……そう思っていた時期が私にもありました
実家に帰ったはいいものの色々連れまわされてかえって疲れちゃった気がします
皆さんはGW楽しかったですか?
もしそうでなかったなら残り二日、存分に楽しみましょう!
ゴロゴロゴロゴロ…………
おっさんと猫と一緒に馬車っぽい何かに揺られること長時間。
いや、時計とかないから何時間経ったか分からねぇんだよ。
とにかく俺的には長時間延々と緑に囲まれた道を進んでいるとやっと遠くに村が見えた。
なんか村の一番高いところのでっかい家から煙が出てるけど、おっさんの反応がない当たり火事じゃないっぽいな。
「おー!!おっさん、あそこに今から行くのか?」
「ちったぁ落ち着け兄ちゃん。別に逃げやしねぇよ」
そう言われても俺にとっちゃこの世界に来て最初の村なんだ。
落ち着けっていう方が無理ってもんだろ!
座席の中で寝転がってるおっさんから離れて前の御者席でカモを操ってる猫に近づく。
「猫―、もっと飛ばせないのか?」
「そんなこと言われてもどうしようもないにゃ……それと僕の名前は猫じゃなくてラスティだにゃ」
「えー……頑張れば何とかなるんじゃねぇの?頼むよ猫―」
「頑張っても頑張らなくてももう少しすれば着くから大人しくしてるにゃ。あと僕はラスティにゃ!」
うーん、駄目か……
別に行けなくなるわけでもないし待つしかないのか。
諦めて元の席に戻るとおっさんが寝っ転がったまま話しかけてきた。
「時に兄ちゃん。そんな恰好してるからにはハンターなのかい?もしかして実はギルドナイトで素性を隠してるとかか?」
「?はんたーとかぎるどないとってなんだ?」
よく分からない単語が出てきて首をひねる。
この世界独特の物か?
でも聞き覚えがあるような……
正直に答えるとおっさんは本当に呆れたとでもいうような目でこっちを見てきた。
「ちょっと兄ちゃん物を知らなすぎるんじゃないか?ギルドナイトはともかくハンターなんざ常識だろう?」
「そんなこと言われたって知らないものは知らないんだから仕方ないじゃねぇか。そもそも俺はこの世界で生まれたわけじゃないし」
知ったかぶってもいいことなさそうだし正直に話す。
そうするとおっさんは苛立たしそうにガシガシと頭を掻いてもう一度俺の方に向き直る。
「あーそうかいそうかい。いいか、この世界にはモンスターっていう巨大な怪物がいて普通に歩き回ってんだ。それじゃ危ないからハンターってのが依頼を受けてモンスターを狩ってんだよ」
「へぇ、そうなのか!」
かっけぇ!どこかのヒーローみたいじゃんか!
怪物を倒すなんて昔話の中にしかないようなことなんてそうそうできないだろうし、やってみてぇ!
それにハンターって犬と一緒に仕事するとか聞いたことがあるから犬とも触れ合えて一石二鳥。
俺の天職じゃんか!
おっさんの話を聞いてうずうずしているとおっさんがかったるそうにため息を吐いた。
「それとお前が転生者だってことは他の奴らには基本的に言うな」
「?なんで?」
「頭が変なやつとか思われたいのか?」
「よくそう言われてるぞ?」
いやー本当に失礼だよな。
俺はただワンコが好きで、好きな物に一直線なだけなのにみんな頭おかしいとかいうんだから。
夢に向かって頑張れって先生も行ってたじゃんか。
その先生ですら俺のことを救いようのない馬鹿だとか言ってたけど。
救われなければいけない理由がないから救われなくてもいいんだけど。
そういうとおっさんはまた深いため息を吐いた。
「とにかくあんまり転生者だってことを話すな?いいな?」
「えー……で「いいな?」
「……はい」
おっさん、近いっす。
目の前で凄むおっさんの迫力に負けてつい返事をしちゃった。
別に納得してないから守るつもりもないけど。
俺が大人しく返事をしたのを聞いておっさんは満足そうな顔をして元の位置に寝転がる。
あ、大切なことを忘れてた。
「なぁおっさん!そんなことよりハンターになるにはどうすりゃいいんだ!?」
「そんなことってお前な……」
「旦那さん、村に着いたにゃ!」
おっと、もう村に着いたのか。
猫の声が聞こえて顔を上げると近くには木でできた家が並んでいて、通りを行きかう人々が時々足を止めてこっちのほうを物珍しげに見ているのが分かった。
他の家より高いところにあるからなのか、遠くからも見えていた煙を吐くでっかい家がここからでも見える。
なんかよく分からないけどすげぇ……
よく分からないけど胸が震える!
