「・・・・」
どれだけ、流れたか分からない沈黙
椅子に縛りつけられた手足は、まるで火傷でもしたかのように皮が破れ傷が深く刻み込まれている。この傷は、もう消えることは無いだろう・・
『さぁて、今日も張り切っちゃうぞー!』
ああ・・またやってきた・・。
一体彼女がどんな目的で私にこんな事をするのか・・もう考えるのはやめてしまった・・
今は・・ただ・・願う・・
こんな苦しみが終わる日を・・
『今日は、脚からいこうか☆』
「ひ・・!や、やめて・・やめて・・!ウソ・・ウソウソウソ
ブチン
「アッ・・!アッ・・!アッ・・アアアアア‼︎‼︎‼︎‼︎アアアアア‼︎‼︎‼︎‼︎」
助けて・・氷坂・・
「うん!もう、妖力の操作はほぼ完璧だね」
「あぁーー、ヅガレダー」
湖から上がり地面にだらしなく崩れる。
いや、ホント優しい顔してエグいことやらせるね。このかた達は。
水面飛び、一時間。え?アホなの?バカなの?神経削りきれて死ぬよ?
いや、急にこんな事を言っても分からんわな。
水面飛びってね、水面に脚がついた瞬間に水を操って凝固させそれが沈む前に飛ぶを繰り返すお遊びなんですがね?これが難しいんだわ。つか、神経削るんだわ。
水っていうのは液体だから形やら硬さやらがとっても妖力に敏感に反応するものだから少しでも集中を切らすと、まあ、分かっての通り水ん中にドボンですわ。
「いやぁ、正直言っちゃうと幾ら何でも早いかなーって思ってたんだけど・・うん、やっぱり君凄いよ!」
君凄いよ!じゃねーよ、神社ごと沈めるぞ。
まあ、何はともあれ妖力の操作で生活も大分楽になったしまあ結果オーライだな。
こんな事が本当に俺の力の操作に役立つのかは分からんが。やれる事は何でもやってくしか無い。
「そろそろ、妖怪退治くらい行っても良さそうだねぇ」
神社の方から出てくる神奈子いっこう。
お?案山子が巫女服?
この前着てたのは、サイズ合わせをしてたのか。
「どうだ?」
俺の目の前まで来てくるりと一回転する。
「うん、可愛い。百点満点。最高」
袖で顔を隠す、案山子。お?ニヤけた可愛いお顔が見えてやすぜ?旦那?
「妖怪退治ねぇ、わざわざしなきゃいけないやつとかいんの?」
「そうですね。日常的には、居ないみたいですが幻想郷のバランスを崩す妖怪は例外らしいです!最近、バランスが崩れて来てるとか霊夢さんも紫さんも言ってましたから、大分増えたのでは無いかと!」
ズイと、顔を突き出し近寄る早苗。近い、離れて。ああ、いや。言わないけどね。割と嫌じゃ無いから。
でも、視線が痛いんだ。こう妹様のね・・
「丁度、最近里の人間を食い荒らす妖怪が出てるみたいだから行ってくるといいさね。案山子ちゃんもあんたも力試しには持ってこいだろう」
じゃあ、一働きしますかね。最近集中集中でちょっと体がウズウズしてたとこだし。
平気な顔して早苗を送り出す辺り大した妖怪でも無いんだろう。
「では、行って来ますね!神奈子様!諏訪子様!」
『行ってきまー』
「行ってらっしゃーい」
手を振り、別れを告げ飛び立つ。
なんだ、神奈子は見送らないのか。すぐ中に入ってったけどなんかあんのかな・・?
「ねぇ、案山子ちゃん。いつから、貴女飛べるようになったのかな?」
「え?結構最近かな」
そう、今更だけど案山子が飛んでるんすよ。
いや、今更っつっても?まだ、飛び立って数分だけど。いやいや、そんなのどうでもいいよ。問題は、この娘が飛んでることにある。
え?案山子ちゃんを負ぶって飛ぶ幸せは?まさか、もう味わえない?
