紐野郎と人形使いの百物語   作:刹那 久賀

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投稿づす。


27話 怒り物語

「帰りに少しお買い物いいかしら?」

 

妖怪の山を出た辺りで唐突にアリスが口を開く。

買い物かぁ・・。糸、フランにぶっちぎられて殆ど無くなってるし少し買っとくかなぁ。今持ってる数本は、機械の代わりに腕に巻きつけてるけどこれだけじゃ心もとない。外でしか手に入らないレアな糸とかもぶっちぎられた事を考えると心が痛ぃ・・

 

「ああ、俺も糸買っときたいし俺としては大歓迎」

 

「そうね、私も少し買っておこうかしら・・氷坂に服編んであげたいし(ブツブツ」

 

何やらブツブツ言いながら人里に向かって方向転換するアリス。そろそろ、冬だし俺もアリスに何か編んでやるかな。

 

人里の入り口まで来たところで地面に下ろしてもらう。

 

「さんきゅ」

 

「じゃあ、荷物持ちよろしくお願いね」

 

「おっけ、任せろぃ」

 

門をくぐり人里の中へと足を踏み入れる。何やら市場は活気づいてる様だ。冬に向けての買い込みか?ようわからんけど。

 

「何かやってるのかしらね?行ってみましょう?」

 

「ああ」

 

アリスと共に何やら活気づいている市場へと赴く。人混みを掻き分け中心へと向かう。すると、

 

「ひゅ〜、すんごい物置いてんな」

 

「・・・・」

 

中心の方に行くと何やら妖怪の物であろう首が置かれていた。そして、その隣には霊夢と同じくらいの歳であろう少女が少し大きめの、丁度その少女の頭と同じくらいの木槌を振り回して自慢気に騒いでいた。

 

「この辺を荒らしてた妖怪は、私が退治したよ‼︎だから、村の皆は安心してね!」

 

「ほぉ〜、こいつは此処いらで人攫いをしていたっていう妖怪じゃないか。嬢ちゃんやるねぇ」

 

「妖怪退治なら私に任せてよ!博麗の巫女程じゃなくても皆を困らせる妖怪がいたら退治して見せるよ‼︎」

 

まだ、あどけなさの残る少女だ。赤い和服に身を包み片方の腕を出しているため、さらしに巻かれた控えめな胸が露わになっている。

 

「こういう事って、しょっ中あるのか?」

 

アリスの耳元で小声で呟く。

 

「いいえ、滅多に無いわ。少し前に、人里の人間に強い力を持つ人間が増え始めたって霊夢が言っていたけれど本当だったみたいね」

 

ほお、そうなのか。霊夢も腐っても巫女って訳だな。

 

「取り敢えず一旦離れましょ?面倒ごとに巻き込まれるのはゴメンだわ」

 

そう言って引き返そうとすると

 

『うわっ、魔女だ・・』

 

『魔女だぞ・・』

 

『見るな、魔法の森へさらわれてしまうぞ・・』

 

「・・・・」

 

成る程、これが理由か。中々、胸糞が悪いもんだ。どの世界でも異才の力を恐れるのは世の常だな。

俯いているアリスの肩に手を回す。

 

「なんだい、なんだい?どうしたんだい?」

 

丁度俺達がその場から立ち去ろうとした時だった。

 

「魔法の森の魔女だよ。また、此処に買い物にでも来たんだろう。全く、とっとと帰ってくれないかねぇ」

 

「ふぅ〜ん」

 

あの野郎、守って貰えるからって調子に乗りやがって・・!

 

「そこの魔女!待ちなさい!」

 

その言葉に、振り返る俺とアリス

 

「貴女も皆に迷惑をかける妖怪の一人ね?」

 

「おい、そんな事

 

反論しようとするとアリスが黙って手で制止する。

 

「だとしたら、何だというの?」

 

「退治するわ」

 

「・・・・」

 

木槌をアリスに向ける少女。このガキ言わせておけば・・!握る拳が怒りで震える。

 

「そしてその後皆に迷惑をかけた罰としてこの妖怪と同じ様に晒し首にしてやるわ」

 

ブチッ

 

そう言うと同時にアリスに飛び掛かる少女。だが、空中で止まったまま動かない。

 

「え?あれ?」

 

いや、動けない

 

「はぁ、もう少し我慢してよ氷坂ぁ」

 

