正面からヘルガーが火炎放射を放ってくる。それをサザラがキングシールドで受け流し、前へと進む。火炎放射によって視界を遮られたサザラの死角からゴルバットが超音波を放とうとする。それを殺気を突き刺す事でゴルバットの動きを一瞬制限し、ハンドガンで射撃して地面に落としつつ、もう一発サザラの握るギルガルドへと射撃し、ギルガルドが帯電する。そのまま振るわれる刃がらいめいのつるぎとなってヘルガー、ゴルバット、デルビル、マタドガス、アーボックを一網打尽にする。そこで動きを止める訳もなく、麻痺しなかったポケモン、気絶しなかったポケモンに峰打ちを叩き込み、確実に意識を奪って行く。
洞窟の水面を破ってパルシェンが出現して来る。それに超反応したサザラがパルシェンが攻撃を行う前にそのトゲをギルガルドで斬り落とし、蹴りを叩き込み、そして口から竜の息吹を吐きだし、壁へと叩きつけて戦闘不能に追い込む。その間に銃を片手に襲い掛かって来たロケット団員を此方で先に射撃し、ドンドン大地の上へと倒して行く。
まだまだ獲物はいる。
マタドガスの集団が出現し、連続でだいばくはつを叩き込んでくるのを冷静にキングシールドで無効化しつつ、その向こう側に見えるトレーナーをライフルで狙撃し、指示が出せない様に先に無力化させ、タスキで耐えたマタドガスを追撃で薙ぎ払って戦闘不能に追い込む。その向こう側から突進してきたサイドンをサザラがすれ違いざまに攻撃を叩き込み、そして同時にドラゴンテールを叩き込んでふきとばし、進路を開けさせる。
ゴルバットが編隊を組みながら飛翔して来る。
「―――クロバットにさえできない雑魚に用はないわ。引っ込んでろ雑魚め」
後半の言葉はサザラの悪竜としての本性を現すかのように荒く、強く放たれ、そしてヤドンの井戸内部、そこにサザラの咆哮が轟く。圧倒的練度。圧倒的種族値。圧倒的個体値。圧倒的才能。経験の違い。強者としての覇気。サザラの全てが、ヤドンの井戸内部にいるポケモンと違う領域に、違う次元に立っている。この戦場における絶対強者、そして全ての生物の生殺与奪を握る、サザラの咆哮が轟く事で、ゴルバットが恐怖で麻痺し、その動きを止めて次々と大地へと落ちて行く。戦闘の準備をしていた他のポケモン達も、サザラの咆哮を耳にし、それで戦意を喪失していた。
「どうしたんだ! 戦え、戦えよ!!」
「ひ、ひぃっ」
近づき、睨めばそれだけでポケモンを戦わせようとしていた団員達が黙り、そして動きを止める。怒鳴り、ポケモンを戦わせようとするのは本能的な恐怖から来るものだ。”絶対に勝てない”と、そう理解してしまった為に、必死にどうにかしようとしているだけだ―――それが無駄だと解りつつも。シルバーとガンテツさえいなければ遠慮なくここにいる連中全員を皆殺しにしたところだが、生憎と目撃者がいる状況でそんな行動に出る事が出来ないのが今の状況の悲しい所だ。
ボスの息子であるシルバーにはあまり、此方側と関わって欲しくないという気持ちはある。
きっと、ボスもそう思うだろう。
何せ、あの人はシルバーの意思を尊重し、ロケット団を強制的に継がせる様な事は一切考えていないと教えてくれたからだ。あの人は純粋に自分の息子に一目逢いたいだけなのだ。
「遠慮はいらねぇ……全員気絶するまで作業を続けろサザラ」
「任せなさい―――ってポケモン達の方はもうだめかもしれないけどね」
ヤドンの井戸に溢れかえっていた、ヤドン以外の亜人や原生ポケモン達、ロケット団の手持ちのそれはどれも完全に戦意を喪失しており、サザラがいる間は絶対に戦う事はおろか、動く事さえできないだろう。それだけのレベル差と、存在としての力量差がある。ポケモンは本能と欲望に率直な生き物だ。ナイトが番を求めたのも本能から来る欲求だからだ。手持ちの雌ポケモンのアピールがあるのも三大欲求が本能に刺激されており、それに従順だからだ。故に絶対勝てないと本能で理解させてしまえば、もう立ち上がる事も戦う事も出来ない。
「これで終わりだな……さて、勉強になったか?」
「……あぁ、お前が強いのは解った。俺よりも、はるかにな」
シルバーは此方を探る様に見ている。興味を持ってくれているならそれで良い。それだけ此方へと関わりやすくなってくるだろう。そんな事を考えていると、此方へと向けられる声がする。
