「今回は、里の連中の後方支援。出来るだけ多くの妖怪を退治、若しくは指定された場所まで追い込めとのことだ」
食事を取りながら人里から来た依頼を早口で言い上げる案山子。
もう、完全に巫女服が普段着化している。
俺はというと、糸があるおかげで生活に不自由は大分消えたが案山子の「はい、アーン♡」が名残惜しいところだ・・・。
「ん?均衡はどうしたんだ?あんまり、妖怪退治しちゃダメだろ」
「それが、詳しい事はよく分からない。だが、こうやって神奈子や諏訪湖が依頼を受けた上で私たちに回しているということは何かしら理由があるんだろう」
まあ、確かにそうだ。最近あった、大量の妖怪と何か関係しているのか・・。
取り敢えず、それはさておき。
「なして、真夜中?眠いよ」
「我慢してくれ。表面上は、早苗がやっていることになっている上に私達は人里の連中に会うわけにはいかないからな」
あー、成る程。そういうことか。確かにこのタイミングで会おうものなら確実に俺が退治される側になるわな。
「さて、行こう」
食べ終わると同時に箸を起き、立ち上がる案山子。
今回は、夜中。妖怪が、活発に活動してる時間帯の上に視界も悪い。気を引き締めて行こう。
「そういや、早苗は何やってるんだ?」
僅かな月光を頼りに人里を目指し空を飛ぶ俺と案山子。満月といえど、暗い事には変わりない。
ふと、早苗を見ていないことに気づく。てっきり、早苗も来るものだと思っていたが。
「早苗は、魔法の森で妖怪達の動きを見張ってる。真夜中だから、奇襲をかけられたらたまったもんじゃないからな」
成る程・・よく考えてらっしゃる・・。確かに、こんな暗さじゃ奇襲なんてかけられたら気付く間も無く死ぬな。
「しっかし、すんごい雪積もってんなぁ。毎年こんな積もるのか?」
「そうだな。こんなもんだ」
上空から見てわかるほど地面に積もる雪は多い。歩いて行ったら何時間かかることやら。
つか、まだかな。そろそろ、着く頃じゃ無いか?千里眼を使い周りの様子を探る。
「お、丁度だな。案山子!ここだぞ」
「ん」
少し先に行っていた案山子を呼び止め、引き返させる。
真下は、真っ暗でよく見えないが民家らしいものは見える。
「さて、出来るだけ退治か指定された場所に追い込むんだったな」
「そうだ。でも、神奈子様達いわく信仰を集めたいから出来るだけ狩れとの事だ」
「ほお。じゃあ、狩るでいいか。追い込むのも面倒だしな」
「どうせ、雑魚しか居ないだろうから手分けして出来るだけ多くの妖怪を退治しよう」
「了解」
そう言うと、下へ降り暗闇の中へと消えていく。
じゃあ、俺は反対側でやるか。
案山子が降りて行った場所と人里を挟んで反対側に赴く。勿論、人里の中には入らない。
「よし、じゃあ始めるか」
地面に降りる。足がズボッと積もった雪に入る。
うわぁ・・真っ暗で何も見えん・・
まあ、いいや。テキトーに歩きながら結界を張ろう。今は、機械もあるし妖力が使えるから何でも出来る気がしゅる。
何があるかも分からず、前へ歩みを進める。
「あ、一匹かかった」
張った結界に早速違和感。振動から、察するに人間サイズの何かがかかってる。
潰す前に確認しといた方がいいかな?でも、こんな時間に出歩く奴なんて居ないよな。
「いいや。えいっ!」
少し離れた所から寄生と、共に何かが潰れる音が聞こえる。
今の声は、妖怪だな。うん。こんな感じでガンガン殺ってこう!
