織斑姉弟+1   作:kuni

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第九戦 幼馴染みの酢豚を久々に食べたくなった

 

 

 

 

クラス対抗戦は各クラスの代表が競い合う行事である。

 

入学直後のクラスから選出した代表者が一同に集い戦うこのイベントは、IS学園の中でも特に大きなイベントの一つである。

 

そして、当然ながらクラス代表の一夏もここに参加している。

 

「さてと、準備は良いな。一夏―――」

 

「一夏さん、頑張ってください!!」

 

「何でそんなにやる気なんだ?」

 

出場する選手以上に気迫を漲らせる箒とセシリアに一夏は困惑する。

 

「ま、まあいいではないか幼馴染みとして応援するのは当然だ」

 

「そ、そうですわ。貴方が代表になった以上、貴方の敗北はクラスの敗北なのですから応援して当然ですわ」

 

そう言うと二人で部屋の端に移動する。

 

「いいか、今はとりあえず。一夏に勝ってもらうことが重要だ」

 

「ええ、そうしなければあの泥棒猫に一夏さんとの同棲権を奪われてしまいますわ」

 

先日、箒が一夏と一緒の部屋に居ることがばれてそこに鈴が襲来した。

 

彼女は一夏との相部屋の権利を譲渡することを要求、箒は当然拒否、そこにセシリアが加わって最終的に千冬の鉄拳制裁により鎮圧された。

 

しかし、そこで鈴は箒を巧みに挑発、セシリアを抱き込み部屋の同居権を賭けての勝負に持ち込んだ。

 

結果、まず今度のクラス代表戦で鈴が一夏に勝ったら、鈴が一夏と同じ部屋になりもし負けたら、1組所属の箒とセシリアで決着を付けることになっている。

 

二人はしっかり握手を交わす。

 

「この試合が終わるまでは共闘だ。裏切るなよ」

 

「無論ですわ。私達は英国人は敵に対しても敬意を忘れることはありません」

 

(あそこは、元々私達の部屋だ。一夏が勝ったら知らぬ存ぜぬで押し通す)

 

(とりあえず一夏さんが勝ったら英国式の話術でIS関係の勝負に持ち込んで、確実に勝利をもぎ取りますわ)

 

言葉と腹の内が違っているが、一応二人とも一夏が勝つことは確信している点は褒めても良いかもしれない。

 

「あ、分かった。お前らあのデザート半年フリーパス券を狙っているんだろう」

 

合点が言ったとばかりに手を叩く一夏、クラス代表戦の優勝賞品は食堂のデザート無料券半年間である。

 

女子としては是非とも欲しいものだろうと一夏は思った。

 

「そ、そうだ。そのフリーパスが欲しくてな」

 

「私も、少々甘いものが食べたくなりまして」

 

誤魔化すための愛想笑いを浮かべた二人だが、次の一言に凍り付く。

 

「そんなに食うと太るぞ」

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

「何で戦う前からボロボロなのよ?」

 

「色々あってな」

 

アリーナに入った時点でどこか憔悴している一夏に鈴は怪訝な顔をする。

 

「……………どうせ、あんたが禄でも無いこと言ったんでしょう」

 

「いや、甘い物を食い過ぎると太ると言っただけなんだが―――――」

 

「はい、有罪」

 

一夏の弁明に処置無しと判決を下す鈴、ちなみにビットに居る姉と副担任からも同じ判決を受けている。

 

「何でだよ!? 甘い物の食い過ぎは肥満だけじゃ無くて糖尿病などの生活習慣病になるリスクもあるんだからな!! 若い内から節制していないと年取ってから大変なんだぞ!!」

 

「…………相変わらず、爺臭いわね」

 

とても男子高校生とは思えない主張に鈴は肩をすくめる。

 

「とりあえず、あんたの主張はあと二十年たってからしなさい。いくら何でも枯れすぎよ」

 

「…………………はは」

 

「な、何よ」

 

「いや、元気になって良かったと思ってな」

 

先日の一件以来どこか落ち込んでいた鈴だが、最近の様子を見る限り無事持ち直したようである。

 

「…………あたしのこと心配してたの」

 

「当たり前だろ。幼馴染みなんだし」

 

「幼馴染みなんだ」

 

一夏の返答に不満な鈴だが、相手は気付かない。

 

「そうだな。景気づけにちょっと賭けでもするか――――」

 

「何よ。賭って―――」

 

「今回の試合、負けた方が勝った方の言うこと一つ聞くって言うのはどうだ?」

 

「な、そんな賭けして私に何させる気よ!?」

 

不安2割、緊張3割、期待5割な感じの鈴。

 

「そうだな、俺が勝ったら久しぶりにお前の酢豚が食いたいから作ってくれ」

 

「……………酢豚なんだ」

 

安堵3割、失望7割の鈴。

 

