紐野郎と人形使いの百物語   作:刹那 久賀

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投稿づす。


46話 修行物語

「そうです・・そのまま・・」

 

「・・・・」

 

今俺は基礎鍛錬、もとい仙人になるための修行をしている。

そしてこの俺の修行の面倒を見ている女性の名は、茨木 華扇、というらしい。どうやら種族は仙人。

何故見ず知らずの俺を仙人への道のりに誘ったのか、不明な点は若干あるが別に損をするわけでもないので修行している。

そうは言っても仙人になる気なぞ微塵もなく教えられる術を粗方覚えたら出て行くつもりだ。

案山子や空に目立った動きは無いし、神様達もどうやら神社でゆるりと過ごしている様子。案山子は俺以上にしっかりしてるから当分は任せて問題ないだろう。俺が合流しても危険が及ぶだけだしな。

まあつまり、今の所かれこれ一週間平和なのだ。

とは言っても、来週から寺子屋に出勤せにゃいかんのだが。それだけが唯一のネックだな・・。

 

「おわっ⁈」

 

「こらっ!集中しなさい!大怪我をしますよ⁈」

 

初心者に大怪我するような鍛錬させないで欲しいなぁ・・。怪我しても治るんだけどさ。

 

「ダメですね。今の貴方は雑念が多すぎます」

 

「むぅ・・・・」

 

ハァ、と呆れたように首を振る華扇。

すみませんね、ちょっと考え事してたんですよ。別に、本気出せばこんなん大した事無いし〜。

 

「何ですかその面倒臭そうな顔は!」

 

「はい!」

 

おっと、いつの間にかそんな顔をしてたみたいだ。

華扇に指摘され慌てて姿勢と顔を直す。

 

「はあ、貴方は何も分かってませんね。私はーーーーー」

 

うわぁ・・この説教長くなりそう・・。別に華扇の説教は嫌いじゃない。こういう風に説教されたり言い合うのは割と好きだ。

だが、華扇がいつも説教の最後に言う一言が引っ掛かるのだ。

 

「私の前弟子は、この程度直ぐにこなして見せましたよ」

 

別に嫉妬とか比べられるのが嫌だとかそういうのじゃない。華扇が最後にこの一言を言うと必ず表情が一瞬曇るのだ。

そして、

 

「あーもう!何かムシャクシャして来ました‼︎今日は飲みますよ‼︎蔵からお酒をありったけ持って来て下さい‼︎」

 

こう言うのだ。

 

「今、昼間だぞ?」

 

「いいんです!修行も今日はこれでお開きです‼︎早くお酒を持って来なさい!」

 

ダメだこりゃ。

 

彼女が俺を誘ったのも前弟子に関係してるのか・・。この世界でいない者の事を引きずるのはやめて欲しいけどなぁ。主に八つ当たりやらを受けるのは俺だから。

この人従える動物達だけには優しいからな。

 

 

 

「おりゃ〜〜もうおシャケはらいんれすか〜〜〜〜!次もっれきらはーーい!」

 

「うるせぇ〜〜!お前が持ってこい‼︎」

 

ベロンベロンである。もうどれだけ飲んだなんて覚えてない。というか、飲み比べ?をした辺りから記憶が曖昧だ。別に寝たわけでも無いんだがこらかなり重症だな・・。

たまになら良いんだが、こいつ説教始めるといつも最後はこれだもんな・・。

 

「こりゃ〜〜お師匠に何れすかぁ〜〜その口の聞き方は〜〜!修行です、一から修行し直しですら!」

 

つか、こいつ酒豪にも程が有る。どんだけ飲むんだよ・・。もう、俺限界なんだけど・・

 

「ほりゃ〜もう飲めらいんれすか⁈これかられすよ〜〜!」

 

「ちょ、やめ!ギブギブ!ギブがぼばばばば‼︎」

 

 

 

 

 

 

「あー・・・・うー」

 

