目指せポケモンマスター   作:てんぞー

45 / 80
静養完了

 全神経を集中する。

 

 正面から迫ってくるハイドロポンプを横へステップを取って回避し、直後投げられてくる手裏剣をダッキングからステップを取り回避し、バック転を繰り出して足元を薙ぎ払うつるの鞭を回避する。そこから体勢を整え直しながら片手で倒立し、次々と繰り出されてくる技を回避し、回避し続け、ベルトから滑らせたモンスターボールを自由落下させる。それをリフティングの様に蹴り上げたまま維持し、攻撃の切れ間に回転蹴りを叩き込み、

 

 モンスターボールを用意しておいたターゲットの中央に叩き込む事に成功する。

 

「―――オニキス様完全復活完了」

 

 ターゲットに落ちて転がるモンスターボールを回収しつつ、意外と回復するのに時間がかかってしまった、と反省する。ヤナギからの追撃を喰らって静養し、一ヶ月。まる一ヶ月を治療の為に費やしてしまった。だがそのおかげで完全に傷を回復する事が出来た。手持ちに頼んで回避練習を頼んだが、完全にイメージ通りに体が動くし、モンスターボールを放つ事も出来る。肉体に関しては完全にルギア戦前の状態まで復帰する事が出来た。これで問題解決―――であれば全て良かったのだが、

 

 そんな事はないのだ。

 

「……あ、オニキスさん、もう大丈夫なんですか?」

 

 ジムの方から顔を出したミカンに手を振り返すと彼女が出てきて、そしてジバコイルを出し、その上に乗る。

 

「それじゃあオニキスさんはもう大丈夫そうですけど、無理しちゃ駄目ですよ? ではヤナギさんのお見舞いに行ってきますね」

 

 そう言ってミカンはジバコイルに乗って去って行く。

 

 そう。お見舞い。

 

 ヤナギの。

 

 あのジジィ、怪我をして現在、ジムで静養中なのだ。

 

 なんでも一ヶ月ほど前、ジムの滑る床の点検を行っている間に滑って転んでしまい、そして骨折してしまったのだとか。ついにジョウト地方のエリートトレーナーを片っ端から粉砕し、そしてはれて公式出場出禁を言い渡された伝説のトレーナーはヤナギへと挑む事も考えていたのだが、現在ジムで静養中である事を言われると、流石に強引にポケモンバトルを申し込む事が出来ず、そのまま、全てのトレーナーをのしてからシロガネ山へと帰って行った。

 

 まぁ、でも赤帽子のおかげで裏切ったロケット団に関しては”全員”倒し、捕縛し、そして殲滅する事が完了した。流石ロケット団絶対潰すマンの異名を持つ最強の赤帽子は格が違った。そんな訳で、ジョウト地方は”一見”平和が戻っていた。本当に一見、という見ただけのレベルだが。だが今、ヤナギが残っている事を考えると非常に憂鬱になる。まぁ、赤帽子が何時でも下山できるようになっただけ、マシなのかもしれない。その時はまたジョウト地方のトレーナーに死滅してもらうだけだし。

 

 ―――このままヤナギを殺しに奇襲しに行こう。

 

 赤帽子からヤナギが逃れる為に本当に骨折しているのだとしたら、殺すチャンスは間違いなく今だ。この瞬間以外にヤナギを殺すチャンスはないだろう。だが、それをするだけの余裕が今、自分にはないのもまた事実だ。悲しい話だが、ヤナギの事は一旦忘れて、そして集中しなきゃいけない出来事があるのだ。

 

 もう既にバッジを集め始めてから、シーズンが始まってからかなりの月が経過している。

 

 いよいよ、ポケモンリーグ予選の時が来たのだ。

 

