目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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ポケモンリーグ二回戦

『―――それではついに始まりますポケモンマスターリーグ第二回戦! その第一試合を決めるのはこの二人だぁ―――!』

 

 実況の声に導かれる様にゴーグルを装備したまま、フィールドの端に立つ。遠く、反対側に同じように立つトレーナーの姿が―――ヒョウドウの姿が見える。その姿を視界で捉えるが、息を吐き、頭をクリアにしながら闘志を滲ませる。

 

『まずは変則的ないかくパを披露したヒョウドウ選手! 第一回戦に置いてはだっしゅつボタンを利用した超高速入れ替えを見せ、一瞬でリザードンを無力化してしまったのは皆の記憶に新しいだろう! どんなポケモンだって戦う為には火力が、攻撃力が必要! 故に削り取ればいい! それをコンセプトに構成されているいかくパは恐ろしい、しかも交代しても消えない! なんて悪夢だ! こんなパーティーと私は対戦したくありません!』

 

 歓声と光の嵐、それをかき分けるように実況の声が響く。

 

『それに対するは夜パの発案者であるオニキス選手! 第一回戦はその実力を十全に発揮する事の出来ない、砂嵐を固定してしまう砂パが相手だったが―――なんのその、流石天候変化のスペシャリスト! ポケモンの技やサポートを駆使する事で無力化し、エースのサザンガルドで見事、敵を切り裂いて勝利した! 新しい戦術、新しいポケモン、そして新しい技! ブリーダー界においては常にトップを走り続けるオニキス選手は果たして思い通りのバトルができるのか!?』

 

 随分と実況が勝手な事を言ってくれる。だが、まぁ、確かに難しい相手だとは思う。普通に戦うと間違いなく戦いにくいのは確かだが、それも交代して戦わせる事が出来るというのであれば、話は違う。交代する度に上昇効果を引き継ぐことができるのだ。弱体化も引き継ぐ危険性があるが、そんな事よりも、天候適応から発生する上昇効果の方が強いし、秘策がある。故に、

 

 どうにかする。

 

『どちらも最上位級のトレーナー! この試合は目が離せません! では実況も解説も切り上げ、そろそろ開始しましょうか! セキエイリーグ第二回戦第一試合―――』

 

 流れるような動作で腰のベルトからボールを取り、握り、そしてそれを動かす。

 

『―――始めッ!』

 

 スライドとスナップを行い、ポケモンをフィールドに出す。

 

「行け―――月光!」

 

「拙者が先発というのもえらく久しぶりで御座るな」

 

 対応する様に出てきた相手の先発はギャラドスだった―――黒尾を狙ったのだろうか、だとしたら早速狙いが外せた。月光とギャラドスがフィールドに出た瞬間、濃霧とまきびし、どくびしが発生する。またギャラドスの威嚇の視線を受けた月光が僅かに竦み、その動きが悪くなる。だがその直後、出現した濃霧によって視界が遮られる。見えないというレベルではないが、極端に見えづらくなる。試合としてはつまらないかもしれないが、これで威嚇対策の起点は作れた。

 

「―――見えなきゃ威嚇もできんで御座ろうな!」

 

 ギャラドスの咆哮が響き、凄まじい水流が濃霧を突き抜けて月光へと襲い掛かってくる。黒尾への交代を読んだのだろうが、それは外れている。それを回避しながら月光が更にまきびしをまきちらし、濃霧の中に身を紛れ、溶ける様に姿を消し―――ボールの中へと戻ってくる。あぁ、この感じだ、この天候を使ったバトンサイクル、これがいいのだ。充実感を感じる手応えに笑みを浮かべ、息を吐きながら月光の入ったボールをスライド、スナップ、そして流しながら次のポケモンをコンマ四秒で繰り出す。

 

「黒尾―――二律背反!」

 

「来たれ闇よ! 天を覆え暗き時よ! そして惑うがいい、見通せぬ世界で!」

 

 黒尾が出現するのと同時に夜が展開され、そして二律背反による同時展開と疑似天候融合が発生する。夜の色を受けた濃霧は一瞬で完全な闇の世界に包まれる。それを無効化する様な映像がスクリーンに流れ始めるが、生憎とトレーナーやポケモンには見えない様に処理が施されている為、対戦している自分達には全く関係ない。今、フィールド全体は完全に闇によって閉ざされた。それによってトレーナーも、ポケモンも、完全に見通す事の出来ない環境が出来上がってしまった。これで、

 

 ―――完全に威嚇を潰す事に成功した。

 

