織斑姉弟+1   作:kuni

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久しぶりの投稿です


第二戦 エロ本を読んでいた弟が金髪少女に絡まれた

 

 

「ちょ、ちょっとよろしくて」

 

本を読んでいた善助に上擦った声がかけられた。

 

「…………………」

 

善助が振り向いた先には金髪の少女が立っている。

 

ロールの掛かった髪の何というか正にお嬢様という感じだ。

 

ベクトル的に大人しいと言うより高飛車というタイプのお嬢様である。

 

しかし、普段はきつめに整えられて居るであろうその美貌は紅く染まり、鋭い目は視線を泳がせている。

 

少女を見た途端、善助は本を閉じて立ち上がった。

 

「な、何ですの」

 

「はい、どうぞ」

 

身構える少女に善助は持っていた本を差し出した。

 

「これが見たかったんだろう」

 

善助が少女に差し出したのはエロ本(海外版無修正)だった。

 

「しかし、本当に勇気があるよなお前。こんなもん堂々と呼んでいる男子に声をかけようとか、普通は考えないのに」

 

「え、あの、その」

 

「その事に敬意を表してこれは君に進呈しよう。ここに進学する子の3割は同性愛者だって聞くけど、俺はそこら辺は差別しないから安心してくれ」

 

「ち、違います。私は同性愛者じゃ、」

 

「大丈夫、大丈夫カミングアウトしちゃえよ。この学園にはきっとお前の姉か妹がいるはずだ」

 

そう言って善助は強引にエロ本を握らせる。

 

そのエロ本のせいで、近づけなかった周りの生徒たちがヒソヒソと言葉を交わしている。

 

内容はもちろん金髪少女の同性愛疑惑についてだ。

 

「違いますわ!! 私はこんな破廉恥なものに興味などありません!! 代表候補生として話しに来たのです!!」

 

「一つ聞いていいか?」

 

エロ本を叩き落とされても特に気にした様子もなく、善助は首をかしげた。

 

「な、何でしょうか?」

 

興奮しているのか肩で息をしている金髪少女。

 

「代表候補生って何だ?」

 

その場にいた善助を除いた全員がこけた。

 

「代表候補生っていうのは、ISを所持している国家の代表者、その候補生ってことだ」

 

「いや、知ってたけどな。それより人の話に割り込んで来るなよ」

 

善助としてはただ冗談のつもりで言ってみただけなのだが、そこに割り込んできた一夏に不快そうに顔をしかめる。

 

「悪いな。お前が絡まれていたみたいだったからな――」

 

「余計なお世話だ。話しかけるなって言っただろう」

 

後ろから話しかけてきた一夏に善助は鬱陶しそうにする。

 

「あら、貴方もいらっしゃいましたの、ちょうどいいですわ。素人の貴方達にはこの学園の授業は難解でしょう。どうしてもと言うのなら私が教えて差し上げてもいいですわよ」

 

「そりゃあ、ちょうどいいな。一緒に教えてもらおうぜ」

 

「いらん、鬱陶しい。あっちに行け」

 

しっしと犬でも追い払うようなその態度に金髪の少女の顔が怒りに歪む。

 

「こ、このセシリア・オルコットにそのような態度をとるとは何事ですか! 感涙におむせび泣くのが当然でしょう!!」

 

「はいはい、ありがとうございました。それじゃあ、セシリアちゃんは席について黙っていてね。俺は女体の神秘を探求しなくちゃいけないから」

 

そう言うとエロ本を傾け始める。

 

写真の陰になっている部分をどうにかして見えないかどうか試行錯誤しているようだ。

 

さらにセシリアが何か言おうとしたところで、始業のチャイムが鳴り響いた。

 

「覚えてなさい!! 後でまた来ますからね!!」

 

肩を怒らせながら去って行く少女。

 

「何だったんだ、一体?」

 

「どうでもいいから、さっさとあっちへ行け」

 

首をかしげる一夏に、それだけ言うと善助は読書に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

「授業を始める前に、再来週に行われるクラス代表戦の代表者を決めるぞ」

 

3時間目の授業の始めに千冬がそう言った。

 

クラス代表戦の代表者、文字通りクラスの代表者となるわけだが、一般的な学校の委員長みたいに雑用やらの面倒ごとを押しつけられるらしい。

 

「はい、織斑君がいいと思います」

 

「私も賛成です!!」

 

「私は人吉君がいいと思います!!」

 

「私も人吉君に一票です!!」

 

物珍しいからか、一番押しつけやすいと思ったからか、次々女生徒が一夏と善助を指名する。

 

しかし、それに納得できないものが一人。

 

「納得いきませんわ!!」

 

セシリアが肩を怒らせ立ち上がる。

 

代表候補生の彼女からしてみれば、今までISにろくに触れたこともない素人の二人が自分を差し置いてクラスの代表になることなど許容できないのだろう。

 

ついでに、真っ先に上がると思っていた自分の名前が全く出なかったことも関係したりしている。

 

「男がクラス代表など良い恥さらしですわ!! クラスの代表は実力がある者がなるべきですわ!!」

 

そこまで言って善助をビシリと指さす。

 

「何より、授業中に堂々とそんな破廉恥な本を読むような輩を代表に選ぶわけにはいきませんわ!!」   

 

「うるせえな」

 

