紐野郎と人形使いの百物語   作:刹那 久賀

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投稿づす。


45話 望む物語

夢を見た

 

懐かしい

 

真実の夢

 

 

俺には何も無かった

 

 

 

「君、此処でなにやってるんだい?」

 

「・・・・」

 

道端で生き倒れている俺に声をかける中年の男性。顔には皺が深く刻み込まれかなり苦労をしてきた事が手に取るように分かった。

 

「君、名前は?家は?家族はいるかい?」

 

無言の俺にたて続けに質問をする男性。

その全てに無言で返す。答える気力も体力も記憶も無かった。だが、この男性は頼れると思った。だから、頼った。

 

「腹・・減った・・」

 

「・・・・!うーん、家に・・くるかい?」

 

質問の裏にある意図は分からなかった。だが、一つ首を縦にふった。

これが、この人達との出会いだった

 

これが、俺の記憶の中の歪んだ記憶の始まりだった

 

 

「父さんこれは、こっちでいいかな?」

 

「ああ、悪いな」

 

あれから数ヶ月。

記憶も行く当ても、家族もいない俺を男性は引き取ってくれた。

 

子供のいない中年の夫婦。彼らは、優しかった。その頃の何も無い俺にとっては光にさえ見えた。明日を生きる希望にさえなり得た。

 

父さんは、先生だった。何処のどういう先生だかは知らないが。

そのような職業柄、俺の勉学の面倒も見てくれた。お陰様で世間一般の二十歳程度の学力はある。

俺も何か役に立ちたかったのだが、力仕事程度しか出来ることが無かった。

 

「ご飯ですよ〜、ってまた手伝ってもらってたの?」

 

「ああ、助かってるよ」

 

「全く、良いわね〜お父さんは。あーあー、お母さん淋しいなぁ〜お父さんばっかりなんて〜」

 

「え、えー・・この間一緒にお買い物行ったじゃんか〜」

 

「ふーんだ」

 

母さん。俺を色んな所に連れ出しては色んな経験をさせてくれた。落ち込んでいる時も悲しんでいる時も喜んでいる時も何時も一緒にいた。

 

二人とも本当に優しかった。

毎日毎日、絆が深くなるのを実感出来た。まるで本当の家族のように。嫌、家族以上に家族だった。

 

 

 

 

だが、こういうモノは続かない。

丁度二十年位か。あいつらに俺が人間の類の物では無い事を嗅ぎつけられたのは。

 

「父さんちょっと行ってくるね」

 

俺は、あっけなく攫われた。

 

「いやー、楽しみだなー!本当にこういうモノがいるなんてね〜。ワクワクしちゃうなぁ〜!」

 

「・・・・!・・・・!!」

 

「先ずは頭からみてこうか」

 

「 ⁉︎ンンンッッッ⁈

ッッッ⁈ ン‼︎‼︎」

 

数々の拷問のような研究にとことん付き合わされた。生きているのが本当に辛かった。というような弱音すら吐けなかった。

だが、そんな中でも希望はあった。

男は約束したのだ。研究に満足したら元の生活に戻してあげると。

 

それだけが光だった・・・・

 

 

 

「ごめんね〜、君達の自称両親?僕んトコに押しかけて来たもんだからサー。殺しちゃったぁ〜あはは」

 

「 」

 

 

 

 

 

気が付くと何もかもが終わっていた

 

何もかもが壊れていた。

 

俺の関わった物全て。

 

善悪、敵味方関係無く。

 

 

「俺が関わったから・・・・」

 

 

 

「俺が父さんと母さんを殺したのか・・?」

 

 

好き勝手に自分の記憶を改竄した。記憶がグチャグチャになったのはこれのせいだ。今なら分かる。

 

だが、それだけならまだ良かった。

父さんと母さんの死体を目の当たりにした。

 

ワケガワカラナカッタ

 

その後、俺はどういう経緯だか精神的なケアを受けることになる。

 

