「行くぞ‼︎」
ダンと地を蹴り天子のもとへ天狗のスピードを乗せ走り出す。それと同時に案山子も俺に合わせて走り出す。
それを見て地面に刺した剣を抜く天子。
遅い・・!
天子の攻撃を避け、後ろに回り込む。空いた首元を全力で糸の手で殴る。
「・・・・あんたの攻撃。全然痛くない」
「⁈⁈」
効いてない⁈目を剥きその場で固まってしまう。その隙を見逃さず剣を俺に振りかざす天子。
「おい‼︎止まるな‼︎」
剣を案山子が木槌で止めたため、俺の直前で止まる。
案山子の言葉で我に帰り後ろへ後退する。
「ぜ、全力で打ったぞ⁈いくらなんでも頑丈過ぎんだろ⁈」
「ああ、私の攻撃も全く受け付けない。天人は、全員こんな身体してるのか?」
天子から距離をとった所で案山子と会話する。どうやら、単純な物理攻撃じゃ傷すらつけられないみたいだな。
「あんた達が来ないならこっちから行くわよ」
天子がその場で剣を俺達に振りかざす。
「・・・・⁈斬撃が飛んだ⁈」
振った剣の直線上にある岩や木々が切れていく。
それを見て不可視の斬撃が迫っているのが分かる。
「伏せろ‼︎」
案山子の頭を掴み、その場に伏せる。どういうことだ⁈剣の振り方や立ち回りから見て明らかに剣技の面では素人。そんな奴が斬撃⁈
いや、能力か?ダメだ、考えて分かることじゃ無い。
「だが、立ち回りから見ても隙が多い。気を付ければ当たらないだろう」
「ああ、でもどうする?私達じゃ、あいつに傷一つつけられないぞ」
「・・・・粘膜を狙うしかない。そこなら、ガードが薄いはずだ。それでもダメならこれを使う」
腰に掛けている霊墜を案山子に見せるように揺らす。こいつは、出来るだけ使いたく無いな・・。糸の手にはめれば反動はいくらか防げるが気休め程度だ。
「俺が隙を作る。攻撃、任せた」
「了解」
脚に力を入れ、踏み出し加速する。
天子の単純な攻撃を避け剣を弾く。
「・・・・?」
背中に違和感を感じ振り向くと翼を掴まれていた。
くそッ‼︎人間の時には無い感覚だから翼があることをすっかり忘れてた!
「あ゛あ゛あ゛あ゛」
掴まれていた翼がもぎ取られ、その痛みに絶叫する。
今までにない痛覚だからか、異常な程の激痛が身体を駆け巡る。
「くそ・・がぁ‼︎」
後ろに拳を振り天子を振りほどこうとすが、ひらりとかわされてしまう。
「そんな苦し紛れの攻撃当たんないわよ」
バランスを崩しその場に倒れ込む。その隙を逃さず、剣で切り込んでくる。
「アグッッ‼︎」
「氷坂‼︎」
一方的に背中を切り刻まれる。
反撃しないと・・‼︎
身体を浮かせ、踵で天子の顎を蹴り上げその場を離れる。
「大丈夫か⁈」
案山子が俺のもとへ駆け寄る。
「・・・・ッ‼︎あんまり大丈夫じゃない・・」
背中から血がブシュブシュと吹き出している。どういうことだ・・?傷が治らない・・
「この剣はね、相手の気質を丸裸にして必ず相手の弱点を突くことが出来るのよ」
嘘だろ。再生力を制限されるなんて想像もしてなかった・・。
勝利の笑みを浮かべ近づく天子。
「詰みね」
俺の目の前まで来て再び剣を振りかざす。
「参ったなんて言ってないだろ」
剣を糸で止め天子の腕の関節を、糸を巻き付け回転させる。
「いっ⁈⁈」
「天狗がダメなら人間だ!」
詰みなんて冗談じゃない。やれることは、全部やってやる。
「あーーッ、鬱陶しい‼︎」
天子が剣を振り回し天子の腕を縛る糸が容易く切断される。
くそッ、糸でもダメか・・・・‼︎
「ハァハァ、ッッ‼︎ゲホッゲホッ‼︎」
戦い初めてどのくらい経った・・?もう、糸も残ってない・・。
「案山子・・大丈夫か?」
「ハァハァ、私の能力も効かないなんて・・ハァ、くそッ‼︎」
案山子の体力ももう限界だ・・。まともに立つことさえ出来てない。ここまで、強いなんて・・・・
「もう限界?詰まんないわねぇ、あたしまだ傷一つ着いてないんだけど?」
本当に詰まらないという風に溜息をつく天子。
使うしか・・・・無いのか?