 黒尾が闇の中を消えて行くように姿を消し去り、ボールの中へと戻ってくる。サイクルを回して次のポケモンを―――ナイトを場に出す。それに合わせるように、相手のポケモンもフィールドへと出してくる、そんな音が聞こえる。勿論、それがどのポケモンであるかはわからない。見えないのは此方も同様であり、見えるのはそう訓練された手持ち達だけだ。だけどこの状況でまず、何をすべきかは解る。

 

「昆布戦法だ、ハハッ―――久しぶりに綺麗にはまるぜ、これは」

 

なおー(久しぶりに)なーおん(大暴れ)なー(できそうだ)!」

 

 迷わず出現したナイトが吠える。何のポケモンが出現したか―――思考を加速させなくても解る。ムクホークだ。間違いなくパーティーに”しろいきり”対策としてきりばらいのできるムクホークが入っている筈だ。これだけは絶対にパーティーから追い出す事が出来ない。そしてしろいきりやこの濃霧を排除しない限り、相手のパーティコンセプトは死んだままになる。故に絶対にムクホークは出さなくてはいけない。そしてそのムクホークは今、ナイトの吠えるによって強制的に押し戻された。

 

「グラァァォ!?」

 

 大地を揺らす感触とドラゴンの咆哮―――ボーマンダだな、と当たりをつける。だがこの闇の中はまきびしとどくびしで溢れている。ボーマンダは確実に出現するのと同時にダメージと毒を喰らった。誰がラムのみをもっているかは解らないが、これでいい。

 

「あてろボーマンダ!!」

 

 その声と共に空から流星群が降り注ぎ、ナイトへと必中の流星群が衝突し―――その瞬間、ナイトが予め用意していた持ち物、レッドカードの効果が発動し、ボーマンダが強制的にボールの中へと叩き戻される。それに合わせるように引きずり出されるのはまた、巨体が大地を打つ音だ。相手の大型ポケモンがボーマンダとギャラドスの二体のみだった筈だ、故にこの音はギャラドスのものか、そう思いながら再びナイトの遠吠えが闇の中に響き、ギャラドスが強制的に押し戻される。その代わりに出てくるポケモンは解らない。だが地に足がつくのであれば、間違いなくまきびしとどくびしの効果を喰らってくれるだろう。ナイトが再び吠える。

 

「クォン!?」

 

 鳴き声的にウィンディだろうか? おそらくはウィンディが引きずり出されてきた。昆布戦法が成功する時はたった一体のポケモンで状況を思いっきりかき乱す事が出来るから、非常に面白い。そう思った直後、闇色の霧の中を、突如光が照らす―――いや、ウィンディが全身を燃え上がらせながら光を灯しているのだ。そのおかげで、闇の中でもナイトの姿が捉えられる。瞬間的に移動したウィンディが炎を纏いながらフレアドライブをナイトへと叩き込み、大きく吹き飛ばす。ナイトが苦痛の声を漏らしながらも、楽しそうに鳴き、そして着地する。その姿を神速で追いかけたウィンディがナイトへと追撃し、それに合わせるようにナイトが吠えた。

 

 神速で吹き飛ばされている間に、ウィンディが吠えられた事によってボールの中へと戻され、強制的に別のポケモンが出現する。出現したのはギャラドスだった。まきびしを踏む様に出現したギャラドスはダメージを喰らいつつも、僅かに残ったウィンディの炎を頼りに、ナイトにハイドロカノンを叩き込み、一気に吹き飛ばした。

 

()! ()! ()!」

 

 満ち足りた表情を浮かべながらナイトが瀕死になり、ボールの中へと戻って行く。グッジョブ、心の中でそう言いながら、ナイトのボールを外し、次のポケモンを出す。相手が出すのは―――ムクホーク、或いは月光読みでライボルト、或いはレントラー。そう予想し、次に出すポケモンを決定する。ムクホークであれ、ライボルトであれ、間違いなく相性差で圧殺できる。

 

「潰せ、蛮ちゃん!」

 

 蛮をフィールドに出す。ナイトが稼いだアドバンテージをこのターンで一気に固める。そう判断し、蛮を繰り出した。その降臨と共に深い闇色の濃霧は消え去り、その中央から空間を引き裂くように砂嵐が発生する。一つ前の対戦でも発生していた闇色の砂嵐は視界をある程度制限するが、それでも濃霧程ではない。普通に戦闘を行える程度には視界は取れる―――ダメージさえ無視すれば。相手はここでギャラドスを交代、

 

 ―――しなかった。

 