「うるさい、黙れ」

 

「・・・・!」

 

突然の自分に向けられた暴言に驚くアリス。

 

「(相当怒ってるわね・・氷坂)」

 

少女を縛る糸を操る手に力を入れる。

 

「ぎゃあああああっっ‼︎‼︎‼︎」

 

少女の木槌を持っていた方の腕がメキメキと音を立て折れてゆく。そのため、木槌が地に落ちる。

少女が空中に突然浮いたと思ったら急に腕が折れ始めたのだ、周りから見たらさながら忍術と言う所だろう。村人達が全員腰を抜かしている。

 

「おい、お前ら」

 

少女を縛る糸を引っ張り、引き寄せ少女の首を掴む。

 

「うぅ・・あぁぁ・・」

 

怒りの余り少女の首を掴む手に力が入り、少女が悲痛な声をあげている。

 

「お前らがどんな事を考えてどんな事を思おうが勝手だけどな。もし、これから先アリスを傷つけるような真似してみろ」

 

腰を抜かしている村人を睨む。

 

「骨一つ残ると思うな・・‼︎」

 

「ああぁぁぁ・・あ

 

ゴキッ

 

少女の首が折れる。

 

「ひ・・‼︎うわぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

腰を抜かしていた村人達は、一目散にその場から逃げてしまった。

少女は、意識があるのか無いのかも定かでは無いが手足がぴくぴくと動いている。

 

「氷坂、やり過ぎよ・・」

 

アリスの一言ではっと、冷静になる。

 

「あ・・悪い・・」

 

すると、苦笑いを浮かべるアリス

 

「これじゃあ、当分お買い物なんて出来ないわね」

 

「・・・・ごめん」

 

「取り敢えずその子を永遠亭に運びましょう。この子を死なせたらそれこそ二度と里に買い物なんて出来なくなるわ」

 

アリスの言葉を聞き糸を回収し、少女を乱雑に下ろす。

 

「ちょっと!話聞いてた?」

 

「いや、正直こいつ殺したいんだけど」

 

「バカな事言って無いで、早く運ぶわよ」

 

そう言うと少女の体を起こしだき上げるアリス。少し怒り気味らしい。まあ、それもそうだろう。今まで何を言われても頑張って耐えて来たと言うのに台無しにされたのだから。

 

「・・・・ごめん」

 

すると、また苦笑いを浮かべ俺の頬にキスをする

 

「え?」

 

「何て言うかちょっと、怒っちゃったけど本当は、嬉しかった。私の事であんなに怒ってくれるなんて。だから、これはそのお礼。ありがと、氷坂♪」

 

「・・・・!ハハ、甘いなぁアリスは」

 

「氷坂にだけね♪」

 

全く、こいつは・・・・。

 

「うおおお‼︎そんな事聞いたら力がみなぎって来たぁぁぁ‼︎」

 

「キャ‼︎」

 

天狗の力を使い少女を抱きかかえるアリスごと持ち上げ、飛ぶ。

 

「急ぐぜ〜?」

 

 

 

 

 

永遠亭

 

「永りーーん!永りーーん‼︎何処だーー‼︎」

 

永遠亭につくが早いかアリスをそっとおろし永遠亭の中をドタドタと駆け回る。

 

「永りーーん‼︎うぉーい!」

 

結構走り回ってるんだが全く見当たらない。それどころか、紅魔の連中まで見当たらない。

ここ、広過ぎるんだよなぁ・・

 

「お、君は、えっと・・」

 

走り回って数分すると今日の朝食の時に見たブレザーうさ耳の女の子を見つけた。のはいいが名前が出てこない。ていうか、名前知らないな

 

「?」

 

「永琳見なかった?どうにも見つからなくて」

 

少女と目が合う。赤い瞳に吸い込まれそうになる。不思議な目だ・・

 

「師匠なら、あっちの診察室に居ますよ。ここの、隣の隣の建物です」

 

「あれ?診察室ってここに無かったっけ?」

 

「ここは、倉ですよ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

・・・・・・・・・・ゑ?