「何やってんだ兄さん」
「いや、兄ちゃんちょっと生きる意味を見失ってた」
空中で悶絶してたら、白い目でみられたよ。
「ここら変で降りましょう」
あれこれやっていると目的地についたようで早苗が下へ降りて行く。
人里の隣にあるちょっとした森。成る程、確かに妖しい雰囲気がプンプンするな。
早苗の後を追い、森の中へ降り立つ。
「・・・・ん?」
「どうかしましたか?」
ふと、違和感を感じ動きを止める。
早苗は、特に何も感じないようで不思議そうな顔をしている。
体に絡みついたモノを妖力で操り早苗に見せる。
「糸?」
「ああ、どうやらここはもう相手の巣らしいな」
ということは、相手も近くにいるだろう。パパっと、千里眼で見ちゃうか。
「なぁ、兄さん」
「ん?なんだよ」
動きを止めた状態で、顔だけ此方に向け話しかけてくる案山子。そんな、変態を見るような眼差しで見ないでよ。襲うよ?
「糸に気づいた辺りから挙動不審何だけど、ちょっと気持ち悪いよ?」
「え?そそそ、そんなこと無いよ?」
いや、説得力のかけらも無いね。うん、認めます。
だって、久しぶりの糸を獲得できるチャンスなんだもん仕方ないじゃん!しかも妖怪のと来た!どれだけの、強度とか考えるとワクワクしちゃうんだよ!
「兄さん、糸を回収するのは後だからね?今、するなよ?」
「分かってるって。ちゃんと妖怪退治してかッッッ⁈」
「兄さん⁈」
グンと体が急に引っ張られる。ダメだ、止まらない。
高速で引っ張られ、気付くと景色が二、三度変わっている。
「げふっ」
数分引っ張られたところで、大木に体を打ち付ける。妖力で体を強化していたから、たいして痛くない。ここは、森?大分大きいし、瘴気ってことは魔法の森か。
さて、どうやら俺から排除しようって魂胆らしいな。
「(殺気が一つ・・)」
奥の方からか・・・・。今回の標的かは知らんけど糸を使ってるから捕獲か糸を徴収したところで排除かな
「ゴチソウ・・ジョウモノ・・」
ガサガサと、奥の方から物音がし何かが出てくる。
「げッッッ‼︎」
奥の方から姿を現したのは我慢しててもつい声が漏れてしまうくらい気持ち悪い蜘蛛。しかもデカイし。ありゃあ人丸呑み出来そうだな。つか、あれは蜘蛛じゃないな。うん、だって、脚が人間の手足だし。目が蜘蛛じゃないし。
キショいわ。
大口を開けて、此方に近づいてくる。
おっと、俺を食べるつもりかな?
靴を脱ぎ、脚の指で体を縛る糸を一本つまむ。
「ガッッ⁈」
俺に噛みつこうとした直前で蜘蛛妖怪の糸を使いつるし上げる。
体の糸をほどき、蜘蛛妖怪の元に赴く。近くで見ればみるほどキショいわ。
「悪いけど俺糸に関しては天才なんだわ。抵抗の隙なんて与えないよぅ」
蜘蛛妖怪をグルグルと回し脚を千切る。もう、これで抵抗出来んだろ。
ふむ、触った感じだと最高の糸だ。強度も申し分ない。
うん、気に入ったわ。
丁度、機械も持って来てるしここらの糸全部回収しちゃおう。
キュルキュルキュルキュル
あぁ・・いつぶりかなこの音聞くの・・
そういや、ここって魔法の森か・・
アリスなにやってるかなぁ・・。あれから、一度も顔見せないけど嫌われちゃったのかなぁ・・。
・・・・。いや、考えるのはやめとこう。気分が沈むだけだわ。
「つか、多いな。もう、回収出来ん」
丁度いいところで糸を切る。こんだけあれば、困ることは無いかな。
さて、案山子と早苗に合流せんと。
「兄さーん!兄さーん‼︎」
噂はしてないけど、噂をすれば何とやらだな。
案山子の声がする方に大きく手を振る。
「いた!」
俺を見つけると駆け寄ってくる案山子。大分息を切らしているが一体そんなに慌ててどうしたのやら。
「おう、そんなに慌ててどした?」
「急いでここから逃げるぞ‼︎あり得ない位の量の妖怪がこっちに来てる‼︎」
「⁈」
妖怪が⁈どいうことだ?急になぜ⁈
いや、考えるのは後でいい。
「早く神社に戻るぞ!彼処なら簡単に入って来れないはずだ!」
そう言い終えると俺の手を引っ張り、飛び立つ案山子。
ん?今、なんか見えたような・・
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
案山子の手を振りほどき、何かが見えたところまで行く。
「おい‼︎そこまで、来てる‼︎急げ‼︎」
何かを拾い上げる。
「早くしてくれ‼︎」
上海・・人形・・?