頭痛に悩まされながらの起床。あーえと・・昨日は確か華扇に無理矢理口に酒を押し込まれて・・あと・・ダメだ思い出せん。

上体を起こし周りを見渡す。

 

「割と早朝に目覚めたな・・ってそんなことどうでも良くて」

 

毎度の事ながらなんつー散らかりようだ。酒の瓶が部屋を埋め尽くすように広がっている。

華扇が起きるまえに片付けとくか・・。全くいい顔して寝てるよ。

 

「よいしょっと」

 

シャンハーイ人形に瓶を片付けさせる。卓袱台に零れた酒の後は綺麗に俺が拭き取る。

華扇は放置でいいか。風邪とかひかないよな。向き直り再び卓袱台を拭こうとするた足が引きずられる。

 

「あはは〜、貴方は氷坂とは大違いですね〜・・・・」

 

「・・・・俺は前の弟子じゃないっつの」

 

寝ボケている華扇が俺の脚を掴んで前弟子と勘違いしているようだ。

どんな夢を見ているのやら。

 

「腹・・減ったな」

 

そういえば、人間に体を戻してたな。たまには、ちゃんと何か食うか。華扇も俺も食事をあまり必要としないから食事という概念が若干消え失せつつあるんだよな。

朝食・・作るか。

 

 

 

 

「う・・ん・・うっ頭が・・」

 

「お、起きたか。おはよう」

 

ダルそうに体を持ち上げ俺に視線を向けてくる華扇。

俺は、挨拶だけ済ませると再び、作ったというか先週辺りにとった妖怪の肉を頬張る。

一応焼けば美味しいから今度またそからへんの奴を狩って食べてみよう。

 

「おはよう・・ございます」

 

まだ眠気が冷めないのかぼーっと此方を見つめ続けてくる。

あんまり食べてるとこ見つめないで欲しいんだけど

 

「顔洗って来いよ」

 

「はい・・そうします」

 

眠気まなこを擦りながら出て行く。

お、あれは?

棚の上に紙包みを発見。羊羹じゃあないですかーー。肉食い終わったらデザートとして食べよ。

しかし、少々人間の身体には多いなこの肉。華扇にでも食わせるか。

 

「ま、デザートは別腹だけどねん♪あー

 

「それ・・私の羊羹・・」

 

「あ・・」

 

食べようと口を開けたまま後ろからの渦渦しい声に停止。

なんて禍々しい声出しやがる・・!

 

「返して下さい‼︎私の羊羹んんん‼︎」

 

「い、嫌だぁぁぁぁ‼︎」

 

ほぼ半泣きで迫り来る華扇。それに反射的に逃げる。

い、いいじゃんか!羊羹くらい!甘い物は久し振りなんだよー!

 

「私の羊羹んんん‼︎」

 

こいつ・・!食欲で我を忘れてる・・!沈めなきゃ‼︎

走り回りながら羊羹を口の中へと運ぶ。

 

「うみゃあ・・」

 

口の中一杯に広がる強い甘みについ顔が緩む。

その場に立ち止まり羊羹の全てを堪能する。あぁ・・久しく味わっていなかったこの強い甘みと刺激・・

 

「至高・・!アぶシッ‼︎」

 

突然頭に飛来する拳骨。その拍子に舌を嚙み霧吹きの如く血が口から吹き出す。

お、ォォォォ・・舌が、舌がぁぁぁ‼︎

舌の痛みに膝をついて口を抑える。

 

「私がとっておいた羊羹・・うぐっひぐっ」

 

そんな泣きそうな面して随分エグいことやってのけるよこの人は。治りゃ何でもしていいとか思ってないだろうな。

 

「こひぇ食っひぇ元気だひぇよ」

 

「いりませんよこんなものぉ・・」

 

俺が差し出した肉を見るなりはたき落とす涙目の華扇。

うわっ!俺のなけなしの親切をはたき落としやがった!てゆか、羊羹一つでマジになるなんて仙人気ないなー、もー。俺が言えたもんじゃ無いけど。

あ、舌治った。

 