溢れ出る感情のままに馬車から飛び降りた。
「よっしゃーー!着いたーー!」
「ったく、落ち着きのない野郎だな。他の奴らが見てんだろ」
後からゆっくり降りてきたおっさんが村を見てはしゃぐ俺を面倒くさそうに悪態をつく。
「いいじゃんか!初めての村なんだし!」
「お前さっき俺が言った意味分かってねぇだろ……」
「おっさん。そんなにため息ついてたらいいことが逃げ行っちまうぞ?」
「誰のせいだと思ってんだ?」
「おっさん?」
「よーし、歯ぁ食いしばれ」
へ?本当に俺なんか悪いことしたか?
おっさんは満面の笑みだ。
青筋を立てて握り拳を掲げてみせてるせいで親しみやすさなんて微塵も感じられないけど。
おっさんの様子にビクビクしてるとまたため息をついて手を下してくれた。
「止めだ止め。兄ちゃんを殴っても意味はなさそうだ」
「え?……なんかよく分からないけどありがとう?」
「感謝するところなんて何処にもないだろ」
そういってまたため息。
おっさん、そんなにため息を吐くならため息を吐くこと自体がが面倒になって来んじゃねぇか?
どうでもいいことを考えてると後ろの方から猫がおっさんに声をかけるのが聞こえた。
見てみると猫は荷台の積み荷を降ろして地面に……
いや、よく見たら地面に敷かれた茶色くて古そうな草製の
「ご主人!話してないで商品を下して欲しいにゃ!」
「はいはい、ちょっと待ってろ」
おっさんは猫の方をちらっと見て適当に返事をするともう一度俺の方を向く
「そういう訳で俺が手伝ってやれるのはここまでだ。別にこの村が気に入らない訳じゃ無いだろ?」
「ああ!なんだか上手く言えないけどすっごくすげぇよな!」
「そうかそうか。そりゃ良かった」
未知の村に対して心を震わせる俺の様子を見ておっさんが眩しそうに目を細める。
そしてすぐに迷いのない口調で話し始めた。
「俺が送ってやるのはここまでだ。俺にも商売があるからな」
「分かった!ここまで連れてきてくれてありがとなおっさん!頑張れよ!」
「頑張らにゃならんのはてめぇの方だろうが。精々くたばんなよ」
別れの挨拶も終わったしもう行くか!
振りむいておっさんに向かって手を振りながら離れていく。
そんな俺を見て、おっさんは苦笑いしながらもちゃんと手を振り返してくれた。
何かを思い出したように僕に向かって言ってくれた。
「そういえば、兄ちゃんハンターに成りたがってたよな?それだったらギルドに行くのが一番だ」
「ぎるど?」
「ハンターたちを管理してる組織だ。この村のはあの家にあるからハンターに興味があるならいってみな」
そう言って、おっさんは村の高いところに立ってる、煙を吐き続けているでっかい家を指さした。
あんな立派なところにあるのか……
やっぱりハンターって凄いんだな!
なんだか面白そうなことがいっぱいありそうだ!
もうこれ以上待ってなんかいられない!
「おっさんありがと!後で行ってみるな!」
ちぎれんばかりに手を振って新しい生活への期待に急かされながら通りを走っていく。
村自体が小さいせいか通りの中もそこまで込んでなくて人の間をするする走り抜けながらどんなところかざっと見て回る。
鍛冶屋、野菜屋、肉屋、魚屋。
中央に階段があってさっきの家まで続いてるみたいだけどそれより先にこの通りを見ていこう。
加工屋、呉服店、料亭。
あれ?
ここに来たら大体のものが揃いそうではあるけど一つ疑問に思ったことがある。
重要なピースが欠けている……
いや、そんなことはあり得ないしあってはならない。
また通りを走って戻って確認してみる。
いやいやいやいや、絶対ないよねそんなこと?
