目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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vsハヤト

 相手側のフィールドに原生種のプテラが、そして此方のフィールドに黒尾が出た。黒尾が出た事で一瞬でジム内の空間が夜へと変更し、暗い闇が世界を覆う。これによって黒尾、そしてナイトのバトン条件を満たす事ができた。このバトル、勝利する為の条件は間違いなく先に流れを掴んだ方だ。飛行タイプのポケモンには”フェザーダンス”に”はねやすめ”と”きりばらい”に”ふきとばし”がある。個人的にこの中で最も警戒しているのはふきとばしの存在だ。出た時に能力上昇が発生し、条件バトンで仲間へとその上昇を引き継ぐ自分のスタイルだと、ほえるや吹き飛ばしによる強制交代を喰らうとかなり痛い事になる。何せ、また上昇を積み直さなくてはならないのだから。

 

 それとは別に、きりばらいを習得されている可能性が高く、そして常時飛行している原生種型の飛行ポケモンの事を考えると、まきびしやどくびし、濃霧の発生が出来る月光が完全に封殺されているのも良い所だ。そういう訳でメンバーは月光を除いた六人で構成されている。この六人で、的確に敵を潰して行くことを考えなくてはならない。

 

 ―――まぁ、とりあえず一手目は変わらない。

 

「黒尾、きつねびだ」

 

「プテラ―――ギガインパクト! 貫けぇ!」

 

「ファオ!?」

 

 黒尾がきつねびを浮かべるのと同時に、プテラの強化されたギガインパクトが黒尾へと衝突し、フィールドの外にまで弾き飛ばし、一撃で戦闘不能に追い込む。これから積みの起点を作る筈だったのに、いきなり事故死してしまった。え、嘘、それ本当にやったの、という恐怖と驚きをハヤトへと向ければ、見事に成功した、という感じの表情を相手は浮かべていた。

 

「貴方達ランクになりますと定石が通じませんからね、情報で起点になると解っているポケモンであれば、先に潰すのは当たり前です。ノーマルジュエルを持たせて、狙わせていただきました」

 

「うっそーん」

 

 一体誰だ、こんなに情報を回している奴は。いや、マツバしかいないな、あの野郎。黒尾にお疲れとすまない、と謝罪しながらボールの中へと戻す。起点とバトン回しの要を一人失ってしまったが、最低限の仕事だけは完了させる事ができた。相手は常に追い風状態だ、それを意識し、此方も此方で対応しなくてはならない。

 

「災花、お前に決めた!」

 

「復讐は何時だって甘美なものよ」

 

 ミニスカートを揺らしながらフィールドに立った災花が真っ直ぐ視線をプテラへと向け、そして指先をプテラへと向ける。

 

「宣言するわ。貴方に避けられない災禍の未来が3ターンで訪れるわ」

 

「―――滅びのカウント……!」

 

 場に登場し、ほろびのうたの改造発展、みらいよちとアブソルの特性である災害予言、それらを組みあわせる事で生み出された滅びの押しつけ。簡単に言えば相手に対してほろびのうたで発生する3カウントを、登場したときに、相手に押し付ける事ができる、という特性だ。災花の役割は居座り型のアタッカー。ふいうち、おいうち、滅びのカウント、つじぎり。相手に対してプレッシャーを与えて自分の意思で交代させつつ、此方は居座り、自動で自己強化しつつ居座って攻略する。形式はシンプルだが、だからこそ事故らない限りは信用の出来るスタイルだ。

 

「逃げても居座ってもいいんだぞ? まぁ、反動で動けないだろうけどな」

 

「クッ……」

 

 挑発する様にハヤトへと言葉を放ち、そして時間を入れるまでもなく災花へと指示を下す。ギガインパクトの反動で動けないプテラに一瞬で接近した災花が良く狙いながらつじぎりを放つ。反動で動けない相手を外す理由も、急所に当てられない理由もない。当たり前のクリティカルヒットをたたきだしながら、一撃でプテラをジムの床へと沈める。大きくバックステップを取って距離を作りながらつめとぎを行い、災花が闘争心を燃やす。

 

「ですが起点を潰せただけ仕事は果たしました! 行け、クロバット!」

 

 クロバットが場に出る。同時にその翼を羽ばたかせ、フィールドに撒かれたきつねびを吹き飛ばし始める。クロバットが逃れる事は出来ないが、それでもクロバット自体に設置除去の能力があるらしい。となると俺だったらこのクロバットを”温存したい”と思う。設置除去は中々簡単な事ではない。そう考えれば選択肢は一つ。

