目指せポケモンマスター   作:てんぞー

37 / 80
決戦ルギア

「その面倒な特性、割らせていただきますわ―――」

 

 誰よりも最初に前に出たのはクイーン(オノノクス)だった。クイーン本人が色違い天賦の才(6V)オノノクスを殺して剥ぎ取ったその牙を加工して取り込んだ、黒い柄の赤いハルバード。それを振りかぶりながら一瞬でルギアへと向かって飛翔する。その動きに合わせてモンスターボールを二つスナップさせる。一つは足元に、もう一つは空に。空に出現するのは速度特化されたピジョット、そして足元にナイト。

 

「おさきにどうぞ!」

 

なう(行きな)

 

 ルギアが放つエアロブラストが発生する前にクイーンの行動が割り込まれた。かたやぶりに特化されたオノノクス。相手の防御性能に関係なく戦闘を行えるその貴重な能力は育成と鍛錬、そしてクイーンの性格によって更に凶悪にゆがめられ、圧倒的な”才能殺し”というものにでも進化した。クイーンは他のポケモンとは違う―――強者であればであるほど、強力に、そして極悪に殺す漆黒の殺意を孕んだ斧竜なのだ。故に剥ぎ取って作った斧槍を振り回し、おさきにどうぞの効果で先に割り込み、

 

 ルギアの目を抉る様に叩きつけ、その衝撃を貫通させる。

 

「あはぁ……マルチスケイル、ズタズタに引き裂かせてもらいましたわ」

 

 飛翔して来るピジョットの上に着地しながら素早く離脱する中で、ルギアが怨嗟の咆哮を散らす。その体を覆っている羽毛をクイーンの一撃が伝染する様に広がり、引き裂いた。特性、そして能力破壊。場合によってはタイプすらも無視し、貫通し、破壊する。それがクイーンというポケモン。圧倒的残虐性で敵を心身ともに追い込む悪魔。それ故に公式戦では使用を自粛している。フライゴンさんであればまだ、自重が通る。

 

 だがクイーンは徹底している。

 

 復帰不可能な状態にまで敵を追い込もうとする。

 

 時間をかければまだ矯正可能なのかもしれないが、それをあえて施さずにボックスに入れているのは今のような、ルギア等の伝説種を相手にその残虐性を最大限発揮しなければいけない状況の為だ。

 

 ポケモンを次々に繰り出す。水上での足場を確保する為にサニーゴ、ギャラドス、ジュゴン、ホエルコ、と次々ポケモンをボールの中から出しつつ。ポケモンの指揮を任せる為に一番経験と統率能力がある黒尾を出し、夜の闇を出現させながら移動用のポケモンの指揮を任せる。同時にモビー・ディックの移動を少しずつ開始し、ルギアの誘導を始める。

 

「りゅうころしのつるぎ! げきりん! げきりん!」

 

 ドラゴンタイプの大技を三体へと自分で指示し、その指示を通してルギアに対して急所への一撃を確実に、全て発生させる。三方から同時に受ける攻撃にルギアは耐えながら水を巻き上げ、ベールの様に纏いながら水の輪っかを自分の周囲に発生させる―――アクアリングで自動回復の状態に入っている。

 

「海上で戦っても絶対に勝てないなこりゃあ」

 

 手と指の動きで三体に同時に指示を出し、発生した十連エアロブラストを間にギャラドスを叩き込む事で三体へのダメージはゼロにして回避させる。そこからカウンターに急所への一撃を6連続で叩き込むが、ルギアへと発生するダメージは回復し続ける。マルチスケイルを破壊しても、伝説としての耐久力の桁が違う。今迄発生させたダメージ量を考えるとボスのドサイドンでさえ3回は蒸発してもいいだけのダメージが出ている筈だ。

 

 そう思った直後、海上に発生する竜巻が此方へと向かって接近して来る。アレに触れたら一瞬で人間はミンチになる。霧散させるだけの力もない、というと逃げるしか手段は残されていない。即座にモビーの背中を蹴り、その姿を素早く進ませる。それを阻む様にルギアのエアロブラストが発生し、サニーゴのミラーコートが飛び込む様に発生し―――貫通してサニーゴが吹き飛んだ。が、エアロブラストから逃れる程度の時間は出来た。逃亡を開始しながらも三体への指示は止めず。空中にファイアローとムクホークを出現させる。これもまた完全に速度に特化させたポケモン。ピジョット同様最高速度でマッハを超越する音速の化け物たち、それを三匹の足場にして、超高速の空中戦を繰り広げさせる。

 

 サザラとクイーンの刃がルギアを抉り、瞬間移動の如く出現したフライゴンさんの一撃がその肉を叩く。音を響かせながらルギアの体を傷つけるが、常に再生し続けるルギアの体力は全く減らない。天賦殺し、龍殺し、最強の天賦、と考えられる限り最強火力を用意してきてもこれか、と吐き捨てつつも迫って来たエアロブラストを目の前に蛮を出現させ、砂嵐で軽減させながら耐える。