ケア・・今思えばケアなんかでは無かった。俺の両親が悪者で酷い事をされていた、という嘘丸見えの偽りの記憶を刷り込まれただけ。

 

嘘だと直ぐわかる筈だった・・。だが、俺はその嘘の記憶にすがった。

 

そう、嘘の記憶に俺は助けられたのだ。自分自身を。

 

 

 

「この患者は大分精神を病んでいる。いや、狂っている。まさか、両親を殺したなんて事を信じるなんて」

 

「何話してるんですか?先生」

 

「⁈な、なんでも無い。どうしたんだ?」

 

「来いって言ったのは先生じゃあないですか」

 

「あ、ああそうだったな。今電話してるから悪いが外で待っててくれるか?」

 

「?分かりました。早く済ませて下さいよ?」

 

「ああ。・・・・悪い。ああ、例の患者だよ。彼には記憶が無い。ああ、彼は知っているんだがあの時のことは嘘を教えている。ああ、いつか本当の事を教えようと思っているよ。唯じゃ済まないだろうな。・・・・。そりゃあ・・私は彼に殺されてしまうだろう」

 

結局、俺は誰にも望まれてはいなかったし望まれてはいけなかった・・

 

 

 

俺には何もなかった

 

 

 

 

 

 

 

「目覚めましたか?」

 

「ああ、お陰様でな」

 

目を開けるとそう眩しく無い光が目に差し込む。

確か、鈴仙に助けられたんだったな。案山子は居ないようだ。

 

「どうですか?今の気分は」

 

「・・・・微妙」

 

鈴仙の質問に素直に応える。鈴仙は、表情一つ変えない。

身体を起こそうとすると物凄い脱力感に襲われ身体が再び倒れてしまう。

 

「半覚醒・・って言うべきなんでしょうかね。半分覚醒、半分天狗の状態です。異質の身体が一つの体で共存するなんて不可能なんです。弱い方は強い方に喰われる。自然の掟ですね」

 

成る程。力が出なかったのも途中で力尽きたのもそれが原因って訳ね。

 

しかし、輝夜の言ってたことはこういうことだったのか。今回は、昔の記憶が引き金になって力が使えた。

 

思いの強さが結界の解除に関わってた。過程が違うにしろ輝夜が戦闘において引き出そうとしていたのは何らかの強い感情。

 

「・・あははは・・あはははははは‼︎‼︎‼︎」

 

「・・・・」

 

あぁ〜、面白い。今度会う時が楽しみだなぁ。

 

「あの後どうなった?」

 

表情を切り替え雰囲気を変える。

異変の事やら此処が何処なのか案山子はどうしたのか気になる事が山ほどある。

 

「氷坂さんが気絶されてから直ぐに近場で貴方と魔理沙さんの治療を始めました。此処は、星熊さんのお宅ですね」

 

「勇儀が?」

 

コクっと一つ頷く鈴仙。

あと、魔理沙が治療ってどういうことだ?彼奴は、魔力切れ的な感じで終わったんじゃ無いのか?無傷だった気もするんだが。

 

「勇儀さんは、氷坂さんの力を感じて既に近くまで来ていまして氷坂さんの様子を見ると直ぐに此処まで案内して下さいました」

 

「成る程。で、魔理沙は一体どうしたんだ?」

 

「結論から言って命に別状はありません。ですが、能力が壊れました」

 

立て続けに質問する俺に表情一つ変えずに答え続ける鈴仙。まるで、繰り返してやり方は分かっているかのように。

 

「壊れた・・ねぇ」

 

「原因は言わずとも分かると思いますが」

 

誰を気遣う様子も無く飽くまで機械的に説明する鈴仙。

原因は俺か。しかし、そんな特殊芸を持ち合わせてたのか。

 

「貴方の覚醒時の能力は、時間差、抵抗はあれど無自覚に何もかも壊していきます」

 