 

「ナイス! クロバットもどれ!」

 

「ビンゴ」

 

 災花のおいうちが去り際に命中する。クロバットの体力を削り切れた感触はないが、それでも大打撃を叩き込む事は出来る感触だった。間違いなくクロバットはあと一撃で落とせる。そう判断した直後、災花が押し戻される様にボールの中へと戻って行く。クロバットの持ち物はレッドカードだったか、軽く舌打ちしながら勝手にフィールドに出てくるのは蛮の姿だ。予想外の自分の登場に驚きつつ、砂嵐がフィールド全体を覆う。

 

「蛮ちゃん、気合を入れろ!」

 

「良い流れです、エアームド!」

 

 めんどくさい相手がフィールドに出てきたと悟った。鋼と飛行タイプの組み合わせ、この相手に効果的なのは炎と電気タイプだけだ。手持ちの電気サブウェポン担当は黒尾とサザラだ、蛮は持っていない。炎に関してサザラ、黒尾、アッシュといるが、黒尾は落ちているし、ここで引けば間違いなく狙い撃ちにされる。蛮が砂嵐で特殊防御を自分と相手に上げている。ここはまずすなあらしを解除する為にポケモンを入れ替えるべきなのだろうが、

 

 ―――相手は間違いなく蛮をフィールドから引きはがし、エアームドを居座らせようとするだろう。

 

「ぶっ飛ばせ蛮ちゃん!」

 

「ステルスロック!」

 

 ばかぢからによってエアームドは殴り飛ばされながらも、その異常な耐久力で一撃を耐え、飛行し、旋回しながらステルスロックを砂嵐に紛れる様にバラマキ、そして行動の終わりに大きく翼を羽ばたかせて蛮を吹き飛ばそうとして来る。

 

「避けろ、そして叩き込め!」

 

 それを蛮が回避し、素早く飛び上っているエアームドへと跳躍し、その頭を掴み、大地へと向かって叩きつけながら二回目のばかぢからがエアームドへと叩きつけられる。悲鳴のような声をエアームドは漏らすが、それでも懐に忍ばせていたきのみを食べ、回復しながら再び飛翔し、そして大きく翼を広げ、それを振るう。吹き飛ばしが炸裂し、蛮が押し戻される様に強制的にボールの中へと戻される。ばかぢから二回分の低下も、これで一旦リセットされる。上手く利用できたと思いたいが、エアームドがはねをやすめている。回復しているなぁ、と舌打ちしつつ、ボールから勝手にポケモンが飛び出してくる。

 

(クッ)なうーなー(押されているな)……」

 

 場にナイトが出る。まだ夜だ。夜と砂嵐が組みあわせて夜の砂漠の様に日が遮られ、夜目があっても先が見えない暗く、涼しい空間になっている。天候適応を保有しているナイトのおかげで砂嵐のダメージが入らないが、それ以外では恩恵がない。ここは素早く天候を切り替えたい所だ。だがなんだ、このエアームドの特性は何だ?

 

 ……おそらくはするどいめとがんじょうの複合型だ。だからこの環境、暗さで蛮を的確に攻撃で来たし、羽休めで回復したのだ。一撃必殺を耐える為に。となるとこの面倒な相手に関しては”アイツ”じゃないと対処し辛いな、と判断する。

 

「ナイト、すまん!」

 

なーうん(気にするな)なううー(活路は俺が作ろう)

 

 ナイトのたくすねがいが発動する。ナイトが瀕死になり、戦闘不能になって倒れる。エアームドのゴッドバードが放たれるが、既にナイトが戦闘不能状態である為、それは発動する事無く空振りに終わる。故にナイトの生み出した上昇効果、それを次のボールへと受け継ぎ、交差させるように目の前へとスナップし、打ち上げ、掴み、赤帽子を真似て生み出した、先行充電を発生させる。

 

 竜のオーラが手袋を切り裂き、手に傷を刻み、ボールを粉砕しながらその中から天賦の悪竜が飛び出してくる。

 

「邪魔だぁ―――!!」

 

 フィールドに着地するのと同時に、天候を解除しながらその力をギルガルドに乗せ、収束させ、そして剣閃として一気に前方へと叩きつける。さてつのつるぎ―――地面タイプ、それも飛行タイプに通じる、物理型の奥義が放たれ正面からエアームドの鋼の体を削り砕く様に放たれ、その姿を大地へと叩きつけながらがんじょうを貫通し、一気にエアームドを大地に沈める。