 

「ここ、倉?」

 

「ええ、まあ、はい」

 

あー、そりゃいくら探してもおらんわな。

 

「あはは、有難う。助かったよ。えっと、君は・・?」

 

「鈴仙・優曇華院・イナバです。鈴仙でいいですよ」

 

「そっか、鈴仙。有難な」

 

「いえいえ」

 

鈴仙に礼を言うとダッと走って行く。

そんな、俺の後ろ姿を鈴仙は赤い瞳でじっと見ていた。

 

「昔も、今もどの世界でもその癖は直りませんね。フフ」

 

鈴仙の頬は心なしか赤かった。

 

「えーリン!えーーりん‼︎」

 

隣の隣の建物まで来たけど確かになんかさっきと違って見覚えがあるな。うん、間違いなさそうだ。診察室は・・この部屋だったかな。

 

「えーリン‼︎ってあれ?」

 

「あら、貴方何処に行ってたの?」

 

振り返る永琳の前には既に来ているアリスと既に治療を受けている少女。ん〜?どゆこと?

 

 

 

 

 

「氷坂が先に行ったと思えば倉の方へ行くから疑問に思ってたけどそう言うことだったのね」

 

「うみゅ・・面目ない・・」

 

「えー、つまり貴方はこの娘を助けるために私を呼びに行ったのだけど迷って倉を彷徨っていた、と」

 

「綺麗にまとめ上げないでよぉ、琳ちゃぁん」

 

「っ、琳ちゃ」

 

慣れない呼ばれ方だからか永琳の顔が少々歪んでいる。ふふ、カウンター

 

「んで、その娘の容態はどうよ?」

 

「結構危ない状態だったから強引に治療させて貰ったわ。普通の人間と違って霊力量がかなり多いからこそ出来た治療だったけれどね」

 

「ほぉ、やっぱり結構強いのか。琳ちゃん」

 

「っ、ええ、かなりね」

 

おぉ、スルーですか。出来てないけど。少しだけ、頬が赤くなっている。恥ずかしいのだろうか。おいおい、そんな年じゃ無いだ

 

「あはは、なんて若くて美しいんだ」

 

「よろしい」

 

構えていた弓を下ろす永琳。ふー、危ない危ない射抜かれる所だった。読心術って、幻想郷に住む人の基本スペックなの?そうなの?

 

「ふぅむ」

 

「何かあったの?」

 

アリスが小首を傾げ俺に聞く。

 

「いやぁ、こいつを縛ってるときに糸を数本切られてな。そこいらの糸とは、まるで強度が別物の糸だ。これを切れる奴は幻想郷の中でも屈指だろう」

 

「どうやって、切られたの?」

 

「きっと、あの木槌だろう。よく分からないが。あの時、不意を突くっていう状況じゃなかったら首をへし折られてたのは俺だったかもな」

 

ていうか、あの糸スーパーレアだったんだけど。いや、ウルトラレアかな。いや、レジェンドレアぐらいじゃないか?とにかく、物凄いレアな糸切られたのはショックだ。しかも、俺の自慢でもあったのに・・

 

「貴方此処に居ない方がいいんじゃないの?」

 

「?どうしてだ?」

 

「そろそろ、起きてもおかしくないわよ?この娘」

 

「おおっと、そりゃマズイな」

 

下手したら殺されるべ。死なないけど

 

「じゃあ、俺はアリスとそこらへんぶらついてるわ」

 

「ええ、分かったわ」

 

「んじゃあ、行こうかアリス」

 

「そうね」

 

スッとアリスの手をとり扉へ向かう。

 

「あ、そうそう。少ししたらまた、来てくれるかしら?傷の状態を見るわ」

 

「あぁ、有難う」

 

「あと、今日は泊まっていきなさい。明日は、姫様とお楽しみなんでしょう?」

 

「ああ、まあそうだがニヤニヤしながら言な‼︎琳ちゃん‼︎」

 

「っ、その呼び方やめてくれないかしら・・?」

 

「えー、じゃあ琳ちゃんがデレてくれたらやめるー」

 

「あのねぇ・・」

 

むふふ・・ハーレムハーレム・・ずび

 

「ひーさか♡」

 

「oh・・・・」

 

永琳が此方に親指を立て

 

「命運を祈る☆」

 

あ、あはははは

 

「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

世の中は、なんて残酷なんでしょう




ふふふ、前回は「次回は霊墜に触れます」だとか言ってたな・・。あれは、嘘だ!なんて、すみません。本当すみません。じ、次回こそは・・次回こそは・・!
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