「うう・・貴方には罰として人里に羊羹を買いに行ってきて貰います」

 

「え、無理無理。流石にそれは無理」

 

「どうして‼︎貴方が‼︎罰を‼︎拒めるんですか‼︎」

 

大声をあげて俺に突っ込む華扇。そこまでポテンシャル上げて怒らなくていいのに・・・・。

こいつには、羊羹の有無が死活問題に繋がるらしいな。

 

「いや、ふざけてない。もし行くにしても方術で身を隠しながらじゃないと人里になんて到底行けん」

 

そう、真顔で言うと俺の顔と雰囲気から事の重大さを察したのかハァ、と諦めたようにその場に正座をする

 

「詳しい事情は知りませんか分かりました。私が人里まで同行します。その間私が方術で貴方の身を隠します。それで問題無いでしょう?」

 

「おう、バッチリだ」

 

「ただし!貴方には別の罰を用意するので覚悟しておいて下さい!」

 

「・・・・はい」

 

ビシッと俺を指差し華扇が宣言する。嫌な予感しかしない。

食べ物の怨みって怖い・・・・

そんな感じで落ち込んでいると、華扇が立ち上がって俺に手を差し伸べる。

 

「さあ、行きますよ。人里に」

 

 

 

 

 

 

一週間ちょい振りか・・・・。変わんないな此処は。

関所のような簡易的な門を潜り抜け人里に入る。

いつも通りという風にそれなりに賑やかである。歩いているとたまにはしゃぎ回る子供とぶつかりそうになる。

お、今のは前の喧嘩してた子か。随分と仲良くなってまあ。

 

「おや?知り合いですか?」

 

俺が子供達にずっと視線を向けている事に気が付いたのか俺にそう話かける華扇。

 

「まあ、そんな所か。里の中だからもう隠さなくていいよ」

 

「そうですか」

 

「あぁ、ありがとな」

 

そう言うとふぅ、と一息つく華扇。

すると、周りの人間達が驚いたように此方を見る。

あははー・・そりゃ突然現れればそうなるよね。

人間達のビックリ顔を面白おかしく拝んでいると先程の子供二人がよってくる。

その子供達にしゃがんで目線を合わせる。

 

「あー先生ーー!」

 

「よ。元気してたか?お前ら」

 

「うん!先生は?」

 

「俺も元気だよ。お前ら今

 

そこまで言いかけた所で止まる。

気付けば周りの人間達が俺をチラチラ見て何か呟いている。

この子達まで俺のせいで悪く言われたら先生失格だな。

 

「なーに?先生ー?」

 

「いやなんでも無い。ほらとっととどっか行け。俺とこのお姉さんでこれから大人のお遊びをするんだ」

 

『キャーキャー』

 

俺がそう言うと何処か楽しそうに走り去って行く子供達。

子供達が見えなくなったのを確認して立ち上がる。

 

「先生だったんですか?」

 

「まあな」

 

「・・・・いいのですか?子供達ともっと話をしたかったんじゃ無いですか?」

 

「いいんだよ別に。俺は、此処じゃあまりいい評判はたってないんでね子供達にまで迷惑かけてらんねー」

 

華扇に目を合わせないようにして一つ溜息をつく。あー面倒臭い。

そのまま、振り返らずに前へ歩き出す。それに着いて来る華扇。

 

「羊羹買う前に一つ店、寄っていいか?お前の分奢るからさ」

 

「え?」

 

俺の言う店が何の店か?と尋ねられる前に店を指差す。俺が指差す店はそう、蕎麦屋である。

すると、仕方ないですね、という顔をして先に店に入っていく。

満更でもなさそうだな。おい。

 

「へい!いらっしゃい〜!」

 

「お、今日は空いてんのな」

 

今日は今までと打って変わって全く客が入っていない。メニューを取る男も暇を持て余して居たようでカウンターに持たれかかっていた。

 