ふむ、能力に関しては即効性なのな。ん?だったら俺が覚醒してる状態で俺に能力を使った奴は他にもいた

 

「まさか、フランが死にかけてたのって」

 

「・・・・安心して下さい。命に直結はしません。まあ、能力は壊れてますけどね」

 

「なんだそうか。案山子は?」

 

「そちらも心配はいりません。彼女の能力では無く木槌の能力なので」

 

やっぱ、そうか。でも、木槌はジ・エンドって感じか。案山子に悪い事したな。後で謝んないと。

 

「異変の方も解決しましたよ。核融合の娘が異変の犯人だったみたいです。もっとも、もう核融合の力は使えないみたいですが」

 

「解決・・ねぇ」

 

どういう経緯であの娘が核融合の力を手に入れたかは知らんが彼奴に触れて分かった。彼奴には水素の供給元がいる。

あの感じ・・・・まさか

 

「なんだい、起きたのかい」

 

「おお、勇儀。久し振りだな。案山子も一緒か」

 

ぞろぞろと部屋に入ってくる二人に明るく接する。二人で話していたのかな。その表情も暗い。

 

「悪いな案山子。木槌壊しちまって」

 

「別に兄さんが好きで壊したわけじゃ無いだろ」

 

別に不機嫌という訳でも無くいつもの調子で言う案山子。

案山子は立ったまま、勇儀は俺の横にどかっと胡坐をかく。

 

「はぁ〜、お前なぁー地霊殿をあんなに壊してからに。直すのは鬼なんだぞ?」

 

「あははは、こりゃ申し訳ねぇ!」

 

頭をぺちっと叩き大笑いする。

力自慢の鬼様にゃ、打ってつけだな。

手に持っている杯をぐいっと傾ける勇儀。

 

「ぷはぁ!まあ、手伝って貰うから覚悟しな!」

 

「ま、俺がいれば百人力、いや、百鬼力だからな期待してろ」

 

「あはは!頼もしいねぇ〜!」

 

額に手を当てくくくと笑う勇儀。そして、もう一度杯を傾ける。

 

「心配したがいらん心配だったね。私はちょいと失礼するよ。用があるんでね。後は頼んだよ」

 

「はい」

 

一例する案山子。そんな案山子を他所に俺は再生した片方の腕を布団から出し手を振る。

 

「では、私も失礼します」

 

「ああ、またな」

 

勇儀の後を追うように帰って行ってしまう鈴仙。

先程とは、打って変わってとても静かな空間が残る。

 

「なあ、案山子」

 

「なんだ?兄さん」

 

勇儀と鈴仙が出て行った方向を見つめる案山子に静かに声をかける。

声をかけると即座に俺の隣に来てくれる。

 

「俺が闘った核融合を操る娘。彼奴には、水素の供給元がいる」

 

「ああ、分かってる。しかも、その供給元・・。この件には、守谷神社が関わってる。今回の異変の原因は核融合の娘の思い上がりにあるけど、一体何を考えてるのか・・」

 

一体何をしようってんだ?あの娘の能力は、もう壊れちまってる訳だけど、理由が分からん限りまた異変が起きるかもしれない。

 

「取り敢えず地霊殿にでも行くか?」

 

「そうだな・・ん?」

 

「ん?どうした?」

 

「・・・・」

 

ジッと扉を見つめる案山子。突然止まってどうしたのやら。

うん?何やら人の足音が聞こえる。

足音が扉の前で止まり、扉が開かれる。

 

「ってのわぁぁぁぁああ⁈」

 

「な、なんでお前が⁈」

 

「わ、わ、わ、別に襲いに来たわけじゃ無いよ⁈」

 

驚いて手を上げて降参ポーズをするのは件の核融合の少女。腕にはめられていた多角柱の棒も脚にはめていた鉄の塊のような物も外されている。

てゆか、こいつ能力使えないから安心していいのか。

 

「んじゃあ、なんなんだよ」

 

「御礼をしに来たの」

 