「あぁ、クソ‼︎悪い兄さん‼︎」
ゴッと、頭に鈍い衝撃が走り意識が落ちる。
「・・・・ん?ここは・・?」
目が覚めると、視界に飛び込む眩しい光。どうやら、神社の中では無いらしい。
「起きたか、兄さん」
少し、遠くの方から案山子の声が聞こえる。
まだ、頭が揺れるようで意識がはっきりしない。
「ここは、妖怪の山の中腹だ。神社まで、後少しなんだが天狗に絡まれて・・どうして、こんなに警戒が厳しいんだ・・?」
成る程、身を隠してるって訳だ。また、天狗かよ。本当、面倒な奴らだな・・。
「早く戻ろう。嫌な予感がする」
千里眼を使い、周りの様子を見る。天狗の死体が転がってるが、案山子がやったのか?なかなかやるな。
「俺にピッタリついてこい」
千里眼で天狗がいる位置を把握しながら視界に入らないように進む。
「なぁ、兄さん。顔色が悪いけど強く殴りすぎたか・・?」
「・・・・大丈夫だ。殴られたからじゃないから気にすんな」
「・・・・」
不味いな・・明らかに動揺しちまってる。
でも、これは・・。この上海人形は・・。アリスのもんだ。
人形には、修復不可能と思われるほどの傷がつきいくらか血もついている。そう、明らかに交戦の跡。傷から察するに一方的にやられている。
そして、一番問題なのは汚れや血の跡から察するに数週間から数ヶ月は前のもの。
アリスは、修復不可能だろうときっと持って帰るだろう。なのに、彼処で放置されていた。
そう・・それはつまり・・
「・・・さん!」
つまり・・!
「兄さん‼︎」
「お⁈なんだ?」
気付くと目の前に、案山子の顔がある。きっと、何度も呼びかけていたんだろう。とっても、顔が近い。
「着いたよ神社」
「ああ」
案山子が神社を指差す。それに、軽く返事を返すが逆に怪訝そうな顔をして俺の顔を覗き込む。
「何かあったのか?」
「ああ、いや気にすんな」
「・・・・」
俺の返しに若干不満を抱いたようだが、潔く引き下がってくれた。
俺の目の前から離れると、神社の中へと入っていく案山子。
俺も、中に入るか・・
「お二人とも無事で良かったです!案山子ちゃんが、兄さんを探しに行くと言って行っちゃった時はどうなるかと思いましたよー」
俺と、案山子を見るや否や安堵のため息をつく早苗。
神奈子と、諏訪湖はその後ろで何やら唸っている。
「魔法の森で妖怪がねぇ・・こっちにきて、まだ大して経たないからよく分からないが、におうな・・」
「君たちを狙ったのだとしたら何かあるんだろうね・・。でも、だとしたら何の目的で・・」
そうだ、不可解だ。話を聞く限り、妖怪の群れは統率されている。
あれだけの、妖怪を従えるとなるとかなりの大物だろう。だが、そんな奴が何のために・・?
「この問題は、私たちの方でなんとかしとくからもう休むといいよ。なんだかんだ、疲れたでしょ」
諏訪子が早苗に目で合図をすると、奥の方に消えていく早苗。飯でも作りに行ったのだろう。
「後は、やってくれるらしいから兄さんは休め。顔色が酷い」
「ああ」
そうだ、冷静になれ。今、何を考えようと俺には何もできない・・。
今は、休もう・・。きっと、何かの悪い冗談だ。
寝室として、用意された部屋までフラフラと歩いて行き、布団も敷かずに横たわる。
「・・・・大丈夫ですか?」
「ああ・・」
ひょこっと、扉から半分顔を覗かせる早苗。
なんでここにいるんだ?
「ああ・・じゃ無いですよ。全然大丈夫な顔してません」
「・・ほっとけ」
心配してくてるっていうのに、酷い返しだ。自分が嫌になるよ全く・・。
「そんなこと言ってますけど、思わせぶりなんですもん」
「・・・・はは」
乾いた笑が部屋に響く。
そっか、そうかもな。確かに、「声をかけて欲しかった」かもしれない。
小利口やつ・・・・。あざと可愛いっていうのは、こういう奴か?
「お前は、外から来たんだよな?」
「そうですよ?」
「なら・・聞いてくれるか?俺のトラウマを・・」
さて、何処まで堕ちるのか・・
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