目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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コミュニケーション黒尾

 タンバジムで育成に関して数日程お世話になってから、エンジュシティの旅館で次はどうするかを悩んでいた。簡単に言ってしまえば、今のペースでジムバッジを取得していくと、直ぐにポケモンリーグへと向かう準備が完了してしまう。トージョウの滝、チャンピオンロードは無視して、唯一神でセキエイ高原までいけてしまうので、早く終わり過ぎで色々と暇になってしまうのだ。まぁ、ジムバッジを早めに取得するとそれだけ施設の利用とかが楽になってくるのは事実だけど、ジムバッジが少ない状態だと相手が舐めてかかってくるという事もあり、少々楽な所もある。

 

 あぁ、でもやっぱり、トレーナーとしての実力が評価されるのが一番だ。やっぱりジムバッジはなるべく早く回収したいと思う。となると次はコガネシティになる。コガネジムのジムリーダーアカネはノーマルタイプのジムリーダーという話だったか。

 

「ノーマル……チック……ハピナス……うっ、頭が……」

 

「主、大丈夫です。妖怪アイス狂いはいませんから、安心してください」

 

 妖怪アイス狂い。出会うたびに何故かいつもアイスを食べている残念系美人。アイツのトゲキッスは本当に許されない。てんのめぐみに王者の印の別のポケモンで麻痺をばらまいてひたすらエアスラッシュ。これで5タテされた記憶が懐かしい。黒尾の自動みちづれはこういうハメコンボの対策に習得させたものでもある。一人、こうやってみちづれが使える仲間がいるとハメパターンを打ち破る手段になるのだ。

 

「まぁ、ノーマルジムだけどキッスやハピナスは使ってこないよな」

 

「フラグ建築お疲れ様です」

 

 黒尾がそう言う。

 

 そんな黒尾と並んでコガネシティを歩いている。今日はギラ子がここにはいない、というのもギラ子が朝に唐突に、ボスの様子を見てくるとか言って消え去ったのだ。おそらくどっか別の地方で旅を続けているボスに合流し、此方で散々暴れている様に、向こうでも暴れているのだろう。ボスには申し訳ないが、犠牲になってもらおう。しばらくはボス側から離れない事を祈る。

 

 ついでに言えば手持ちは全てエンジュシティの旅館に置いて来た。だからこうやってコガネシティを歩く自分の手持ちは横で歩いて付いてくる黒尾しかいない。この状態は別に異常―――というわけでもない。まぁ、常時旅をしているトレーナーであれば珍しいことだが、手持ち一体だけで歩くというのは他のポケモンの運用を考えなくて良い、自分の思考リソースを一体に集中できる、という状態でもある。この方が実力を発揮しやすいという場合も結構存在するのだ。

 

 特に黒尾は一番最初、イーブイだった頃のナイトと出会うまでは、ずっと一緒に戦った相棒だ、誰よりも呼吸を合わせる自信がある。

 

 まぁ、それとは別に軽いコミュニケーションを取ろう、という意味でもコガネシティには来ていた。残念ながらコガネジムはまたの機会になる。それは良い、黒尾と二人っきりの時間なんてものはギラ子のせいで最近はめっきり存在しないのだ、この際十分に楽しもう。そう思い、コガネシティを二人で歩いている。

 

 なおここには唯一神デリバリーでやって来た。帰りも勿論指定した時間に迎えに来て貰う方針だ。

 

「それにしてもコガネシティは凄いですね、アサギ以上に栄えています」

 

「コガネはジョウト一のお金持ち、”コガネ百貨店”の本社が置いてあるからな。今、デパート業界でワンツーを争っているのはタマムシデパートとコガネ百貨店、どちらも得た利益を地元へとある程度還元させている。だからその金で更にコガネは栄えているんだよ。そうやって得た余裕を市民達はお金という形でコガネ百貨店で消費する、経済のサイクルって奴だねー」

 

「経済に関してはそこまで詳しくないんですが、それでもコガネ百貨店のおかげでコガネシティ全体が潤っているという事は理解できました」

 

 うむ、それで大体あっているのだから問題ない。

 

 と、そこで足を止める。適当にコガネ百貨店でアクセサリーかグッズでも見ようかと思っていたが、コガネ百貨店の前の掲示板に、ポスターが張られていた。その内容はコガネ百貨店主催のミニトーナメントが本日開催される、というものだった。時間的には昼前からの開催で、今からエントリーすれば十分間に合う。

 

