目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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建設現場

 ―――エンジュシティとモーモー牧場の間の38番道路、その北側は未開拓地域となっている。つまりは人の手が入っていない領域となっており、ポケモンが支配している地域ともなっている。つまり、そこをどうにかすれば地主から土地を安く入手する事もできる、という事になっている。ここに目を付けた理由はシンプルであり、北上すれば山岳地帯や洞窟が、湖が存在し、環境的に変化に富んでいるのに、道路に比較的に近いエリアは広い草原になっており、木々も比較的に少なく、切り開くならやりやすいエリアとなっている。故に、

 

「オニキスの三分開拓レッスゥン! イエァー!!」

 

「い、いえあー!」

 

「まずは伝説のポケモンを出します」

 

 ワダツミを出す。ワダツミが原生種の状態で出現し、豪雨が降り注ぎ始める。ワダツミが頭上で調子に乗っている気がするからこれはあとでおしおきかなぁ、と内心で思いつつ、親指を持ち上げ、そしてそれを下へと向ける。

 

「滅ぼします」

 

『貴様らに罪はないのだが。主の前にあるのが悪い』

 

 エアロブラストと竜巻、そしてハイドロカノンが爆撃の様に放たれ、林があったであろう場所を一瞬で更地へと変えて行く。もはやただの荒れ地へと場所変化しており、それを見届けながらワダツミをボールの中へと戻して行き、別のボールから蛮を取り出し、荒れた大地を踏み、均させる。それに合わせる様に特別ゲストとして呼び出したグリーンとエヴァがボールからドサイドン、ニドキング、黒いバンギラス、ゴルーグ、クレベース等の巨大なポケモンを出し、荒れた大地を整える様に蛮同様にじならしで整地して行く。

 

「特別ゲストのエヴァにゃんとグリーンくんと一緒に整地作業を開始します」

 

「最初の時点で真似できるか」

 

 半分キレたようなシルバーの声を聴きつつ笑い声を響かせる。今までずっと道路の方で進展を眺めていたカイリキー等のポケモン達に、作業開始していいぞー、と指示を出す。それに合わせる様に建築作業に慣れている格闘ポケモン達が仕事を果たす為に作業を開始する。手を動かしてポケモン達の指揮を軽く取るが、今、この場には軽く五十を超えるポケモン達が同時に作業を行っている。その光景が凄まじいのか、シルバーが連れてきたゴールド、そして知り合いらしきクリスタル……オマケで物凄く久しぶりに見るブルーまでがこの光景を見ていた。

 

 38番道路で一体何をやっている? と言われたら答えは簡単である。

 

 ―――別荘建築である。

 

 

 

 

 ―――自分、オニキスは住所不定である。ネタでも何でもなく、ガチで住所不定である。一応住所をトキワジムに登録してあったが、それはボスがジムリーダーだった時代の話だ。一応保護者として名乗り上げてくれていた、というか気付いたらそういう風に扱われていたのだ。涙が出るほど感謝したのは当たり前だが、武者修行を始め、グリーンがトキワジムのジムリーダーに就任し、そして大事な事に漸く気付いた。ボスが半失踪状態で職務を放棄し、トキワジムのジムリーダーが他人に変わった以上、そしてついでに自分がトキワジムを出て行ったので、

 

 ―――私、オニキス! ホームレスなの。

 

 修行している間はそれでも良かったのだが、マスターズチャンピオンシップまでの一か月間、”本気”で鍛える事を考える以上、真面目に利用できる拠点が欲しかった。エンジュシティの旅館は悪くなかったのだが、これからは伝説種であるルギアのワダツミをバトルの仮想相手に使用した、強引な事もやる予定だ。そうなると本格的に広い土地が必要になってくる。その為、しっかりとした拠点の確保―――だったらもう、家を建てちゃおう、という話になる。そういうわけで別荘の建設が始まる。丁度その話をポケモン協会へと持って行けば、会長の方からある程度金額を負担してくれるという事にもなり、予想よりも遥かに安く土地と、建設費を抑える事が出来た。

