天帝の神殺し 改訂版   作:コード・アンノウン

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はい、すみません。 気づけば前回の更新から三か月以上たっていました。 時のなげれって不思議ですね。
 ……ごまかしてません。 ええ、そんなことはしてません。


5話 ローマの死闘 ―激突―

 

 

 

       5話 ローマの死闘 ―激突―

 

 

 

 

 先に動いたのは護堂だった。 権能を発動させ、真っ直ぐ久利宮めがけて爆発的な脚力で駆け出す。

 

 真昼のローマに忽然と現れた夜。 いや、作り出されたというのが適切か。 そんな不気味な空間の中で二人は戦火を交えた。

 

 

 久利宮はいきなり発動制限の厳しい権能を使用し、愚直なまでに突進する護堂の行動に目を細める。 たとえその走りが世界記録をいともたやすく塗り替える速度であっても、化け物どもとしのぎを削り、命をチップに渡り合ってきた久利宮にすれば幼稚園児の歩みに等しい。 それ故に回避することもできたが、あえて受け手にまわった。

 

 カンピオーネの異常な成長力によって洗練された重い正拳突きを、右の手のひらで受け止める。 右手に生じたエネルギーは久利宮の身体を伝って地面へと逃れ、そのあまりの威力に耐えられなかった大地が、当り前のように陥没する。 その深さは五十センチ近い。

 

 それでも二人の前ではこのやり取りすら挨拶がわりだ。

 

 今の二人の間に距離はなく、ともにイン・レンジである。 一瞬の気の緩みが敗北に直結するこの間合いでも、久利宮の、まして護堂も表情に変化はない。

 

 

「飛び込んできたときは愚策かと思ったけど、そうでもないな。 今のは雄牛の権能だね」

 

「生身で受け止めるか……。 本気だったんだけど」

 

「この世の中には君の知らない技術がいくらでもあるよ。 たとえば、衝撃を受け流すとか」

 

 

 大型トラックですら吹き飛ぶどころかバラバラに粉砕される威力をもってして、無傷。 無論、護堂もこれだけで終わるとは微塵も思っていなかったのだろう。 すぐに腰を十分にひねった蹴りを久利宮の首に打ち込もうとするが、研ぎ澄まされた直観が突如警告を発する。

 

 全身に悪寒が走り、護堂はすぐさま身をひるがえして後退する。

 

 

 この間、わずか三秒。

 

 

 再び振出しの位置に戻った護堂が見たのは、先ほどまで自分のいた場所を突き刺す雷光だった。

 

 その稲光は放電音をまき散らし、久利宮の周りで消えることなく明滅を続ける。

 

 すると護堂は最初の突撃とは打って変わって、冷静に勝機を見つけ出そうと久利宮の隙をうかがっている。 

 

 

「≪天空天罰(クラウン・クラウン・クラウン)≫」

 

「?」

 

「僕の使う権能の名前だよ」

 

 

 その言葉と同期するかのように久利宮の周囲で雷が蠢く。

 

 

「雷雹の神より簒奪した、僕の始まりの権能さ。 形態は三つ。 『矢』と『雷』と『炎』。 今回は雷しか使わないけどね」

 

 

 僕ばかりが君の権能を知っているのは不公平だから。 とも付け加えた。

 

 

 久利宮の何の思惑のない一言は護堂には、とるに足らないと。 そう語っているように思えてしまい、護堂の気持ちを逆なでする。 心の奥底で静かに沸き立つ怒りを自覚しながら、激情に流されないように歯止めをかけて言い聞かせる。

 

 心は熱く、頭は冷静に。

 

 それは護堂が人外との争いで学んだことだ。

 

 

 そうして護堂が発動させた権能は≪鳳≫。 その力ば疾ざ

 

 

(力でかなわないのならこっちでどうだッ!)

 

 

 

 

 久利宮は急に超加速した護堂の残像をかろうじて目でとらえながら、ほとんど本能にまかせてかわしてゆく。 久利宮の顔が数瞬まえにあった場所に護堂の拳が通過し、護堂は動き回り、雷をよけながら久利宮に攻撃している。

 

 どちらも紙一重で相手の攻撃をかわし、立ち回る。 二人の足元は護堂の足跡と草の焦げた跡が広がっており,もともと生えていた雑草は見る影もない。

 

 二人は周りのことなど歯牙にもかけずに、ただ相手のことだけを考えている。 久利宮と護堂がギアを徐々に上げてゆくにしたがって、一撃一撃の規模は拡大し、秘められた威力は増大していた。 大地は砕かれ、草木は焼かれた。 もはや『夜』の中に広がるのは無整備の荒れ地にしか見えなかった。

 

