白猫と盲目の龍人 〜断ち切れない気持ち〜   作:967

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デート(仮)

〜龍斗side〜

 

 

堕天使の事件から数日が経ち、俺は今公園である人を待っている。待ち合わせ時間の30分も前に来てしまい時間を持て余していた。

 

 

「早く来すぎたな」

 

 

俺はベンチに腰をかけ、上を向き掌で目を覆う。

 

 

「最近色々あったな……」

 

 

俺は最近起こった出来事を思い出していた。正体がバレた事、居場所ができた事、悪魔になった事、アーシアさんを助けた事。本当にこの短期間で色々とあった。これが数週間で起こったとは思えない程濃い内容だった。

何より、俺に居場所をくれた部長達には感謝しきれない。

 

俺は自分の手を観る。

俺の過去を話した時に、俺が泣き止むまで手を握ってくれた小猫ちゃん。あの手は本当に暖かく、ずっと握っていたかった。

 

 

「…はっ!何を考えてるんだ俺は!これじゃぁ変態じゃないか!」

 

 

俺は勢い良く立ち上がり頭を抱えた。

 

 

「ねぇお母さん。あの人突然どうしたの?」

 

「しっ!見ちゃいけません」

 

 

近くにいた家族がそそくさと逃げるように行ってしまった。

 

(は、恥ずかしいぃぃぃぃ!!)

 

俺は顔を覆い、再びベンチに腰をかける。

幸いあの家族しか公園に人は居なく、少しホッとした。

公園は休日にも関わらず人は居なかったが、風で葉を揺らす音が新鮮で心地よかった。

そしてもう一度手を観る。

小猫ちゃんの温もりが忘れられない。変態と思われるかもしれない。けどあの時の俺にとって、あの手の温もりは俺の心に深く刻まれている。もう一度握って貰いたい。その思いが胸いっぱいになる。

 

 

「握ってほしいな………」

 

「龍斗くん?」

 

「うひゃっ!?」

 

 

突然声をかけられ、声が裏返り変な声をあげてしまった。

 

 

「そんなに驚くとは思いませんでした」

 

「ご、ごめん。あ、それとこんにちは小猫ちゃん」

 

 

声をかけて来た人は、待ち合わせをしていた小猫ちゃんだった。

 

 

「はい。こんにちは龍斗くん。それでさっき何か呟いていたみたいですけど、何を言ってたんですか?」

 

「え!?な、なんでもないよ!」

 

 

き、聞かれてた……恥ずかしいぃぃぃぃ!!

けど内容までは聞かれて無かったのがよかった。聞かれてたらもう小猫ちゃんに顔を見せられなくなる所だった。

 

 

「…そうですか」

 

「うん。そ、それじゃぁ行こうか」

 

「はい」

 

 

無理矢理誤魔化しながら、公園出た。

 

 

 

 

 

今日は小猫ちゃんと約束していた、ケーキバイキングに行くのだが、まだ正午になっておらず、お腹も減っていなかった。

 

 

「小猫ちゃん。まだ正午まで時間あるし、買い物にでも行かない?」

 

「はい。行きましょう」

 

 

小猫ちゃんも快く承諾してくれたので俺達は近くにある大きなショッピングモールへと足を運んだ。

 

その二人を監視する様に複数人が後を付けていた。

 

 

~???side〜

 

 

「小猫ったら嬉しそうね」

 

「あらあら、初々しいですわね」

 

「龍斗くんも楽しそうですよ」

 

「畜生!羨ましいぞ龍斗!」

 

「イッセーさんもデートしたいんですか……そ、それでしたら……わた………はうぅ!」

 

バタッ。

 

「アーシア!?」

 

 

そこにはお馴染みのオカルト研究部のメンバーがいた。全員変装をしているが、サングラスを掛け、マスクで口を覆っている為、明らかに浮いており、通行人は避けるように歩き、親子は足早にその場を去っていた。

 

もちろんそんな格好をしてこそこそと歩いていれば、当然あの人がやってくる。

 

 

「ねぇ君たち、ちょっといいかな?」

 

「「「「「…………………………」」」」」

 

 

そう、それは警官である。リアス達は警官をチラリと見ると、

 