 

 それでも数千万は飛んだのだが。

 

 当たり前だが、最新式の育成環境や、育て屋向けの環境作りを行うとアホみたいにお金が飛ぶ。何せそれぞれのタイプが過ごしやすいような環境を用意したり、プールだったりトレーニング用の広場や施設だとか、そういう物まで用意するのだから当たり前の様だがお金はかかる。それでもそれだけお金をかけてジョウトにこんな別荘、或いは新たな実家を用意するというのは、

 

 まぁ、完全にこっちに骨を埋める覚悟と、そろそろ定住すべきなのではないか? という考えが生まれてきたからだ。

 

 その内”絶対にホウエンへ行く必要がある”だろうが、それまではここ、ジョウトでゆっくりとポケモン達と暮らそうと思っている。だから育成する為にも、自分自身を鍛える為にも、そして暮らす為の拠点としてお金を一気に消費し、建築してしまおうという話だった。グリーンは若干追い出してしまったかもしれないという罪悪感を持っていたらしく、即座に建設を手伝うと話を出してきた。エヴァに関しては何時でも呼びだせとポケギアの番号を貰っているので、便利に使わせてもらっている。

 

 ―――持つべきは金とコネである。

 

 そういうわけでオニキス邸らしきものの建設が開始された。ただコストカットをする意味でも、働けそうな知り合いや、そしてポケモンを根こそぎ利用しているのだ。本当なら整地作業も業者の方の仕事なのだが、此方でやった方が早い上に安く済む。そういうこともあり、出来る事は積極的に此方で手を出している。

 

 元々ここに住んでいたポケモンに関しても交渉済みで退去、或いは近くに場所を提供している。

 

 ワダツミが。

 

 伝説のオーラ纏って。

 

 もしかしなくても強制退去とも言う。

 

 

 

 

「―――で、俺を呼んだのはどういう理由だ」

 

 腕を組み、そして尊大な言葉を放つシルバーの腹に迷う事無くパンチを叩き込み、一撃で沈める。その様子をゴールドが爆笑しながら見ている。

 

「言葉遣いには気を付けような、シルバー少年。お前の立場が何であろうとも、俺からお前への態度は一切変わらないからな! それはそれとして、こっちで生活する上で丁度便利に使える助手が欲しかったし、あとお前には色々と教えている途中で逃げられちゃったからな、この際、いい機会だからお前を確保してこき使いながら教えようかな、って」

 

 迷う事無くクロバットを出したシルバーはそれに乗って逃亡しようとするが、指をスナップさせると影の中から出現したギラ子が空間を歪めてループ空間を作りだし、遠くへと逃げ去ろうとしたシルバーを目の前まで引き戻してくる。それを利用して目の前に出てきたシルバーに再び腹パンを決め、その姿を沈める。無言でそのまま倒れるシルバーの姿を眺め、そしてクロバットを眺め、少しだけ満足し、視線をブルーへと向ける。

 

「お前は三年ぶりだな」

 

「もう会いたくなんかなかったけどね。まさか弟の先生をやっているとは思いもしなかったわ。だけど納得したわ。貴方だったら確かに性格を多少矯正するぐらいはやってのけるわよね」

 

「ポケモンの育成は人間の育成にも通ずるからな! 先生としても優秀だぞ俺は! 体罰大好き!」

 

「地獄に……落ちろ……お前もだゴールド……」

 

 腹を抱えながら立ち上がるシルバーの姿を見て、ゴールドは違う意味で腹を抱えながら笑っている。それを見てキレたシルバーがゴールドに対して喧嘩を売り、そしてゴールドが逃げる。それを追いかけるように二人が走り去って行く。やっぱり子供は元気が一番だな、と眺めていると、クリスタルという少女がおずおず、といった様子で挨拶して来る。

 