〜一時間後〜
「・・・・」
粗方ここらの妖怪は片付けたわけだけど・・・・。
一匹だけかからない奴がいるな。糸を器用に除けながらこっちに近付いて来ている。
こりゃあ、戦わないとダメかな。
妖怪の位置を千里眼で確認してから結界を解除する。
「ーーーーーッッ⁈」
解除した途端妖怪が俺との距離を詰める。首だけ動かし回避しようとするがやや遅れ頬が抉られる。
即座に反撃を仕掛けるが避けられ、逃げられてしまう。
「くそッ‼︎」
急いで妖怪の後を追う。
別に妖怪の逃げた方には案山子がいるから俺が追わなくてもいいし、さっきの傷だってもう治ってるから別にいいんだけど。
なんか、気に食わん。
「おっと、人里に入りやがった・・」
まあ、今みんな寝てるだろうし多分大丈夫だよね。
簡易的な塀を飛び越える。中々、逃げ足が早いやつだな・・。つか、雪ウザい‼︎走りにく‼︎
「飛びゃいいのかッッ⁈」
腹に鋭い痛みが走り体が勢い良く飛ぶ。
数十メートル飛んだ所で木々にぶつかり止まる。
「ウッ‼︎ゲホッゲホッ‼︎何だ⁈新手ーーーー⁈」
村が・・・・消えた?
目の前には、白い雪原が広がるばかりで先程あった人里が嘘のようである。・・・・能力?
「人里に何の用だ?」
「⁈」
俺が飛ばされた所から声。
そちらに目をやると、二本の角と尻尾が特徴的な緑髮の女性。二本の角には、血が着いている。
「あんたこそ何だ?」
「それは、人里の事を言っているのか?それとも私か?」
「・・・・」
一瞬間を置く。
その間に案山子の様子を確認する。どうやら、先程追いかけていた妖怪と対峙しているようだ。
「私は、ワーハクタク。人里なら私が消した」
「消した・・?里の人間もか・・⁈」
「ああ、そうだ。と言っても、里の歴史だがな」
「元に戻るのか・・?」
「ああ」
なら、良かった。一瞬ビックリしちゃったよ。しかし、面倒な事になった。話を聞く限り、こいつはこの里の住人ぽいからな。
「で?里に何の用だ」
ギッと鋭い眼光で睨みつけられる。
さて、どうしたものか。説明をするのも面倒だし、戦うのも面倒だな。
・・・・だったら、時間を稼いで案山子が残りの妖怪を排除した所で逃げるか。
「何の用も無い。何をする気も無い」
スッと身につけていた全ての糸を地面に落とし、人間に戻る。
その行動が理解出来ないのか逆に警戒されている。
「なら、何故ここにいる?」
「敵意は無い里に危害を加えるつもりもない。勘弁ししてくれ」
「・・・・?」
訳が分からないという風な顔をするワーハクタク。
つか、ワーハクタクって何?初めて聞くんだけど。てゆか、案山子ちゃん早くして!人間の体だから寒くて仕方ないよ‼︎若干体がブルブル震えてる。
「お前・・よく見たら前ここで暴れた奴に似てるな」
「ゲッ」
俺の反応を見て確信したのか、明らかに表情が敵意のものになる。まさかこんなばれ方をするなんて。
マズイって!戦う気無いんだけど!どどどどうしよ!
「お前が連れ去ったあの娘はどうした?」
「え?ああ、案山子?元気!元気だから!大丈夫!ワタシトモダーチ」
何言ってんだ俺。明らかに煽ってるだろ。なんだよ、ワタシトモダーチって。ほら、若干表情が険しくなっちゃった!
「口でなら何だって言える。証拠はあるのか」
「え、あーっと、ある!ある!あります!」
ぐぐっと、脚に力を入れている様子のワーハクタク。それを制止するように声をあげる。
「少し待ってくれ!あと、少しすれば来るから!」
「・・・・」
まだ、信用していないのか目を細めて俺を見る。クソぉ〜、こんなことになるなんてなー。
千里眼で案山子の様子を見るとどうやら妖怪は、既に片付けすぐそこまで来ている。
「ん?兄さんなにやってるんだ?」
俺を発見した案山子が俺の元までよってくる。グッドタイミングだ!案山子!助かります!