 ぎりぎりの攻防が続くなか、周は護堂の評価を上向きに修正する。 どこが平和主義者だ。 典型的な闘争を欲する神殺しではないか。 護堂の奮闘に自らの心が高ぶっていくのを自覚する。 ここ最近遠のいていた甘美な感覚が身体を駆け巡る。

 

 互いの射殺さんばかりの視線。 荒ぶる闘志。 振るう剛腕。 轟く権能。

 

 そのどれもが何物にも代えがたいしろものだった。

 

 一進一退の攻防の中で不気味に笑う周を見て、護堂は訝しげな視線を向ける。

 

「やっぱり久利宮さんもドニと同じですか?」

 

 何がとは聞かない。 護堂も周もわかっているから。

 

「当り前だろう。 闘争を楽しまずして何が人生か。 自分で言うのもなんだけど、筋金入りのバトルマニアだよ。 そもそもエリカと会うまで戦いが僕の恋人だったし」

 

「さいですか……」

 

 神速の護堂と周の雷速が拮抗しているにも関わらず、その会話は余裕だった。 いや正確には繕っていたのだろう。 互いに会心の一撃が入らず、かすり傷を増やすばかりだ。 その傷さえもカンピオーネの回復力ですぐに消えてしまっていた。

 

 数十回を超える接敵で埒が明かないと判断した護堂は周から大きく距離をとる。 そのあからさまな仕切り直しに周は不動をもって答えた。 それは余裕の表れか。

 

 うまくいかないことに護堂は歯を噛みしめる。 神速の護堂に対してどちらも見事に対応して見せた。 ドニは神殺しをもって脅威と言わしめる反射神経で。 周は雷の権能をもって。 ベクトルは異なれど、防いだことに変わりはない。 鳳を解除した副作用で、心臓がはち切れそうなほどの痛みを感じる。 顔に出さないようにじっとこらえ右胸に手を当てる。

 

(ドニといい久利宮さんと言い、やっぱ人外だな)

 

 自分のことは棚に上げる護堂。 古今東西そういうものだ。

 

 余計なことに気が逸れそうになるのを矯正する。 一瞬の判断の間違いこそが、死への一本道なのだから。

 

 そうして冷静に現状を把握する。 護堂の使った権能は雄牛と鳳の二つ。 残っているので今使えるのは猪の権能のみだ。 シャレにならないほどの不利具合だ。 例えるなら飼い猫が野良犬に挑む気持ちと同じであろう。

 心の中で悪態も吐きたくなるというものだ。

 せめて戦士が使えれば。 そう思わずにはいられない。

 

 多彩にして、本来すべてが必殺級となりうる御業ばかりである。 そのため力の制限が強力で使いどころを見極めなければならないのだが、護堂はまだ若輩の魔王。 発動できない権能も多かった。 もっと使いやすい権能がよかったと後悔するも、時すでに遅しというものだ。 そんな護堂の感情が漏れていたのか、見透かしたように周が口を挟む。

 

「ウルスラグナの権能はピーキーで扱いにくいものだからね。 僕も最初の権能が護堂君みたいなのだったと思うと背筋が冷えるよ」

 

 雷を従えたまま、憐れむように護堂を見る周。 しかも見せつけるように幾度もその身から雷光をほとばしらせている。

 

「この野郎……」

 

 そのドヤ顔が憎たらしいやらなんやらで、思考を赤く染めながらも打開策を必死に探す。 しかしどう考えても猪の権能だけでは確実に止められてしまう気がしていた。 少し無理をして雄牛を発動させたとしても、先ほどあしらわれた様子から勝てる可能性は限りなく低いことは、誰が見ても明らかだった。 

 

 逆に何か技をかけようと思案するも、そもそも護堂が習った武道は中学校の時の柔道だけだ。 さすがに付け焼刃が過ぎる。 相手が歴戦の魔王が置いてならば尚更だ。

 

 およそ手詰まりと言っていいこの状況は護堂にとって積みだった。

 

 長い間、と言ってもほんの何秒だが加速された思考のせいで嫌に長く感じてしまう。 力試しという建て前の上になりたつ今回の手合せ。 ゆえに周から説教的に手を出すのはエリカに禁じられていた。 残念で仕方がない。

 けれど、彼の全力も見てみたいというのも本音だ。

 

 だからこそ周は『夜』の強度を上げた。

 

後は膨大な魔力に物を言わせ、遠距離から≪教授≫の術を発動し、護堂にかけた。

 

「これは……?」

 

 護堂は自分の知らない知識が怒涛の勢いで流れてくる感覚に戸惑っている。 大量の知識を頭に直接叩き込まれたことにより、多少の眩暈を感じながらも周に目を向ける。

何をした? と目が物語っていた。

 

「それは教授の術と言って、一時的に知識を授けることのできるものだ。 劣化が早くてあんまり使いどころのない微妙魔術だよ」

 