薄々最悪の事態が頭に浮かんでいながらもそのあまりにも残酷な現実が受け入れられずにもう一回。
やっぱりそうだ何度確認しても変わらない。
そう、この通りには………………犬が一匹もいない。
あっれー?これくらい大きかったら一匹位いるかと思ったんだけどなぁ……
まぁ居ないなら仕方がない。
じゃあなんか食い物でも買うか。
しばらく何にも食ってないから腹減ってんだよな。
何となくポケットを漁ってけど中はすっからかん。
あ……そういや金持ってなかったんだ。
金稼がないとといってもどうすればいいかなぁ……
あてなんて何処にも……そういやぎるどってとこに行ったらハンターに成れるとか言ってたような……
しゃあない、ぎるどってとこに行ってみるしかねぇか。
タオルやら持って登っていく人たちに紛れて上に登っていくとでっかい家の前に着く。
他の家よりもしっかりしてる感じはするけどやっぱり木でできていて、屋根には瓦が乗っている。
あと、銭湯みたいに扉の代わりに暖簾がつけてある。
……本当に温泉がありそうだけどちゃんとぎるどはあんのかな?
まぁおっさんがいってたんだし大丈夫か。それより中どうなってんだろうな。
一番手前の人はしかめ面を紙に近づけてガリガリと、真ん中の人は少し眉をひそめながらカリカリと、一番奥の人はすまし顔で綺麗な姿勢のままスラスラと書いている。
制服まで色以外はほぼ同じだし何やってんだろ?
もしかして受付とかか?
ものすごいそっくりだけどしゃべり方とか表情で大体誰かが判別できそうな気がする。
そしてタオルを持った人たちは右の方の暖簾をくぐっていく。
温泉はこっちの方にあるみたいだ。
奥の方にもなんかあるけど今はいいか。
手前の二人はなんだか頑張ってるみたいだし、奥の人に話を聞いてみよう。
近づいていく気配を察したのか手を止めてこちらの方を見た。
「いらっしゃいませ。何か御用件ですか?」
「すんません。ハンターに成るにはどうすればいいんすか?」
「え?ハンターに?」
俺の聞いたことがあまりに予想外だったのか女の人は目をパチクリさせた。
そんな不思議なことだったか?
ハンターなんてカッコいいやつにならみんななりたいと思うんじゃないか?
女の人は僕の後ろの方に目を向けた後何か新しく取り出した資料をめくり始め。
「?どうしたんすか?」
「通常ハンターに成るには特殊な訓練を受けた後にギルドに申請しなければなりませんが……えーっと、あなたはイヌガミ アキトさんですよね?」
「そうだけど……なんで俺の名前を?」
「この名簿に載ってたからです。あなたは既にハンターですよ。在籍場所はここユクモ村です」
そういって女の人はめくっていた本をこっちに見せてくれる。
ホントだ、俺の名前が載ってる!
なんか知らないけどハンターに成ってた!
「っシャー―――!!とりあえず何とかなった!!」
喜びのあまり高々と腕を突き上げる。
なんか受付のの人が微妙に困った顔してるけど気にしない!
喜びを体全体で表現していると後ろからよく通る女の人の声が聞こえた。
「ラミア、その人が新しい人?」
声のした方に振り向くと、髪が肩まで伸びている白髪の女の人が受付の人の方を見ていた。
神秘的な感じがして綺麗なひ――「なんかゴツイの背負ってる!?」
似合わなさ過ぎて思わず口に出ちゃったよ!
驚く俺を見て白い人はむっとした表情になる。
「ゴツイのとはなによ?ゴツイのとは。これはガンランスと言って豪快かつ繊細で芸術的な――」
「それで!ご用件は何ですか?」
背中にあったものを瞬時に組み立てて槍みたいにして見ながら語り始める白い人を受付の人が慌てて遮った。
長くなりそうだったから助かった……
白い人、見た目はいいのになんか台無しになってるなぁ……
白い人は喋っていたのを邪魔されて少し不満そうに口を尖らせながらもデカイのをしまって受付の人に質問する。
「この人が例の新しいハンター?」
「はい、そのようです。私は仕事がありますから代わりにクイントさんのところに連れて行ってもらえませんか?」
「いいよ。そこまで手間じゃないし。でも、ここのこととか教えるなら私でもいいんじゃない?」
「タルトさんを指定した緊急依頼が出ているので出来れば今日は依頼に出てほしいんですけど……」
「うん、分かった。わがまま言うほどのことじゃないしね」
そこまで話をすると受付の人(……ラミアだったっけ?)はまた手元に目を落として作業を再開した。
話は終わったみたいだし、俺は白い人と向き合うと、白い人はこちらを値踏みするよな目でじっと見てきた。
さっき失礼なことを言っちゃったから怒ってんのか?