「か、案山子!お前の口からこのワーハクタク様に説明してやれ‼︎俺は、無実だって!」
「は?」
状況が飲み込めず、首を傾げる案山子。
一方、ワーハクタクの方は案山子が俺を兄さんと呼ぶ異様な光景に目を疑っている。
「な、なんだあいつ。新手の妖怪か?」
「あ、いや。お前あいつの事知らないのか?」
「全然」
どゆこと。
知り合いじゃ無いんかい。ただ、あのワーハクタクが現場に居合わせただけなのかな。
なんか、急に眠くなってきた・・
「まあ、いいや。案山子は、生きてるから。帰っていい?」
「あ、待ってくれ!どういうことだ⁈説明してくれ!」
えー、やだー。なんて言えないよなぁ。でも、今から長話とかしたくないし・・。
「明日でいい?必ず来るからさ今日は、もう帰らせて。つか、来て」
「わ、分かった。何処に行けば会える?」
「守谷神社。んじゃ」
「・・・・眠い」
「・・・・」
「・・・・ですね」
皆さんお疲れのご様子でウトウト。案山子は、もう起きてるか分からない。
なんで、こんな朝早くに叩き起こされたんだっけ・・・・。あぁ、そうだ。昨日のハクタク・・なんだっけ?そんな奴が、来るってことでスタンバってるんだ。そうだ。
「・・・・zzz」
「寝ちゃダメだ!寝たら死ぬぞ!起きろ案山子」
「・・・・もう、私はダメみたいだ・・兄さん・・私の分も生きて・・くれ」ガクッ
「案山子ぃぃーーー‼︎」
「何やってるんですか・・何を・・」
冷めた目で俺と案山子のコントを見る早苗。若干キャラ変わってやすぜ。
眠すぎてハイになってるんです。すみませんね。こんな事でもしていないと起きてられ無いです。
ドンドンドン
「き、来やがった・・!奴は俺が食い止める!そのうちにお前らは逃げろ・・!」
「いやだ!私も一緒に残る!」
「馬鹿野郎!そんな事したら、彼奴は何のために死んでったんだ・・」
「馬鹿野郎は貴方ですよ。いいから、入れちゃいますよ?」
『ショボーン』
あからさまに落ち込む俺と案山子。
早苗が冷たいよぉ・・・・。
ガラッと扉を開く音が聞こえると、昨日のハクタクの声が聞こえる。
「里に住んでいる上白沢慧音というものだ」
「話は聞いてますよ。どうぞ、上がって下さい」
早苗に、誘導されたと思われるハクタクが俺たちのいる部屋まで案内されて来る。
「では、早速話を聞かせてもらって良いか?」
「・・・・」
「・・・・」
・・・・え?誰?なんで、俺らの前に平然と正座してんの?俺、こんな人知らないぞ?確か、昨日のハクタクは確か角と尻尾が生えてて髪の毛も銀髪じゃなかったはず・・・・。てことは、違う人?俺達に何の用だ?
知ってるかと、案山子の方に目配せをするが案山子も首を横に振るばかり。
「な、何だ。そんなにジロジロ見て」
「あ、えーっと、すみません。どなたですか?」
「ああ、そうだったな。満月の夜だけ容姿が変わるんだ。お前と同じ類のものだと考えていい」
あ、昨日のハクタクさんでしたか。
というか、こいつもハーフってことか?だから昨日目の前で天狗から人間に変わっても驚かなかったのか。
「私は、上白沢慧音だ。人里で寺子屋を開いている」
「俺は、夜麻鳥氷坂。ここの、居候」
案山子は、紹介しなくていいよな。
・・・・ん?寺子屋?あー、そっか。一昔前の世界だったね。ここ。
「話す前に、一つ。案山子と俺の事を知ってどうするつもりだ」
「これから、聞く話次第だ。話次第によってはその娘を引き取る事も考えている」
「ほお」
「なっ!私は、そんな事頼んでな
「まあ、そう焦るな。話を聞いてからだ」
「・・・・!」
ハクタクの発言に案山子が突っかかるがハクタクに軽く流されてしまう。それでもなお反論しようとする案山子を手で制止する。
「まあ、取り敢えず話してからだ」
〜青年説明中〜
「ふむ・・。そうだったか・・。先ずは、昨日の無礼を謝らせてくれ。すまなかった」
正座したまま深々と頭を下げるハクタク。勿論、俺の正体とかそこらの話はしていない。
「して、結論は?」
「そうだな、私はお前の近くにその娘を置いておくのが不本意とだけ言っておこう」
そりゃそうだ。人里で暮らすより俺といる方が何倍危険なことか・・。
まあ、でも返さないけど。
「出来れば、里で引き取りたい所だが本人が歩むと決めた道だ。とやかく言う筋合いは私には無いな」
