「ん・・もう朝か」
窓からさす光に眩しさを覚えながらの起床。体が怠い。
昨日、輝夜が深夜までここに居座ってくれたおかげで寝不足だよ。まあ、追い出したんだけど。こちとら、人間の体だってんだからもう少し気を使って欲しい所だ。
「すみませ〜ん。起きてます?」
あれやこれや考えていると誰かが起こしに来た様だ。声から察するに、えーっと、鈴仙だっけか。
「あー、起きてるよ」
「じゃあ、入りますね」
なんで、そうなる。
「おい、入るんだったら入りますねって言ってから入ってくれ」
「いいじゃないですか。今更、何を隠す様な間柄でも無いんですし」
「はい?」
顔合わせ二度目の時点で、そんなにも親密になってしまうものなのか君は。
「んで?何しに来たんだ?」
「朝食の準備が終わったのと輝夜様から、貴方の身の回りの世話をするようにと仰せつかっています」
部屋に入り扉を閉めると、俺が起きるのを手伝ってくれる。
「ほぉ・・」
何だかんだ言って輝夜には、気を使って貰ってばっかだな・・。
「そうだ、俺が持ってた糸って何処にあるか知ってるか?」
「え?私は、知りませんね・・。無いんですか?」
「ああ。多分、腕がとれた時に腕に巻いてあったと思うんだが・・」
ん?そういや、俺の腕ってどうなったんだ?もう、焼かれて骨になってたりするのかな?
「それなら、輝夜様が持っていらっしゃるんじゃ無いですか?」
「輝夜が?」
永琳が持ってるって事なら分かるんだが、何故輝夜?
まあ、いいか。後で聞いてみよう。
あれこれ考えているとグゥーと腹がなってしまう。
「むう、最近まともに食事をとってないからなぁ」
すると、クスクスと笑ながら扉の方へ向かう鈴仙
「早く朝食にしましょう。皆さんが待っています」
「ゲッッッ‼︎」
「あ‼︎お前‼︎」
お互いを指差す俺と女の子。
なんで、あの娘がここにいんだよ!チラッと永琳の方を見ると俺が言いたいことを察した様だ。
「姫様が何か考えがあるという事で帰らせようにも帰らせられなかったのよ」
私は悪くないとでも言うように目を逸らす永琳。
「お前ぇぇ‼︎あの時は、よくもぉぉ‼︎」
木槌を構える少女。
「ちょちょちょ、腕無いし糸無いし今は無理だって!」
「うるさい‼︎」
木槌を振りかぶり俺に襲いかかる少女
「やめなさい」
後ろの鈴仙が、少女の顔面を蹴り飛ばす。
かなり強く蹴ったのかその場で失神してしまっている。
「おいおい、強く蹴りすぎじゃないか?しかも、顔面」
「お師匠によるとかなり頑丈みたいですし、蹴ったのは顎です。脳を揺らして脳震盪を誘発させました」
「ほ、ほお〜。ん?お師匠?琳ちゃんのことか?」
琳ちゃんというワードに反応したのかやや、永琳の顔が引きつっている。
「はい、そうですよ」
つぼったのか、うさ耳をプルプルさせ笑うのを我慢している
「ぷ・・ぷふ、琳ちゃ・・」
「鈴仙?後で私の部屋に来なさい。試してみたい薬があるのよ」
それを聞くと一気に青ざめていく鈴仙。あー、きっと酷いことされるんだろうなぁ・・。
「つか、鈴仙。助けてくれありがとう。助かったよ」
「ああ、いえいえ。氷坂さんの護衛も含め身の回りのお世話ですから。お礼なんてそんな」
慌てて、手を横に振る鈴仙。
「そういや、輝夜と紅魔組の連中は?」
「姫様は、まだ寝てるのかしら?昨日夜遅くまで起きてたみたいだし」
今までは、普通に起こしに来てたけどなんたってニート姫だ。夜更かしなんぞしようものなら起きてこないに決まってる。
まあ、そうなんだけど・・。何だかんだ言っといてあいつ何様だよ。あぁ、姫様か・・