 ハイドロカノンが蛮に衝突する。読み負けた、いや、”読みすぎた”のだ。しまった、そう判断したときには蛮が吹き飛ばされており、そして二撃目のハイドロカノンが蛮を追撃し、その姿を倒す。完全な事故死だ。すまない、と心のなかで謝りつつ、状況は4:6でこっちが若干不利、蛮を事故死させてしまったことが痛い。

 

 ―――思考を加速させる。

 

 頭の中がクリアになって行く。その中で高速で思考を巡らせ、考えているこの瞬間だけは時間の流れを緩める。そうやって考えるのはこの”中盤戦の掴み方”になる。今、現在判明している敵の手持ちはギャラドス、ウィンディ、ボーマンダ、そしてムクホークだ。これが出てきており、ある程度ダメージを与えてあるため、相対する場合は此方にアドがあると思ってもいい。ムクホーク辺りがきりばらいで来ると思って蛮を出してしまったが―――まさか居座られるとは思わなかった。いや、違う。こっちの交代戦術が革新的過ぎるのだ。俺ほど交代戦術を多用するトレーナーもまた珍しいのだ。となると相手はいかくしつつある程度居座る事を前提としたパワープレイ型なのか? いや、違う、相手もある程度バトンを組んであるはずだ。ただ、まだその条件を満たせていないだけ―――おそらくは威嚇が成功した時、それが条件であるに違いない。

 

 ならどうする?

 

 重要なのは4:6の状況を最低限4:4、そして4:3まで引きずり下ろす事だ。このギャラドスが中々極悪だ―――蛮を二発で葬ったことを考えると、こだわっているのかも知れない。となると防御を完全に頭から捨てなくてならない。たくすねがいも、いやしのねがいも使えない。となるとここからは純粋に火力で圧殺する必要がある―――となると頼れるのは災花、或いはアッシュだけだ。だけど勘が言っている、アッシュは温存しろ、”ここぞ”と言うべき状況で出せ、と。となると此方に残っている四人、黒尾、月光、災花、アッシュの内、アッシュを除いた三人で終盤戦まで持ち込む必要がある。

 

 ムクホーク。まずはお前をどうにかしなくてはならない。

 

 なら釣り出すしかない。

 

 思考が定まる。加速していた思考が通常の状態へと戻り、体が自由に動くようになる。ボールは蛮を戻しながら月光のを握り、そして月光をまっすぐフィールドに登場させる。それによって砂嵐が濃霧によって押しつぶされ、再び完全な暗闇が生み出される。更に増えるまきびし、設置状況はまさに此方に対して有利な状況だ―――時間をかけて交代させればさせるほど、こちらが有利になってくる。

 

「相性は悪くねぇ! ドジったこっちが悪いからリカバってくぞ月光!」

 

「承知で御座る」

 

 月光がみがわりを生むのと同時に、闇色の濃霧が勢いよく晴れて行く。吹き飛ばされて行く濃霧の向こう側にムクホークの姿が見える。その姿へと月光が紫色の塊―――どくどくを雨の様に降らせ、ムクホークに毒を与える。それに対応する様にムクホークは翼を大きく振るう。生み出された突風がみがわりごと月光をボールの中へと押し戻し、そして入れ替わるようにポケモンを引き出してくる。

 

「ありがとう、ちょうど出たかったタイミングなのよ」

 

 ―――災花の運命力が、強運が、”狂運”が彼女の存在を強制的にランダム中からピックアップさせ、出現させる。アブソルという種の中でも特におかしな運勢を持った災花、それが強制的に出現するという運命を引き寄せた。そしてそれは望んだ展開でもある。出現した災花に対してムクホークのいかくが突き刺さる。それを受けながら一瞬でムクホークへと接近した災花が爪とつじぎりを繰り出す。

 

 ムクホークに爪撃が走る。が、倒すには至らない。ムクホークが加速する様に災花から離れようとするが、加速する災花がその姿に追いつき、再び爪を振るう。それを喰らいながらムクホークの翼が動き、ふきとばしによって災花がボールの中へと押し戻される。代わりに、黒尾がフィールドへと出てくる。

 

「あまりいい流れではありませんね。ここは一手、強引に流れを変えさせてもらいます」

 

 威嚇が黒尾へと突き刺さる。ムクホークは長く持たない。どくどくが突き刺さった上に威嚇を喰らったとはいえ、災花のつじぎりが入っている。居座らせる事は無理だと判断する。だからこのまま落とす。そう判断し、指示を出す。最速で動くように意思を黒尾へと注ぎ込めば、それに反応するようにムクホークを追い抜き、黒尾が動く。そうやって放つ攻撃は―――吠える。相手を強制的に交代させ、ポケモンを入れ替える。