それまで真剣な表情でエロ本を読んでいた善助が顔を上げる。

 

「日本の男子高校生は学校でエロ本を読まなくちゃいけないって言う、由緒正しい伝統があるんだ。代表候補生はそんなことも知らないのか?」

 

「な、なんと言う破廉恥な!? これだからこんな極東に来るのは嫌だったんですわ!!」

 

「いや、嘘だからな。そんな伝統はないからな」

 

平然とでたらめを吹き込む善助に、それを信じるセシリア、そして突っ込む一夏。

 

彼としても世界中の女子が集まるこの学園で日本男児の名誉を貶めるわけにはいかない。

 

「な、あ、あなた私を騙しましたの!?」

 

「信じるとは思わなかったがな。馬鹿じゃないのか? よくそんなスカスカの頭で代表候補生なんぞになれたな」

 

「むきいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「オ、オルコットさん、落ち着け」

 

嘲る表情を隠しもしない善助に、セシリアが掴み掛かろうとするが、一夏が後ろから羽交い締めにする。

 

「決闘ですわ!!」

 

「断る、俺は暴力は嫌いなんだ」

 

それだけ言うと善助はそのままエロ本の読書に戻った。

 

「あら、逃げますの?」

 

「勝手に言ってろよ。頭がスカスカなお前と違って、俺は読書を楽しむだけの知能があるんだ。相手が欲しいならそこらの水たまりでものぞき込んで来い。金髪の頭軽そうなアホが相手してくれるぞ」

 

セシリアが何か言おうとする前に善助が続ける。

 

「大体、決闘って言うのはISを使ってのだろう」

 

「当然ですわ。」

 

「じゃあ、無理だな。俺はISを使えないし」

 

『え?』

 

何気ないように言われた言葉にその場の全員が固まる。

 

「あ、あなた今なんと言いましたの?」

 

「頭だけではなくて耳も悪いのか? 俺はISを使えないと言ったんだ。そもそも、俺がこの学園に来たのはこいつがISを動かしたからだ」

 

女性しか動かせない最強兵器、IS、しかし、ただ一人世界でそれを動かせる男性が現れた。

 

そしてその男性には、全く同一の遺伝子を持つ身内がいたがこちらはISを動かせなかった。

 

普通ならここで話は終わりだと思うだろうか、ある誰かが考えた。

 

全く同じ遺伝子を持っているのに動かせる者と動かせない者がいるなら、その差異を見つけることでISを動かすのに必要な因子が解明できるのではないかと。

 

「その後は、もう大変だったぜ。世界中の表裏合法非合法問わずいろいろ勧誘があってな。最終的にこいつがいないと差異の確認ができないから一緒に入学する羽目になったんだ」

 

善助の言葉に周りの少女たちは同情の視線を向けるが、次の言葉でその表情を一変させる。

 

「しかし、悪いことばっかりじゃなかったな。ここに通うだけで金が貰える上に各種特典がつく。卒業後にどこかの国に所属すれば一生遊んで暮らせる生活が保障されるだろうし、何より女にもてる。俺のDNAは貴重だから、相手は選り取り見取りだ。何なら、お前も俺の相手をしてみるか、そうすれば代表候補生から代表生になれるかもしれんぞ」

 

パシン

 

「……………最低ですわ」

 

善助の頬を張った手を振り抜いたまま、セシリアはそう吐き捨てた。

 

この学園に集まるのは世界中から苛烈な試験をくぐり抜けてきた選りすぐりの少女達なのだ。

 

代表候補生である彼女自身も血の滲むような努力をしてその地位を手に入れた。

 

それなのに目の前の男は、ただ世界で唯一の男性操縦者の身内と言うだけでこの学園に所属している。

 

そしてそれを笠に着て傍若無人に振る舞っているのだから、許せるわけがない。

 

周りの少女達も大小はあれ、善助に対して嫌悪の表情を浮かべていた。

 

もはや言葉を交わすのも耐えられないとばかりに、善助に対して背を向けた。

 

「あなたも、どうせこの男と同じでしょう」

 

去り際に一夏を一瞥してそう言ったセシリアだったが、その前に箒が立ち塞がった。

 

「ちょっと待て」

 

「何ですか」

 

「人吉のことはともかく、一夏はそんな男じゃない。訂正しろ」

 

「は、何を言っていますの。男なんて皆同じですわ。所詮女性の足下にも及ばない」

 

「ふん、少なくとも一夏はお前より強いぞ」

 

箒の言葉にセシリアは多少考えたような表情をした後にっこりと笑顔を作った。

 

「なら、こうしましょう。この男と私が決闘して、もし万が一この男が勝ったら謝罪しましょう。その代わり、私が勝ったら貴方には謝罪してもらいますわ。私、日本の土下座と言う物を一度見てみたかったんですの」

 

「構わん」

 

「おい、ちょ「なら週末のアリーナで対戦だ。勝った方が代表候補生で構わんな」

 

「賛成!!」

 

「異議無し!!」

 

口を挟もうとした一夏の言葉に被せるように千冬が割って入り、さっさと話がまとまってしまう。

 

「…………なあ、これってやっぱり対戦しないといけないのか」

 

「知るか」

 

途方に暮れる一夏の言葉に善助は鬱陶しそうに顔を背けた。

 

 

 

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