ハァと溜息をつきヤレヤレとハクタク。
随分とお節介焼きな奴だ。話したことも無く共通点が同じ里の人間ってだけでここまでしちまうんだ。こいつと、案山子が俺と出会う前に出会っていたらまたこいつの人生も違う幸せをつかんでいたのかな。
気付くとハクタクが俺をジロジロと見ている。
「少し話は変わるんだがお前は妹紅という女性を知っているか?」
「ん?知らないな。そいつがどうかしたか?」
「いや、彼女がよくある男の愚痴をよくこぼすんだが、お前が彼女の言う男の容姿に似ているものでな」
「ほお。そいつも里の人間か?」
「いや、里の人間じゃあない。蓬莱人だ」
蓬莱人・・輝夜や永琳みたいに死ねないっていうあの蓬莱人か・・。
しかし、何処で俺が繋がっているかは分からないから一概に関係ないとは言えない・・。
「もしかすると忘れてるだけかもしれないから一度会ってみないと分からないな」
「そうか」
ふむ、と顎に手を当て少し考えるハクタク。直ぐに何かを閃いたような顔をする。
「もしよかったら私の所にたまにでいい、顔を出してくれないか?私としてもお前たちの事が気になる。里の者達には私から説明しておこう」
「おお、それは助かるな。そういう事なら毎日だっていいぞ」
「そうか、それなら良かった」
なかなかいい提案だ。流石に人里と交流が無いままだと動きづらいし、早苗や神様達に迷惑かけちゃうかもしれないし。
「さて、私はそろそろ帰るとしよう。これから、寺子屋での授業が控えている」
「あ、その妹紅って子は何処へ行ったら会える?」
「迷いの竹林で迷えば会えるんじゃ無いか?」
うわっ、テッキトー。でも、まあ馴染み深い所だしまあいいか。つまり、迷いの竹林でウロウロしてりゃ出てくるってこった。
「引き止めて悪はかったな。じゃ、近いうちに人里に降りると思うからよろしく」
「ああ」
その言葉を最後に部屋から出て行くハクタク。
神社からハクタクが出て行ったところを見計らってその場に寝転ぶ。
「さっきの方は帰られたんですか?」
「ああ、つい今しがた」
ハクタクが出て行ったほうの扉から出てくる早苗。何やら封筒のような物を持っている。
「なんだ?それ」
「これですか?むふふ・・昨日の依頼の報酬です!」
「おお!もう来たのか。よかったな」
「よかったなっていらないんですか?」
「俺はいいよ。居候の身だからな。案山子はどうか知らんけど」
案山子はどうなのかと聞こうと案山子を見ると小さく寝息を立てている。
「まあ、その話は後々だな」
「ですね」
ふふっと案山子の様子を見て笑う早苗。
俺は、ハクタクとの話ですっかり起きちゃったしどっか散歩でもするか。
「お出かけですか?」
「新しい依頼とかは無いだろ?」
「ありませんけど、気を付けてくださいね」
「ああ」
丁度良いしその妹紅とやらに会いに行こう。迷いの竹林だったな。
「今まで飛んで行き来してたから実際に歩いて見るとどの方向に歩けばいいのか全く分からないな」
完全に迷子です。あ、子はおかしいか。迷・・迷・・迷子でいいか。
真ん中あたりに降りたけどちゃんと発見されるかな。
しかし、この竹・・成長する速度異常じゃないか?糸をくくりつけておいたらあっという間に上のほうに・・。
「迷ったのか?」
お?妹紅様の登場か?
振り返るとカッターシャツにもんぺという非常によく分からない格好をしている銀髪の少女。
「あんた妹紅さんであっ・・て・・」
るか?と言おうとするがそれどころでわない。その少女の顔は、俺の顔を見た途端言い表せないほど恐ろしい形相に変わってい
「見つ・・けた・・」
「えーーーーッッ⁈」
突然顔面に繰り出される炎の拳。見事直撃し吹き飛んだ先で竹林を薙ぎ倒す。
「あ゛あ゛あ゛あ゛‼︎‼︎‼︎‼︎」
体に火がつき激痛と身体中を包む熱さに悶絶する。顔面は、半分程焼け焦げ頬骨が抉りとられている。
ゴロゴロと転げ回ると残雪のおかげで火が消火される。
「ハハ・・アハハハ‼︎随分な歓迎の仕方をしてくれるじゃないのぉ・・‼︎お前が妹紅とやらかどうかなんてもういい」
ぶち殺す‼︎‼︎
へ、へへモコたんとの出会いを強引にねじ込んでやったよ!
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