 ―――ちなみにだがポケモンリーグには当たり前のようにだが”予選”と”本戦”が出場する。本戦に参加できるのは予選を勝ち抜いてきた”64人のポケモントレーナーのみ”となっている。まず最初に数百を超えるポケモンリーグの参加者たち、ジョウトとカントー両方からやって来たトレーナーたちがここで大幅に削られる。これを勝ち抜いたトレーナーのみが本戦への出場する権利が与えられる。ちなみにだが、自分、オニキスには功績が存在する。

 

 ルギアを捕獲し、アサギシティを助けたという功績が存在するのだ。この功績がかなり大きい。なぜならミカン本人が自分一人ではどうにもならなかった、と証言している事件だし、完全屈服させたルギアに嘘をつかせることなど容易い事だ、世には”善良なトレーナーオニキスが頑張って魔の手からルギアを守り、捕獲し、そしてアサギシティを救った”という記録しか残っていないのだ。

 

 その上でコッソリトエンジュジムのマツバ、そしてアサギジムのミカンからは推薦状、並びに今季のポケモンリーグのバッジ取得に関する最速を証明した。つまる所、ポケモン協会に対して自分がどれだけ優秀なトレーナーであるかを証明し、尚且つ推薦と功績を打ち立てたのだ―――このおかげでポケモンリーグにおける予選部分は完全に免除、シード枠の獲得さえもできたのだ。つまり、ポケモンリーグに関しては、他のトレーナーよりも観察し、情報収集する時間が与えられた、と言う事になる。

 

 まぁ、つまり、

 

 ヤナギとかいうクソザコ死にぞこないカスジジィに関わっている時間が無くなったわけだ。

 

 何、きっとヤナギの問題は唯一神を未だに使っているシルバーと、そしてゴールドがどうにかしてくれるに違いない。そう信じて、今はフリーにさせているポケモン達を呼び、纏める。静養中にポケモンの育成と調整はやめる事がなかった。だからポケモン達は成長し続けている。ポケモンリーグでの勝負を目標として、レベルが100になる様に、”ハンドレッド”の領域に入る様にも調整した。ポケモン達はこれでいい。となると、後はトレーナーとしての”読み”と”指示”と”戦術”の勝負になってくる。

 

 ミカンが空の彼方へ、見えなくなったのを確認してから集まり始めたポケモン達へと視線を向ける。

 

「―――そんじゃ、ポケモンリーグの話を煮詰めるぞ」

 

 

 

 

「んじゃまずは今回のポケモンリーグにおける固定面子の発表をするぞーつってもたぶんお前ら言わなくても解るだろうがな。とりあえず固定面子は黒尾、ナイト そして蛮ちゃんの三人だ。これに関しては文句を言う奴はいないよな?」

 

 発表した固定スタメンの面子に全員が頷き、そして真剣に聞き入る。まぁ、ここら辺は当たり前、解っていたことだ。元々この三人が戦術の要でもある。夜を生み出す黒尾、受けと交代の中継ぎのナイト、そして超耐久力を見せてくれる蛮、この面子は交代戦術を利用する上ではパーティーから抜く事の出来ない絶対のメンバーだ。

 

「控えとして災花、月光、サザラ、クイーン―――そしてアッシュを相手に合わせて組み替えながら使っていく。場合に寄っちゃあ隠し札として最終戦付近まで隠す必要があるかもしれないから、その場合は気を付けてくれ、出せる試合数が少なくなるから。ただ意地悪でも何でもなく、勝つための行動だから許せよ」

 

「まぁ、拙者らもそこらへんはちゃんと解ってるから大丈夫で御座るが―――寧ろ驚きとしては破壊魔が控えとはいえ、公式戦に参戦できる事なので御座るが」

 

 視線がクイーンへと向けられる。えぇ、そうですわね、とクイーンが前置きする。

 

「確かに私の趣味は他者をいたぶる事ですが、別に誰だっていいって訳ではありませんのよ? 基本的には自分よりも種族値、個体値で上の存在や天賦の才を持つ、圧倒的強者のプライドをへし折って目の前で這いつくばらせるのが好きなんですのよ。最近はワダツミと遊ぶ事が出来て日常生活がかなり充実しているので、私的には我慢できる範疇ですのよ?」