「御礼だ?」

 

少女の謎の発言に首を傾げる俺と案山子。別に御礼をされる事をした覚えは無いんだけど。

だとしたら、何か企んでる?でも、そんな風に見えないし。

 

「まあ、取り敢えず座れよ」

 

じっくり話を聞くことにした。

 

 

「ま、まあ理由はわかった」

 

「うん」

 

どうも、話してみるとこいつ、そう悪い奴では無い。大分頭が緩いようだが・・

御礼と言うのは、あの時の自分の能力の暴走を止めてくれたから、との事。

正直、初めに聞いた時は目が点になった。疑いすらしたが、本人は本気らしい・・。命を助けたと言えば聞こえはいいが助けようとして助けた訳では無いし、俺が奪った物を考えれば御礼なんて普通出てこないだろう、と言っても空は命を助けてもらった方が大きいよと言うばかり。

本当に不思議な子だ・・。いや、愚直な娘・・か。

案山子は、まだ信用してないようだけど

 

「私が来た理由はこれだけだからもう帰るね」

 

「おお、ちょっと待った」

 

さらっと帰ろうとする空を慌てて止める。本人が来たのだから異変の詳しい所を聞かねば。

 

「何かな?」

 

「お前、誰に水素を供給してもらってた?」

 

「え?ああ、えーとね」

 

俺の質問に、何故か頭を抱える空。嘘が付けるようなやつでも無いし言えない理由でもあるのか?

 

「ごめんね、忘れちゃった」

 

「ッッッ!」

 

その一言にひっくり返る俺。その様子を見てあはは・・と申し訳なさそうに空は頭をかいている。

え、えー・・・・。そんな大事な事忘れる?普通。

 

「んー・・まあいい。他に知ってそうな奴はいるか?」

 

「んーとね。あ!お燐!お燐が知ってると思う!」

 

「そうか。なら会いに行くしか無いな」

 

行く手間が省けた、と思ったんだけど。それぐらいいいか。

地霊殿の前に作った穴ボコとか渓谷はどうなってんだろうなぁ。

 

「あ、すっかり地霊殿に行く気になってたけどお燐っていうのは地霊殿にいるのか?」

 

「いないよ?今は、多分燃料の回収に行ってると思うから戻るのももう少し後かな」

 

「む、そうか・・」

 

今直ぐと言うわけにもいかないか・・。仕方ない、この際だから息抜きでもするか。

 

「空、お前今日暇か?」

 

「お燐が帰って来るまで暇だよ〜」

 

「そうか。なら旧都を案内してくれないか?」

 

「うん!いいよ!」

 

まるで子供のようにニコッと笑顔を作り頷く空。

本当に純粋な心を持つというのか、何というのか・・全く可愛い娘だ

 

「・・なんだよ」

 

「別に」

 

どうやら、案山子は嫉妬している模様。案山子も十分可愛いな。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

そう、皆々に声をかけ戸を開ける。

取り敢えず書き置きだけは残しておいたけど。勇儀の所にまた顔を出そう。

 

「ッッッ⁈危ねぇ‼︎」

 

何かが飛んで来るのを察知し反射的に空を突き飛ばす。

瞬間胸を何かが貫く。

 

「ッッ‼︎ゴフッ!逃げろ・・空‼︎案山子‼︎空を連れて逃げろ‼︎」

 

「兄さ

 

「早くしろ‼︎‼︎」

 

戸惑いながら俺の命令に従い呆然とする空を連れて逃げる案山子。あの方向は地上か。

 

「・・・・態々地底にあんたらが一体何の用だ?諏訪子、神奈子」

 

「神様相手に邪魔をするなんていい度胸してるねぇ。お前」

 

俺の胸に刺さる槍のような物を引き抜き俺を睨む諏訪子。

槍のような物は、そのまま地面に崩れ落ちる。土か。そういえば、そんな能力だったか。

胸の傷が完治したのを確認して神奈子を指差す。

 

「空に水素を与えていたのはお前だろ?何故そんな事をした」

 

「へぇ、気付いてたのかい。なぁに、ちょっとした技術革新さ」

 

「技術革新?」

 

「そう。幻想郷に良かれと思っての事なのよ。まあ、あの娘がまさか地上を侵略しようなんて考えるなんて予想外だったけどねぇ」

 

そう空達を追い掛けようともせずに余裕顔で語る神奈子。何故追い掛けようとしない・・?