「……優勝賞金30万ってなると準プロクラスの大会か……そうか、ポケモンリーグのシーズンが始まっているから旅立ちのトレーナーやエリートトレーナーの活動時期になって来てるんだったな。となればここで目立てばスポンサーの話も出てきそうなレベルだな」

 

 そう言ってポスターを眺めていると、黒尾が言う。

 

「でも、私達のスポンサーは”ロケット・コンツェルン”ですよね?」

 

 ロケット・コンツェルンはロケット団が隠れる為に利用しているダミー会社の一つだ。いや、正確に言えばボスが資金源の為に運営し、そしてロケット団へと金を流す為に使っている企業だ。勿論全権はボスが握っていた為、ボスが武者修行の旅に出るのと同時に、倒産しない様に活動する以外での大規模な活動は止めている。その時にスポンサーから降りて貰ったのだ。トレーナーという活動には結構、というかかなり金が必要になる。

 

 天賦の才を持つ様なものであればストリートバトルの賞金で暮らして行けるだろうが、

 

 普通、それが可能になるにはどうしても数年必要になる。

 

 まぁ、それでも今でもロケット・コンツェルンがスポンサーの様なものだ。連絡を入れれば欲しい道具の調達をしてくるし、少し前のキョウの様にポケルスの調達や研究も行ってくれた。利益さえ出してくれれば、それに見合うものを返してくれるのがスポンサーと言う存在だ。他にも一部大会の優先参加権やシード枠等を貰えたりもする為、

 

 トレーナー活動でスポンサーを得ておくのはかなり良い事だったりする。

 

 ただ場合によっては手持ちを指定されたり、戦闘手段を制限される場合もある。そういうデメリットもある所にはある。

 

 ジョウト地方の企業で、コガネ百貨店と言えば超大手だ。ポケモンリーグのシーズンに入った事を考えると、今年の有望株を事前にマークしようと考えているという事だろう。

 

 まぁ、そういう事情はともあれ、

 

「ちょっくら俺とお前二人だけでバトルするってのもたまには楽しそうだし良いだろう」

 

「そうですね、基本的に私の役割は先発で出て、天候を固定する事ですからね。3vs3でも6vs6でも場を整える事を優先しますから、大体敵を倒さずに、或いはみちづれで諸共沈むってやり方ですからね。大会に出るとなると久しぶりに普通に戦う必要が出てきますね。えぇ、結構やる気満々です」

 

「それは良い事を聞いた。早速参加するか」

 

 そうやって、黒尾との大会デートとでも呼べる行動が開始された。

 

 

 

 

 これはコガネシティだけに言える事ではないが、それぞれの街にはポケモンバトル、或いは大会用のドーム等が存在する。ミニトーナメントとはいえ、コガネ百貨店が主催であるため、そのコガネスタジアムは大会の為に貸し切られていた。スタジアムの入口でサクサクと選手登録を終わらせると、ルールを確認する。このコガネ百貨店開催、コガネミニトーナメントのルールは実にシンプルだった。

 

 シングルの2vs2で、基本的には公式戦ルール。手持ちが2体以下である場合でも出場は可能、ただしポケモンの補充は不可。ここは本当に基本的な、何処でも良く見るルールだ。レベルが50フラットで、50以下でも参加可能、というのもよく見られるルールだ。

 

 ただ、持ち物に関するルールが少々異なっている。

 

 ポケモンに持たせる事の出来る持ち物に関しては”全てコガネ百貨店が提供している”、その持ち物しか使用できない様になっている。勿論それはコガネ百貨店の販売している商品であるため、きのみの類は存在しない。オボンや半減、ラムのみを持たせる事ができないという事になる。

 

 そのルールを確認し、スタジアム内へと移動する。グラウンドには既に六つのフィールドが存在し、その周囲には参加している多くのトレーナー達の姿が見える。自分の様にポケモンを出しっぱなしにしている姿もあれば、こそこそ隠れる様に隠している姿も見える。ただ色違いのキュウコン、いや、デルタ種としての進化を果たして黒くなったキュウコンである黒尾は結構視線を集めやすい。その視線が嫌なのか、隠れる様に此方の横に体を滑り込ませる。

 

 愛らしい一面に内心で軽く笑いつつ、気を逸らす為に話題を提供する。

 

「このルールだと安定したエースやリーダーにラムのみを持たせる事や、リサイクルオボン、弱点補完に半減系のみを持たせる事も出来ないな」

 

「あぁ、そうですね。つい先日かくとう耐性をシジマさんに教えてもらったのでそこらへん、少々自信が出てきたものですが、やはり半減できるみがないのは辛いですね、私は大分お世話になっていますし。この環境になりますと、おそらく状態異常を叩き込んだ場合、一気に有利になると思います」

