紐野郎と人形使いの百物語   作:刹那 久賀

36 / 50
投稿づす。


36話 紐なし天狗の浮かれ物語

「へぇ〜、あの後直ぐに鈴仙がね〜」

 

どうやら、俺が倒れて直ぐに鈴仙が現れて永遠亭まで運んでくれたという。

 

「ああ、何処からともなく現れたから流石に私も驚いた」

 

そう言うと、粥を俺の口に運ぶ案山子。

そうそう今、絶賛「お兄ちゃんはい、アーン♡」状態なのである。

というのも、昨日の一件から完全に身動きが取れずベッドに横たわった俺の面倒を付きっ切りで見てくれているのだ。

新妻ならぬ新妹の、ご奉仕に感極まって昇天しそうです。はい。

 

「おお、有難う。痛っっ‼︎」

 

「無理に身体を起こさなくていい。私がやるから」

 

俺の背中に手を回しゆっくりと起こしてくれる。

 

「悪いな。こんな事まで」

 

「いいじゃないかこれくらい。困った時は、お互い様。助け合うのが家族だろ?」

 

その言葉に、顔がほころぶ。嬉しい事を、言ってくれやがる。

こういうのを至福のひと時って言うのかな。こんなに温かい気持ちになるのはアリスの時以来じゃないかな。

 

「身体がボロボロな上に霊力がまだ戻って無いんだ。暫くは、絶対安静だな」

 

再び俺の口元に粥を運ぶ案山子。

あれだけ身体に負担をかけたからからなぁ、身体の内側も酷いことになっているだろうな。だから、粥なんだろうが。

 

「そういえば、昨日例の吸血鬼が来ていたぞ」

 

「起きたのか。良かっムグッ⁈」

 

言いかけの所に、粥を口に詰めしこまれる。

 

「はいはい。食べ終わってから喋ってな」

 

なんで、若干不機嫌だし。わけが分からないまま口をモグモグと動かす。

 

「可愛い子だったよ。すっかり、仲良くなっちゃった」

 

「マジで⁈」

 

「マジで」

 

えー、何度も殺されかけたというのに・・・・。この娘は、こうも簡単に・・・・。やっぱり、女の子同士だと波長が合うのかな。

 

「でも、そしたらわざわざ俺が会いに行く必要も無いかな。案山子が相手をする方があの娘にとってはいいだろうし」

 

投げ出すようで無責任かもしれないが、実際フランは俺の事をオモチャとしてしか見てないからな。

 

「そ、そうか?ならいいんだ」

 

「ん?」

 

何が?一体何がいいんだ?なんか、心なしか嬉しそうだな。まあ、嬉しそうならいいか。

 

「なぁ、霊力が戻るまでどのくらいって言ってた?」

 

「・・・・」

 

急にジト目になる案山子。俺、何も変な事言ってないだろ。

 

「お前は、自分の能力を過信し過ぎだ」

 

「・・・・何が言いたいんだよ」

 

「普通、こんな重傷で体力が戻るなんて絶対にない」

 

「む・・まぁ、確かに過信している所は認めるけど俺は人間じゃないし無茶はつきものだろ」

 

大きく溜息をつき、違う違うという風に首を横に振る案山子。すると、俺の鼻に人差し指をあててくる。

 

「当たり前になるなって事だ」

 

「・・・・」

 

「生命の輪から外れたお前ら妖怪や神でも血の通った生き物だ。使い捨ての弾なんかじゃない」

 

「・・・・つまるところ何が言いたいんだよ」

 

言うのが恥ずかしのか少し俯いてモジモジしている。

 

「・・もっと、自分の身体を大切にしてくれよ」

 

「グッハ‼︎」

 

「どどどど、どうした⁈」

 

こ、これは・・・・これは吐血沙汰だ‼︎なんだこの破壊力・・‼︎目と、肺がやられた‼︎

案山子が慌てて俺に駆け寄りどうしていいか分からずオロオロしている。

 

「ちょちょちょっとままま待ってろ‼︎いいい今永ひん先生をを、呼んでくる‼︎」

 

汗ってかみまくってるところも・・・・最高だ!