 

「逃げるわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

リアス達は全力疾走で走り出す。

 

 

「こら!待てー!」

 

 

警官もそれを逃がさんと走り出す。これから、オカルト研究部(龍斗・小猫抜き)VS駒王町の警官によるリアル鬼ごっこが開催されるのだった。

 

 

「何か後ろが騒がしいけど何かあったのかな?」

 

「?さぁどうなんでしょう?」

 

 

龍斗と小猫はその事を知らずにショッピングモールに向かうのだった。

 

余談だが、オカルト研究部VS駒王町の警官のリアル鬼ごっこの勝敗は人気のない所に行き魔法陣で部室に転移したオカルト研究部に軍配が上がったが、イッセーは転移出来ない為、1日中追いかけ回されていた。イッセーも無事に巻いたが、体力が切れて次の日、筋肉痛で悩まされたそうだ。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

〜龍斗side〜

 

 

俺達はショッピングモール前まで来ていた。

 

 

「まず服でも買いに行く?」

 

「はい、行きましょう」

 

 

俺達はショッピングモールに入り、2階にある服屋に向かった。

服屋に着き中に入る。

 

 

「…あの龍斗くん」

 

 

小猫ちゃんが何故か申し訳なさそうに言ってきた。

 

 

「ん?どうしたの?」

 

「あの、龍斗くんってどうやって服を選んでいるんですか?」

 

「どうやって?」

 

「その……目が見えないのにどうやって選んでいるのかなって………」

 

「あぁそれはね、」

 

 

俺が小猫ちゃんに質問の答えを言おうとした時、

 

 

「あ、龍斗くん今日はどうしたの?」

 

 

この服屋の店員が俺に話しかけて来た。

 

 

「お久しぶりです店長」

 

「久しぶりだね。」

 

「龍斗くんこの人は?」

 

「あぁ、紹介が遅れたね。この人はここの店長で柊さん。俺の目の事を知ってる人だよ」

 

「こんにちは。私は柊香織って言うの。宜しくね。それにしても龍斗くん、今日はデート?」

 

 

店長が肘で俺の腕をつつき、からかってくる。

 

 

「ち、違いますよ!クラスメイトと遊びに来てるだけですよ!」

 

「なんだ詰まらないな」

 

「デ、デート…………」

 

 

小猫ちゃんがそう言って黙ってしまった。

もしかしてデートって言われたのが嫌だったのかな?

そうだよね最近まで嫌な奴だったもんね俺。

 

 

「ふ〜ん。満更でも無いのか。」

 

 

ん?店長が何か呟いたけど小さすぎて聞き取れ無かったぞ。

 

 

「店長今なんて言いました?」

 

「いや、なんでも無いよ。それで今日は忙しいから一緒に着いてあげられないけどその子が居るんだったら大丈夫よね。」

 

「なんの話ですか?」

 

「あぁそうだね説明しないとね。龍斗くんが服を選ぶ時って店員を1人着けて、案内してるの。流行りの服とか、服の色とかもね。まぁ龍斗くんは黒が好きみたいだから放っておくと真っ黒になっちゃうのよね。あれなんとかならないの?」

 

「そんな事言われても、黒が好きなんですよ」

 

「はぁ。まぁそういう事だがら。龍斗くんが真っ黒にならない様にしてあげてね。それじゃぁ私は戻るわね。それではごゆっくり〜」

 

 

それだけ言って店長は奥の方へと行ってしまった。

 

 

「小猫ちゃんもあんまり無理しなくていいよ。嫌だったら嫌って言ってね」

 

「そんな……私は龍斗くんの服を選んであげたいです」

 

「え?いいの?」

 

 

まさかそう言って貰えるとは思っていなかったので素で嬉しかった。こんなめんどくさい作業を受けてくれるなんて小猫ちゃんは優しいね。

 

 

「はい」

 

「俺服のセンスないから選んで貰えると助かるよ」

 

 

さっき店長が言ってた通り、俺が服を選ぶと何故か真っ黒になり、いつも店長に止められていた。けど仕方ないじゃないか!黒が好きなんだもん!