「どうしたんだ?今日はガラガラじゃないか」

 

男の隣の席に華扇と腰掛けながらそうきく。俺がそう聞くと苦笑いを浮かべる男。

 

「いやぁ・・不運な事に妖怪が此処で暴れてくれてねぇ。怖がって皆逃げてっちゃうんだよ」

 

確かに・・言われてみればそのような痕跡が所々に見受けられる。

そこらの店だとことごとく妖怪厳禁みたいな感じだけど、妖怪も人間も快く店に招き入れてるのは此処だけだもんなぁ。

 

「まあ、こういう事は前にもよくあったんだ。妖怪も人間も店に招き入れてる時点で仕方ない事だと割り切ってるよ」

 

柄にも無く愛想笑いを浮かべる男。だが、その笑みは引きつっており辛そうにも見える。

こういう奴を見てると何だか

 

ー壊したくなるー

 

応援したくなるよなぁ〜。

 

「⁈」

 

『ん?』

 

「どうしました?」

 

「どうした華扇」

 

「あ、いえ何でも」

 

俺と男が何かに驚いたような華扇に疑問の目を向ける。変な奴だな。

 

「まあ、頑張ってくれよ。俺はここの蕎麦が好きなんでね」

 

「そう言って貰えると嬉しいよ」

 

「んじゃあいつもの三つ頼むよ」

 

「オーダー入りまぁす‼︎里蕎麦三丁‼︎って三つ?」

 

注文を言ってから疑問符を俺の顔を見て浮かべる男。

その男の顔を見て男の座る席を指差す。

 

「一緒に食おうぜ。俺の奢りだ」

 

すると男は一瞬遠慮するような素振りを見せたが俺の顔を見て笑いながら諦めたような顔をして割り箸を取り出す。

 

「お言葉に甘えさせて貰うよ」

 

「おう。んでさあ、聞きたいことがあるんだけどさあ」

 

「?何かな?」

 

男がポットに手を掛け器にお茶を入れる。そのお茶をゆっくりと啜る男

 

「あんた慧音と結婚してるって本当か・・?」

 

「ブッ‼︎げほっげほっそ、それは誰から?」

 

「おー落ち着け落ち着け。鼻から垂れてるぞ色んなもんが」

 

カウンターに置いてあるちり紙を取って男に渡す。それを、噎せつつ有難うと言って受け取る男。

男が口と鼻を拭き終わった所で先程の質問に答える。

 

「慧音から聞いたよ。あんたと結婚してるって、自慢して来た」

 

「恥ずかしいからよしてくれって言ってるんだけどなぁ・・。大変だったろう?」

 

「あんたもな。いやーしかし本当に結婚してたとはなぁ。意外だ」

 

「はい、里蕎麦三つね〜」

 

『あざーす』

 

「有難うございます」

 

三人同時に受け取り同時に蕎麦を啜る。うん、上手い。いつ食っても美味いな。ぶれない。

 

「僕はね、僕達が出した料理を君達お客さんが食べる時に見せる表情が好きなんだ」

 

俺の顔をまじまじと見てそう言う男。おっと、いつの間にか顔が緩んでたかな?

 

「ほほぉ、これまたテンプレやね」

 

「あはは手厳しいなぁ。でも、本当だよ。食べた時に見せてくれる表情が怒りだろうと喜びだろうと呆れ顔だろうと好きなんだ」

 

そう言いながら男は遠い目をする。何処か、過去を振り返っているようなそんな気がした。

 

「妖怪だろうと人間だろうと関係無くね。自分が他人に何か出来ている事が喜びなんだ」

 

何処か物悲しそうな、でも何処か嬉しいようなそんな複雑な表情をする男。きっとこいつも外で何かあったんだろう。無ければ此処に残る理由も無いんだが。

 

「でも、博麗の巫女に言ったらあんたも所詮新参者ね、って言われちゃったけどね。あはは」

 