 

 ムクホークの代わりに出現するのはウインディだった。出現したウィンディは神速で黒尾へと接近すると、一瞬で黒尾を吹き飛ばし、その体力を奪う。

 

 黒尾の体から闇が伸び、それがウインディを掴み、貫き、みちづれにする。オートみちづれが今回は発動したか、と息を吐く。確実性がないから頼りたくはないが、今回はパーティーに災花がいる。それが運を安定させているのかもしれない。いや、幸運の女神なのだ、安定させていると考える。ともあれ、黒尾が倒れて3:5の状況、そろそろ攻勢に出ないと辛い所があるが、それに関しては完全にあのムクホークが面倒だ。バトル前はここまで面倒な相手になるとは思っていなかった。

 

 完全な誤算だ。

 

 だが、これで詰みだ―――。

 

「―――頼んだぞ月光!」

 

「過労死な勢いで御座るが、拙者はまだまだ元気で御座る」

 

 月光と共に笑い声を響かせながら再びフィールドに濃霧が生まれる。そう、威嚇パーティーである以上、相手は絶対にこれを展開させられない。現状3:5で此方が押されている様に見えるが―――ギャラドス、ムクホーク、そしてボーマンダはナイトで全てダメージを、毒を喰らっている為、既に”一撃圏内”とも言える状態まで体力を削られているのだ。問題なのはまだ出現していない二匹だが、その二体も出てきた瞬間に毒とダメージを喰らい、一撃圏内に引きずり込める。

 

 勝利の道は見えた。

 

 ポケモンの入れ替えられる音が聞こえる。反応するように素早く此方もポケモンを入れ替える。濃霧の中に紛れるように姿を消し―――災花が再び出現する。出現した災花を迎えるようにきりばらいが発生し、濃霧が吹き飛ばされ、威嚇が災花に突き刺さる。だが災花はそれを気にする事無く一直線に、闇の中に姿を消す様にムクホークへと接近し、

 

「残念、私、運が良いのよ」

 

 イカサマが急所に突き刺さった。ムクホークの力を借りるように放った一撃はムクホークを貫き、切り裂き、大地へと叩きつける。獲物を倒した事に爪を研ぎ、そして戦意を高揚させ、攻撃力を上昇させる。ムクホークが消えた事によってきりばらいを放てるポケモンが、吹き飛ばしを行えるポケモンがいなくなる。これで、相手の威嚇を完全に無効化する事が出来た。

 

 長くて辛かった。息を吐きながら災花が闇に紛れるように姿を消し去り、今の上昇分によって威嚇の下降を相殺しつつ、ボールの中へと戻ってくる。

 

「さあ、最後のステージを積み上げるぞ月光!」

 

「お任せで御座る!」

 

 月光が場に出るのと同時に再び濃霧が世界の全てを閉ざす。月光が場に出るのと同時に、濃霧の闇の中を発光する様に雷を舞わせる姿が闇の中を照らす。そのシルエットから、それが亜人種のライボルトである事を理解する。出現したライボルトはどくびしを喰らいながらもスパークし、その光で月光を捉えて威嚇を通す。喰らった月光から攻撃能力が失われて行く。だがそれを気にする事無く月光はしろいけむりを撒き、濃霧とは別に、能力変化を無効化する領域を作る。そうやって行動を終えた月光に接近し、ライボルトが電撃を纏った一撃を叩き込み、その姿を吹き飛ばす。

 

「任務完了で御座る……どろん」

 

 月光がだいばくはつを放った。ライボルトを巻き込む様に放った爆発は一瞬で月光を瀕死に追い込み、ライボルトに大ダメージを与え、吹き飛ばした先でまきびしを受け、そして毒の力によって倒れる。月光をボールの中へと戻す。これで相手のウィンディ、ムクホーク、ライボルトが落ちて状況は2:3、相手はギャラドス、ボーマンダ、そして後一匹、未見のポケモンが残っている。

 

 だがこれでいい、

 

 ―――新世代のエースを降臨させる条件は整った。

 

 右手にアッシュの入ったボールを握る。加熱されるモンスターボールがそのまま発火現象を発生させ、右腕に巻いた包帯を燃え上がらせる。追いついた、ついに入口とはいえ、アッシュも追いついて来たのだ、サザラの領域へ。

 

 出来る、この状況、この舞台で、

 

「―――見せるんだ」

 

 ボールをスライドさせ、スナップさせ、そしてこのバトルで出す、最後のポケモンを場に出す。

 

「これがぁ―――」

 