 

「大丈夫・・・・だ!」

 

「ど、ど、どうすればいい!」

 

最早焦り過ぎて涙目になっている。ああ、もういろんな意味で昇天しそう。

 

「おまえ、さいっっこうに可愛いな」

 

「は?」

 

案山子がピタリと止まる。一瞬の沈黙を置き、段々と案山子の顔が赤面していく。

おっと、その拳はなんだい?まさか、殴ろうってんじゃ

 

「こんんんの!アホんだらぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「ゴブゥゥ‼︎」

 

ベッドに叩きつけるようなボディブロー。あ、卑猥な意味じゃないよ?

だが、さほど痛くは無い。怪我人である俺をちゃんと気遣ってくれているようだ。

 

「全く、真剣に話してるっていうのにからかいやがって!」

 

「ごめんごめん、別にからかうつもりはなかったんだよ」

 

「じゃあ、なんなんだよ」

 

「本心だよ。いやぁ、こんな可愛いい妹が持てて幸せだなぁ」

 

「〜〜〜〜〜〜ッ⁈」

 

ボンッと、湯気が出そうなほど顔を真っ赤にする案山子。可愛い過ぎる・・抱き締めてあげたい。いっそ、抱き締め殺したい。

でも、これ以上赤面させたままだとぶっ倒れちゃいそうだからここらで勘弁しとくか。

 

「なぁ、魔理沙は来たのか?」

 

「あ、ああここに戻って直ぐに来たぞ」

 

俺の急な話題転換に慌てて平静を装う案山子。まだ、若干顔が赤い。

 

「そうか、何て言ってた?」

 

「ご苦労様。よく頑張ったんだぜだってさ」

 

「なんだあいつ偉そうだな」

 

「これが、報酬だそうだ」

 

案山子が何処からともなく大袋を取り出す。四次元○ケットかな?

 

「・・・・え?」

 

「キノコだそうだ」

 

あっはは、今度会ったらぶちのめしてやるあんにゃろう。

 

「んで?神社の方はどうなったって?」

 

「博麗神社に分社を建てることで和解したようだ。まあ、今は神社の建て直しでそれどころじゃ無いようだが」

 

成る程。なら、まだ当分は襲って来ないか。 早く力を使えるようにならないと。

 

「・・・・」

 

気付くと案山子が俺の顔を覗き込んでいる。む、そんな難しい表情してたかな。

取り敢えず、意識をそらそう。

 

「そういえば、案山子さぁ。家族になって、お前はなくない?」

 

「え?別にいいじゃないか。逆になんて呼べはいい?」

 

「そんなの決まってる。お兄ちゃ

 

「却下だ」

 

・・・・・・・・。

 

「お兄ちゃま♡」

 

「死んでも嫌だ」

 

「お兄様」

 

「ダメ」

 

「兄上!」

 

「・・・・なんか嫌だ」

 

「兄い」

 

「それもやだ」

 

「兄やん」

 

「もっと、普通な呼び方がいい」

 

「うーん・・・・」

 

顎に手を当て考える。大事な事だからね、必死に考えるよ。

一瞬おいて、案山子が何か閃いた顔をする。

 

「兄さんでいいな」

 

「えー、なんかフツー」

 

「呼ぶのは、私なんだから私の自由だ」

 

プイと顔を背け腕を組む案山子。

くそー、敢えてださなさったのにやっぱりこうなっちゃったかー。でも、まいっか。

 

「・・・・っ」

 

急に眠気が込み上げ、頭がカクンと落ちる。しかも、なんか急に体がだるくなって来たな・・・・

 

「おっと、悪いな病み上がりでこんな長話して。もう寝ろ。今は、体力回復につとめるといい」

 

「・・ああ・・・・おやす・・」

 

おもい瞼が段々と落ちていき、意識が途切れる。

 

「お休み・・兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、相も変わらず蓬莱人でも無いのに大した回復力だわ」

 

「ホント、天狗になったら一瞬で回復だわな。自分でも気持ち悪いわ」

 