「てめ……オニキスか……!」
振り返りながら視線を声の方へと向ければ、岩に背を預ける様に、座り込む団員の姿が見える。声に見覚えはないが、それでも此方を知っているというのであれば、カントー時代に一緒に暴れまわっていた連中の一人だろう。無言で応える事もなく銃を構えると、
「おま―――」
喋っている途中の体にスタン弾を撃ち込み、黙らせる。悪党の言葉は最後まで聞く必要はない。こういうのは心を揺さぶりに来たり、和を乱そうとする場合がある。所謂”いたちっ屁”というやつだったか、そういう感じのアレだ。非常に迷惑にしかならないので、何か余計な事を喋る前に黙らせておくのに限る。
「はいはーい、全員気絶させたわよー。ついでに馬鹿な連中に関しては足の関節外してやったから逃げようとしても無駄よ。ラッキー辺りなら簡単に治せるし、便利ね、これ」
「お疲れサザラ」
サザラをボールの中に戻しながら、振り向くと、少年―――シルバーがそうか、と呟き、そのまま井戸の出口へと横にニューラを連れたまま、歩き出す。一切躊躇しないその姿にボスに似た所を思い出しつつ、まぁまて、と片手を前に出してその肩を掴み、動きを止める。
「まぁ、待て赤毛の少年よ。ロケット団相手に一人で立ち向かうその気概は買うが、その程度の実力で先へと進もうってのはちょっと無理な話だ。ロケット団に関わるってならもうちょっと強くなるか、それか止めて置け。連中は徒党を組んで攻めてくるから、今回は無事でも次回は二倍、三倍の数で攻めてくるぞ」
それがロケット団の基本戦術なのだから。レベルが足りないなら数で補え。それだけの構成員がロケット団には存在し、使い潰せるだけの財力もある。だから強い相手は数で圧殺し、蹂躙するという戦法を利用する。ただ、それが極稀に通じない相手も存在する。たとえばボス自身とか、緑色のとか、赤帽子とか、自分とか。どれもルール無用の戦い方に慣れている存在だ。先程のシルバーのバトルは見ていたが、まだ真っ当なバトルだ。ポケモンに技を指示し、攻撃させる。”強いトレーナー”の範疇を出ない。そんな領域のトレーナーだ。
「お前、その内ロケット団に負けて捕まってAVのネタにされるぞ」
「AV……? 余計なお世話だ。俺は強い。そして更に強くなる。ロケット団の様に徒党を組まなきゃ戦えない連中とは違う」
あぁ、そうか、十歳じゃAVの意味とか知らないよなぁ、なんて事をほっこり思いつつ、再びサザラをボールから出す。ギルガルドを一回回転させてからそれを大地に突き刺し、両手を柄に乗せて翼を広げ、俺の横でサザラはその存在感をアピールするかのように構えている。
「じゃあポケモンバトルをしようぜ。ルールは簡単だ。サザラに一撃でも通す事が―――いや、触れる事にさえ成功すればもう二度と干渉しねぇよ。その代わりに、お前の手持ちが全滅したら俺について来い。ポケモンバトルのやり方を教えてやる。どうだ、破格の条件だろう? ん? そうだな、ついでにサザラには一切指示を出さないって条件もつけてやるよ」
上から目線で、たっぷり見下す様にシルバーに対してそう言葉を吐く。それに自尊心が傷つけられたのか、或いはプライドに触れてしまったのか、目に見えてキレたのが解る。流石10歳児、沸点低いなぁ、と思いつつ、赤帽子が異常なだけだったんだよな、と今更ながら思う。とりあえず、シルバーは挑発に乗ってくれたらしく、キレたような表情を見せながらニューラに構えさせる。
「……なら俺が勝ったらそのポケモンは貰っていく」
「だとさ」
「流石父親譲りの傲慢さね。でも私の心も体も売約済みなのよ、ゴメンネ?」
「行け、ニューラ!」
サザラの言葉を無視してニューラが動き出す。素早い動きで一瞬でサザラへと到達するが、それを完全に見切ったサザラがニューラの動きをキングシールドを叩きつけて止め、殴り返しながら吹き飛ぶ姿へと向けて火炎放射を放ち、それだけでニューラを完全に戦闘不能に追い込む。それを見ていたサザラがつまらなさそうに欠伸を漏らし、
「ほらほら、全員一気に出していいわよ」
子供相手にそこまで挑発するのは若干大人げないんじゃ……?
