよ」

「今の世の中、妖怪でさえも殺されるんじゃのう」

 

 途中から理解の範囲を超えた自来也は適当に流すことを決めた。

 

「それで、幽霊の方なんだけど何でも死んだはずの人だったらしいってばよ。誰も使えなかった一族秘伝の術を使ったって騒いでいるのを俺も見たってばよ」

「そいつは凄いのぉ」

「ちゃんと聞いてる?」

「もちろん。それよりも早く修業を再開するぞ」

「俺、まだ食べてるってばよ!」

「なら、早く食わんか」

 

 こうして平和な修業を続けるのであった。

 

 

 ちょ、話が違う。

 

 どうもウツロです。泣きそうです。間違えた泣いています。

 

「おい、街中で術を使うなボケぇ!」

「これは術で無い。体術だ。八卦空掌!」

「ふぃわ!」

 

 日向のキチガイが飛びながら空気砲らしいきものを飛ばしてきた。俺はギリギリ、回避した。

 

 絶対に嘘だ、あんな攻撃が体術であっていいはずがない。

 

「よそ見するなよ、ウツロ!」

 

 横を見ると影が俺を追いかけてきた。

 

「ブースト!」

 

 俺は手から風遁で風を出し両手で空を飛び始める。ルールは破っていない。

 

「甘いわ! 超倍加の術」

「へぇあぁ」

 

 いきなり目の前に現れた巨人にハエたたきで叩き落された。

 

 地面に顔を付けながら俺は泣いた。木の葉は怪獣映画でも撮影してるのかよ。もしかしたらナルトとかが成長したら怪獣大決戦みたいなのしちゃうの?

 

「年貢の納め時だな、ウツロ」

 

 寝ていると柱間(謎の人物に変化している)が来た。

 

「これで、お前は俺の修行をするんだよ!」

 

 もしかしたら気絶している可能性のある俺に対して容赦なくかかと落とししてくる柱間。最後に思った。こんなことされたら修業できなくなるやん。

 

 そして潰された俺はボフンと情けない音を立てながら消えた。

 

「これは影分身か⁉ おのれ生意気な!」

 

 柱間は地団太を踏んだ。

 

 

 どうやら、俺がやられたらしい。しかし、始まった瞬間、つまりあいつらが待っているときに影分身しといてよかった。もしあれが本物だったら死んでたな。

 

 だが、そんなことはどうでもいい。このまま誰にも見つからずにこの森の中で隠れておこう。もちろん逆立ちでな!

 

 そうしてじっと耐え忍でいるとつぎつぎと俺がやられていく。そのほとんどがえげつない攻撃を食らってやられた。

 

 あいつら、弟子を何だと思っている。人は死んでも生き返らないんだぞ!

 

 あいつらの所業に怯えていると俺が逆立ち状態で作った起爆札が爆発した。

 

「嘘だ、ここがばれるには早すぎるだろ⁉」

「何だ、ウツロ知らなかったのか……」

「何を?」

「火影からは逃げられないと」

「うちはからは逃げられないと」

 

 ……待って、俺は誰と話している。おそるおそる振り返ると先ほど殺し合いをしていた扉間とイズナさんがいた。

 

「待って、どうしてここが分かったのか教えてくれ?」

 

 俺の質問に対してにやりと笑ったイズナさんが答えた。

 

「扉間と殺し合っていたらたまたまこの森に着いただけだ」

 

 自分の不運さが憎い。そして他人の体で何やってんだよ。

 

「まあ、一応、鬼ごっこには参加しているから気絶させてもらうよウツロ」

「諦めろ、それがお前の運命だ」

 

 扉間お前は悪魔だよ。こんちくしょう。

 

 俺はさらに逃げるべく走り出した。手のひらで。

 

 

 なかなか修業が順調に進まないナルトは少し落ち込んでいた。

 

「どうにもお前は気合が足りんなぁ」

「気合って、俺は全力だってばよ」

「全力とかじゃなくて、もっと死ぬ気でやれと言っとるんじゃ」

「死ぬ気って言われても」

 

 そう言って下を見ていると遠くから声が聞こえてきた。

 

「お願い、水遁は止めて!」

 

 ナルトが声のほうを見ると、先ほど話題になったウツロが川の上をものすごいスピードで走っていた。何故か逆立ちで。

 

「は?」

 

 師弟の声が重なった目の前ではウツロが水遁で吹っ飛ばれて水の上に浮いていた。しかし、次の瞬間には起き上がるとやはり逆立ちで逃げ始めた。

 

 ‘相変わらずウツロは頭がおかしいってばよ’とあまりにも酷い感想を浮かべているナルトの横では自来也が真面目な顔をしてウツロを見ていた。

 

 ‘あやつはナルトと同じ班の下忍だったはず。それにしてはかなりやるようじゃのう’と称賛していた。そして噂が真実であると確信した。あいつは頭がおかしいと。

 

 目の前では2対1で格闘が行われている。

 

「お前ら、手を使って恥ずかしくないのか! 男なら足だけで戦え!」

 

 お前の格好はどうなの?と思う外野。

 

「格闘とは手を使うものだろう」

 

 うん、そうだね、と思う外野。

 

「情けない、一流の忍者なら足だけで勝てるだろう!」

 

 エロ仙人ならできる?と見るナルト。それは無理と首を振る自来也。ちなみに今でも熱い戦いは行われている。ウツロは逆立ち状態なのにバンバン水遁を出している。

 

「お前だって印を結んでいるだろうが!」

「逆立ち状態で印を結んでいるんだ! こんなもん手を使っているうちに入るか!」

「入るわ!」

 

 その後も戦闘を繰り返したが、最後には水遁を二人に使われ流されたウツロが水に浮かんでいた。その光景はあまりにも涙を誘ったと後のナルトは語った。

 

 ウツロはそのまま二人に回収された。水遁を食らう直前に俺は生きて帰るんだ!と叫び頑張って水遁で対抗していたウツロはかっこよかった。

 

 回収されるウツロを見ながら自来也は言った。

 

「あれが死ぬ気でやるということじゃ」

「ああ、わかったてばよ」

 

 もし、ウツロがいたら言っただろう。‘これは死ぬ気じゃなく、生きる気でやったんだと’しかしこの言葉は誰にも届かなかった。

 

 そして、この日は死者が帰って来て、子孫を守るために戦ってくれる日として木の葉では1週間の祝日として大事にされるのだった。

 


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