 

「……というわけだ。クイーンは今の所公式試合では一切出した事がない、完全なダークホース状態だ。今、一番誰もの意識外に存在しているから、”ここぞ”という場面で利用する方針だ。役割がアタッカーだからサザラ、アッシュのどちらかと交代して運用する事になるが―――」

 

 そのままパーティーの役割の話をしながら、自分のパーティーにおけるポケモンのそれぞれの役割を思い出す。

 

 サポート:黒尾、月光

 受け:ナイト、蛮

 物理火力:サザラ、クイーン、災花

 特殊火力:アッシュ

 

 こうやって並べれば解るが、このパーティーの中で唯一特殊攻撃に特化しているのがアッシュのみになる。ひでりだいもんじ、ひでりブラストバーン、ひでりVジェネレート。これが最大ダメージで叩きだせるのは現状、アッシュだけになる。相手が此方の攻撃傾向を呼んで物理耐久パで攻めてきた場合、それを切り崩して突破するのはアッシュの役割になる。なので、相手の登録時のポケモンで傾向を読み、そして読んでアッシュをパーティーに入れるか否かを考えなくてはならない。

 

 ポケモンリーグに参加登録できるポケモンは最大で八人まで。

 

 その登録されたポケモンの”名前と種族”は情報公開されている為、そこから相手のパーティー傾向等を調べるのもトレーナーとして行う情報戦の一種だ。此方の手持ちが開示されている様に、相手の手持ちを読み、控えを入れ替えながらバトルを行うのだ。ポケモンリーグではポケモンの強さだけではなく、トレーナーの総合力も測られるのだ。故に甘い事は考えられないし、ナメプは一切行えない。

 

 何せ、ポケモンマスターの座を得るのであれば、ポケモンリーグ、四天王戦、チャンピオン戦全てで敗北してはいけないのだから。

 

 改めて理解する。ポケモンマスターという領域の険しさ、そして異常さ。並み居るポケモントレーナーを全て粉砕し、そして全てに勝利し続けて漸くポケモンマスターの称号を得る事が出来るのだ。それをたった10歳で成した少年、レッド。その恐ろしさは筆舌にしがたい。それでありながら”今でもまだ成長途中”という事実は間違いなく彼を無敗の帝王と押し上げている。それでもまだ、不可能ではない。勝つのは不可能ではないのだ。

 

「―――というわけで、基本的には複合天候夜パをメインにして戦う。現状、こいつに完全適応できているトレーナーはマツバぐらいしか知らねぇ。そんなマツバにしたってポケモンリーグ本戦にまで勝ち上がってくる可能性は高くはない。だからそこまで心配する必要はない―――今年のカントーからの出場ジムリはナツメだから、きっちりきっかりメタ殺せるし」

 

なおー(酷い話だ)

 

 全くだ。

 

 初代環境で言えば間違いなく最強だったのに、悪タイプの登場でメタが簡単になってしまったナツメには冥福を祈りつつも、ナメプをすると逆に殺されるので油断だけはしない。

 

 まぁいい、と呟く。

 

「この時の為に辛くて長い訓練を施してきたんだ―――そろそろ行くぜ」

 

 ポケモン達をボールの中へと戻しながら、指笛で呼び、大きく跳躍する。

 

 それに合わせるように人の姿が一瞬で背後から姿を浚う様に一気に空へと飛び上がり、そして空へと跳び上がったところで人の姿からポケモンの姿へと、

 

 伝説のポケモン、ルギアが姿を現す。

 

 その頭の上で両手を組む様に立ち、そして指示する。

 

「―――行くぞ、セキエイ高原、ポケモンリーグへ」

 

 伝説のポケモンに乗って飛翔し、念願の舞台へと向かう。




 次回からポケモンリーグになるよ。仮面マンもしばらくはお休み
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。