N' ~Not human Not neuroi~   作:長靴伯爵

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色々と行き詰った結果がこれだよ・・・!!!

と、言う訳で書いてしまったこの作品

色々、突っ込み所があるかもしれませんが、よろしくお願いします。

更新速度は察してください(汗)


プロローグ

 

 

 

 俺は死にたくなかっただけだ。

 

 

 

 よく分からない化け物との戦争が始まって、両親は戦闘に巻き込まれて死んだ。

 

 

 

 俺は死にたくなかっただけだ。

 

 

 

 頼れる人など誰もいない。人から奪ってでも食べ物を手に入れ、道端で眠るのが日常になった。

 

 

 

 俺は死にたくなかっただけだ。

 

 

 

 警察に捕まった。パンを盗んで逃げていた時、ちょうど鉢合わせてしまった。取り押さえられ、牢獄に入れられた。

 

 

 

 俺は死にたくなかっただけだ。だから食べ物を奪った。生きようとしたのだ。

 

 

 

 俺は死にたくなかっただけ・・・なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 どうして俺はここに居るのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肩に食い込む大きなリュックサックの紐が鈍い痛みを生み出す。だが、それを訴えることも、リュックサックを放り出して痛みから解放されることもできない。ただ黙って、自分と同じようにリュックサックを背負う奴の後ろを歩くだけ。

 

 どんよりと曇った空が長く続く塹壕を見下ろす。その中を歩く長い隊列の中に俺は居た。

 

 3時間ぐらい歩き続けたのだろうか。体感では半日以上歩いた気がする。それはそうだ。ろくに食べていない。最後の飯は昨日食べたカビが生えかけたパン半分と水がコップ1杯だけ。体力の限界だ。

 休憩の命令が出た時には、ドサッと座り込んでいた。その衝撃で、くすんだ茶色の髪が頬をくすぐる。昔はそれなりに手入れされていたが、今ではボサボサで伸びっぱなし多分匂いも酷いことになっている。もう、ずいぶん風呂にも入っていない。

 だが、そんなこと周りの奴らは誰も気にしていなかった。目を向ければ、人相の悪い奴、傷跡が体に残っている奴と碌でもないのが沢山いる。それもそのはず、ここにいるのは、皆何かしらの犯罪を犯し捕まった奴らだからだ。

 脳に栄養がいっていない為何もするわけでもなくボーとしていると、どこかで騒ぎが聞こえた。耳を澄ませば、内容が聞こえてくる。

 

「おい!やめろ!」

「うるせぇ!俺は逃げるんだよ!」

「殺されるぞ!」

「どうせ死ぬんだよ!なら、ここで・・・」

 

 会話が聞こえたのはここまでだった。パンッ・・・と、突然の銃声が会話を遮り、逃げると言っていた何某の声が不自然に途切れた。

 程なくして前進の命令が下る。どこかからか、重く低い爆発音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、貴様ら屑に与えられた国からの救済である!」

 

 後ろからの怒鳴り声が聞こえる。野戦服に鉄のヘルメット、そして銃を持った小太りの兵士が盛んに歩き回り、怒鳴り散らしていた。

 一方の俺は野戦服など着ているわけも無く、捕まった時に着ていたボロボロのズボンとシャツ。銃なんて持っていない。

 

「貴様らは、ただ駆け抜け怪異に近づき、貴様らが背負うリュックの紐を引くだけでよいのだ!!そうすれば、貴様らの罪は許される!!」

 

 この軍人は俺たちがリュックサックの中身に気付いていないと本気で思っているのだろうか?リュックサックの口が開かれないように縫い付けられていたとしても、少し破けば分かる。

 

 

 爆弾だ。

 

 

 今、俺は自分の体重と同じ量の爆弾を背負っている。

 

 

「進むのだ!!我らが祖国ヒスパニアの為に!!」

 

 

 塹壕から這い上がる為の梯子に手をかける奴らは何も言わない。ただ、悲壮感があるだけだ。逃げようにも、さっきの奴のように撃たれる。爆弾が爆発しないように頭を狙うから即死だろう。