「あはは確かに言われてそうだ」

 

幻想郷で自分含め変わり者は数々見てきた。だが、この男ほど純粋に幸せを追う変わり者は久し振りに見た。素直に応援したいけど、少し嫉妬するな。 ー 壊してやりたいー

 

「・・・・」

 

「ん?どうした?華扇」

 

じーっと此方を華扇が睨んで来る。おうおう、蚊帳の外だったからちょっと不機嫌か?いつの間にか食い終わってるみたいだし。

最後の一口を一気に掻き込み飲み込む。

 

「んじゃあ、もう行くわ。勘定頼む」

 

「はい、今日は有難う。なんか元気出たよ」

 

「なに、話を聞いただけだ。自信もてよ」

 

金を払い男の肩をバシッと叩く。そして、振り返り店を出て行く。その後を華扇が着いて来る。

さて、次は羊羹か。

 

「そういや、華扇。言い忘れてたんだが、また来週も人里まで送ってくれないか?寺子屋に教えに行かなきゃ行けなくてさ」

 

和菓子を売る店まで歩いて行く道のりで華扇にそう尋ねる。

しかし、イマイチ反応がない。

 

「おい、華扇。華扇んん‼︎」

 

「あ、はい!分かってます!送ります!」

 

「聞こえてんなら返事してくれ。どうした、さっきっから変だぞお前」

 

そう俺が言うとまた驚いている様子。今時の仙人ってみんなこうなの?俺、全然分かんないんだけど。

駄菓子屋に着き、何か考え事をしている様子の華扇は放って置き中に入る。

 

「この羊羹二つくれ」

 

愛想の無いおばさんにそう告げお金を支払う。羊羹を受け取ると足早に店を出て行く。

 

「ほら、行くぞ華扇。帰る時もちゃんと隠してもらわないと困るんだからしっかりしてくれ」

 

「・・・・はい」

 

小さく一つ返事をするとまた考え込む華扇。大丈夫かよ・・・・。

胸に不安を抱きつつ帰路に着いた。

 

 

「なぁー華扇ー、何に悩んでるか知らないけどサー」

 

帰宅途中妖怪の山にて未だに悩み続ける華扇に声を掛ける。方術も問題無く発動させてくれているので放って置いても問題は無いのだがいつも小うるさい奴が此処まで無言で居られると調子が狂うのだ。

 

「とりま、これ食って元気だせよ」

 

「・・・・」

 

羊羹を華扇に差し出す。

一瞬何を言ってるのか分からないという顔をする華扇。すると、笑い始める。

 

「ふふふ、貴方は理想の殿方というものからは遠くかけ離れた存在ですね」

 

「おい、サラッと失礼な事言うな」

 

俺の差し出した羊羹を受け取ると開封して一口、一口と食べていく。

一口食べるたびに口元が緩んでいる。

 

「まあ、そうですね。深く考える事でも無かったかもしれません。あ」

 

「ん?」

 

何かを思い出したように頭を上げ羊羹を食べる手を止める。すると俺に向き直る。

 

「今、貴方に罰を与えましょう。達成条件は、生きて帰ってくることです」

 

「は?達成条件って何んんんおおおおおお⁈」

 

土の中に身体が引き摺り込まれて行く。天狗になって空を飛ぼうとするが効果が無い。まるで、底なし沼のようにもがけばもがく程身体が沈んでいく。

そして、とうとう頭までもが引き摺り込まれる。

 

 

 

 

 

「・・・・え?」

 

気が付いた。思わぬ浮遊感によって。状況が理解出来ない。俺は、地面に引き摺り込まれたんだよな?だったらなんで俺は落ちている?なんで、地面に向かって落ちている?

というか、そんな事よりそろそろ飛ばないとマズくね?