 

 

「そんな事無いです。今の服装も………似合ってます…」

 

「あ、ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ。それと俺には見えないけど小猫ちゃんの服装も……に、似合ってると思うよ。こ、小猫ちゃんって学園では、か、可愛いって評判だし……」

 

 

俺は噛み噛みになりながらも小猫ちゃんの服装も褒める。俺には見えないけど、さっきから周りの人の視線が小猫ちゃんを向いているから、多分相当可愛いんだろう。多分俺なんて釣り合わないんだろうな。………な、何を考えているんだ俺は!小猫ちゃんはただの友達。釣り合う釣り合わないの問題じゃない!

 

 

「ヒューヒュー、お熱いね!」

 

「「!?」」

 

 

俺と小猫ちゃんがビクッ!と体を震わし、声のする方を見ると、店の済から俺達を覗いている店長の姿が観えた。

 

 

「は、早く仕事に戻って下さい!!」

 

「おーコワイコワイ」

 

 

店長はそう言って奥のへと消えていった。

本当にあの人は忙しいのかよ!

小猫ちゃんの方を向くと小猫ちゃんは俯いたまま黙っていた。

 

 

「そ、それじゃぁ服見に行こうか」

 

「は、はい……」

 

 

そうして俺達は服を選びに奥のへと入っていった。その間俺はドキドキが止まらなく、全然服選びに集中でき無かった。だが、時間が経つにつれて収まり始めてなんとか通常に戻った。

そして俺達は服を買い終わり、店長に挨拶をして店を出た。

 

 

「本当に龍斗くんって黒が好きなんですね。柊さんの言った通りすぐ真っ黒になりましたし」

 

「う、だって黒はなんかカッコいいじゃない?」

 

「そうですか?」

 

「そうだよ!服の汚れも目立たないし」

 

 

はっきり言って汚れが目立たないのが一番の理由だ。汚れが着いているとか俺にはわからないからそれだったら汚れが分かりにくい黒にすればいいんじゃね?と思ったのがきっかけだった。

それから俺達は一頻り服屋の前で話をして次の店へと向かった。

 

 

次に俺達が向かったのはアクセサリーショップだ。

ここの店はシルバーものを主に置いている店だった。

俺達はそれぞれ見て回っていた。

俺は何かいい物はないかと探していると、

 

 

「ん?このネックレス」

 

 

そこには二つの指輪が付いたネックレスがあった。

 

 

「それに目を向けるなんてお客さんお目が高いね」

 

 

その店の店員が俺に話しかけてきて、そのネックレスを俺に渡す。指輪を触って見ると、その指輪は凄い装飾がされており、いかにも高級っていうものだった。

たぶんこの人は真心を込めて大事に作ったんだろう。そんな暖かみが感じ取れた。

 

 

「このネックレス俺の自信作なんだよ」

 

「これを貴方が作ったんですか!?」

 

 

俺は素直にびっくりしていた。これだけ細かい装飾を作った人に会えるなんて思ってもみなかった。

 

 

「そうだ!」

 

「凄いですねこの装飾。なんかこの指輪を触っていると心が暖かくなります。この指輪には魂が篭っているみたいに」

 

 

俺は思った事をその店員に告げる。

それだけ丁寧に作られていた。これ1つ製造するのに莫大な時間を費やしているのがわかる。

 

 

「お、お前わかるのか?」

 

「え?」

 

 

店員が声を震わせていた。

なぜ?俺はそんな事を思ってもいると店員がゆっくり話始めた。

 

 

「あぁ。それは俺の魂が篭っている。それも他の作品よりずっと。その指輪2つ付いているだろ」

 

「はい」

 

「それの1つが俺の作ったやつ。お前が今触っている指輪が俺の作ったやつだ」

 

 

 

俺は指輪をもう一度触った。

そこで俺はさっき店員が言った事に疑問を覚える。

 

 

「1つ?2つじゃなくて?」

 

「あぁ。俺が作ったのはその1つだ。それでもう一つは……俺の嫁が作ったものだ。」

 

 

それを聞き俺はもう一つの指輪を触る。こっちは装飾はあまり無かったが全体的に滑らかで外に何か文字が彫り込まれていた。

 

 

「まさに愛の共同作業ですね。だからこんなに暖かみがあるんですね」

 