 

「神よ。救いを・・・」

 

 ふと隣を見れば強面のおっさんがブツブツと呟いていた。

 

 

 神様なんて今の今まで信じていなかったくせに。

 

 

 けど、おっさんだからこそ縋り付ける何かを持っているのかもしれない。15の俺なんて何も考えることが出来ずただただ時間を待つことしかできなかった。何も考えたくなかったかもしれないが・・・。

 

 

 

 そして、時は来た。

 

 

「突撃!突撃!!突撃!!!」

 

 軽快なラッパの音と共に、後ろの軍人が威勢のよい声を上げた。加えて銃声も。

俺たちは駆り立てられるように梯子を登った。

 リュックの重さに辟易しつつ何とか梯子を登りきるも、そこで足が縺れて地面に倒れ込んでしまった。焦げた土が口に入ってしまったが、他の奴らに比べればマシだった。

 俺が倒れこんだ直後、紅い光が降りかかってきたのだ。何人もが吹き飛び、背中の爆弾が誘爆していき更に大人数が爆発していく。

 目の前にドサッと誰かの腕が落ちてきた。テラテラと光る赤い血が妙に印象的だった。

 

「何をしている!!進めぇ!!」

 

 後ろからの怒声と共にすぐ傍の地面が爆ぜた。背後を見ると、塹壕から機関銃を構える何人もの軍人が。銃口は怪異にではなく俺たちに向いている。

 

 逃げないように見張っているのか・・・

 

 怒りは無かった。ただ、死にたくない。

 そんな感情だけを胸に抱いて遠い死よりもすぐ近くの死から逃げるように機械的に前進する。

 

 機関銃の弾に追い立てられ、周りの奴らも前進し始めた。

 

 よろよろと立ち上がり、歩を進める。走る体力なんて残っていない。だれかの死体を踏みつけつつ、近くの爆発で転びながら、なおも進む。

 

 そして見た。

 

 亀みたいな、しかし直覚的な胴体から伸びる6本の足。表面は六角形が合わさった模様になっており、所々が紅く光っていた。

 

「これが・・・怪異・・・」

 

 そういえば初めて見たな・・・。

 

 怪異を目の前にしてそんなことを思った。

 尚も前進すると、途端に目と喉に激しい痛みが走り、視界が涙で曇った。

 

 それでも前進する。

 

 一体何人がここまで辿り着いただろうか?自分が一番乗りだとしても全然うれしくないが。

 

 怪異も俺の方に進んでくる。

 

 止めを刺しに着たのか。はたまた、ただ人間に興味があるのか。

 リュックに繋がる紐を掴む。片方の肩紐が破け、リュックは体から外れてはいたが、気にしなかった。

 視界の殆どが怪異で埋め尽くされている。

 

 紐を引くことに躊躇いは無かった。

 ただ死にたくないという、行動に矛盾した思いだけが胸に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ましたらどんよりとした空から雨が降っていた。体を起こそうと右腕を動かそうとして、そこで気付いた。

 

 

 

右腕が無い。

 

 

 

 更に、右脚もなく、左脚も変な方向を向いていた。どこか腹も軽くなっている気がした。恐怖が一気に駆け抜ける。痛みが無いことがより一層、恐怖を増幅させた。

 

「あああああああ!!」

 

 叫んだ。ただただ絶叫した。

 それがどうなる訳も無く、絶叫はすすり泣きに変わる。

 

 死にたくなかっただけ、死にたくなかっただけ。

 生きたかった。

 

 悲しみが己を支配していく。

 

 

 

 そんな時だった。

 

 音が聞こえた。いや『声』が聞こえた。

 その『声』の元へ泣きながら這った。少しでも悲しみを紛らわせたかったから。

 

 

 

 

 だが、あの時動いていなければ、今の俺はいないだろう。

 

 

 

 唯一動く左腕を必死に動かし、自分の血を垂らしながら、死体で埋まった地を這って這って這い進む。

 