「ふうん」

 一度納得してから思い出す。 カンピオーネの特性について。

 

「まてよ? たしかカンピオーネって魔術はきかないいんじゃ」

 

「うん。 そうだよ」

 

 当り前のことだ。 カンピオーネに魔術は効かない。 みな例外なく高い魔術耐性を備えているため、攻撃魔術どころかその他支援系統の魔法もことごとく無力化してしまうのだ。 それは≪教授≫の魔術も当てはまる。 そのためカンピオーネに魔術をかけたいのなら経口摂取で魔力を流し込まなければ効き目はない。

 

 ならば何故護堂に魔術が通用したのか。 周が自分の権能の能力を説明する。

 

「面倒だから細かい説明は省くけど。 これは≪月光調≫って権能さ。 本来は夜にこそ真価を発揮する力だけど、こうして限定的な夜も作ることができる。 それでもってこの権能の力は遮断と制限。 この中は外界とは完全に切り離された一つの世界と言ってもいい。 そして相手の権能ないし今みたいに魔術耐性を著しく制限することもできる。 べんりでしょ?」

 

 そこまで言うと周は右手に神具を召喚する。

 

 ヴァジュラ

 

 金剛杵ともいわれるそれは一般的なものと異なり、槍のごとく長い。

 

 原型をとどめておらず、ヴァジュラと言っていいのか迷うそれを手にして、雷雹の聖句を口ずさむ。  

 

『我はいずちを従える神であり、その力は強大にして不滅。 守護者と成りても其は健在なり』

 

 言霊により神格を上げられた権能はその規模を増し、周の体から暴力的なまでに稲妻が

あふれ出し、暴れまわる。 しかしそれはすぐに収まり、周の体や空気中をたどって黄金に輝くヴァジュラに集められてゆく。 今にも暴発しそうな雷を周は涼しい顔で操作し、収束させた。

 

 ヴァジュラは帯電した莫大な電量によりうっすらと輝きを放っている。 間違って触れてしまったが最後。 込められた力に跡形もなく消されてしまうことだろう。

 そんなヴァジュラを構え、護堂を待つ周は間違いなく王としての雰囲気をまとっていた。

 

 その姿、まさしく神殺し。

 

「≪戦士≫の剣を抜け、草薙護堂。 今のお前ならできるはずだ」

 

 握られたヴァジュラからわずかに放電してあたりを瞬間照らす。 それは今からの護堂との全力の戦いを想像して、高ぶっているのだろう。

 

 そんな周に釣られるかのように護堂も口火を切った。

「インドラ。 雷を操る雷雹神があなたが権能を簒奪した神だ!」

 

 言霊を練り、刀を打ち上げる。

 

「この神のルーツは紀元前十四世紀。 アジアやメソポタミアで信仰されていた。 千年の月日を経て母親の体内から出たあと、すぐに捨てられ世界を放浪した。 その旅中でアハリアーやティロッタマーなど多くの神と出会うことになる」

 

 刀身、柄。 剣の姿を思い浮かべ、より強く言霊に力を込める。

 

「魔人ヴリドラと暴風神マルト神群を従え、ヴィスヴァルパ、ヴァル、ナムチといった悪魔をその右手に携えたヴァジュラで滅していったんだ」

 

 強く、より強く。

 

「そんな旅もヴィヌシュと友情を結ぶことで終わりを迎えた。 インドラは旅の道中での功績により善神として多大な信仰を集めることとなったんだ。」

 

 もうすぐ仕上げだ。

 

「そんなインドラだがゾロアスター教では悪神として登場することもあった。 善と悪、二つの側面の性質を持つこととなったインドラはのちに仏門に吸収され、帝釈天と名を変えた。 これによってインドラは善神、魔王、守護者という三つの性質を持つに至った。 それこそがあなたの権能が雷、炎、矢に分かれている理由なんだ!」

 

 護堂の最後の一言と同時に、作られていた剣がひときわ大きく輝き、姿を現す。

 

 周のヴァジュラと同じく黄金色に輝く、言霊の剣だ。

 

 護堂は剣を握り、周を見据える。 周は楽しげな笑みを浮かべ、ヴァジュラを構えた。

 

 そして二人は激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つかれた(ーー;
やっぱり体力を使うものです。 
 なんとか進級を果たしたのでまた投稿を再開したいと思います。 待っていてくれた皆様、本当にありがとう(#^.^#)
 別に待っていなかったという皆様には、これからもっと頑張って面白くしていきますので頭の片隅にでも゙天帝の神殺じという名を詰め込んでおいてください。


 余談

 春アニメ始まりましたね。
 個人的には『変態王子』と『デビルサバイバー2』が楽しみです。
カントクさんさいこー。 ヤスダスズヒトさいこー。
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