 

「だから殺そうとしたのか?」

 

「その程度の理由であんな適役を殺さないよ。原因は、あんたさ」

 

「なに?」

 

「あんたがあの地獄鴉の核融合を操る能力を壊したからさ。だから、あの地獄鴉から八咫烏を剥離させなきゃいけない」

 

そう・・か。成る程な。軽い神降ろしを空はやってるのか。そして、その八咫烏の能力を操る能力を俺が壊したのだ。

希少な神の力を顕現させた空から神を取り返すために殺すのは自然。当然の事だ。

 

「当然の事だし、俺が原因だけど悪いがその意向には従えん」

 

「ふざけるな」

 

今まで見たことのない背筋も凍るような目つきで俺を睨む諏訪子。流石の殺気だな。まるで空気が割れたように思えた。再び口を開く諏訪子

 

「お前の我儘にいつまでも付き合ってやれると思うなよ」

 

「大体あんた人助けのつもりかい?外で何があったか知らないけどあんた、やってる事が矛盾してんの分かってるのかい?」

 

「矛盾だと?」

 

「は?気付いて無いのかい?あんた本音じゃ

 

「はは・・・・あははは‼︎あははははは‼︎‼︎そうだ‼︎そうだよ‼︎俺には、通すべき筋なんて無い‼︎正義も無ければ大義も無い‼︎全て俺の為だ‼︎」

 

神奈子の言うことを掻き消すように大笑いする。それを呆れたように見下す神奈子と諏訪子。

こいつらには、敵わない。全力で戦っても時間稼ぎにすらなるかどうか怪しい。

案山子と空の動きは糸を絡めてあるから動きは分かる。ならば、案山子達の身に異変が無い限り合流は避ける。

だとすれば今取るべき行動は時間を稼ぐことと逃げる事だ。

 

「悪いな勇儀、鬼の皆。また迷惑かけちまう」

 

そう一人で心の中合掌する。

霊墜で地面を穿ち飛び上がる。それを追い掛けようと構える諏訪子と神奈子。そうだ、そのまま来い。直前まで引きつけた所で天井を脚の霊墜で穿つ。

 

「な⁈」

 

すると天井が衝撃に耐えかね崩れ始める。諏訪子は慌てて逃げようとするがもう遅い。

 

「仲良く生き埋めになろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

「・・痛つつ・・やっぱ即席のネットじゃ保たないか」

 

完全に生き埋めを堪能しております。埋まる直前に潰れないようネットを張ったが案の定壊れた。

こういう時に天狗の力って便利だな。死なないから。

とっとと脱出して逃げないとな。

 

「しかし、どう出たものか・・」

 

糸でこの瓦礫やら土をどけるのは?流石に無理がある。なら、霊墜か?それもダメだ。こんなキッツキッツな状況でやったら反動で身体が潰れる

 

「どう出たものか・・」

 

あまりゆっくりも出来ないし・・ん?なんか糸がひっぱられてないか?糸が巻きつけてある機械が忙しなく回転している。

 

「ん?一体なんーーーんんんん⁈」

 

とうとう一本の糸の長さが限界に達し身体が強く引っ張られる。引っ張られた事により瓦礫の山を突き抜け脱出成功。

あー、そうだった。案山子と空に糸着けてたっけ。不幸中の幸いって奴だな。

 

「さて、逃げるか」

 

 

案山子side

 

「うぇ⁈うわぁぁぁぁ⁈」

 