「おう、とりあえずお前も自由にやってていいぞ。シルバーの知り合いってなら遠慮する必要は一切ないから。それにここは色々と珍しい他の地方のポケモンもいるし、見ているだけでも楽しいぞ」

 

「あ、はい、ご親切にどうもありがとうございます。では図鑑の登録の為にちょっとポケモン達のデータを取らせてもらいますね」

 

 そう言ってクリスタルは作業をしているポケモン達の方へと向かう。

 

「うーん、事務的」

 

「ポケモン捕獲のプロフェッショナルって名乗ってるらしいしね。ジョウト地方のポケモン図鑑を埋めるのが目標らしいしねぇ」

 

「っつーことはシロガネ山にも行く予定か。死ななきゃいいな」

 

「笑えないから止めなさいよ」

 

 ブルーが軽く溜息を吐き、手を振りながらシルバー達の方へと歩き出す。子供が三人、怒鳴り合って、手を振り上げ、そして走り回っている姿を見る。そこに別の行動を取っていたはずのクリスタルも合流し、四人で話しながら笑い合い、そのまま作業現場の方へと向かって行く。少し前までは仮面の男だとか、色々と問題があったが、そういう事は全て解決した。そのおかげか、あの子供たちには本来の明るさが出てきている様な、そんな気がする。いや、自分が知っているのはあくまでもシルバーだけなのだが、それでもああやって楽しく遊んでいる姿を見ると、そう思ってもいいんじゃないかと思う。

 

「なんかお前、ゲームの中盤で死にそうな気配だしてるから黄昏るのをやめろ」

 

「ひでぇ」

 

 後ろからやって来たグリーンに背中を叩かれ、苦笑する。そうだ、まだ大人ぶるには少々若い。最低限三十台ぐらいには入らないと、ああいう威厳は出ないだろうとは思う。

 

 視線を子供たちから外し、建設現場へと向ける。

 

「で、予定はどうなってんだ?」

 

「ポケモンの能力的な部分に関してはほぼ才能の限界まで詰めてるし、レベルは100まで到達してる。となると後は純粋に読み、経験、そして動きを鍛えるだけだ。だからひたすらバトルを繰り返すしかない」

 

「”我が日々我が闘争”って奴か」

 

「あぁ。ホウオウをまず屈服させるために戦闘して、屈服させたらホウオウとワダツミを相手にバトル。それ以外にもなるべく多くの知り合いやエリートトレーナーを呼んで、毎日バトルする予定だよ。まぁ、その為に宿泊用の部屋を多めに増設する羽目になりそうなんだけど」

 

「お前が悪い」

 

 グリーンの言葉に苦笑する。それを聞いたグリーンはま、と言葉を置く。

 

「ジムリーダーなんて連中はシーズンが終わったら暇な奴ばっかりだ……誘えばホイホイ遊びに来ちまうかもな? たとえば元チャンピオン様でも割と暇をしていたり、なんてな」

 

「現チャンピオンが他地方へと遊びに行くのは許されるんだろうか」

 

「それは俺の管轄外だ。つかふつー許されねーだろ」

 

 くつくつとグリーンと笑いを零しあっていると、現場の方から抗議の声が飛んでくる。

 

「―――何やってるのよ! 一週間以内に作業全部終わらせるならさっさと指示を出して作業効率を上げなさいよ!」

 

「怒られちまった」

 

「仕方がない、気合を入れっか。知り合いが何時までもホームレスってのも嫌だしな」

 

「てめー」

 

 13歳児のくせして嫌に良く口が回るガキだ、そう笑いあいながら歩き出す。

 

 ―――リミットは一ヶ月。

 

 それまでに、準備を整えなくてはならない。

 

 最後の舞台への準備を。




 オニキスハウス建設中。住所不定無職(トレーナーは職じゃない)

 もしかして……社会の……ゴミ……?

 というわけで久しぶりにギャグパート。最近バトルとシリアスばっかりだったので軽くギャグを挟みつつ、四天王戦に向けて準備開始という感じで

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