 

「見てな後輩。これがパーティーの切り札って奴の戦い方だ……!」

 

 エアームドを屠った事で竜の咆哮を響かせ、自らをサザラが奮い立たせる。ジム全体が震動する様な状況に耳が痛くなりそうだが、その闘争心は一切揺らぐ事無く燃え上がっている。その咆哮に応える様に夜空の星々が輝きを始める。竜を崇める様に輝く天の閃光が敵陣を明るく照らし、その姿を闇の中であろうとも的確に捉える。

 

「次の獲物出てこい」

 

「ッ、流石ですね―――ドードリオ!」

 

 場にドードリオが出現する。これで倒したのはプテラとエアームドの二体。既に場に出して生存しているのはクロバットで、今出してきたのがドードリオ。まだ相手が切り札を使ってきていない。それと合わせて未見のポケモンが二体存在する。此方も黒尾とナイトが落ちている状態だ。そろそろここら辺でリードが欲しい所でもある。とはいえ、ステルスロックを展開されているのが少々痛い。サザラはギルガルドのキングシールドのおかげで受け流しながら登場したが、他の面子には出来ない事だ。

 

 ここでサザラで突破できるだけ突破する。幸い、読みは此方の方が上だ。

 

「ラァ―――!!」

 

「ドードリオ! くろいきり!」

 

 サザラの上昇能力を全て打ち消すが、既にサザラの攻撃は放たれている。剣に纏わせた雷鳴をそのまま、爆発する様にドードリオへと叩きつける。雷の剣撃が炸裂し、ドードリオが一気に瀕死に―――追い込まれない。その体にはタスキが巻かれている。故にギリギリのところで耐え、喰いしばり、

 

「何時一撃だっつった……!」

 

 そして素早く、行動の終わりに行動を追加する様に、まるで1ターンで二回動くかのように二撃目のらいめいのつるぎが放たれた。効果が抜群の攻撃を受け、二撃目であるが故にドードリオは耐えられない筈だが、

 

「耐えてください!」

 

「ドッ……!」

 

 ドードリオが耐えた。トレーナーの激励を受け取って耐えたドードリオはその場でじたばたと体を動かし、無くなった体力だけ強化されたその威力をサザラへとぶつける。が、天賦(6V)個体のサザラとドードリオでは種族としての体力の桁が違う。

 

「ブッ散れ」

 

 星天が刃に収束され、それが閃光の様に煌めきながら放たれる。ドラゴンタイプの剣技、りゅうせいのつるぎが放たれ、ドードリオを吹き飛ばしながら戦闘不能に追い込み、サザラの咆哮が天に響く。サザラの咆哮に応える様に天が鳴動し、暗雲が覆う。黒い闇の中に視界を遮り、炎を消化する雨が降り始める。

 

「さあ、次来い。私は簡単に止められないぜ」

 

 挑発と共にサザラが自身を奮い立たせる。弾ける竜のオーラを纏いながら次の相手を求め、そしてそれにハヤトが応える。

 

「何が何でもここであのサザンドラを落とします! ドンカラス!」

 

 ドンカラスがフィールドに出現し、サザラが疾走、ドンカラスが飛翔する。そうやって互いに距離と居場所を把握する事数秒、ハヤトと同タイミングで指示を繰り出す。瞬間、理を無視してドンカラスが先制を奪い、

 

「―――輝けいのちのたま、ゴッドバァード……!!」

 

 おいかぜ、そしていのちのたまによって強化されたドンカラスのゴッドバードが炸裂する。そのあり余る破壊力から、この一撃は明確に切り札を潰す為に、エースを潰す為に組まれているのだと理解する。ドードリオのじたばたを受けてサザラの体力は大幅に減っている。そんなものを受ければどうなるかは目に見えている。その体力が即座に瀕死の状態、戦闘不能の領域へと叩き込まれるが、

 

 それでもサザラは倒れる事無く、ギルガルドを両手で握り、そして夜雨を纏いながらそれを振り下ろし、攻撃の反動と技後硬直で動けないドンカラスへとみなものつるぎを全力で叩き込む。

 

「―――これが、エースであるという事への覚悟……だ……ばたんきゅぅー……」

 