でも世話になるんだしちゃんと挨拶はしておいた方がいいよな?
流れ的にきっとこの人ハンターの先輩なんだろうし。
「よろしくお願いします!」
勢いよく頭を降ろして腰を直角に曲げる。
礼儀正しくしてたらきっと機嫌を直してくれるはず!
さて、結果のほどは?
ちらっと顔を見てみると少し目を見開いた後、一瞬にやって笑った……ような気がした。
「うん、よろしく。私はタルト・ミシャーナっていうんだけどあなたの名前は?」
「犬神彰人っす!」
「イヌガミアキト?変な名前ね?」
あれ?変かな?普通だと思うけど。
でも言い方が外国人みたいにカタコトだったし、ここではこういう名前は変なのか?
……そのうち分かることだしどうでもいいか。
「じゃあ、今からシェアハウスに連れていくけどそのまえにひとついい?」
考えていたことを棚に放り込んでいると、タルト先輩がしょってたのをまた手に持っていた。
今度は盾も持ってる。
?何だ?
ハッ!?もしかしてお前の実力を見てやろう的なことがあるのか!?
大変かもしれないけどなんかありそうな展開だ!
俺の期待と不安が入り混じった視線を受けながらタルト先輩はゆっくりと口を開く。
「ねぇ……これ、どう思う?」
??? side-------------------------------------------------------
武器の整備の依頼に、狩猟道具の補充。
村長から借りてる農園の管理も終わったし、依頼は受けない
今日しないといけないことはもうないか。
「ん~~~~っ!」
何となく疲れを感じてグーっと背伸びをする。
そういえば久しぶりの休みだ。
休みは勝手にいれられるんだけど緊急依頼で潰れることが多かったからな。
せっかく時間があるんだし村の人と話してこようか。
何をするわけでもなくぼんやりと座って考えていると玄関の扉が開く音が聞こえた。
玄関に視線を送ると案の定同居中の白い髪の女が入ってきていた。
あれ?でもなんかいつもと違って圧迫感というか迫力というかそんな何かが足りないような……
「ここだよ。私たちのシェアハウスは。これからよろしくね」
「……はい」
違和感に首をかしげる俺を放っておいてタルトは誰かを中に招き入れる。
ユクモ装備を着たそいつは体の線は細いが、装備の隙間から見える腕は引き締まっていてよく鍛えられてるのが分かる。
まぁ、新米といってもハンターなんだからこれくらいは当たり前なんだけど。
背中に背負ってるのはガンランス。
ガンランスを扱うようなしっかりした体格じゃないまるで無理をして大きな武器を持った子供のような感じがするな。
……いや、すぐ近くにもっと似合わないやつがいたな。
またなんかやったなこいつ……
顔の方は短い茶髪を無造作に跳ねさせていてワンパクな雰囲気だ。
口を開くと八重歯が見えるのも印象強い。
ただ何故か目が死んでるんだよな……
……何故だか知らんがデジャビュを感じた。
なんか全体的におかしい気がするんだけどこのまま返事をしないわけにもいかないし、とりあえず自己紹介するか。
「俺はクインテ・タージアン、弓使いだ。これからよろしくな!」
「クインテって本当に笑顔が気持ち悪いよね……」
そういって懇親の笑顔を向けるとともに手を差し出す。
横でドン引きしてる白いの声は聞こえない。
きっと幻覚なんだろう。
あれ?目から汗が……
心の中で汗を拭いながらもどんな反応を返してくれるか固唾をのんで見守る。
新入りは差し出された手をじっと見つめた後、こちらの顔を見て厳かに口を開いた。
「………………ハイ、私ハガンランスヲ心カラ愛シテイマス」
………はい?
完全に予想外というか返事になってない言葉を聞いて頭が真っ白になる。
すると俺が喋らないのをいいことに新人は淡々と感情のこもってない声で語り始めた。
「砲撃ノ時ノ魂ニ響ク音。確カニ帰ッテ来ルビリビリトシタ手応エ。ドンナ攻撃デモ受ケ止メル盾ニ、強靭ナ敵ヲモ貫キ通ス槍。ドレヲ取ッテモ素晴ラシイ」
な、なにが………うん?なんだか聞き覚えがあるような……
ぶっ壊れたかのように言葉を言い続ける新人に最初は空恐ろしさすら感じたけど、よくよく聞いてみると
「カッとなってやった!反省も公開もしていない!」
「ざっけんなこらー!!」
その後、新人には精神分析(物理)をすることになった。