 

チラッ

 

「ウワァァァァァ‼︎‼︎すぐそこじゃねぇーーかよーー‼︎‼︎」

 

もうすぐそこまで迫ってきていた地面から逃れようと全力で飛ぼうとするがこのままだと間に合わず地面に衝突する。

とっさの判断で身体に糸を何重にも巻きつける。

 

「ゴフッ‼︎‼︎」

 

強い衝撃が身体を襲う。

 

「っ〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 

身体中の骨が逝ったと同時に再生し始める激痛に囚われる。身体が景気良くバキバキと音を立てながら再生していく。

こりゃ、ちょっと休まないとキツイかも・・。

それにしても、ここは・・・・花畑?

寝そべった状態で首だけ動かし周りを見渡す。うわぁ・・随分と花折っちゃってるなぁ。わー、花の妖精に殺される〜

そんな、アホな考えを巡らせていると目の前が光の反射か何かがキラッと光る。

 

「っぶねぇ‼︎‼︎」

 

突然顔面に飛んでくる何かを回避し

身体を回転させてゴロゴロと転がる。

そして、先程自分がいた場所を見ると一人の女性が立っていた。

どうやら、俺の顔面に突き立てたのは傘の先端らしい。

しかし、一番注目すべきなのは女性の顔。明らかにブチ切れだ。

 

「こんなにお花を・・‼︎殺してやる・・‼︎」

 

これは、ヤバイなぁ。

別に、花を潰したから怒るこいつがヤバイとか、うわっマジで花の妖精じゃんヤバイって意味じゃ無い。ただ、見てわかる力量の差。こいつ、かなりヤバイ。

少なくともまともに戦って勝てる相手じゃ無い。そんな、相手に背を向けるなんてもってのほか。

だったら

 

「ご、ごめんなさい!わざとじゃ無いんです‼︎気付いたら落ちて

 

「死ね‼︎」

 

「ひいいいい⁈」

 

突然構えを取り極大のレーザーを此方に向けて放つ女性。それを、全力で回避する。

なんて太いレーザーだよ⁈普通にマスパの倍は、あるんじゃ無いのか⁈

やっぱ、勝てる相手でも逃げれる相手でも誤って許してくれる相手じゃ無い!しかも、地の利は多分彼方にある。此処で戦うなんて論外。先ずは、場所を変えねば。

何かいい場所は・・・・妖怪の山?ダメだ、哨戒天狗に袋叩きにされる。迷いの竹林?ダメだ、下手したら永遠亭が巻き添えを食う・・・・よし、彼処にしよう。

女性から逃げるように飛び立ち、目指すは霧の湖。

 

「待て‼︎」

 

案の定追いかけて来る。諦めてくん無いかぁ。まあ、あの怒りようじゃあ当然か。

女性が弾幕を此方に向けて放つ。かなり濃い弾幕だが避けれないことも無い。回避しつつ霧の湖を目指す。

流石に全力で飛んでいたため直ぐに湖が見える。湖を確認し、丁度真上まで来た所で霊墜を装備し段々と減速する。

女性が段々と距離を詰めて来る。

ギリギリまで引きつけるんだ・・。あと、少し・・・・

 

「今だ‼︎」

 

女性を十分引きつけた所で霊墜を進行方向と反対に発動。すると、反動で逆方向に猛スピードで進む。

 

「な・・⁈」

 

不意を付かれ隙だらけの女性の身体を霊墜をはめた腕で穿つ。

 

「うっ・・くふっ‼︎」

 

嘘だろ⁈無傷かよ・・⁈

そこらの力のある妖怪でも吐血、もしくは腹に風穴が空く程の威力を持つ霊墜を喰らって・・⁈

驚きのあまりその場で静止してしまう。

 

「ハァ‼︎‼︎」

 

止まった俺に攻撃を浴びせる女性。拳が右肩を捉え、鈍い音を立てながら真下に飛ばされ湖の中に沈む。

 

「コバッゴボボボ」

 

呼吸を満足に出来て居ないのと体に走る激痛のせいで窒息しそうになる。

 

「(・・・・窒息?)」

 