 その一撃でドンカラスを沈めつつ、サザラはその場で倒れ込む。2タテし、三体目で撃破されながらも食いしばって相打ちに持ち込む。流れを一気に此方へと引き寄せただけ、グッジョブと言わざるを得ない。此方は三体倒れてあと三体、相手は四体倒れてあと二体だが、その内一体、クロバットに関してはあと一撃叩き込めば倒せるという領域だ。となると、蛮を温存しておけば砂嵐でクロバットは処理できる。実質的には三対一の状況。

 

「ふぅ―――ここで一気に流れを作るんだ、アッシュ!」

 

「形勢を逆転させます! お願いします、ピジョット!」

 

 アッシュが場に出る事で再び夜空に星々が浮かび上がり、夜の闇を明るく照らし始める。炎の力を覚醒させながらその両目に闘志を宿らせ、サザラの活躍に魂を奮起させる。サザラの活躍を見て、自分がやるべき事、果たすべき役割を理解し始めているな、と心の中で笑う。発揮させたい力があるならば、それを導くのもまた、ポケモントレーナーの役割だ。

 

 アッシュが青い炎を吐きだそうと飛翔し、ピジョットへと接近しようとするが、ピジョットの方が”数倍”早い。先回りする様にアッシュへと到達すると、ゴッドバードを叩き込んで背後へと抜けて行く。弾き飛ばされながらもその姿を両目でとらえたアッシュが青い炎を一直線に放ち、ピジョットを撃墜しようとする。が、ピジョットはそれを夜の闇の中に紛れる様に素早く移動し、旋回し、そして再び加速に入る。

 

 アッシュの経験ではピジョットを捉えられない。

 

 それを認識した瞬間、アッシュと意識をシンクロさせ、此方の感覚でピジョットを捉えそして殺気を体からピジョット、ハヤトへと向けて放つ。

 

「動くな」

 

 具体的に何かをするわけではない。だが殺意という刃を心臓へ突き立て、二人の動きを一瞬だけ制限する。瞬間、アッシュがピジョットを捉え、

 

「流石オニキス、愛しているわ!」

 

『ガタッ』

 

『その言葉聞き逃せません』

 

なーうーんー(瀕死だから大人しくしてろ)……』

 

 蒼いブラストバーンが放たれ、ピジョットに直撃する。吹き飛ばされたピジョットが体勢を整え、喰いしばりながら再び飛翔する。旋回し、加速し、そして動き回る姿はアッシュの感覚では捉えにくいだろう。だからこそトレーナーが存在する。息を吸って吐き、そしてボスとの訓練、戦いを経て得た、経験と感覚に身を委ね、ポケモンと意識を重ね、

 

「―――そこだ」

 

 ゴッドバードを放とうとしたピジョットを捉える。ブラストバーンの反動なんてものは無理やり解除する。その反動でアッシュの肉体が悲鳴を上げるが、それを無視して二発目のブラストバーンがゴッドバードと正面からぶつかり合い、ピジョットとアッシュが相打ちとなって地面へと向かって落ちて行く。

 

「ナイス、アッシュ! これで終わりだ、蛮ちゃん!」

 

「最後までやり遂げますよクロバット!」

 

 クロバットと蛮がフィールドに出る。おいかぜの効果によってクロバットが圧倒的な速度で蛮へと迫り、その体に攻撃を叩き込む。が、そのままクロバットを体に掴んだ蛮はクロバットを頭上へと放り投げ、

 

ガーオ(見るが良い)……」

 

 これが、

 

ギャァァァ(王者の戦い)!!」

 

 ジャンプし、逆さまに掴んだクロバットを横回転しながらスクリューの様に落下し、技でも何でもない、プロレス式パイルドライバーを綺麗に決め、クロバットをジムの床に埋める。

 

ゴギャァァァォ(ウィナーは俺)!!」

 

 クロバットを床に埋めた蛮は楽しそうに両手を持ち上げ、勝者のポーズを気持ちよさそうに決めていた。

 

 ―――これにてキキョウジム、攻略完了。




 結果から見ると最終的に二体残しだからそこまで余裕があったわけじゃないのよね、割と激戦。ジムリーダーもドンドン鬼畜になってきました。

 まぁ、基本的にジムリーダーで十代なのはハヤト、ツクシ、アカネ、ミカンなのでこの四人は若干経験不足、指示ミスとかが時折出てきますわ。ヤナギの指示ミスは舐めプとして認識しておくべし。

 とりあえず、ジム2連でやったので、次回は手持ちコミュかなぁ、と

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