「え⁈どうし、うわぁぁぁぁ⁈」

 

ドゴォォォン

 

とても目も当てられない状況

 

 

 

「ん?今何か聞こえたような・・気のせいか」

 

地上へと繋がる穴を進んでいると何か悲鳴のようなものが聞こえた気がした。・・・・気のせいだよな。うん。

さて、何処へ行こうか。守谷神社へ帰ることは論外。永遠亭もあまり気が進まない。もし探すなら先ず彼処だろうしな。だとしたらもっと他の場所か。

 

「いや、敢えて近くで動きを観察した方が逃げるのも楽ってもんだな。俺には千里眼があるし」

 

うん、そうしよう。という訳で妖怪の山だな。

丁度地上に出た所で妖怪の山の方向に身体の向きを変えとばす。

哨戒している天狗に気付かれないように野宿でもするかな。全快って訳じゃ無いから極力戦闘は避けたいところだ。

 

そう遠くない距離だからか直ぐに着いた。目立たないように地面に降り此処からは徒歩で行く。千里眼を発動させる。

 

「(7・・8・・9・・10匹ってところか)」

 

どういうことだ?今回はやけに警備が厳重だな。山の麓である上に一部に固まって10匹・・幾ら何でも度が過ぎてやしないか?何かあったのか?

疑問を胸に抱きつつ天狗の警戒を掻い潜り川にまで辿り着く。此処でいいな。即席のハンモックを作り木と木の間にかける。寝込みを襲って来るやもしれない妖怪対策に結界も張る。

 

「まだ、日も沈んで無いがやることも無いし寝るか」

 

ハンモックの上に飛び乗り寝転がる。割と身体が披露していたのもあって直ぐに意識が遠のいていく。

 

 

 

 

 

「・・・・?」

 

ふと異臭がして、目が覚める。

これは・・血の匂い?なんだ?

身体を起こして周りを見渡す。だが、あいにく真っ暗であるため何も見えない。よく寝た感じがあるから別に真夜中って訳じゃあ無いだろうが。仕方ない近くまで行って確かめるか。

 

「よっと」

 

ハンモックから飛び降りる。すると、何か水溜りに飛び降りたような音がする。

血だまり・・?あ、大体察した。周りに落ちている肉片を手探りで探す。

 

「やっぱり・・」

 

肉片をつまみ上げる。

俺を襲おうとした妖怪が見事結界に切り刻まれてるって感じか・・。なして学習せんのこの方達。まさか、こんなデカイ血だまりが出来るほど突っ込んで来る馬鹿がいるなんて。

警戒される前にここを早々に離れないとな。取り敢えずこのお肉は昼飯にしよう。

ハンモックに使った糸を回収しその場を立ち去る。

 

「ふぅ、困ったな〜騒ぎが大きくならなきゃいいけ

 

「おや?貴方は人間ですか?」

 

「ッッッ⁈」

 

天狗に姿を変え全速力でその場を離れる。結界を張ってたから油断してた。いつから俺の背後に?というより、この結界の糸に触れずに俺の背後まで来たのか?

辺りが暗くよく見えないため千里眼で俺に話しかけて来た奴を見る。

 

「ハァ、ハァ天狗じゃ・・無い?」

 

「あ、すみません。驚かせてしまいましたね」

 

俺の驚き様に謝る女性。いや、少女?頭にシニョンキャップを被っており右腕は包帯で巻かれていて見えない。俺と逆の腕か・・何か似たものを感じる・・・・。そして、何より目についたのは鎖のついた鉄製の腕輪。

こいつ・・鬼か?いや、そんな事なぞどうでもいい。こいつが俺の敵か敵じゃ無いか。それが問題だ。

 

「・・?人間じゃない・・貴方ここの哨戒天狗ですか。仕事の邪魔をしてしまいすみません。失礼しました」

 

「・・・・」

 

そう言うと去って行く女性。彼奴の正体は分からないが助かったか・・

俺の事をそこらの天狗と勘違いしてくれたようだ。

 

「キャ‼︎」

 

ん?