「もういいわ。死になさい」
「⁈案山子‼︎避けろ‼︎」
いつの間にか案山子の後ろに回り込んだ天子が剣を振り下ろす。
「ウアッッ‼︎」
剣が、案山子の背中を捕らえ切り裂かれる。最早悲鳴を上げる力さえ残っていないのか、その場に倒れ込んだまま動かない。
「先ずは・・一人目‼︎」
剣を案山子の頭に突きつける天子。
「やめろぉぉぉぉ‼︎」
咄嗟に霊墜を糸の腕にはめ天子の剣を持つ腕を穿つ。
「ーーーーー⁈⁈」
轟音と共に天子の腕が折れる。
それと同時に、声にならない悲鳴をあげる。
「うぅ、っく、あああ‼︎‼︎何・・⁈」
腕を抑え、状況に頭が追いついて居ない天子。腕が複雑に折れ曲がっており血が垂れている。
「・・・・ッッッ‼︎‼︎」
かくいう俺は、体中に走る激痛にひたすら耐えていた。
殆ど糸が衝撃を吸収してくれたが、残りの反動がもろに体に伝わる。
一発打っただけでこれかよ・・!
でも・・!
「お前ええええ‼︎‼︎」
怒りに顔を赤く染め此方に突っ込んでくる。
躊躇ってる時間も体力も無い。このまま、グズクズやっていれば案山子が死ぬ・・!それは、絶対にダメだ!
体がいくら壊れてもいい‼︎
「案山子は、絶対守る‼︎」
再び霊墜に霊力を込め、天子の腹を穿つ。それと同時に天子の拳も俺の腹に突き刺さる。
「ッッッッッッ‼︎‼︎」
大量の血が口から吹き出る。
・・・・まだだ‼︎‼︎まだ、足りない‼︎
再び霊力を込め、穿つ。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛‼︎‼︎」
「あ゛あ゛あ゛あ゛」
天子も必死に俺を殴り倒す。
俺も負けずに霊力を込め、打ちまくる。
「バ・・・・バカヤロウ‼︎死ぬぞ・・‼︎」
案山子が必死に俺に訴えるが、そんなもの激痛と叫び声にかき消されてしまう。
もっと・・もっとだ・・‼︎
「ぐぎがぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎」
最早体が反動と攻撃に耐え切れなくなっているのか、身体中から血が垂れる。
天子も、俺に何度も打たれたため身体中の骨が砕け血が垂れている。
立っているのもやっとのようだ。
あと・・少し・・
「ッッッ‼︎」
天子が今までのダメージが蓄積したのか、ガクンと膝を着く。
「最後のおおおおおお‼︎‼︎一発だぁぁぁぁ‼︎‼︎」
天子の胸に霊墜が食い込み、爆ぜる。
「ガハッッ‼︎‼︎」
天子の口から血が吐き出され、俺の手からずり落ちる。
いつの間にか、殴り合っているうちに出来たのだろう足元の血溜まりにドチャっと天子が倒れる。
「・・・・終わっ・・た」
霊力が底を尽き、形を保てなくなった糸の手がバラバラと崩れる。
俺は、意識を手放した。
『この・・は・・大分・神を病んでいる・・。いや、狂・・・る。まさか・・両し・・を殺し・・なんて』
『何話してるんですか?先生』
『⁈な、なんでも無い。どうしたんだ?』
『来いって言ったのは先生じゃあ無いですか』
『あ、ああ、そうだったな。今、電話してるから悪いが外で待っててくれるか?』
『?分かりました。早く済ませて下さいよ』
『ああ。・・・・悪・。あ・、例の患者・・。彼には、記・が無い。ああ。彼・・あの時のことは嘘を教え・・。ああ、いつか・・教え・・思って・・。私も唯じゃ・まないだろうな。そりゃ・、彼に殺・・・しまうだろう』
「・・・・懐かしい記憶だ」
眩しい光に目が覚める。
まだ、意識がはっきりしない・・
「起きたか」
隣から、誰かの声がする。ああ、この声は案山子だ。
「良かった・・・・。無事だったか・・」
「なんで、最後の最後まで私の心配してんだよ・・」
「守るって言ったからな」
「なんだよ・・それ・・」
「・・・・守りたいって思ったんだよ。他に理由が無い」
「・・・・本当かよ」
「信用出来ないかよ?」
「・・お前は優しい。優しいと・・怖い・・」
「・・・・ふむ。なら、理由を作ろう」
「?」
「なぁ、お前さ。俺の・・家族にならないか?」
「・・あ・・え」
「俺がお前を一生守ってやる」
「・・・・」
「・・泣いてんのか?悪いな、撫でてやる事も出来なくて」
「・・・・お前・・目・・」
「気にすんな少し見えてる。んで、どうなんだよ」
「私が家族でいいのか?」
「おう、お前みたいな妹が欲しかったんだぁ」
「ふふ・・よろしく頼むよ。・・愛せよ?」
「おう、愛してるよ。もうな」
案山子ちゃんの魅力を引き出したいがために三話溶かしたぞ・・・・伝わってるといいな・・。
そういえばなんですが、氷坂君は天狗の状態でも糸で腕くらいなら作れます。以上です。
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