待てよ・・冷静になれ。俺の最大の攻撃が通用しない以上、あいつを倒す方法は無い。・・・・これしかない。水中戦・・・・我ながらまたアホな事を考えたもんだ。

かなり、命を削ることになる。もしかすると、死ぬかもしれない。

でも、今の博打であっても最善の方法。なら、迷う必要は無い。

霊墜を水面に向かって打つ。すると、大きい水飛沫が湖の上を覆う。

これで、視界をある程度制限出来たはず。

勢い良く湖から飛び出し女性の背後に回る。案の定視界が効かないらしく水飛沫を浴びないように傘を広げている。

 

「沈め‼︎」

 

「ッッ⁈」

 

女性の肩に霊墜の威力を乗せた踵落としを浴びせ、湖に落とす。その拍子に傘が飛ぶ。

女性を追いかけ大きく息を吸い込み自らも潜る。

女性の姿を捉える。湖から出ようとしている。

 

「(逃がすか・・!)」

 

霊墜の推進力で女性に突進する。

水中では、空のように飛ぶことが出来ないため常に動く時は霊墜を打つ必要がある。つまり此処からは、こっちの力が尽きるか相手の息が持つかの勝負。

女性の脚を掴み更に奥深くへ投げ飛ばす。

 

「・・・・!」

 

投げ飛ばされ、岩にぶつかる女性。

大して効いてる様子は無い。

両腕を突然前に突き出す。

 

「⁈」

 

またも、極大のレーザー。霊墜を打ち回避する。しかし、そのまま自分を追いかけて来る。まさか、薙ぎ払ってんのか⁈

不味いこのままだと俺が逃げてるうちに上に出られちまう!

 

「ウワァァァァァ‼︎」

 

苦し紛れにレーザーに向かって霊墜を打つ。すると、予想を遥かに超える威力にレーザーが消し飛ぶ。

・・・・?なんだ?

 

「ゴバァ・・!」

 

口から血が次々に出てくる。

これはまさか、もう妖力が無い・・⁈

そうか・・、妖力を積んで入れると更に威力が増すのか。だが、その代償とでもいうように妖力の大量消費。打ててあと一発が限界・・

 

気付くと水上へ出ている女性。何やら構えを取っている。

その間に俺も湖から出る。

 

「・・・・!」

 

改めて女性を見ると、可視化できる程に両手に妖力を集めている。

次で終わりにする気か・・!

 

「終わり・・ね。なら‼︎」

 

これで終わりにしようと言うのなら此方もこれで終わりにする。

後のことは、考えない。壊れること覚悟で打つ‼︎

 

「魔砲‼︎『ゼロ・スパーク』‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

先程とは、まるで規模が違う極大レーザー。

レーザーを直前まで霊墜を左腕に装備し妖力を込め待つ。

 

そして

 

「霊撃墜ィィィイ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

全身全霊渾身の一撃を炸裂させる。

衝突時の衝撃で湖の水が吹き飛び底が見える。

 

「ッッグッ‼︎」

 

レーザーの重みで身体が押され、水が吹き飛んだ湖の底に脚がつく。

まだだ・・まだ足りない‼︎‼︎

脚がめり込んでいく。口から血が流れる。

 

「全部・・注ぎ込めぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎」

 

糸で霊墜を支え身体の強化を全て解く。

そして、文字通り出しうる妖力全てを霊墜に注ぐ。

 

「⁈」

 

すると、レーザーが押し返される。そして、レーザーが掻き消され霊墜の衝撃波が女性を貫く。

 

「ッッッグッハッ‼︎‼︎」

 

落ちていく女性。水の中に落ち、沈んでいく。

殺すつもりは無かったが・・・・あれだけ本気で打ったのに命を絶てないなんて

 

「やっぱ強えなぁ・・お・・ま・・え」

 

吹き飛んだ水が重力に従い元に戻る音を聞きながら俺も、また意識と身体を水の中に放った。




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