 

 砂嵐で海水の大雨が混じりあい、マッドストームとなって酸素と視界を奪う最悪の環境を生み出す。ルギアの体に泥が引っ付き、その体の重量、重みが増して行く。そうやって出来た短い時間の間に、サザラを一瞬だけボールの中へと戻し、そして弾ける竜のオーラに右手のグローブを貫通させ、モンスターボールを破壊し、そして右腕その物にサザラのオーラを刻み、出血しながら放つ。ボールから竜のオーラを最大充填し、ハジケさせながら出現したサザラが大雨と砂嵐、夜を食い散らしながら刃にそれを乗せる。

 

「だぁぁぁぁ、らっしゃぁぁぁ―――!!」

 

 一閃に四つの軌跡が描かれる。四つの軌跡は閃光をなぞる様に全てを切り裂きながらルギアへと向かい、その体に斬撃を刻み、体を漸く吹き飛ばす事に成功する。そこに連撃を叩き込む様に背の上に乗ったクイーンが刃を真っ直ぐ突き刺し、そして真下へと回り込んだフライゴンさんがそれに合わせる様に真下からげきりんを挟み込む様に放ち、上下からルギアを叩く。その攻撃を加えて退避すれば、ルギアの全身から海のオーラが放たれ、海水の大瀑布が発生する。ギリギリそれから逃れた三人を観察しつつ、即座に回避、加速、退避命令を出す。直後、

 

 海神の怒りが響いた。

 

 ルギアは大きい、それこそ二十メートル級のモビー・ディックを超え、三十メートル級の大きさを誇っている。

 

 だがルギアよりも更に高い災害が―――大津波が発生する。

 

 全長四十メートル。ルギアさえも飲み込む大津波が此方へと向かって来る。死ぬ。それを理解した直後、水棲のポケモンを全てボールの中へと戻しつつ、新しくオオスバメを出現させ、その背中の上へとナイト共々乗り移る。黒尾をボールの中に回収し、ナイトにおさきにどうぞを連発させ、足場にしている飛行ポケモン達の行動を最上位に持ってくる。

 

「―――!!」

 

 ルギアから放たれる伝説の波動がその効果を打ち消した。暴風が風を切り裂きながら進んでいたポケモン達に襲い掛かり、その動きを鈍らせながら津波という絶対的恐怖を前に死を呼びこんでくる。左手でボールを握り、ボールの中で唯一神を加熱させる。その熱に左手が焦げて行く感触を感じながら、全力で唯一神を前へと放つ。

 

「Vジェネレェェェェトォォォ―――!!」

 

 回復の薬を自分に使いながら確認する。唯一神の爆炎は津波を真っ二つに割いた。その向こう側にいるルギアがエアロブラストの十連発を唯一神へと叩き込み、そして小規模な竜巻が叩きつけられる。それで吹き飛ぶ姿をボールに戻す事で回収する。普通のポケモンであれば間違いなく即死している。それに耐えきれたのはエンテイという準伝説級のポケモンだったからに違いない。お疲れ様、と言いながらボールをしまう。

 

「まだまだ、こんなもんじゃねぇだろぉ!! 俺も! お前らもよぉ―――!!」

 

 感応する様に龍の咆哮が天に轟き、土砂降りの中、雲の切れ間に輝く星空が見える。竜を称える天空の輝きに、三人が高揚しながら必殺の一撃をルギアへと叩き込んで行く。それでもルギアは沈まない、体力を回復し続ける。オオスバメから飛び降りながら足元にギャラドスを出現させ、それを足場に更にルギアから離れる様に加速する。それを視線で追おうとルギアが竜巻を発生させながら三人からの攻撃を無視し、追いかけてくる。

 

「いいぞ……来い……こっちだ……来るんだ……」

 

 振り返りながらハイパーボールを二十個ほど、蹴り飛ばす様にルギアへと叩きつける。それを暴風のベールで防ぎつつ、ルギアは回避し、突進して来る。ギャラドスを蹴る様に飛び降りつつ、フーディンを出現させ、彼女の腕につかまりながらテレポート、空へと飛び上ってからフーディンを戻し、そしてオオスバメを出現させ、高速で空を飛翔する。ポケモンなら耐えられるが、ルギアの舞う空は人間には優しくない空間だ。そこに存在しているだけで切り傷が増えて行く。

 

 故にオオスバメから飛び降りる。

 

 直後、ハイドロカノンがオオスバメを飲み込む。フリーフォールと暴風で体に激痛が走るのを我慢しつつ、横から浚われる様にクイーンに回収され、そのままクイーンが足場にしているピジョットの背に乗る。ポケットの中から痛み止めを取り出し、それを飲み込みながら視線をルギアへと向ける。背後から追いかけてくるルギアのエアロブラスト、射線に割って入ったサザラがキングシールドで無効化し、受け流しつつ、流しきれなかったのを庇う様に入るクイーンが切り裂き、そして空いた隙間にフライゴンさんがげきりんを叩き込んで行く。完璧な連携ではあるが、それでも火力が足りない。公式試合であればオーバーキルと言われるだけの攻撃力でも、