「紅魔組の方は、フランドールと言ったかしら?その娘が暴れて、総出で抑えてるらしいわよ」
「アッッッ‼︎」
フランの事すっかり忘れてたぁぁ!ずっと、一緒に居てやるとかぬかしといて俺って屑だな。
「悪りぃ、鈴仙。また、世話になるかッッ‼︎」
瞬間、背中から腹にかけて激痛が走る。腹を、小さな腕が貫通している。
「あ・・がはっ・・‼︎まさか・・‼︎」
激痛に悶え後ろを振り向くと
「フラン・・‼︎」
「氷坂さん⁈」
鈴仙が驚き、慌てて駆け寄る。だが、それを手で制止する。
「嘘つき・・‼︎お兄さんの嘘つき・・‼︎遊んでくれるって、ずっと、遊んでくれるって言ったのに・・‼︎いつまで待っても来ないじゃ無い‼︎」
そう言いながら、もう一方の腕も突き刺してくる。
「あああああ‼︎‼︎」
口から血反吐をぶちまけ、その場に膝をつく。
「ガハッ、グフ、ごめんな。フラン。約束破っちまって・・・・」
「嘘つきなお兄さんなんて・・いらなーーーームッッッ⁈」
「‼︎」
「また、これは大胆な・・」
腹に刺さったフランの手を抜き、抱き寄せたっぷりとキスをする。激痛に意識を手放しそうになるが必死に耐える。鈴仙は、口に手を当て真っ赤になり永琳は、何故か関心している。
「ん・・んむぅ・・んっ、な、んちゅ・・に・・?」
突然だったからかされるがままのフラン。
数秒のキスを経て、すっかりとトロ顏になっているフラン。口から血を吐いていたためフランの口に俺の血がついている。
「もう一度チャンスをくれ!お願いだ!こんな事して、ずるいってのも図々しいってのも分かってる!でも、頼む!」
「ほ、本当に・・?嘘つかない・・?」
「ああ、もう嘘はつかない」
「ぜっ・・たい・・だからね・・」
すると、バタリと力尽きたように倒れるフラン。よく見ると、所々ボロボロだ。
「ウ‼︎ゲボッ‼︎フ、フラン⁈永琳!ちょっと、見てくれ!」
倒れたフランを抱きかかえると、腹に空けられた穴が猛烈に痛み血を吐き出すが、フランの方が深刻そうだ。
「きっと、能力を酷使しすぎたのね。この娘の身体から、殆ど妖力を感じないわ」
能力を酷使しすぎたって、そういや紅魔の他の奴らとやりあってたんじゃないのか?
「ウゥ‼︎グフッ‼︎」
立ち上がろうとするが腹の傷が痛みその場に倒れ込む。
「ほら、貴方も十分重症なんだから動かないのよ。今は、天狗の治癒力も効果が薄いし死ぬわよ。私がこの娘を看るから鈴仙は氷坂を看て頂戴」
フランを抱え部屋から出て行く永琳
「貴方の周りは、トラブルが絶えませんね」
苦笑いを浮かべ俺に肩を貸す鈴仙
「本当に申し訳ない・・」
「え⁈あ、いや、そういうつもりで言ったんじゃ無いですから!謝らないで下さいよ」
両手をブンブンと横に振り必死に否定する鈴仙。だが、そのせいで俺の身体を支えていた肩が無くなりその場に崩れる。
「ウグッ‼︎」
「ああ‼︎すみません‼︎」
慌てて俺の体制を直す鈴仙
「取り敢えず止血してくれるか・・血が・・」
空いた二つの穴から血がドボドボと流れている。そのためか、段々と意識が遠のいてくる。
「あまり、意味が無いかも知れませんが天狗の力を使って下さい」
「ああ・・分かった」
天狗の力を使うと、傷口が塞がることこそ無いものの意識がはっきりとする。
「少し、急ぎますね」
俺を背負うと走り出す鈴仙。天狗の力を使っているから死ぬことは無いとはいえ、俺の死にはリスクが付いて回る。それなりに、焦るものなのだろう。
今は、鈴仙に任せよう
「うぅ・・いたた、くそーまたあいつをぶん殴れなかったー。いつも、邪魔が入るなー」