 ボールから出てきたアッシュの姿が白い光に包まれる。その姿は成長する様に変わって行く。髪はさらに長く、翼はもっと鋭利なフォルムに、肉体は更に成熟され、二十代中盤ほどの成長した女性の体へ、髪の色は完全に灰色一色に、翼も、尻尾も灰色に染まり、しかし炎の色だけは白に近い青となって尻尾の先で燃えている。それこそ注視しなきゃ解らないほどに。右腕に炎を薙ぎ払う様に腕を振るい、そして新たに進化し、生まれた、闘争に特化した進化、

 

 全く新たな現象を口にする。

 

「メガシンカぁ―――」

 

 アッシュがフィールドに立つ。その咆哮が轟く。濃霧が吹き飛ばされ、星天が輝くようにアッシュの降臨を祝福し―――輝きが更に増す。眩い光が導くかのように星空に描かれ、必中の軌跡をアッシュへと示す。

 

「―――メガリザードン”Z”、後にも先にも生まれてこない、俺だけのメガリザードン、完成だっ……!」

 

「さぁ、今回は休みの先輩に見て貰おうかしら―――私のエースとしての誇りを」

 

 星天下で相手がポケモンを出してくる。出現するのはギャラドスだ。相性的には最悪の相手だと言っても良い、だがそれを意に介す事もなく、一瞬でギャラドスへとアッシュが接近し、Vジェネレートを放つ。

 

 星の軌跡が必中を描く。

 

 導かれたルートを辿る様に放たれた火炎の地獄は夜をまるで昼間の様に照らしながら地上の煉獄を生み出し、一瞬で環境をひのうみへと変える。メガシンカを通して生み出されたメガリザードンZの種族値による暴力、それが相性を破壊し、食い破りながらギャラドスを一瞬で粉砕させる。敵を滅ぼした事の闘争心がVジェネレートによる反動を食い殺す。

 

「宣言するわ―――全員、一撃で沈める」

 

 続いてボーマンダが出現して来る。放たれる威嚇をしろいけむりで受け流しながら、相手陣地へと深く踏み込んだアッシュが星の描く軌跡を進み、必中の軌道を以ってVジェネレートを放つ。弱ったボーマンダを一瞬で滅ぼしながらその姿をスタジアムの防護システムへと衝突し、戦闘不能に追い込む。

 

 そして出現する最後のポケモン―――ケンタロス。

 

 ”初代最強”とも呼ばれるほどに極悪な強さを誇ったポケモン。亜人種で出現したケンタロスは角を生やした女の子の姿であり、正面からアッシュとぶつかりに行く。だが威嚇で火力が削れなく、それでいて敵を撃破した場合は能力が下がらない、その特性を経たアッシュはもはや止めようがない。正面からケンタロスの攻撃を抑え込み、

 

 そして自身を巻き込む様にVジェネレートを放った。

 

 爆発し、燃え上がる炎は夜空に高く火柱として撃ち上がり、夜を照らす光となった。

 

 その中心から、ケンタロスの体を投げ捨てるようにアッシュが出現してくる。

 

 その体はダメージを受けているが―――健在であり、

 

 相手のポケモンはもういない。

 

『―――決ッ着ゥ―――!! 勝者はオニキス選手ぅ―――!!』

 

 爆発する歓声の中、荒い息を吐きながら、戻って来たアッシュを迎えるように抱きしめた。少し前までは自分よりも背が低かったのに、今では並ぶぐらいには背が高くなってしまった。

 

 夜が明け、星が消え、そして戦いは終わる。

 

 それでもメガシンカは終わらない、戻らない。完全な”進化”としての成功だった。

 

「ここまで育ててくれてありがとう、オニキス。ううん、マスター。これからは……これからも、この身がある限り、全力の愛と力を持って私は応え続けるよ」

 

「あぁ、頼りにしてるぜ、アッシュ」

 

 抱擁から解放し、アッシュをボールの中へと戻しながらフィールドへと背を向ける。

 

 ―――これで、ポケモンリーグ本戦、初日は終了した。

 

 ジョウト・カントーポケモンリーグベスト8確定。




 戦闘が複雑化し過ぎる結果、作者でさえ偶にこいつどうなった? この技は? この特性は? とか忘れがちになる。

 それほどポケモンバトルを書くときは頭を使ってます。

 たぶん今まで書いて来た中で一番頭使ってるんじゃないかな……。

 というわけで永続いかくパ、反省点は
・ムクホうぜぇ
・蛮ちゃん事故死

 これさえなければもっとズムーズだっただろうに……

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