「そうだな。俺はこの指輪にあいつへの愛を全て注ぎ込んで作った。あいつもそれに答えてくれてそれはもう頑張って作ってくれたぜ!これ作るのに一年掛かっちまった。」

 

「え!?そんなに掛かったんですか?」

 

「あぁ。あの時は無我夢中でこれを作っていたんだよ。まさかあいつが死ぬギリギリまでこれを作っていた事にも気づかずによ」

 

 

その瞬間俺は息が止まったかと思った。

同時にやってしまったとも思った。

まさかこの人の奥さんがもう亡くなっているなんて思いもしなかった。最初はいい話だなと思って聞いていたがまさかそんな事を聞いてしまうなんて。

罪悪感が俺の体を支配する。そして指輪を観る。先程まで軽々と持っていた指輪が急に重たく感じる。本当に重く感じる。

 

 

「すいません」

 

 

俺はすぐ様頭を下げる。

 

 

「いいよ俺が勝手に話しているだけだしな。だから頭を上げろ」

 

 

俺はゆっくりだが顔をあげる。それを確認したのかゆっくりと話し始める。

 

 

「俺の嫁はこれに本当に命を吹き込んだんだ。馬鹿だよなあいつも俺も。こんな鉄にどれだけ命を費やしてんだよ。まぁこれはあいつの形見でもあったんだ。この指輪を見るとあいつといる様な気分になるんだ。」

 

「……………」

 

 

俺はそれを黙って聞いていた。ここで同情や励ましの声をかけるべきという人がいると思うが俺は絶対しない。してはいけない。大切な人を失った悲しみを知っているからこそ俺は言わない。この人は同情や励ましの声をかけて貰いたくて話している訳じゃない。話したくて話しているのだから、俺はしっかりと聞かなくてはならない。それが俺に出来る唯一の事だから。

 

 

「このネックレスは売る気なんて更々無かった。だってどんな奴もこれの外面だけを見て内面を見ようとしなかったからな。けどお前さんは初めてこの指輪の内面の見てくれた。俺達の最高傑作を。俺嬉しくてな。この指輪を暖かいって言ってくれた時。だからこれはお前にやるよ!」

 

「え!?そんな受け取れないですよ!」

 

「そう言わずに受け取ってくれよ。こいつもお前が持っていた方が幸せだろう。それに、もしあいつがいたらそうするだろうしな。初めて俺達の思いが詰まった作品を観てくれたんだ。それをあの子にプレゼントしてやりな」

 

 

そう言ってその人は小猫ちゃんの方を向く。

俺も釣られて小猫ちゃんを観る。

まだアクセサリーを選んでいるのかアクセサリーを手に取ったりしている。

 

 

「彼女なんだろ?」

 

「ち、違います!彼女は友達です」

 

「…そうか。けどあの子にプレゼントしてやりな。あの子も喜ぶだろうしね」

 

「で、でも……」

 

「いいから貰っておけ!返品は出来ないからな!」

 

「……わかりました。ありがたく貰っていきます」

 

「おう!そう言えばお前名前はなんて言うんだ?」

 

「中島龍斗ですけど」

 

「そうか。龍斗。今は駄目でもいつかは言ってやれ。それじゃないと後悔するぞ。まぁ俺は後悔しか残っていないが」

 

 

それってどういう意味だ?

今は駄目でもいつかは言ってやれ?

後悔する?何を?

 

 

「ふふ、今は悩め。それで自分で答えを見つけろ」

 

「は、はい」

 

「それじゃぁな。俺はそれ以上の物を作りたくてウズウズしてるんだ。それと……話を聞いてくれてありがとうな」

 

 

そう言ってその人は奥へと消えて行った。

俺は指輪をもう一度触った。そして彫られている文字を読む。

 

 

「……………………」

 

 

俺はその文字を読むとそのままレジへ行き、袋に包んで貰って鞄の中に入れた。

 

その指輪には『viel zusammen』と彫られていた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか?

小猫ちゃんとのデート回が予想以上に長文となってしまったので分割して投稿します。多分明日くらいには投稿出来ると思います。


それではさようなら( ´ ▽ ` )ノ

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