悔しそうに地団駄を踏む少女
「前も寝込みを襲おうととしたらあのウサギさんに止められたし・・何かあるのかな・・」
「そんなにひーくんを殺したいの?」
「そりゃあ、こっちだって殺されかけたんだ!それで、黙ってるほど私は・・って、うわぁ‼︎」
先ほどまで気がつかなかった後ろの人物に驚き飛び上がる。
その人物は、大きな袖を口に当てクスクスと笑っている
「いつからそこに・・って今のは違うんです‼︎何でもないで
「いいわよ」
「へ?」
思わぬ返事に素っ頓狂な声をあげる
「いいわよ、特別に殺し合いの場を設けてあげるわ」
状況に頭を追いつかせ冷静に状況を判断する少女。
そして、輝夜を睨む。
「どういうことですか?」
「まあ、そうなるのも仕方ないわね。安心しなさい、悪い様にはしないわ」
「・・まあ、私は情があついので恩人の頼みとあらば断るつもりは無いです」
妥協です、とでも言いたげに溜息をつき胸を張っている。
「貴女、中々図太い神経してるわね・・」
全く何処かの巫女に似ていると複雑な顔をする輝夜だった
「凄いな・・あんな傷が一瞬で・・一体何したんだ?」
先程まで穴があった腹をさすりながら鈴仙に尋ねる。
鈴仙は、薬箱に薬を詰めている様だ。
「えっと、師匠が里の娘にしてたこととおんなじことですよ。強引に氷坂さんに潜在する妖力を引き出して治癒力を高めました」
「へ〜、んなこと出来んのか。ん?だったら、何で今までして来なかったんだ?」
薬箱の手を止め此方に向き直る鈴仙
「そこまで、都合のいいものじゃありませんよ。相手の妖力を操作するんです。莫大な集中力がいる上に相手の妖力も大量に消費します」
「なるほど。霊力やら妖力を使い切ってる奴には使えないってことか」
「それもありますが、氷坂さんやあの里の娘ほど潜在する霊力や妖力が多ければの話です。元からの力が無ければ死んでしまいます」
まあ、確かに簡単にそんな事が出来たら死ぬやつなんて早々いないわな。
「さて、私は里に降りて薬箱を置いて来ますね」
「え?ああ、うん」
「氷坂さんは、ここに居て下さい。ここにいれば、狙われることも無いと思うので」
「ああ、分かった。ってここお前の部屋だろ。俺、男だぞ」
「へ?え、あ、あぁ。え?何か問題が?」
首を傾げて本当に分からないという風な鈴仙
「いや、問題だろ。下着漁るぞ、コンチクショウ」
「え?別にいいですよ?」
アッハハ、ダメだこりゃ。
「やっぱ、なんでも無いわ・・」
「では、行って来ますね」
鈴仙がそう言いながら薬箱を持ち扉に手を掛ける。
「あ、そういやアリスって何処行ったんだ?朝から見かけてないんだが」
「ああ。あの人なら朝不機嫌な様子で出ていきましたよ」
そう言う君は、何故不機嫌だし。
「そっかぁ。ん、ありがと」
「では、行って来ます」
「ん、てら」
バタンと、戸が閉められ静けさが部屋に残る。
・・・・アリス。正直まだ俺の何が悪かったかわからない。
頼ってくれない?俺は、十分アリスに頼ってる。それに助けられて来た。俺は、何をすればよかった?何がいけなかった?
分からない・・分からない・・分からない分からない分からない‼︎
「クソッ・・なんなんだよ・・‼︎」
投稿遅れ申し訳ないです・・。すみません。月日っていうのは、経つのが早いものです。
まあ、話は変わりまして。フランちゃんチョロいですね。はい。なんだかんだ言って、幼さを出したかったんですよね・・。(でも、なんか違う・・)
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