 

 伝説には足りない。

 

「それでも止められねぇな……!」

 

 ルギアを捕まえたらボスは褒めてくれるだろうか? きっと馬鹿、と怒るに違いない。そういう人だ。滅多に褒めるところを見せないけど、それでも努力や功績を忘れるような人でもない。怒った後で、きっと褒めてくれるだろう。もう二度と馬鹿な事はするな、と。

 

「ッ! 海に潜らせるなぁ―――!!」

 

 ルギアの高度が僅かに下がった瞬間、モビー・ディックをルギアの真下に出現させ、海へと潜ろうとしたその姿を撃ち上げさせる。下から殴りあげるモビー・ディックの攻撃を受けてルギアは僅かに体を揺らすが、それでもダメージを見せる様な姿はない。海だ―――そう、海だ。

 

 海の上で戦っている限りルギアは無敵だ。途切れる事のない水のベール、アクアリング、海水の大雨、アクアストーム、マルチスケイルを破壊した程度ではルギアの戦闘力は落ちない。アクアリングで異常な回復力を補給しているルギアはまず海から切り離さない限りは、絶対に倒す事は出来ない。海、海という環境から力を受け取っているのだ。

 

 まさに海神。

 

「だぁっぁかぁぁぁ、っらぁぁぁ―――!!」

 

 潜らせてはいけない。吠えながら指示を出し、ルギアを潜らせない様に打ち上げさせつつ、

 

 ピジョットから飛び降りる。フーディンを出現させ、そしてその手を掴みながら一直線にルギアの背に向かってダイブする。

 

 ―――到着点は見えている。

 

 ルギアはこっちの事を察知して体をねじる様に動くが、それよりも早くフーディンのテレポートが成功し、共にルギアの背中の上へと着地する。腰からナイフを抜き、それをルギアの背中に突き刺す様に固定しながら、フーディンの手を強く握り。

 

「調子に乗って遠くへ移動しすぎたなぁ、ルギアさんよぉ!!」

 

 ルギアが暴れるその前に、

 

「―――水平線に見えるだろ、陸が―――テレポート」

 

 フーディンのテレポートが決まる。一瞬で風景は切り替わり、テレポートで登録されていた地点へと―――つまりはアサギシティへと転移する。とはいえ、ルギアなんて巨大な存在は普通、そのままではテレポートでは運べない。それができたのは見えるところまでルギアを誘導したからだ。完全にアサギシティの浜辺へと叩きつける様にルギアを転移させ、離れる様に飛び降りる。即座に起き上がるルギアは暴風を身に纏い、浜辺にあった全ての存在と物をそれで木端微塵吹き飛ばす。その姿を見て笑いながら、背後から追いかけてきたピジョット、ファイアロー、そしてムクホークがゴッドバードの特攻を行い、更にルギアを海から遠ざける様に自爆した。

 

 瀕死になった三匹をボールに収容しつつ、更に追加される三人へと命令する。

 

「貫け! 吹き飛ばせ! ぶっ潰せ! 砕け! そしてあてろォ―――!!」

 

 咆哮する様に放った命令に従い、青、緑、金の三色が背後から抜け、

 

 閃光と見間違う攻撃をルギアへと叩きつけ、その巨体をアサギの灯台へと叩きつける。灯台に叩きつけられたルギアが怨嗟の声を発するが、その身に纏われているアクアリングと水のベールは海から切り離されたことから消失している。

 

 ゲーム的に言えば、今までが無敵状態だった。

 

 これで漸く、ダメージが通る状況になった。

 

「そんじゃ第二ラウンド。もっと内陸にルギアを叩き飛ばして、弱体化させるぞ」

 

 宣言し、新たにポケモンを取り出しながらルギアへと向かって一歩進む。




 クイーンちゃん - 残虐女王。色違い天賦ノクスを殺してそれで武器を作った女帝。特技は相手を再起不能に追い込む事。

 デンちゃん - ホロンヴェールで干渉する事に特化した個体。デルタ種でドラゴン化させるのが主な運用。ゴンさんとはそこそこ仲が良い。

 モビー・ディック - ”伝説に耐える要塞”をコンセプトに育てられた移動要塞。戦闘を捨ててこらえるに集中すればある程度時間稼ぎができる。

 アサギシティ - 本日の犠牲者


 ボスの弟子としての貫録は十分に出ていると思いたい。

 前回の残りの????は”オートアクアリング”と”海上海中時無敵”でした。ダメージ喰らってもアクアリングで即座に全回復、状態異常も即座い回復、という状況でした。えぇ、ゲームデータとして出現したら投げ捨てる強さ。

 ルギア戦はもうちょっと続くんじゃよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。