 そうして見つけたのは1体の怪異だった。

 

 胴体が半分に割れ、不恰好に残った足を我武者羅に動かしている姿は、まるで自分のようだった。

 俺は呆然と見上げていたが、割れた怪異の装甲から紅い光が漏れ出ていることに気付いた。

 半ば導かれるように光の元へと進む。死体を押しのけ、装甲の間に体を押し込ませて見つけた。宝石のような、しかし宝石とは決定的に違う紅い輝きを放つ石。漠然とこれが怪異の心臓部である事が分かった。そしてもう1つ分かったことがあった。

 

『声』の主はこいつだと。

 

 紅い光の瞬きと共に聞こえる、ビキビキビキという音。

 

 直感した。

 こいつも死にたくないのだと。

 『死にたくない』『生きたい』と叫んでいるんだと。

 

「生きたい・・・。生きたい・・・!」

 

 俺は紅い石に手を伸ばす。触れると、明滅に合わせて石が発する熱が変化しているのが分かった。

 

 その熱を感じている内に俺の胸に悲しみとは別の感情が湧き上がってきた。まるで生き別れた肉親と再会したような・・・喜び。

 

vその感情を自覚した瞬間、紅い石の輝きが一際強くなった。

 

v視界が真っ赤に染まる。思わず目を瞑ってしまうと、体の感覚が無くなってしまうぐらい暑く、熱くなるのを感じた。

 

 そして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はこうなりましたっと・・・」

 

 ガリアにあるとある丘。自分の思い出を肴に俺、ネロ・フィリットは小さな樽に入ったワインを楽しんでいた。

 ヒスパニアからガリアまで歩いてきたかいがあったというものだ。放置されて熟成されたワインは美味い。ここまで生き残ったからこそ、こんな楽しみを満喫できる。

無論、俺一人の力ではないが・・・。

 

「さて、そろそろ・・・ん?」

 

 ワインを飲み干し移動しようとした途端、猛烈な食欲が湧き上がった。ジュルと湧き出る涎を飲み込み、匂いを嗅ぎ、振り返る。すると遠くに黒い影が・・・。怪異、いやネウロイだ。

 

「まったく。そんなに腹が減っているのなら教えろよ」

 

 そう愚痴ると、まるでこの言葉に抗議するかのように、俺の胸から音が鳴った。『ギギギィィィ』という金属音のような音は、当初は辟易したが今では慣れたものである。

 

「分かった、分かった。次はお前が腹を満たす番だな。・・・いくぞ」

 

相棒(・・)』を宥めつつ、立ち上がる。手首足首を解し、軽く柔軟すれば準備完了だ。

 

 目を閉じて自分の心臓に集中する。

 

 ・・・。

 ・・・。

 ・・・ドクンッ!!!

 

 体を震わす程の鼓動が響き渡り、俺は目を見開いた。

 

 胸から紅い光が迸る。

 パキパキという音と共にまず右手が変わり始めた。皮膚が侵食されるように無機質の黒い物質へ。右手から完全に変わると右腕、そして胴体が。時間にして数秒。

 

 そこに現れたのは、1体の人型ネウロイ(・・・・)

 

 体は甲冑めいた黒い装甲。左胸には禍々しく光る紅い石。

 

 これが今の俺が生きる姿。あの血に塗れ、様々な物を失い、絶望にもまれた、地獄のような戦場で出会い、手に入れた。ただ生きることだけを望んだ俺が、俺と同じ思いを持つ「相棒」、敵であるはずの怪異を見つけた。体をネウロイと同化させ、足りなくなった部分をお互いに補っていく。

 

 もう俺は、俺たちは人間でもネウロイでもない。中途半端で曖昧な紛い物だ。

 それでも、俺達は生き続ける。

 

 

 

 

「さぁ・・・食事の時間だ」

『ギギィギャァァァ!!』

 

 

 

 俺達は生き続ける。生きて、生きて、そして・・・。

 





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