 

「となるときつねびを設置したスタイルが一番いいかもな。普通はラムのみとかで治療できるもんだけど、それができないとなると一気に不利に落とし込む事ができる……お、すげぇ、流石コガネ百貨店だ。レッドカードやだっしゅつボタンまで揃えてるわ。となると戦術の基本は―――」

 

「きつねびで火傷させて、レッドカードで交代させながら強制的にやけどを誘発させ、相手を追い込みつつまもると自己再生を挟み、相手の焦りを誘いつつ隙が見えたらにほんばれを重ねてよると融合させましょう。だいもんじやかえんほうしゃが綺麗に突き刺さると思いますよ」

 

「まぁ、そこまでしなくてもシャドーダイブで攻撃と回避を繰り返せば割とどうにかなると思うぞ? 正直、そこまでレベルが高いって言えるのは……んー……まぁ、二、三人ぐらいしかいないなぁ……」

 

 大会に参加しているのはざっと見た所、全部で三十人ほどだ。まだまだ増えている所を見ると、最終的には五十人超えそうだが、フィールドが六つもあるのだ、同時に十二人が戦っている事を考えれば、割とサクサクと進むだろう。ただこの大会参加者の中で、明確に自分のセンサーに強者だと解るトレーナーは二人、そして不明瞭なのが一人いる。

 

 一人目はオレンジの髪とドレス姿の亜人種カイリューを連れた男の姿だ。年齢はおそらく此方とそう変わりはない。服装の奇抜なセンス―――ピッチピッチなスーツタイプの上半身に普通のトレックパンツ、そしてマントという姿は間違いなくフスベシティ出身特有の壊滅的センスを感じさせる。ただ、手なずけているカイリューに関しては間違いなくエリートトレーナーと名乗るには相応しい実力を感じる。彼は間違いなく要注意だ。ハメ技で殺そう。

 

 二人目は赤い髪が特徴的なコガネのジムリーダーのアカネだ。トゲキッスを出しているのが見える為、確実に殺す。絶対に殺す。フラグ達成とかそういう話じゃない。トゲキッスは生まれてきたことすら絶対に許さない。お前だけは絶対に殺すから覚悟しろよ害悪め。妖怪アイス狂いに5タテされたことは忘れないし許さない、絶対にだ。

 

 そして三人目はポケモンをボールから出す事なく、自然体で立っている青年の姿だ。どこが強い、強そう、と言うのは解りにくいのだが、簡単に言ってしまうと緊張していないし、大会に出る事が慣れているような様子がある。大会に出場経験が多い連中は場の雰囲気や空気の流れという者は自分の方へと掴む技術を持っている、気を付けたい。

 

 まぁ、こんな所だろう。

 

「ま、30万程度だったらフルメンバー揃えて出場すれば直ぐに稼げるさ、今日はデートみたいなもんだし、気負う事もなく楽しくやろうぜ。優勝出来たら儲けもの、って事で」

 

「そうですね。久しぶりに主の指示と視線を独り占めできるのはなんだか申し訳ないような、嬉しいような、ちょっとドキドキする気分です。長らくアタッカーとしては活動していませんが、それでも薫陶は決して腐る物ではないとこの黒尾、主への忠誠と愛と共に証明しましょう」

 

「恥ずかしいからそういうのやめーや」

 

 苦笑しながら視線をアカネへと向け、トゲキッスへと向け、

 

「だけどトゲキッスだけは許さない。二匹目エテボースででんじはを撒き始めたらリアルファイト発展不可避」

 

「ジムリーダーがそんな人の心にトラウマを生む様な構成を組む事はないと思うんですけど……」

 

「ハピナスという可能性」

 

「こう思いましょう―――ギラティナよりはマシだ、と」

 

 そう思うとそれだけで救われた気がしてくる不思議。

 

 まぁ、とりあえず、楽しむ為に参加したのだ。

 

 楽しもう、この大会デートを。




 黒尾-レベル86
 とくせい-よぞら (場に出た時天候を”夜”にする)
 
 取得技術
 自動みちづれ
 格闘耐性
 夜空固定
 狐の嫁入り
 etc

 データ化するとおそらくそんな感じ。技に関しては原作ポケモンと違って習得上限がブリーダーの腕前とポケモンの才能次第でどうにかなるうえ、ポケスペ同様オリジナル攻撃ぶっぱするので記載するだけ無駄かと思っている。

 ポケモンとコミュニケーションを取るのは重要なのでちょくちょく1:1コミュ回みたいなのはいるよ。

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