なんて事を想ったりもしたが、次の瞬間にはヤミカラス、アリゲイツ、そしてリングマが同時に出現する。出現した三体のポケモンを、
「だましうち! きりさく! メガトンパンチ!」
サザラが咆哮を轟かせ、完全に動きを停止させる。格下であるという自覚がポケモン達を恐怖させ、そしてその足を止める。それを見たシルバーが叫ぶ。
「どうした! 動け!」
「っと、いう感じでおしまい、っと」
そうやって三体のポケモンが動けない間にサザラが一瞬で接近し、薙ぎ払う様に三体を戦闘不能に追い込む。それを終わらせたサザラはもはや記憶に残す事も、興味に思う事もなく、視線をシルバーから外し、ボールの中へと戻って行く。天賦故の傲慢さが彼女にはある。自分と同格と認めた存在、戦える存在、それ以外には一切興味に思う事も、ほとんど記憶に残す事もない。強いポケモンとはどこかが捻じ曲がっている。
そしてその姿が激しく少年のプライドを刺激する。
「ぐ……」
歯を強く噛みしめる様に此方を睨んでいる。まぁ、それもそうなるか、と思いつつ、今はこれでいいとも思う。重要なのはボスとこの子を会わせる事だ。最初は二人の間にわだかまりがあるかもしれないが、親子なのだから、それを解く事だって出来る筈だ。だからまずは挑発でも何でもいいから、この少年を傍に置き、逃がさない事が重要だ。
強くなることへと執着があるのであれば、圧倒的な強さを見せれば良い。そうすれば勝手にどうとでもなる。かなり汚い大人のやり方だが―――もう、自分も23、24となっている。10歳でポケモントレーナーになれるこの世界だと、十分に大人の仲間入りを果たしている。ロケット団で色々やっていたことは事実だし、今更汚い手にどうこう言うつもりはない。
そこそこ殺しているし。
「んじゃ勝負は俺の勝ちって事で、俺がお前にポケモンバトルってのを教えてやる。お前には磨かれていない才能って奴が見えるからな。鍛えれば間違いなく俺並に強くなるよ。最強は俺だけどな」
「ふん、勝手に言ってろ……だけど強さは認める。今すぐやらなきゃいけない事もないしな。強くなれるというのなら是非もない」
「うんうん、子供は素直が一番―――」
と、そこでシルバーと話すのを止め、視線を倒れているロケット団へと向ける。
「……とりあえず、ジュンサーさんが来る前に尋問して誰が作戦隊長で、統括しているのは誰か、それを吐かせようか」
このジョウトの旅は、なんだか増々大変になって来た。
そんな気がしてきた。
本日3更新目。ストックではないので書いたら更新ですわよ。
シルバーゲットだぜ(捕獲感
10歳の子供相手に大人げない感じがするけど、仕事人だからシャーないと言いつつ、これからシルバーくんが目撃するであろうバトル、体験するであろうカオスに対して合掌するしかない。
サザラ-6Vのやんちゃ娘。戦闘能力はPT最強、タイマンならおそらく敗北できない。苦手なものはNTRジャンルのエロゲ。