「じゃ、じゃあ、私が勝ったら買い物に付き合いなさいよ!! む、無論、二人っきりでだからね」

 

「分かった。その条件でやろう」

 

一夏が了承すると同時に試合開始の合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

「お前、いくら何でも武器の選択が豪快すぎるだろう」

 

「余計なお世話よ!!」

 

一夏のぼやきに鈴が叫び返す。

 

彼女の手に持っているのは、2本の青竜刀の柄を連結させてバトンのようにしたものだ。

 

それを高速回転させて居るのだ。

 

その大きさと質量通り当たれば大ダメージを食らうだろう。

 

あくまで当たればの話だが―――――

 

一夏はその攻撃を危なげも無く回避している。

 

そしてその大ぶりな攻撃によって起きる僅かな隙に確実にダメージを積み重ねていった。

 

今はまだ僅かだが、このままの流れなら一夏が勝つだろう。

 

「あんた、TVゲームの時も同じようにちくちくと攻撃してきて――――男のくせにやり方がせこいのよ!!」

 

「それで勝てるんだから問題ないだろう。お前はもう少し、細かいことにだな」

 

話の最中、一夏は身を捻って緊急回避する。

 

「何で当たらないのよ!? この衝撃砲は砲身も弾頭も見えないはずなのに―――」

 

会話で気を逸らした隙に一発大きいのを食らわそうとした鈴だが、それを一夏は簡単に回避した。

 

「ゲームしてる途中自分が負けそうになるとよく蹴ってきただろう。だから身構えてたんだよ。そもそも武装の1種を全く使ってこない時点で不意打ち狙いがバレバレだぞ」

 

「っなら、これでどうよ!?」

 

鈴の奥の手、衝撃砲、それが連射される。

 

空間に圧力を掛けて砲身を作成し衝撃そのものを発射するそれは、砲身と弾頭共に不可視のため回避は困難なのだが――――

 

「何で当たらないのよ!?」

 

「さて、なぜでしょう」

 

先ほどと同じ叫びをあげる鈴に一夏は口だけで戯けてみせる。

 

その身体は見えないはずの衝撃を身体を捻り、横にずらし、果てはバク転するようにして回避していく。

 

「く、この!!」

 

「いただき」

 

一夏の機体、白式の唯一武装雪片弐型が光り輝き鈴の機体を直撃する。

 

そして鈴が反射的に打った衝撃砲を回避するため一夏は一旦距離を取った。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

「相変わらず、凄いですね。織斑君は――――」

 

先日まで素人だった一夏が代表候補生を圧倒しているのだ。

 

真耶の賞賛も無理ないものだろう。

 

「織斑先生も鼻が高いでしょう」

 

「ああ」

 

真耶の言葉にしかし千冬の反応は鈍い。

 

「どうしたんですか?」

 

「…………何でも無い」

 

真耶の言葉にかかわらず、心此処に在らずのまま千冬は画面に表示される二人の戦いを見ていた。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

「その衝撃砲にはいくつかの欠点がある。まず発射のための砲身から生成しなきゃならないからタメが居るし、見えないからお前も発射の方向をセンサーで確認しないといけない。そして、それらの行動に集中力も割かれるから、攻撃が単調になる。後攻撃自体が範囲攻撃だから接近戦だと使いにくいのと、お前の目線だな」

 

「あたしの目線?」

 

「お前は発射の時視線をわざとその方向からずらすだろう。だから視線の先には砲撃が来ないってのがよく分かる」

 

「何でそんなことまで分かるのよ」

 

一夏の言葉は的を射ていた。

 

衝撃砲はその性質上、砲身を生成する1工程が他の射撃系、砲撃系の装備より余分に必要で、肉眼で見えない弾道計算は完全にセンサー便りだ。

 

そしてそれらの負担のため衝撃砲を使用中の鈴は近接戦闘能力は落ちる。

 

それに打ち出された衝撃は範囲攻撃であり、セシリアのBT兵器のように精密射撃は不可で近接戦闘では自分を巻き込む可能性があり使用は出来ない。

 

さらに目線の話は中国に居た時、教官から矯正するように言われたので意識してやって居たことだ。

 

「事前調査は基本だろう。俺がお前の対戦まで遊んでいたと思うのか?」

 

「相変わらず。男のくせに細かいやつね」

 

「お前が大雑把すぎるんだよ。ま、お前のそういうところは嫌いじゃ無いぜ」

 

「あ、あんたは、またそういうことを――――」

 

無自覚に相手の琴線をくすぐる一夏に鈴は照れとも呆れ共取れない表情になる。

 

「それはそうと、続きをやろうぜ。このまま時間切れで判定負けなんてお前の趣味じゃ無いだろ」

 

「………………当然、負ける気は無いわよ」

 

一夏と鈴、それぞれ武器を構える。

 

そして戦いが始まろうとした刹那、轟音がアリーナに響いた。

 

 

 

 

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