あれから数週間案山子に世話をしてもらいながら体力の回復を見守り、今日に至る。

数週間のうちに特に大した事は無かったが、にとりが糸の機械が完成したというのにいつ取りに来るんだと怒鳴り込みに来た時は少し焦った。まあ、金もちゃんと払ったし大事にはならなかったけど。

歩けるようになれた所で永琳に声をかけられたため、こうして外で天狗になっている。

 

「平気な顔をしてそんな事言うけど兄さんには人間の自分への執着は無いのか?」

 

「まな」

 

「私は、もう中に入るわよ」

 

なんとも無い様な顔で身を震わせる仕草をする永琳。大して寒いとか思ってないだろ。

 

「あんな格好じゃ寒いわな」

 

「もうそんな時期か・・・・」

 

気付けば、口から白い息が出ている。天狗になるとどうやら暑い寒いの感覚が鈍るようだ。

 

「なんだかんだ言って随分と長くここに居座ってしまった。私は、もう帰らないとな」

 

「そうか。ぶっちゃけ俺もそうなんだけどな。輝夜がいいと言ってくれて置いて貰ってるものの世話になりっぱなしだからな・・」

 

それを聞いた案山子が疑問に思ったのか首を傾げる。

 

「ん?兄さんは、ここに住んでるんじゃ無いのか?」

 

「いや、まさか。唯の居候。帰れる所はあっても身寄りがない」

 

「そうだったのか・・」

 

「なに、そんな悲しい顔すんな。別に珍しい話じゃないだろ。俺もあんま気にしてないし」

 

「あ、そうだ。ならさ・・・・」

 

「ん?」

 

何やらモジモジしながら、何か言おうとしている。なんか、家族になってから随分としおらしくなったな。

 

「よ、良かったら私の所に

 

「妖怪の山の神社に行くといいわ」

 

「ん?輝夜?」

 

後ろから突然声を掛けてくる輝夜。いつの間にいたのか・・。

案山子が何か言おうとしてたけど後でいいか。

 

「貴方達は、明日から守矢神社に行きなさい。話はつけてあるわ」

 

「えー、なんでまた?」

 

「一応信仰を得るために妖怪退治をやっているようだから貴方達もその手伝いをしながら修行してきなさい」

 

「へー」

 

ん?妖怪の山の神社ってことは、博麗神社に分社を置いた例の神社か?

なんか、また変わり者だとかいて面倒そうだなー・・・・。輝夜の提案に逆らうつもりはないけど。

 

「でも、随分と都合のいい話だな。妖怪退治の手伝いをしてりゃ住まわせてくれるんだろ?」

 

「あら?私そんな事言ったかしら?貴方達が住む条件は、家事、手伝いを含めた雑用を代わってする、よ?」

 

「え?」

 

「そんな虫のいい話が通じるのは此処だけよ」

 

やっぱりかー!そういう裏ってあるもんだよね・・・・。なんか行きたくなくなって来たなぁ・・・・。

 

「ま、そういう事だから頑張りなさい」

 

言い終えると、中に入っていく輝夜。

全く、自分のためとはいえ中々面倒だ・・・・

てか、案山子はどうなんだ?さっきから静かだけど。

 

「あ、そういえばさっきなんか言おうとしてなかったか?」

 

「うぅっさい‼︎‼︎」

 

「あうち‼︎‼︎」

 

爪先を思いきり踏まれる。最早加減などない本気の蹴り。

 

「あぐぅぉあああああ‼︎‼︎‼︎いっでぇぇぇぇ‼︎‼︎何すんだバカやろぉぉぁ‼︎‼︎」

 

よく見ると再生し始めてはいるが完全にペチャンコである。

急に爪先を踏み潰すとかもう何処のヤクザだよ‼︎いや、ヤクザでもやらないよそんなこと‼︎

 

「フン!」

 

俺が何を・・何をしたっていうの・・・・




あ、あれ?アリス、少ない・・?どうしよう・・大分先までアリス出て来ないよ・・。アリス視点のお話ちょっと入れようかな。。。
誤字、脱字、感想、コメントお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。