再び女性に視線を向ける。すると、右腕が俺の糸で真っ二つになっている上に服が切り刻まれている。え?何やってるのこの人⁈

 

「何やってんだあんた‼︎」

 

直ぐに結界を閉じ女性の元に駆け寄る。

マズイマズイ、早く縫合してやらないと!ってあれ?血が出てない?そもそもこいつ右腕が無い?俺と同じような事を包帯でやってたのか?

 

「なんで糸の中に分かってて突っ込むんだよ・・死にたいのか?お前」

 

「へ?糸?」

 

「いいから、これ着て前隠せよ」

 

即席で編んだ先程まで女性が着ていたような服を似せて作った服を手渡す。

見えてんぞ、いろんな物が。

 

「へ?」

 

服を受け取りゆっくりと自分の姿を確認する女性。こいつ俺に近寄る時どうやって近寄ったんだ?

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

「ブヘッッ‼︎」

 

予想外のアッパーカット。防御する間も無くもろに喰らう。

なん・・て・・力だよ・・

 

ガクッ

 

 

 

 

 

 

 

ガッ

 

ガッガッ

 

何者かが俺の安眠を妨げている・・。まあ、これくらいなら許してやろう。なに、俺は寛大だ。

 

スヤァ

 

ガッガッガガガガッ

 

「痛いわボケェ‼︎」

 

拳、大きく空振り。

クッ‼︎空振ったか・・‼︎

 

「ん?・・・・ここは」

 

何やら何処かに運ばれて来たらしい。周りには和室の落ち着いた空間が広がっている。うーん・・どうして俺寝てたんだっけ?記憶が・・。

つか、さっきまで俺の頭を突いてたの誰?

 

「ひょっとしてお前か?」

 

何やら物凄い大きい鷲が此方を見つめている。あの嘴で突つかれてたっぽいな・・。なんの恨みがあって突ついたんだよ。

おっと、そんな場合じゃ無い。此処が何処かだな。取り敢えず周りの様子でも見るか。

千里眼を使う。

 

「ん?此処は、妖怪の山だな。こんな所あったっけ?」

 

哨戒天狗がチラホラ見えるから此処は妖怪の山で先ず間違いない。だが、こんな屋敷を見たことが無い。

可笑しいなぁ・・・・。

 

「方術で隠してるんです」

 

「ん?っておわ⁈」

 

慌てて飛び出そうとすると足に何かが引っ掛かる。あ、俺布団で寝てたんだ。

そのままバランスを崩して畳の上をゴロゴロと転がる。

 

「あ、また驚かせてしまいましたか。何度もすみません」

 

「あ、いやうん」

 

こういうのは咲夜で慣れたと思ってたんだが。どうも敵か味方か分からん状況だと驚いて仕方ない。

 

「先程はすみません。どうですか?具合は?かなり強く殴ってしまったと思うのですが」

 

「ああ、割と壊れにくいから大丈夫。大丈夫。して、あんたの方は大丈夫かよ」

 

「少し切り傷がありましたがもう治りました。心配には及びません」

 

さいで。やっぱ、妖怪の類か。

ふむ、方術ねぇ。家ごと隠せるなんて便利なもんだ。もし使えたら神奈子や諏訪子は無理だとしてもそこらの妖怪程度の目なら欺けるだろう。

 

「あんたの方術っていうのは妖術の類のものか?」

 

「いえ、厳密に言うと違います。興味がありますか?」

 

「そうだな。是非覚えたいね」

 

そう言うと何やら嬉しそうにその場に立ち俺に指を差す女性。

 

「なら仙人を目指しなさい。仙人を目指せば自ずとそのような術も使えるようになります。そしてーー」

 

 

 

「私の弟子になりなさい」




狂人が普通にしてるのって一番怖いかなと思った次第です。はい。
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